障害年金の請求に所得証明書は必要?必要なケースや期間を解説

障害年金の請求に所得証明書は必要?必要なケースや期間を解説

障害年金の請求をする時には、障害年金請求書や病歴・就労状況等申立書の他にも様々な書類を揃えなければなりません。

その中の一つに、所得証明書があります。

この所得証明書は全ての方が必要なわけでなく、揃えなければならない人とそうでない人がいます。

所得証明書が必要な方はいったいどんな方なのかを、この記事ではわかりやすく解説していきます。

なぜ所得証明書を添付する必要があるのか

障害年金の請求では、いくつかの場面で所得制限が設けられており、所得制限の金額を超えている場合には支給されないもしくは支給停止になります。

その所得制限にかかっていないことを証明するために、所得証明書を添付するのです。

ちなみに所得証明書とは、実際には1年ごとの課税証明書もしくは非課税証明書を使うことが一般的です。
対象となる方の住所地の市区町村役場で発行してもらえます。

では、どんな時に所得証明書が必要なのかを見ていきましょう。

大きく、以下の3つの場合に所得証明書を添付する必要があります。

  • 20歳前傷病による障害基礎年金を請求する場合
  • 障害厚生年金で配偶者の加算をつける場合
  • 18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害の状態にある子どもを含む)がいる場合

障害年金の請求に所得証明書が必要な3つのケース

所得証明書が必要な3つのケースについて詳しく解説していきます。

20歳前傷病による障害基礎年金を請求する場合

20歳前傷病による障害基礎年金は、本人の所得によって支給制限があります。そのため請求時に所得証明書が必要です。
(扶養親族がいない場合の基準額)

前年の所得額 支給停止される年金額
3,704,000円以下の場合 なし
3,704,001円から4,721,000円以下の場合 年金の2分の1
4,721,000円を超える場合 年金の全額

参照:日本年金機構 20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等

20歳前傷病による障害基礎年金は、毎年受給者本人の前年の所得証明書が必要です。前年の所得額が上記の額に該当した場合、「10月分から翌年9月分まで」の障害年金の支給が停止されます。

障害厚生年金で配偶者の加算をつける場合

障害厚生年金の1級・2級の受給者で、かつその受給者が配偶者を生計維持している場合には234,800円の配偶者加算がつきます。

その条件となる生計維持とは、生計を同一にしており、配偶者の前年の年収が850万円未満もしくは前年の所得が655.5万円となっております。

また、生計を同一にしているとは、簡単に言うと家計のお財布を一つにしているということです。
ですので、例えば夫が単身赴任のため夫婦で同居していなかったとしても、仕送り等で家計が同じであれば配偶者の加算を付けることができます。

また、夫婦のどちらが家計を支えているのかは問われませんので、夫が働いて妻が専業主婦であっても、妻が障害年金2級以上の場合には夫の前年の年収が850万円未満もしくは前年の所得が655.5万円であれば、夫を加算の対象とすることができます。

障害厚生年金の配偶者加算を請求するときの所得証明書の提出は、請求時の最初の一回だけで所得確認を毎年行う必要はありません。

18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害の状態にある子どもを含む)がいる場合

障害年金は受給者が生計を維持している18歳未満の子もしくは障害のある状態の20歳未満の子がいる場合、子どもの加算があります。子の加算を受けるための要件は以下の通りです。

障害年金2級か1級の受給者には子どもの加算をつけることができますが、3級の障害厚生年金の受給者には子どもの加算はつきません。

また、加算の対象となる子どもとは、以下になります。

  • 18歳の年度末までの子ども(わかりやすく言うと、高校を卒業するまでの年齢です)
  • 20歳未満で障害状態と認められた子ども(障害年金の1級もしくは2級に該当する程度の障害を持った子ども)

配偶者の加算と同様、生計維持していることが条件であり、子どもの前年の年収が850万円未満もしくは前年の所得が655.5万円であれば加算をつけることができます。

ちなみに、子の加算は、1人目と2人目はそれぞれ234,800円、3人目以降は一人につき78,300円の加算です

実務では、義務教育中(小学校、中学校)の場合は所得証明書を添付する必要はありません。
高校生の場合には、「全日制」と書かれた学生証のコピーを所得証明書として代用することができます。
万が一「全日制」と書かれていない学生証の場合には、所得証明書を添付しなければなりません。

いつの所得証明書を添付しなければならないか

基本的には、収入や所得の審査が必要になる場合には、障害年金の受給権が発生するすべての年度分を準備しなければなりません。

例えば遡って障害認定日請求をする場合には、その遡った年度以降現在まですべての所得証明書が必要になります。

仮に10年前の障害認定日に遡る場合には、10年分の所得証明書を準備するということになります。

ただし、課税証明書や非課税証明書を発行する市区町村役場では5年を超えた分は発行しないという運用も多いので、必ずしも対象となるすべての年度の所得証明書を準備できないことはよくあります。

