障害年金の確定申告はいくらから必要?

障害年金を受け取っている方の中には、確定申告が必要かどうか心配な方も多いのではないでしょうか?

結論からいうと、障害年金は非課税所得にあたるため、確定申告は基本的に必要ありません。

しかし、障害年金以外に収入がある場合、確定申告が必要なケースもあります。

そこで今回は、障害年金の確定申告が必要なケースや社会保険の扶養、障害者控除などについて解説します。

障害年金の確定申告は原則不要

冒頭でもご説明したとおり、障害年金は非課税所得なので収入が障害年金だけの場合は、確定申告は原則不要です。

また、非課税所得のため、所得税や住民税もかかりません。

ただし、住民税は前年の所得を基準に税額が決まるため、前年に所得税を納めている場合は、現在、障害年金以外の収入がなくても住民税が課税されます。

障害年金の確定申告はいくらから必要?

障害年金の受給者に給与収入や不動産収入、事業収入などの障害年金以外の収入がある場合は、確定申告が必要です。

ただし、給与収入・障害年金以外の収入が38万円までであれば、基礎控除が38万円あるため確定申告は必要ありません。

つまり、障害年金以外に給与収入や不動産収入などの収入が38万円を超える場合、確定申告が必要になります。

また、源泉徴収されていない株や有価証券の収入がある場合は、これも合わせて給与収入・障害年金以外の収入が38万円を超える場合も確定申告が必要です。

一方、株や有価証券の売買による収入について、特定口座による取引で源泉徴収がされている場合は、すでに税金が引かれているため確定申告は不要です。

障害年金を受給していると扶養から外れる?

社会保険(健康保険)の扶養については、非課税所得である障害年金も収入とみなされます。

そのため、扶養に入れる基準よりも障害年金とその他の収入を含めた収入が上回っていた場合は、扶養から外れるため注意が必要です。

原則、健康保険の被扶養者の要件は「被保険者と同一世帯に属している場合は、130万円未満であること」となっています。

しかし、「60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者(1〜3級)」の場合は、その額が180万円未満となります。

つまり、1〜3級の障害年金の受給者の場合、障害年金とその他の収入を合わせた年収が180万円以下であれば扶養から外れることはありません。

このように、障害年金の受給者は、一般的な世帯よりも扶養の加入要件が緩和されています。

扶養から外れた場合

万一、扶養の規定を超える収入があった場合は、健康保険組合や日本年金機構に問い合わせて、社会保険の切り替えを行うことが必要です。

扶養を外れる場合、まず世帯主が勤める企業に扶養者が減ることを申請し、被扶養者だった方は、勤務先で健康保険に加入できるかを確認しましょう。

加入できる場合は「健康保険」に加入し、加入できない場合はご自身で「国民年金」と「国民健康保険」に加入が必要です。

なお、国民年金と国民健康保険に加入する場合は、扶養から外れた日から14日以内に市役所などで手続きを行いましょう。

さらに、国民年金をご自身で加入する場合、国民年金保険料の支払い義務も発生します。

しかし、障害等級1級または2級の障害年金を受給している場合は、「法定免除」を受けることが可能です。

法定免除については以下の記事をご参考ください。

法定免除とは|障害年金を受給すると国民年金保険料が免除になる?

確定申告で「障害者控除」を受けられる可能性も

障害年金の受給者本人や配偶者、扶養親族に障害がある場合、確定申告時に「障害者控除」を受けられる可能性があります。

ここからは、障害者控除について詳しく解説します。

障害者控除とは

障害者控除とは、納税者本人または、扶養している家族等が所得税法上の障害者に該当する場合、一定の控除を受けられる制度のことです。

確定申告や年末調整で「障害者控除」を申請することで、所得税や住民税の納付額を減額させることができます。

障害者控除の対象者

障害者控除を受ける対象者は原則、障害者手帳が交付された方のみです。

具体的には、以下のいずれかの要件に該当する場合、障害者控除の対象となります。

なお、障害者控除は大きく分けて、「障害者」と障害の度合いがより重い「特別障害者」の2種類の区分があります。

【障害者控除の対象者】

  • 精神上の障害により自ら有効な意思表示ができない方
  • 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保険指定医の判定により、知的障害者と判定された方
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方
  • 身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている方
  • 65歳以上で、市町村長や福祉事務所長などに精神または身体に障害があると認定されている方
  • 戦傷病者手帳の交付を受けている方
  • 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている方
  • その年12月31日時点で引き続き6ヶ月以上、身体障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護を必要とする方

【特別障害者の対象者】

  • 精神上の障害により自ら有効な意思表示ができないすべての方
  • 重度の知的障害者と判定された方
  • 精神障害者保健福祉手帳の等級が1級の方
  • 身体障害者手帳1〜2級の交付を受けている方
  • 市町村や福祉事務所長などに特別障害者に準ずるものとして認定を受けている方
  • 障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの方
  • 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けているすべての方
  • その年12月31日時点で引き続き6ヶ月以上、身体障害により寝たきりの状態であり、複雑な介護を必要とするすべての方

