【障害年金】複数の病状が発生したときの障害年金の認定方法や事例について解説

障害年金は単独障害で申請する方だけでなく、申請時点で複数の病状がある方や、受給後に新たな障害が生じて複数の障害を持つ方も中にはいらっしゃいます。

このように複数の病状が発生した場合、障害等級はどのように認定されるのか気になる方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、複数の病状がある場合の障害年金の認定方法や、具体的な事例について解説します。

複数の病状がある場合の障害年金の3つの認定方法

複数の病状が発生した場合の障害年金の認定方法には、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 併合(加重)認定
  • 総合認定
  • 差引認定

ここでは、それぞれの認定方法について詳しく解説します。

併合(加重)認定

併合認定とは、障害認定日において認定対象となる障害が2つ以上ある場合、個々の障害について併合判定参考表における該当番号を求めた後、当該番号に基づき併合(加重)認定表による併合番号を求め認定する方法です。

また、すでに障害の状態にある方に別の傷病により病状が加わった場合、以下の認定方法に分けられます。

・加重認定

障害基礎年金の受給権者および障害厚生年金の受給権者(障害等級が1級もしくは2級の場合に限る。)に対して、さらに障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級が1級もしくは2級の場合に限る。)を支給するべき事由が生じた場合、「加重認定」が行われます。

・併合改定

障害基礎年金の受給権者および障害厚生年金の受給権者(障害等級が1級もしくは2級の場合に限る。)に、さらに障害等級1級または2級の障害等級に該当しない程度の障害(3級以下)が生じた場合、「併合改定」が行われます。

・初めて1、2級による認定

一度も2級以上に該当したことのない障害を持つ人が2つの障害を合わせて、初めて障害等級2級以上に該当する場合、「初めて1、2級による認定」が行われます。

総合認定

障害年金の認定対象となる疾患を併発しており、それらの障害状態を個別に区分して認定できない場合に、複数疾患全体での症状、障害状態を総合的に判断する認定方法です。

外部障害、精神障害と内科的障害がある場合、外部障害と精神障害は併合認定ができても内部障害との関係では総合的に認定されます。

また、精神障害に関しては、障害年金の対象となる障害が2つ以上ある場合、病態を分けることができないことが多いため総合認定で行われます。

差引認定

障害認定の対象とならない障害(前発障害)と同一部位に新たな障害(後発障害)が加わった場合、現在の障害の程度から、前発障害の程度を差し引いて認定する方法です。

同一部位とは、障害のある箇所が同一であるもの(上肢または下肢については、1側の上肢または下肢)のほか、その箇所が同一でなくても眼または耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位とします。

なお、初めて2級による年金に該当する場合は、差引認定は適用されません。

認定方法の事例

ここからは、併合認定と差引認定の具体的な事例について解説します。

併合認定の事例

まずは、併合認定の「2つの障害が併存する場合」「3つ以上の障害が併存する場合」についてみていきましょう。

2つの障害が併存する場合

具体的な認定の流れは以下の通りです。

  1. それぞれの障害について「併合判定参考表」より号数を求めます。
  2. 上記で求めた号数を「併合(加重)認定表」に当てはめて併合番号を求めます。

【例】

具体例として、以下の2つの障害状態を持つケースについて解説します。

部位 障害の状態 併合判定参考表
右手の障害 右手のおや指とひとさし指を併せー上肢の4指を廃したもの 7号-5
両眼の障害 両眼の視力の合計が0.1以下に低下したもの 6号-1

併合認定表により、右手の障害(7号-5)と両眼の障害(6号-1)を組み合わせると併合番号は4号となります。

併合番号が4号に該当する場合、「障害等級2級」と認定されます。

3つ以上の障害が併存する場合

具体的な認定の流れは以下の通りです。

  1. 併合判定参考表から個々の障害の該当番号を求めます。
  2. 上記で求めた番号の最下位とその直近位を併合認定表に当てはめて併合番号を求めます。
  3. 以上を繰り返して、最終の併合番号を求めて障害の程度を認定します。

【例】

具体例として、以下の障害状態を持つケースについて解説します。

部位 障害の状態 併合判定
左下肢の障害 一下肢を足関節以上で欠くもの 4号-6
両眼の障害 両眼の視力の和が0.1以下に減じたもの 6号-1
右手の障害 人差指を併せ一下肢の3指を近位指節間関節で欠くもの 7号-4
左手の障害 一上肢の親指を指節間関節以上で欠くもの 9号-8

まず、4位の左手の障害(9号-8)と3位の右手の障害(7号-4)を併合認定表に当てはめると、併合番号は7号となり、この併合番号7号と2位の両眼の障害(6号-1)を併合すると併合番号は4号になります。

そして最後に、併合認定表より併合番号4号と残った最上位の左下肢の障害(4号を-6)を組み合わせると、併合番号1号となるため、「障害等級1級」と認定されます。

併合認定の特例

併合認定の対象となる障害状態が、国年令別表、厚年令別表第1または厚年令別表第2に明示されている場合、もしくは併合判定参考表に明示されている場合は、併合認定表の結果にかかわらず、同令別表等により認定します。

【例】

具体例として、以下の障害を持ったケースを解説します。

部位 障害の状態 併合判定参考表
左足ゆびの障害 一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの 8号-11
右足ゆびの障害 一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの 8号-11

こちらのケースの場合、2つの障害を併合すると、併合認定表により併合番号7号に該当するため障害等級は3級となります。

しかし、上記の障害の状態は、国年令別表に明示されてある『両下肢のすべての指を欠くもの(2級11号)』の障害程度と一致します。

したがって、国年令別表に従って「障害等級2級」と認定されます。

差引認定の事例

認定の流れは以下の通りです。

  1. 併合判定参考表より現在の障害と前発障害の状態に応じた号数を求めます。
  2. その号数に応じた「現在の活動能力減退率」から「前発障害の活動能力減退率」を差し引いた「残りの活動能力減退率(=差引残存率)」に応じて、「差引結果認定表」から差引残存率に対応する障害等級が決定されます。
  3. 後発障害の状態が併合判定参考表に「障害状態」に記載された内容と一致する場合、その活動能力減退率が、差引残存率よりも大きいときは、後発障害の活動能力減退率により等級が決まります。

【例】
具体例として以下の障害状態を持つケースについて解説します。

  障害の状態 併合判定参考表 活動能力減退率前発障害差引活動能力減退率
現在の障害 一上肢の5指を近位指節間関節以上で欠くもの 6号-7 67%
前発障害 一上肢の親指を指節間関節で欠き、かつ、人差指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの 8号-8 18%
後発障害 人差指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの 7号-4 56%

まず、「現在の障害の活動能力減退率」から「前発障害の活動能力減退率」を差し引きます。

67%−18%=49%(差引残存率)

上記で求めた差引残存率49%は、差引結果認定表に当てはめると「障害手当金」に該当します。

しかし、後発障害の活動能力減退率は56%あり差引残存率よりも数値が大きいため、「障害等級3級」と認定されます。

より詳しく認定方法や認定事例について知りたい方は、日本年金機構のこちらのページをご参考ください。

さいごに

今回は複数の病状がある場合の認定方法について詳しく解説しました。

複数の病状がある場合、「併合認定」「総合認定」「差引認定」の3つの認定方法があり、障害の症状や程度によってどの認定方法に該当するか変わります。

もし、複数の病状を抱えて障害年金の申請でお困りの際は、お近くの年金事務所や社労士の方に一度ご相談してみてください。