障害年金は初診日によって、障害年金の種類が変わったり、受給できるかが確認されたりするため、初診日の確定と証明は障害年金を請求する上でとても重要です。
初診の病院にずっと通っている場合は初診日が特定しやすいですが、転院したり、初診日から長期間経ったりして、「いつが初診日が分からない…」という方も多いかと思います。
そこで今回は、障害年金の初診日についてや、初診日が特定できない場合の証明方法などについて解説します。
目次
障害年金の初診日とは?
障害年金における「初診日」とは、障害の原因となった傷病で初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいます。
具体的には次の通りです。
具体的な状況例 | 初診日 |
障害となる傷病に対して治療行為または療養に関する指示があった場合 | 障害の原因となった傷病で初めて診療を受けた日 |
同一傷病で転医があった場合 | 一番最初に医師などの診療を受けた日 |
過去の傷病が治癒して(社会的治癒も含む)、再度傷病が発症した場合 | 再発後に最初に診療を受けた日 |
誤診の場合でも、その後に正確な傷病名が確定した場合 | 最初に誤診をした医師等の診療を受けた日 |
じん肺症、じん肺結核 | 初めてじん肺と診断された日 |
障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係があると認められる傷病がある場合 | 最初の傷病の診療を受けた日 |
先天性の知的障害(精神遅滞) | 出生日 |
発達障害(ADHDや自閉スペクトラム症など) | 自覚症状があって初めて診療を受けた日 |
上記の通り、あくまで医師等の診療を受けた日が初診日になるため、整骨院や鍼灸院などでの施術は医師の診療とはみなされず、初診日には該当しません。
また、原則として、健康診断を受けた日(健診日)も初診日として扱われません。
ただし、健康診断後にかかった病院で初診日の証明が取得できない、かつ、直ちに治療が必要と認められる健診結果である場合は、例外として健診日が初診日として認められます。
なおこのケースの場合、請求者が健診日を初診日としてほしいとの申し立てを行い、健診日を証明する資料を添付することが必要です。
また、社会的治癒とは、治療の必要がなく(医学的に治癒していなくても)、長期間(概ね5年程度)普通に生活や就労がある場合は、社会的治癒とされます。
社会的治癒に該当するかどうかは、診断書や病歴・就労状況等申立書の内容によって個別に判断されます。
障害年金の初診日の重要性
障害年金の初診日は、以下の支給要件を満たしているかを確認する上でとても重要な日付です。
初診日要件
初診日に国民年金か厚生年金のどちらに加入しているのかによって、受給できる障害年金の種類が変わります。
初診日に国民年金に加入していれば「障害基礎年金」が受給でき、初診日に厚生年金に加入していれば、障害基礎年金に加算して「障害厚生年金」も併せて受給できます。
保険料納付要件
保険料納付要件では、初診日の前日時点で、下記のいずれかの条件を満たすことが必要です。
- 初診日がある月の前々月までの加入期間の3分の2以上保険料を納めている(免除含む)
- 上記の要件を満たせない場合は、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
ただし、20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません。
このように、障害年金の支給要件を確認するためには、初診日は必ず証明する必要があります。
障害年金の詳しい支給要件については、こちらの記事をご参考ください。
初診日の特定・証明方法について
初診日の証明は、障害の原因となった傷病で初めて受診した医療機関の「受診状況等証明書(初診日証明書)」で証明します。
ただし、受診状況等証明書と診断書を作成してもらう医療機関が同じである場合は、受診状況等証明書の提出は必要ありません。
しかし、初診の医療機関から転院したり、初診の医療機関で受診状況等証明書の取得ができなかったりといったケースもあるかと思います。
そこで最後に、2つのケース別に初診日の特定・証明方法について解説します。
初診の医療機関から転院している場合
初診の医療機関から転院している場合は、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を記載してもらいます。
しかし、初診から長期間経っており医療機関に記録が残っていなかったり、初診の病院が廃院したりして、初診の医療機関で受診状況等証明書が取得できない場合もあります。
このような場合は、初診の医療機関に関する「受診状況証明書が添付できない申立書」を自分で作成することが必要です。
その上で、2番目に受診した医療機関に受診状況等証明書の記載を依頼します。
もし、2番目の医療機関でも受診状況等証明書が取得できなかった場合は、さらに2番目の医療機関に関する「受診状況証明書が添付できない申立書」を作成して、3番目に受診した医療機関に「受診状況等申立書」を作成してもらいます。
このように、「受診状況等申立書」が取得できるまで上記の作業を繰り返します。
受診状況等申立書が取得できない場合
どの病院にも初診の医療機関の記録が残っておらず、受診状況等申立書が取得できない場合は、「受診状況証明書証明書が添付できない申立書」を提出します。
しかし、「受診状況証明書証明書が添付できない申立書」を作成したからといって初診日が証明できるわけではなく、証明するための添付書類が必要です。
添付書類としては次のようなものがあります。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者の保健福祉手帳
- 身体障害者手帳などの申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 交通事故証明書
- 労災事故証明書
- 会社の健康診断の記録
- 紹介状
- お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券
- 第三者証明書
上記のうち第三者証明とは「初診日に関する第三者からからの申立書のこと」をいいます。
ただし、第三者証明における第三者とは、三親等以内の親族以外の人で、隣人、友人、職場の同僚などです。
なお、第三者証明書は原則として2名以上に作成してもらうことが必要です。
しかし、申請者が初診日頃に受診していた病院の医師や、看護師などの医療従事者による第三者証明書であれば、1枚(1名)だけであっても認められます。
第三者証明で初診日を証明する場合、初診日が20歳以降にある場合は、第三者証明と併せて、初診日についての他の添付資料(診察券など)より、両資料の整合性を確認の上、総合的に判断されます。
ただし、「初診日が20歳前にある場合」のみ初診日の取り扱いが異なります。
<初診日が20歳前にある場合>
20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求に限り、初診日の証明が取れない場合であっても、明らかに20歳前に発病し、医療機関で診療を受けていたことを複数の第三者証明書を添付できるときは、請求者の申立ての初診日を認められます。
ただし、初診日が20歳前であっても、その初診日に厚生年金に加入していた期間である場合、障害厚生年金の支給対象になることから、20歳以降に初診日がある場合と同様の取り扱いとなります。
このように、受診状況等証明書(初診日の証明書)が取得できなくても、「受診状況証明書証明書が添付できない申立書」と複数の添付書類で初診日を証明できる可能性があります。
初診日の証明がよく分からない場合は、一度社労士といった障害年金に精通した専門家の方に相談してみましょう。
さいごに
今回は、障害年金の初診日の重要性や証明方法などについて解説しました。
障害年金の請求において、初診日の確定と証明は欠かせない重要なものです。
障害年金の申請の際にいつが初診日が分からない方は、ぜひ今回紹介した初診日の定義や、証明方法に該当するものがないかを確認してみてください。