参照:国税庁障害者控除

障害者控除の控除額

障害者控除の控除額は一律ではなく、以下のように障害の区分によって控除額が異なります。

区分 所得税(控除額)
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者 75万円

障害の度合いが重度の「特別障害者」に指定された場合は、通常の障害者控除よりも高い控除額になります。

また、同じ家計で生活している配偶者や扶養親族と同居している特別障害者は「同居特別障害者」に該当し、さらに控除額が多くなります。

参照:国税庁障害者控除

障害者控除以外にも受けられる特例

障害者本人や障害者を扶養している家族は、障害者控除以外にもさまざまな特例を受けることが可能です。

最後に、障害者控除以外にも受けられる特例について解説します。

障害者本人が受けられる特例

まずは、障害者本人が受けられる特例についてみていきましょう。

・相続税の障害者控除

相続税の障害者控除とは、満85歳未満の障害者が相続人となる場合、相続税から一定の金額を差し引くことができる控除制度です。

控除額は相続人対象となる方の年齢が85歳に達するまでの年数に、一般障害者は10万円、特別障害者のときは20万円をそれぞれ乗じて計算します。

具体的な計算式は次のようになります。

相続税の障害者控除の計算式

【一般障害者】

10万円×(85歳-相続開始時の年齢)=控除額

【特別障害者】

20万円×(85歳-相続開始時の年齢)=控除額

計算例

例えば、相続開始時点で60歳2ヶ月の相続人が一般障害者の場合、以下のように計算します。

 

満85歳になるまでの年数:85歳-60歳2ヶ月=25年10ヶ月→26歳に切り上げ(※)

 

障害者控除の控除額:26歳×10万円=260万円(控除額)

 

※年数の計算で1年未満の期間があるときは、切り上げて1年として計算します。

上記の例の場合、260万円が相続税の障害者控除額となります。

・特定障害者に対する贈与税の非課税

特定障害者の方は「贈与税」が非課税になる場合があります。

一定の信託契約に基づいて特定障害者の方への財産の信託があったとき、その受け取る財産のうち、一定額までは贈与税がかかりません。

非課税限度額は、障害の程度によって以下のように異なります。

主な障害の程度 非課税となる贈与額の上限
精神障害者2級〜3級 3,000万円
精神障害者1級 6,000万円

※身体障害者は対象外です。

・心身障害者扶養共済制度

心身障害者扶養共済制度の掛金は、全額所得控除されます。

また、この給付金を受ける権利を相続や贈与によって取得したときも、相続税や贈与税の対象にならないことが定められています。

・少額貯蓄の利子等の非課税

通常、銀行の定期預金や普通預金などで発生した利息には、20.315%の税金がかかります。

しかし、障害年金の受給者や障害者手帳の交付を受けている方は、銀行にお金を預けていても利息が非課税になります。この制度を通称、「マル優」と呼びます。

なお、マル優には「普通マル優」「特別マル優」の2種類があり、非課税対象となる金融商品によって種類が異なります。

普通マル優の対象商品は幅広く、預貯金、信託銀行に預ける合同運用指定金銭信託、証券会社で投資できる公社債投資信託、公社債などが対象です。

一方、特別マル優は、国債と地方債(都道府県などの地方公共団体が発行する債権)に限定されています。

それぞれの具体的な非課税限度額は次の通りです。

控除種類 非課税限度額
マル優 350万円
特別マル優 350万円

上記の通り、マル優と特別マル優を合わせて利用すれば、最大700万円までの利息を非課税で受け取ることが可能です。

障害者を扶養している家族が受けられる特例

続いて、障害者を扶養している家族が受けられる特例についてご説明します。

所得税の障害者控除

同一生計配偶者または扶養親族が障害者のときは、障害者控除として1人につき27万円(特別障害者のときは40万円)が確定申告において所得金額から控除されます。

また、障害者控除の扶養親族には年齢制限が設けられていないため、16歳未満の扶養親族でも障害者控除を受けることが可能です。

特別障害者と同居している場合

納税者自身や配偶者などと生計を一にし、同居している配偶者や扶養親族が特別障害者のことを「同居特別障害者」といいます。

同居特別障害者の場合、所得金額から障害者控除として75万円が控除されます。

さいごに

今回は障害年金の確定申告や障害者控除について詳しく解説しました。

障害年金は非課税所得のため、確定申告は原則必要ありません。

しかし、障害年金以外に給与収入や事業収入などがあり、障害年金と年金以外の収入と合わせて年間180万円以上の収入がある場合は、確定申告が必要です。

なお、確定申告をする際は、要件に該当すればさまざまな障害者控除を受けることが可能です。

障害年金の確定申告について疑問や不安がある場合は、お近くの年金事務所または社労士に相談することをおすすめします。