障害年金の審査請求(再審査請求)について徹底解説

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障害年金の請求手続きを行っても、必ずしも受給できるとは限りません。

初診日が認められず「却下となってしまうケースや、障害等級に該当せずに「不支給」となってしまうケース、受給できたとしても予想よりも低い等級で判定されてしまうケースもあります。

今回は、そのような認定に納得できない場合に行う「不服申立て」について解説していきます。

手続きの流れを一つひとつ説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

不服申立てとは

「不服申立て」とは、障害年金の請求を行った際に結果が不支給であったり、認定等級が自分の認識より低いと感じたりした場合に行う手続きのことです。

不服申立ては「審査請求」と「再審査請求」の2段階になっています。

審査請求

まずは一審にあたる「審査請求」です。審査請求は、所在地を管轄する地方厚生局の社会保険審査官に対して行います。

審査請求は「口頭または文書で請求できる」とされていますが、通常は文書(審査請求書)で行われます。

なお、審査請求ができる期間は「処分があったことを知った日の翌日から3か月以内」と定められているので注意してください。

再審査請求

審査請求の結果に納得できない場合は、二審にあたる「再審査請求」が可能です。

審査請求は担当の社会保険審査官による独任制での審査ですが、再審査請求は審査委員長や複数の委員よって構成される「社会保険審査会」による合議制となります。

再審査請求ができる期限は「決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内」と定められています。

審査請求の必要書類

審査請求を行うには「審査請求書」が必要です。

審査請求書は、住所地を管轄する地方厚生局の社会保険審査官宛に電話をして取り寄せます。この時点では、不服のある内容についてとくに詳しく言う必要はありません。

審査請求書の様式は、地方厚生局のHPから印刷も可能です。

参考:関東信越厚生局

審査請求の流れ

障害年金の処分が決定されてから審査請求を行うまでの流れを確認していきましょう。

障害年金の処分決定(支給 or 不支給)

障害年金の申請から決定までの所要日数はおおむね3か月前後かかります。

認定されれば「年金証書」と「年金決定通知書」が届きますが、認定されなかった場合は「不支給決定通知書」が届きます。

決定に不服がある場合は審査請求

処分決定に不服がある場合は、審査請求書を提出して審査請求を行います。

すでにご説明のとおり、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に請求しましょう。

社会保険審査官から保険者へ通知

社会保険審査官は審査請求を受理すると、原処分をした保険者(厚生労働省年金局)にその旨の通知をします。

保険者はそれを受けて、原処分のもとになった書類と審査請求で提出された資料を検討し、意見書を作成して社会保険審査官に通知します。

この段階で保険者自らが最初の決定を変更するケースがあり(原処分変更)、審査請求人の主張がすべて認められた場合は審査請求を取り下げるかたちになります。

口頭意見陳述の開催(任意)

審査請求後、社会保険審査官に対して「口頭意見陳述」の開催を求めることができます。

口頭意見陳述には社会保険審査官のほか、保険者代理人(厚生労働省の事務官)が出席します。その場で直接意見を述べることや質問などが可能です。

保険者から得られる回答によってあらたな対策が立てられるなどのメリットもありますが、口頭意見陳述の開催はあくまで任意であるため、開催を求めないこともできます。

管轄の社会保険審査官による最終決定

ここまでの流れを踏まえ、その地域を管轄する社会保険審査官が審査を行い最終決定を下します。最終決定の内容は以下のいずれかです。

  • 容認…申請者の不服を認める
  • 棄却…申請者の不服を認めない
  • 却下…審査請求が適法ではないと判断された場合

審査請求をしてから決定までにかかる期間は、口頭意見陳述を行うかどうかによっても変わりますが、おおよそ4か月〜半年ほどかかると考えておきましょう。

再審査請求の必要書類

審査請求が棄却されたのち、続いて再審査請求を行う場合は「再審査請求書」が必要です。

再審査請求書も社会保険審査官に電話をして取り寄せるか、もしくは厚生労働省のHPから印刷可能です。

参考:(再)審査請求書等の様式

再審査請求の流れ

それでは、審査請求が棄却された後に再審査請求を行うときの流れを確認していきましょう。

社会保険審査官の裁決に不服がある場合は再審査請求

審査請求時の裁決に不服がある場合、社会保険審査会に対して再審査請求を行います。

請求できる期限は、前述のとおり決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内です。

社会保険審査会から保険者へ通知

この部分は、審査請求を行った時の流れと同様です。

審査請求を受理した社会保険審査会から原処分をした保険者に通知がいき、保険者は提出された資料を検討し意見書を作成します。

再審査請求の場合も、この段階で保険者自らが決定を変更する「原処分変更」の可能性があります。

原処分変更によって請求人の主張がすべて認められれば、通常は請求を取り下げることになり、この時点で再審査請求は終了となります。

公開審理の開催

審査請求と大きく異なる点が、再審査請求では「公開審理」が開催されることです。公開審理には以下の立場の方々が出席し、質疑応答などが行われます。

  • 再審査請求人や代理人
  • 社会保険審査会委員(審査長1名、審査員2名)
  • 保険者の代理人(事務官、医師)
  • 社会保険審査会参与複数名

なお、再審査請求をした本人や代理人の出席は任意です。

出席したほうが直接意見を述べられるなどのメリットはありますが、公開審理を欠席したことで不利になることはありません。

体調の問題などで難しければ、無理して出席する必要はありませんのでご安心ください。

社会保険審査会による裁決

公開審理が終わったのち、社会保険審査会より「裁決書」が届きます。裁決の内容は審査請求時と同様、「容認」「棄却」「却下」のいずれかです。

裁決書が届くまでの期間はケースバイケースであり、長いときには公開審理後4〜5か月ほどかかる場合もあります。

不服申し立て以外の方法

再審査請求でも「棄却」となってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。

ここでは、不服申し立て以外の方法についてご紹介します。

行政訴訟

再審査請求でも棄却となってしまった場合、行政訴訟という手段もあります。

従来は再審査請求まで行わなければ訴訟に持ち込むことはできませんでしたが、行政不服審査法の改正により、一審の審査請求の決定後であれば訴訟を提起することが可能となりました。

とはいえ、費用や労力などの面から訴訟を提起するハードルは高く、基本的には「審査請求→再審査請求」といった流れが通常となるしょ う。

事後重症請求・額改定請求・支給停止事由消滅届

そのほか、「事後重症請求」「額改定請求」「支給停止事由消滅届」などの手段も覚えておくとよいでしょう。

  • 事後重症請求…障害認定日時点では障害等級に該当しなかったが、その後症状が悪化して障害年金を請求する場合の手続き
  • 額改定請求…障害の状態が悪化した場合に、上位等級への変更を求める手続き
  • 支給停止事由消滅届…障害の状態が悪化した場合に、障害年金の支給再開を申請するもの

再審査請求で棄却された場合であっても、「事後重症請求」でやり直しが可能です。

また、障害等級に不服がある場合は「額改定請求」、支給停止となった場合は「支給停止事由消滅届」といった方法があります。

さいごに

今回は、不服申し立てを行う際の審査請求・再審査請求の手続きについて解説しました。

不服申し立てを行う場合は、当然ですが「原処分のどこが不当なのか」「その根拠は何か」などの点をはっきりさせておく必要があります。

けっして簡単な手続きではありませんので、難しいと感じる方は専門の社労士にご相談することをおすすめいたします。