うつ病と診断された社員への会社の正しい対応とは?

ストレスの多い現代社会では、うつ病を発症して休職する方も少なくありません。

うつ病の疑いがある社員をそのままにしていると、後々トラブルになってしまう可能性があるため、会社は早めに対応することが大切です。

しかし、ある日突然、社員からうつ病の診断書を持って来られた場合、「どのように対応すればいいのか分からない…」という方も多いと思います。

そこで今回は、うつ病の可能性がある社員に対して会社が取るべき対応と、やってはいけない対応などについて解説します。

うつ病の可能性がある社員に対して会社が取るべき対応

うつ病の可能性がある社員を見つけたら、すぐに対応を進めることが重要です。

まずはうつ病の可能性がある社員に対して、会社が取るべき4つの対応について紹介します。

医師の診断を受けさせる

もし、下記のような症状が出ている社員がいる場合は、なるべく早めに医師の診断を受けるように勧めましょう。

  • 社員の集中力が低下した
  • 仕事の作業効率が著しく下がった
  • 遅刻や欠勤が増えた
  • 悲観的な言動が多くなった


うつ病の発見が遅れると、業務中にトラブルが発生するだけでなく、うつ病の兆候が出ているにもかかわらず社員を休ませなかったとして、会社に責任が追求されてしまう可能性があります。

そのため、上記のような症状が見られる社員がいる場合は、早めに医師の診断を受けさせることが重要です。

また、本人が無理して働き続けようとした場合、会社の就業規則にはなくても客観的な合理性が認められれば、社員に対して医師への受診をするように命じることもできます。

休職が必要な場合は、休職制度について説明する

休職が必要な場合は休職する社員に対して、休職制度についての説明が必要です。

説明が必要な項目は、下記の7つの項目です。

  1. 休職事由
  2. 休職可能期間
  3. 休職中の給料
  4. 休職中の社会保険料の負担
  5. 復職の流れについて
  6. 休職中の連絡方法
  7. 傷病手当金の手続き方法、必要書類など

それぞれ1つずつ詳しく解説していきます。

1.休職事由

休職事由とは、どのような場合に休職を認めるかについて定めたものです。

例えば、会社に休職を認められた場合や、◯ヶ月以上欠勤が続いた場合など、会社によって休職事由が異なるため、しっかりと確認しておくことが重要です。

2.休職可能期間

休職の期間については法律による定めはなく、会社ごとに就業規則が決まっています。一般的には、就業年数によって異なる休職期間を定めている会社が多いため、社員の就業年数をよく確認しましょう。

3.休職期間中の給料

休職中は社員に対して、給料を支払う義務はありません。ただし、会社の就業規則で「休職中でも給与を支払う」と定めている場合は、支払う必要があります。

4.休職中の社会保険料の負担

休職期間中も、社会保険料の会社負担部分については支払いが必要です。また、本人の経済状況を考慮して、本人負担分の社会保険料を会社が支払うことも可能です。

5.復職の流れについて

通常、復職する際は医師から「復職可能」と診断されることが必要です。

もし、休職期間終了後も復職できない場合、退職または解雇と就業規則に定めてあることが一般的です。仮に、その説明なしに社員を解雇した場合、不当解雇として訴えられる可能性があります。

そのため、休職後の復職の手続きや、復職後の働き方などについて社員と話し合っておきましょう。

6.休職中の連絡方法

会社によっては、休職中でも定期的に連絡を取ることや診断書の提出を義務付けているところもあります。万が一、休職期間中本人と連絡が取れなくなったときのために、社員の家族の連絡先も聞いておくと安心です。

7.傷病手当金の手続き方法、必要書類など

休職期間中に給与を支払われない場合、一定の条件を満たしたら健康保険から傷病手当金が受け取れるケースもあります。

傷病手当金とは、病気やケガが原因で連続する3日間を含み4日以上仕事を休んだ場合に、最長で「1年6ヶ月」の間、給与額の「3分の2以上」に当たる金額を健康保険から受け取れる制度です。

傷病手当金に必要な書類や手続きの方法なども合わせて説明してあげるといいでしょう。

傷病手当金の詳細については、全国保険協会の「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」を参考にしてください。

休職する社員の業務の引き継ぎ

休職制度や復職の流れなどについて説明した後は、休職する社員の業務の引き継ぎを行いましょう。

ただし、医師から「早急に休職を要する」と診断された場合は、すぐにその社員を休ませることが必要です。

また、うつ病での休職期間が長期になる場合は、派遣社員を雇う、業務の一部を外注化するなどして、残っている社員に負担をかけないように工夫することも大切です。

会社の労働環境を確認する

うつ病はプライベートでのストレスで発症することもありますが、職場の労働環境にや過重労働によって発症する場合もあります。

長時間の残業やパワハラ、セクハラなど、会社の業務や労働環境がが原因でうつ病が発症した場合、社員からの損害賠償責任を追求される恐れもあります。

もし、会社の労働環境に問題がある場合は、速やかに改善措置を行いましょう

うつ病と診断された社員にやってはいけない会社の対応とは?

最後に、うつ病と診断された社員に対してやってはいけない会社の対応について解説します。

無理に働かせてはいけない

うつ病と診断されて、診断書に「休職を要する」とあるにもかかわらず、社員を無理に働かせることは避けましょう。

無理に働かせた場合、うつ病の症状を悪化させたとして会社の安全配慮義務を違反したとして、社員から訴えられる可能性があります。

忙しい職場では、社員を急に休ませることが難しいところもあるかと思います。しかし、後々のトラブルを避けるためにも、まずは休養させることを最優先に対応しましょう。

うつ病・メンタルヘルス不調を理由に社員を辞めさせることはできない

日本の法律上、うつ病という理由だけで社員をすぐに解雇することはできません。

労働契約法第16条では、以下のように定めています。

「解雇は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

引用:労働契約法のあらまし

つまり、社員がうつ病になったからといってすぐに解雇することは、「権利の濫用」だと見なされる可能性があります。

社員がうつ病になり仕事ができない場合は、まずは就業規則に定めてある休職期間の間、休ませることが必要です。

そして、就業規則で定めてある休職期間を満了しても、復職できない場合は解雇することが可能です。

ただし、以下の場合は原則として解雇できないため注意しましょう。

  • 社員の主治医が復職可能と診断している場合
  • うつ病を発症した原因が、長時間の残業やセクハラ、パワハラなどの業務に起因する場合

仮に、無理に解雇した場合、社員から「不当解雇」として訴えられるリスクがあります。

不当解雇として判断された場合、会社側は多額の支払いを命じられるため、社員の解雇については慎重に検討しましょう。

さいごに

うつ病の疑いがある社員をそのままにしておくと、会社の対応が悪かったとして、後々、責任を追求される可能性があります。

責任を追求されることを防ぐためにも、うつ病の疑いのある社員がいたら、なるべく早く医師の診断を受けさせて、休職を要する場合は、速やかに休ませるようにしましょう。

また、うつ病診断されたからといって、社員をすぐに解雇できないことも知っておくことも重要です。

うつ病診断された社員が出た場合は、社員に対して真摯に向き合って必要な対応を進めましょう。