額改定請求(症状が重くなったとき)について

障害年金は、障害の程度によって等級が定められています。障害の程度が軽快に向かえば等級が下がり、症状が重くなれば等級が上がります。

自動的に等級が上がることもありますが、そうもいかないのが現状です。ですから、それを待たず自ら申請する方法として「額改定請求」という方法があります。

本記事では、症状が重くなった時の額改定請求について詳しく解説していきます。自分が該当するのか確認してみましょう。

障害年金の額改定請求とは

現在、障害年金を受給している方の障害が重くなった場合、「額改定請求」することができます。

例えば、現在3級を受給している方の障害症状が重くなった時、2級にする手続きをします。3級の人が2級(または1級)、2級の人が1級になり、等級が高くなれば受給できる額も増えます。

この額改定請求をするには「年金を受ける権利が発生した日から1年経過」、「障害の診査を受けた日から1年経過」という条件を満たす必要があります。しかし、明らかに障害が重くなった場合は、1年待つ必要がない例もあります。この例は下記に詳細を記載してありますので検討している方は確認してみてください。

そして、額改定が決定されれば翌月より改定された額が支給されます。障害基礎年金の場合は、2級は816,000円、1級はその1.25倍となる1,020,000円となります。18歳到達年度の末日を経過していない子、または20歳未満障害等級1級または2級の障害者の子がいる場合は、その金額に234,800円(第一子、第二子)が加算されます。(第三子以降は78,300円)

障害厚生年金の場合は、報酬比例の年金額で計算されます。また、子どもの加算と共に配偶者の加算もあります。そして、障害基礎年金も合わせてもらうことができるのです。厚生年金の計算は人によって異なり複雑になるので年金事務所で算定してもらいましょう。

額改定請求に必要なもの

額改定請求に必要な書類は、額改定請求書と診断書です。

配偶者や子がいるときは1ヶ月以内作成の市区町村長の証明書または戸籍抄本などが必要になります。

これまで診断書は申請する日前1ヶ月以内のものを提出する必要がありましたが、令和元年8月以降は提出する日前3ヶ月以内となりました。

この診断書により症状が悪化したかどうか判断されるので、医師に症状を事細かに伝えることが重要です。

全ての症状を口頭で伝えるのは難しいことなので、手紙にすると医師にも伝わりやすくなるでしょう。症状が伝わらず悪化していないと書かれてしまうと額改定請求の認定ができなくなってしまいます。

額改定請求を申請する際、注意しなければならない点があります。

まず、65歳以上になると額改定請求ができなくなる方がいます。それは、現在3級で今までに一度も1級、2級になったことがない方です。年齢を重ねれば症状が悪化する可能性も増えてきますので、検討している方は迅速に額改定請求をしましょう。

次に、過去1年以内に障害の等級変更した人は額改定請求をすることができません。はじめに説明した「障害の診査を受けた日から1年経過」という条件に該当しなくなるためです。

また、過去1年以内に額改定請求をして等級が変わらなかった人も診査を受けていることになりますので、すぐには額改定請求ができなくなる可能性があります。

前回の更新から額改定請求する場合

障害年金は定期的に更新がありますが、前回の障害状態確認届によって3級から2級に上がった、2級から3級に落ちてしまった、などの場合はまた1年待ってからの申請になります。

前回の障害状態確認届によって等級は変わらなかった方は、1年待つ必要はなく、すぐ額改定請求することができます。

もし1年待つことができない場合は、審査請求することになります。

1年を経過しなくても額改定請求できる場合

額改定請求ができるようになるのは原則「年金を受ける権利が発生した日から1年経過」「障害の診査を受けた日から1年経過」と解説してきましたが、明らかに障害が重くなった場合は平成26年4月1日から1年経過せずとも請求できるようになりました。

以下それに該当する障害です。

■眼・聴覚・言語機能の障害

  1. 両眼の視力の和が0.04以下のもの
  2. 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
  3. 8等分した視標のそれぞれの方向につき測定した両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの
  4. 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの、かつ、8等分した視標のそれぞれの方向につき 測定した両眼の視野の合計がそれぞれ56度以下のもの
  5. 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
  6. 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
  7. 喉頭を全て摘出したもの

■肢体の障害

  1. 両上肢の全ての指を欠くもの
  2. 両下肢を足関節以上で欠くもの
  3. 両上肢の親指および人差し指または中指を欠くもの
  4. 一上肢の全ての指を欠くもの
  5. 両下肢の全ての指を欠くもの
  6. 一下肢を足関節以上で欠くもの
  7. 四肢または手指若しくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害または脊髄の器質的な障 害によるものについては、当該状態が6月を超えて継続している場合に限る)

■内部障害

  1. 心臓を移植したものまたは人工心臓(補助人工心臓を含む)を装着したもの
  2. 心臓再同期医療機器(心不全を治療するための医療機器をいう)を装着したもの
  3. 人工透析を行うもの(3月を超えて継続して行っている場合に限る)

■その他の障害

  1. 6月を超えて継続して人工肛門を使用し、かつ、人工膀胱(ストーマの処置を行わない ものに限る)を使用しているもの
  2. 人工肛門を使用し、かつ、尿路の変更処置行ったもの(人工肛門を使用した状態およ び尿路の変更を行った状態が6月を超えて継続している場合に限る)
  3. 人工肛門を使用し、かつ、排尿の機能に障害を残す状態(留置カテ-テルの使用または 自己導尿(カテーテルを用いて自ら排尿することをいう)を常に必要とする状態をい う)にあるもの(人工肛門を使用した状態および排尿の機能に障害を残す状態が6月を 超えて継続している場合に限る)
  4. 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態をいう)または遷 延性植物状態(意識障害により昏睡した状態にあることをいい、当該状態が3月を超え て継続している場合に限る)となったもの
  5. 人工呼吸器を装着したもの(1月を超えて常時装着している場合に限る)

参照:障害の程度が変わったとき

さいごに

障害を抱える方は、今の障害の状態が重くなった時にどうしたらよいのかご不安になることでしょう。

障害の状態が今よりも重くなった場合に、今もらっている障害年金の等級を上げるための手続が額改定請求になります。

今後のために、額改定請求について頭の片隅に入れていただくと安心だと思います。

また、額改定請求は単に診断書を出せば等級が上がるわけではありませんので、ご自身がもらっている障害年金の等級が上がる可能性があるかどうかわからない場合には、ぜひ社労士にご相談することをおすすめいたします。