障害年金が支給停止となるケースとは?支給再開方法は?支給停止から再開方法までを徹底解説

障害年金は一度支給が決定すると、ずっともらい続けることができるわけではなく、支給停止となるケースもあります。

しかし、どのようなケースになると、支給が停止になるのか不安になる方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、障害年金が支給停止となるケースと支給再開の手続き、更新の手続きなどについて解説します。

障害年金の支給停止や更新でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

障害年金が支給停止となるケースとは?

障害年金が支給停止となってしまうケースは主に3つあります。

まずは、どのようなケースで支給停止となるのかについて詳しく解説します。

障害の程度が軽くなったことによる支給停止

障害年金は障害の状態により「永久認定」「有期認定」に分かれています。

永久認定の場合は更新の必要はありません。

一方、有期認定の場合は一定期間(1年〜5年)が経過するごとに、「障害状態確認届」を提出して現在の障害状態について審査を受けることが必要です。

審査の結果、これまでより障害の状態が軽くなったと判断された場合、障害年金が支給停止となってしまうことがあります。

特に、更新の診断書(障害状態確認届)を作成した医師が前回と違う場合は注意が必要です。

これは医師によって診断基準が異なるため症状の評価や記載の仕方が変わってしまう可能性があるためです。

そのため、医師から障害状態確認届を受け取った際は、内容を確認して記載内容に矛盾がないかをできるだけ確認しましょう。

所得額による支給停止

通常、障害年金には所得額の制限はありません。

しかし、20歳前傷病による障害基礎年金を受給する場合、所得額によって障害年金が支給停止、もしくは一部支給停止となります。

20歳前傷病による障害基礎年金とは、20歳前の年金に加入していない期間に初診日のある方が対象となる障害基礎年金のことです。

20歳前傷病による障害基礎年金の受給者は、障害年金の加入要件である保険料納付要件が問われないため、所得額の制限が設けられているのです。

障害厚生年金の場合

初診日が20歳前でも、厚生年金加入中で保険料納付要件を満たせば、通常の障害厚生年金の対象となります。

所得制限は前年の所得額が下記の限度額を超えた場合、年金の全部または一部が支給停止となります。

所得(年収) 所得制限
3,704,000円超 制限なし(全額支給)
3,704,001円〜4,721,000円 半額支給停止
4,721,000円超 全額支給停止

参照:日本年金機構

支給停止となる期間は、10月から翌年9月までの1年間です。

また、20歳前傷病による障害基礎年金の受給者は、所得額の制限以外にも以下のケースも支給停止となります。

  • 刑務所など矯正施設に入所したとき
    (※未決拘留中の人は有罪が確定されるまで支給停止になりません)
  • 海外に居住しているとき

上記のケースは全額支給停止となります。

就労状況による支給停止

基本的に障害年金は働きながらでも受給することが可能です。

しかし、精神障害や神経系統・がん・難病などの内科的疾患は、就労状況によっては支給停止となるケースもあります。

精神障害や内科的疾患には、重度さを表す数値的な指標がないため、日常生活能力や就労状況などで総合的に障害等級が判断されます。

特に、新規申請時には就労していなかった方が、更新時点で就労していた方は就労状況によっては障害年金が支給停止となってしまうため注意が必要です。

ただし、障害者雇用など周囲の援助や配慮がある場合は、フルタイム就労でも障害年金を継続できる場合もあります。

したがって、精神障害や内科的疾患などを持ちながら就労している方は、就労支援、障害者雇用などの現状を診断書に正確に記載してもらうことが重要です。

障害年金の支給再開の手続き

障害年金は支給停止となっても、申請すれば支給が再開されるケースもあります。

そこでここからは、障害年金の支給再開の手続きについて解説します。

審査請求を行う

障害年金の更新の結果、障害年金が支給停止になったものの、審査結果に不服がある場合は「審査請求」を行えます。

審査請求を行う場合は、結果を知った日の翌日から3ヶ月以内にする必要があります。

3ヶ月を超えてしまうと審査請求は原則認められないため、審査請求を行う場合は早めに手続きを進めましょう。

審査請求でも支給停止が再開されなかった場合、再度不服を申し立てられる「再審査請求」を行うことができます。

なお、再審査請求は決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヶ月以内に「社会保険審査会」に対して行わなければなりません。

