うつ病で障害年金を受給する4つのデメリットとは

うつ病を含め精神的な疾患で働けなくなると、金銭的な不安が増えてさらに症状が悪化してしまうケースも少なくありません。

しかし、障害年金を受給すれば定期的な収入になるため、金銭的な不安が解消され、治療に専念することが可能です。

ただし、うつ病で障害年金を申請する場合、いくつか気をつけるべき点もあります。

そこで今回は、うつ病で障害年金を受給するデメリットや申請するときのポイントなどを解説します。

障害年金のメリットも併せて解説するので、うつ病で障害年金の申請を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

うつ病で障害年金を受給するデメリットとは?

障害年金の受給にはメリットも多いですが、少なからずデメリットもあります。

そこでまずは、うつ病で障害年金を申請する際に考えられるデメリットを主に4つほど解説します。

家族の扶養から外れる場合がある

一般的に、健康保険の被扶養者の要件は収入額が130万円未満となっており、収入額が130万円を越えると家族の扶養から外れます。

一方、障害年金を受給している場合は、その限度額が180万円になります。

なお、障害年金は非課税ですが、社会保険の扶養判定時には収入としてみなされます。

したがって、障害年金とその他の収入を合わせて180万円以上になる場合は扶養から外れ、健康保険と年金保険料の負担が必要です。

ただし、障害基礎年金を受け取っている方の場合は、国民年金保険料の納付を全額免除される「法定免除」を受けることが可能です。

会社に知られてしまうケースがある

うつ病での障害年金の受給を検討している方の中には、会社の休職期間中など、会社に在籍したままである方も少なくありません。

そのため「障害年金を受給した場合、会社に知られてしまうのか?」という不安を抱えている方もいらっしゃるかと思います。

結論からいうと、障害年金の受給はご本人が申告しない限り、会社や周囲に知られてしまうことは基本ありません。

また、障害年金は非課税のため、年末調整で申告する必要もなく、そのときに会社に知られてしまうこともありません。

しかし、一部例外もあります。

例外となるのは、障害年金受給中に「傷病手当金」という別の制度の利用を申請した場合です。

傷病手当金と障害年金は原則併給ができないため、傷病手当金を申請する際は、申請書類の中に障害年金の受給の有無を記入する欄があります。

そのため、その手続きの際に勤務先を通して申請する場合は、会社に知られる可能性があります。

寡婦年金・死亡一時金が受け取れない

障害年金を受給すると、寡婦年金死亡一時金が受け取れなくなります。

寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた期間(免除期間含む)が10年以上ある夫を亡くした妻が60歳から65歳の期間に受給できる年金です。

ただし、亡くなった夫がすでに障害基礎年金や老齢基礎年金を受給していた場合は、寡婦年金が受け取れません。

また、死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料納付済期間が3年以上ある方が死亡したときに、その人と生計を同じくしていた遺族に支給される給付金です。