また、障害年金の支給には時効があり、例えば障害認定日が10年前だったとしても実際に支給されるのは5年前からの分となります。

時効によって支給されない年度の所得証明書の添付まで求められるのはとても不合理であることから、時効で支給されない年度分については所得証明書の添付をしなくても構いません。

実際に所得証明書を添付しなければならない年度について

所得証明書というものは、前年の1月1日から12月31日までの所得について証明するものとなっております。
例えば、令和5年度の所得証明書は令和4年1月1日から12月31日までの所得を証明するものです。

そして、令和5年度の所得証明書を取得できるのは、令和5年6月以降となることが一般的です。
なぜ、6月になるのでしょうか。

毎年3月15日までに所得税の確定申告をし、それを市区町村で処理して証明書を準備できるのが6月頃となっているためです。

また、障害年金の所得証明書によってある年度の審査をする期間は、8月分から翌年7月分までとなっております。

市区町村で所得証明書を取れるのが6月以降、そこから少し余裕を持ち8月分からそれを使うという流れです。

そのため、1月分から7月分については前年度の所得証明書(2年前の)、8月分から12月分については当年度の所得証明書(昨年の)が必要になります。

5年以上前に遡って請求する場合に必要な所得証明書

令和5年中に5年以上さかのぼって請求する場合、必要になる所得証明書を以下にまとめました。

請求する年月 年金の支払を受ける権利が時効消滅しない期間 必要な所得証明書
令和5年1月 平成29年12月以降 平成29年度以降の所得証明書
令和5年2月
令和5年3月 平成30年2月以降
令和5年4月
令和5年5月 平成30年4月以降
令和5年6月
令和5年7月 平成30年6月以降
令和5年8月
令和5年9月 平成30年8月以降 平成30年度以降の所得証明書
令和5年10月
令和5年11月 平成30年10月以降
令和5年12月

5年未満まで遡る場合や事後重症請求の場合に必要な所得証明書

遡及するのが5年未満の場合や事後重症請求の場合については、受給の対象となる期間すべての所得証明書を揃えます。

【5年未満まで遡る障害認定日請求の例】
令和4年2月が障害認定日である遡及請求をする場合、受給権が発生するのは障害認定日の翌月である令和4年3月になります。
そうすると、令和4年3月以降が審査の対象期間です。
この場合は、令和3年度(令和2年1月~12月)以降の所得証明書を添付します。

【事後重症請求の例】
令和5年7月に事後重症請求をする場合、受給権が発生するのは請求月の翌月である令和5年8月になります。
そうすると、令和5年8月以降が審査の対象期間です。
この場合は、令和5年度(令和4年1月~12月)の所得証明書を添付します。

所得証明書はマイナンバーで省略が可能

平成28年1月からマイナンバー制度がスタートし、行政機関などへの添付書類の削減や行政手続きの簡素化が進みました。障害年金もその例外ではありません。
障害年金請求でも、年金請求書にマイナンバーを記入することによって所得証明書の省略が可能になります。

ただし、障害年金の請求で省略できるのは平成29年度(平成28年分)以降です。

所得証明書が省略できる条件
  • 年金請求書にマイナンバーを記入する
  • 必要な所得情報が平成29年度(平成28年分)以降である

仮に平成28年度(平成27年分)以降の所得証明書が必要な場合、平成28年度(平成27年分)の所得証明書は市区町村役場で取得する必要があります。
また平成29年度(平成28年分)以降の所得証明書は、マイナンバーを年金請求書に記入すれば省略可能です。

所得証明書の他にも省略できる書類があります。

マイナンバーで省略できる書類

  • 配偶者の所得証明書
  • 18歳の年度末までの子どももしくは20歳未満で障害のある子どもの所得証明書
  • 18歳の年度末までの子どももしくは20歳未満で障害のある子どもの在学証明書や学生証のコピー
  • 本人の生年月日が確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本、住民票など)

配偶者や子の所得証明書や在学証明書などを省略するためには、配偶者・子それぞれのマイナンバーを記載する必要があります。

なおこれらの書類はDV・虐待等でマイナンバーの「情報不開示設定」をしている場合は、マイナンバーから情報を取得することができません。請求に必要な書類を添付するようにしましょう。

障害年金の請求の所得証明書に関する注意点

障害年金の請求には、どのような注意点があるのでしょうか?

去年無職でも所得証明書は必要なのか

障害年金の請求で本人の所得証明書が必要なのは、「20歳前の障害による障害基礎年金を請求する場合」です。

そして、「所得」とは、働いて得る収入だけではなく、預貯金の利子や株の配当金、地代家賃、保険の一時金なども含まれます。

例えば、去年働いていなかったとしても土地を売って利益を得ている場合は「所得がある」ことになります。

それらすべての所得を証明するために所得証明書が必要です。

さいごに

障害年金請求の手続きには、所得証明書以外にもケースバイケースで必要になる書類はたくさんあって大変複雑です。

「どの書類が必要なのかわからない」など、障害年金のお悩みは社会保険労務士など専門家にご相談ください。