審査請求・再審査請求についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

審査請求・再審査請求はご自身で行うこともできますが、審査結果を覆すためには参考資料などの準備など非常に難しいです。

そのため、障害年金が支給停止となり悩まれている方は、社労士といった専門家にまずは相談することをおすすめします。

支給停止事由消滅届を提出する

障害年金が支給停止となっても、すぐに障害年金の受給権利が消滅してしまうわけではありません。

ただ止まっているだけの状態のため「支給停止事由消滅届」を提出して、支給再開を求めることができます。

支給停止事由消滅届の提出は、停止されてから提出までの期間の制限がないため、支給停止になったことを知ってすぐに手続きを行うことが可能です。

支給再開を求める場合、支給停止事由消滅届と診断書を提出する必要があります。

ただし、更新時と同じ内容の診断書を提出しても認めてもらえない可能性が高いです。

したがって、新たに診断書の作成を依頼する場合は、支給停止になった旨を主治医に伝えた上で、ご自身の現在の障害状態を再度分かりやすく説明し、相談することが大切です。

所得状況届の提出を行う

20歳前傷病による障害基礎年金の受給者は、毎年「所得状況届」の提出によって前年の所得が確認され、所得制限の対象かどうかが判断されます。

万一、所得制限によって支給が停止された場合、所得状況届の提出により前年の所得が減ったことが確認されれば自動的に障害年金の支給が再開されます。

所得状況届について

日本年金機構が市区町村から所得情報を受け取ることができることになったため、原則、所得状況の提出は必要なくなりました。

 

ただし、前年分の所得情報を受けられないときは、所得状況届の提出が必要となるため、ハガキが届いた際は忘れずに提出しましょう。

支給額変更の場合

障害年金の更新の結果、支給停止ではなく、元々2級だったものが3級、1級だったものが2級などの等級変更となる場合もあります。

等級変更による支給額変更で年金額が減ってしまった場合は「支給停止事由消滅届」の提出はできません。

これは等級変更の場合、支給額が減ってしまっただけで障害年金が支給停止となったわけではないためです。

そのため、支給額変更の場合は審査請求の他に、「額改定請求」を行えます。

額改定請求とは、障害年金の受給権がある方が上位の等級への変更を請求することです。

ただし、額改定請求は前回の審査から1年経過していないと請求ができないため、いずれにしても更新手続きは慎重に行うことが重要です。

障害年金の更新について

最後に、障害年金の更新時期や必要書類などについて解説します。

更新の時期

障害年金の更新時期は、明確に決まっているわけではありません。

障害の種類や症状によって、1年〜5年の間に更新時期がきます。

更新時期になると、誕生月の3ヶ月前に日本年金機構から「障害状態確認届(診断書)」が届きます。

障害状態確認届を医師に記載してもらった上で、誕生日月の末日までに提出が必要です。

更新に必要な書類

障害年金の更新時に必要な書類は「障害状態確認届」だけです。

ただし、更新の際はこの障害状態確認届の記載内容のみで審査されます。

障害状態確認届の記載内容によっては、病状に変わりがなかったり、悪化していたりするにもかかわらず、等級が下がったり、支給停止になったりすることも少なくありません。

そうならないためにも、障害状態確認届作成を依頼する際は、障害年金請求時と同様にご自身の現在の病状を医師に詳しく伝えて、理解してもらうことが重要です。

更新の流れ

障害年金の更新の流れは以下の通りです。

1.障害状態確認届がご自宅に到着

更新する年の誕生月3ヶ月前の月末に、日本年金機構より障害状態確認届(診断書)が送付されます。

2.診断書を作成

主治医と相談しながら診断書(障害状態確認届)を作成してもらいます。

3.障害状態確認届を提出

誕生日月の末日までに障害状態確認届を日本年金機構に提出します。

4.提出後約3ヶ月で結果が到着

障害等級に変更がない場合:「次回診断書提出年月のお知らせ」というハガキが郵送されます。

障害等級が変わる場合:「支給額変更通知書」が届きます。

支給停止の場合:「支給停止のお知らせ」が郵送されます。

更新時の注意点

障害年金の更新で障害状態確認届が遅れたり、記載内容に不備がある場合、年金の支払いが一時止まります。

これを「差し止め」といいます。

しかし、差し止めとなった場合でも、さかのぼって診断書を提出して障害状態が認定されれば、差し止めになったところから年金の支給が再開されます。

また、更新で障害等級が変更となった場合、等級が上がったケースと等級が下がる、もしくは支給停止となるケースとで、変更する月が異なるため注意が必要です。

具体的には、更新で等級が上がった場合は、誕生月の翌月分から支給額が変更となります。

一方、更新で等級が下がったり支給停止になる場合は、誕生月の4ヶ月目分から支給額が減額、または支給停止となります。

例えば、誕生月が1月の場合、5月分から支給額が変更となります。

さいごに

今回は障害年金が支給停止となるケース、支給再開手続き、更新について詳しく解説しました。

障害年金が支給停止となるケースは主に以下の3つのケースです。

  • 障害状態が軽くなったことによる支給停止
  • 所得額による支給停止
  • 就労状況による支給停止

しかし、万が一更新時に支給停止となった場合でも、支給を再開させる方法もあります。

もし、障害年金が不支給となって悩んでいる方は、ひとりで悩まずに社労士といった専門家に相談しましょう。