しかし、死亡一時金も寡婦年金と同様に、障害基礎年金や老齢基礎年金を受給したことがある場合は、遺族は死亡一時金を受け取ることができません。

なお、寡婦年金と死亡一時金のどちらも障害年金の方が支給額が多いため、そこまでデメリットにはなりません。

障害年金の手続きが負担で症状が悪化する可能性がある

障害年金の申請手続きはとても複雑なため、申請が完了するまでに病状が悪化してしまう可能性もあります。

例えば、申請するためには複数回、年金事務所や医療機関に足を運ぶ必要があります。

また、申請書類の一つである「病歴就労状況等申立書」は、ご自身での作成が必要です。

特に、うつ病は大きなショック体験や継続的なストレスが原因で発症することがあります。

そのため、病歴就労状況等申立書の作成途中で辛い過去を思い出して、体調が悪化してしまうことも考えられます。

そのため、ご自身での申請が負担に感じる場合は、ご家族やご友人、社労士といった専門家に相談することがおすすめです。

障害年金を受給するメリット

障害年金を受給するデメリットについて解説しましたが、障害年金はメリットが多いのも事実です。

そこでここからは、障害年金を受給するメリットについて解説します。

経済的な不安やストレスの軽減

障害年金を受給する最大のメリットは、経済的な不安やストレスが軽減されることです。

障害年金の受給額は、障害等級や家族構成によって金額が異なりますが、2ヶ月に一度、2ヶ月分(10万円〜30万円)が定期的に振り込まれます。

このように、安定した定期収入は気持ちに余裕をもたらし、金銭に起因する不安やストレスを軽減させることができます。

また、安定的な収入があることで、治療に専念できることもメリットの一つです。

国民年金保険料の支払いが法定免除に

障害基礎年金の1級または2級の受給者は、申請すると国民年金保険料の支払いが全額免除となる「法定免除」を受けることが可能です。

法定免除となった期間は、国民健康保険料の支払いはありませんが、国が半分支払ったとして将来の老齢基礎年金の支給額が計算されます。

つまり、将来受け取る老齢基礎年金はその分、減額されてしまいます。

しかし、老齢基礎年金を満額受給したい場合は、国民年金保険料を任意で納付したり、後から納付(追納)することも可能です。

法定免除について詳しくはこちらの記事をご参考ください。

年金の使い道は自由

生活保護との比較になりますが、障害年金の使い道は自由です。

生活保護の場合、財産(土地・家屋・車・ペットなど)の所有について制限があったり、仕事で得た収入によっては支給額が減額や支給停止になるなど、さまざまな制約があります。

一方、障害年金の場合は所有財産に関する制約はありません。

そのため、資産や収入があったり、身内や親族からの援助があったりしても減額されずに受給することが可能です。

また、仮に病気が落ち着いてきて仕事をするようになったな場合、収入が一定額を超えた段階で生活保護は打ち切られてしまいます。

しかし、障害年金は病気が治り普通の生活にできるようになっても、次の更新時まではそのままの年金額を受給できます。

障害年金は非課税

障害年金は非課税とされているため、所得税や住民税といった税金はかかりません。

ただし、住民税は前年の所得を基準に税金が決まるため、前年に所得税を納めている場合は、現在、障害年金以外に収入がなくても住民税がかかるため注意しましょう。

なお、収入が障害年金のみの場合は、確定申告の必要はありません。

しかし、障害年金に加えて、家賃収入、事業収入、給与収入など、障害年金以外の収入がある場合は、確定申告が必要です。

障害年金の確定申告については以下の記事で詳しく解説しています。

障害年金の確定申告はいくらから必要?

うつ病で障害年金を請求するときのポイント

うつ病で障害年金を請求する際は、いくつか注意すべきポイントがあります。

そこで最後に、うつ病で障害年金を請求するときのポイントについていくつか解説します。

精神科の受診日が初診日とは限らない

うつ病で障害年金を申請する場合、初診日の特定が最初の関門です。

うつ病では不眠や頭痛などの症状で最初内科を受診し、その後心療内科や精神科でうつ病と診断されるケースも少なくありません。

この場合、心療内科や精神科を受診した日が初診日ではなく、不眠や頭痛の症状などで受診した日が初診日となります。

また、過去に自律神経失調症などで内科や精神科に通っており、現在はうつ病などの精神疾患を患っている場合、初診の病院は自律神経失調症で受診した病院となります。

このように、うつ病の場合、うつ病と診断された日が初診日ではなく、過去にうつ病と関連する症状で病院に受診した日が初診日となるため注意しましょう。

日常生活の状況がしっかりと診断書に反映されているか

障害年金の審査は書類審査となっているため、提出した書類ですべて決まってしまいます。

中でも、診断書の内容はもっとも重視される部分です。

特に、うつ病の障害年金認定では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」における評価がとても重要なポイントです。

しかし、受診の際に日常生活の状況をうまく話せず、診断書には実際よりも軽い症状で書かれてしまうことも少なくありません。

もし、実際の症状よりも軽い症状の診断書を提出すると、実際の症状よりも軽い等級で認定されたり、最悪の場合、不支給となったりする可能性もあります。

このようなことを防ぐためにも、診断書の作成を依頼する際は、主治医に現状をしっかりと伝えることが重要です。

ご自身で伝えることが難しい場合は、日常生活状況をまとめたメモを渡したり、ご家族など普段の様子を知っている方と一緒に同行し、家族の方から医師に伝えてもらう方法もおすすめです。

就労していると受け取れない可能性も

原則、障害年金は就労していても受け取れます。

ただし、うつ病などの精神障害の場合、障害の程度を示すことが難しく、日常生活能力や就労状況などで年金の等級を判断します。

そのため、就労していることにより日常生活能力があるとみなされ、障害の状態が軽くなっていると判断されることがあります。

そのため、うつ病で障害年金を申請する際は、周囲のサポートや職場の配慮があって働くことができていることを申請書類に具体的に記載することが重要です。

さいごに

今回は、うつ病で障害年金を申請するときのデメリットや注意点を解説しました。

障害年金を受給する場合、扶養から外れたり、寡婦年金・死亡一時金が受け取れなかったりといったデメリットはあるものの、それ以上にメリットも多いです。

ただし、うつ病で障害年金を請求する場合、手続きが複雑で申請の途中で体調が悪化してしまう可能性もあります。

もし、ご自身やご家族での申請が難しいと感じたら、社労士といった専門家へ相談することがおすすめです。