日本に住むすべての20歳以上60歳未満の人は、国民年金に加入する義務があります。
しかし、病気やケガが原因で障害年金を受給することになった場合、国民年金保険料が免除されることをご存知でしょうか?
そこで今回は、障害年金と国民年金保険料の関係、免除のメリット・デメリットなどについて解説します。
障害年金を受給中で国民年金保険料の免除について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
障害年金が2級以上に認定された場合、国民年金保険料が免除に
障害等級1級、2級の受給者は、国民年金保険料が全額免除されます。これを「法定免除」といいます。
一方、障害等級3級の場合は、法定免除の対象ではないため、国民年金保険料の納付が必要です。
しかし、法定免除の対象外であっても経済的に納付が困難な場合は、後述する国民年金保険料の「免除申請」を申請することが可能です。
免除期間は国民年金保険料を納付した扱いとなりますが、保険料を半額支払ったみなされて計算されるため、将来受け取る老齢年金は減額されます。
もちろん、将来老齢年金を満額受け取りたい場合は、法定免除を申請せずに国民年金保険料を支払い続けることも可能です。
続いて、いつから免除が開始されるのかについてと、障害年金を遡求請求をした場合の法定免除についてご説明します。
障害認定日を含む前月の保険料から免除される
国民年金保険料が免除になる期間は、障害年金の受給権を取得した日の属する月の前月分からです。
なお、審査の結果が出るまで保険料を納付していた場合は、払い過ぎていた分をさかのぼって返還されます。
遡求請求した場合、還付金を受け取れる
障害年金を遡求請求をした場合、国民年金保険料も過去にさかのぼって「法定免除」されます。
ただし、障害年金は時効により最大5年分までしか請求できませんが、保険料は5年以上さかのぼって請求することが可能です。
例えば、10年前を認定日として障害年金の遡求請求が認められた場合、5年前より以前の障害年金については時効となり、受け取ることができません。
しかし、法定免除については10年分の請求ができるため、本来免除分であった納付済みの国民年金料が還付されます。
申請免除について
先ほど障害等級3級の方は、法定免除の対象にはならないと説明しましたが、「申請免除」をすれば保険料の免除を受けられる可能性もあります。
申請免除とは、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下である場合、または失業した場合に申請できるものです。
本人が申請書を提出して承認された場合は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類から選定されて、保険料が免除されます。
所得条件は以下の通りです。
免除内容 | 所得条件 |
全額免除 | <(扶養親族の数+1)×35万円+32万円>以内 |
4分の3免除 | <88万円+扶養親族控除額+社会保険料控除額等>以内 |
半額免除 | <128万円+扶養親族控除額+社会保険料控除額等>以内 |
4分の1免除 | <168万円+扶養親族控除額+社会保険料控除額等>以内 |
また、20歳から50歳未満で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合、本人が申請書を提出して承認された場合、保険料の支払いが猶予されます。
これを「保険料納付猶予制度」といいます。
保険料納付猶予制度の所得条件は上記の表の「全額免除」と同じです。
なお、申請免除も保険料納付猶予制度も法定免除とは異なり、免除されるのは申請の翌月からとなります。
したがって、条件に該当する場合は、早めに申請免除を行うようにしましょう。
国民年金保険料の免除手続き方法
障害年金1級、2級に認定されると自動的に国民年金保険の全額免除になるわけではなく、自治体に申請が必要です。
免除の申請方法は「国民年金保険料免除理由該当届」と、障害年金の年金証書を市町村役場の年金課もしくは、年金事務所の国民年金課に提出します。
自治体によっては郵送で手続きができることもあるため、事前に確認しておきましょう。
国民年金保険料の免除は、一度申請すれば障害年金の支給が止まらない限り、受け続けることができます。
また、障害等級1級、2級から3級に等級が変わった場合、3年間は法定免除は継続します。
法定免除についてより詳しく知りたい方は、日本年金機構の法定免除制度をご参考ください。
国民年金保険料の免除を受けた場合のメリット・デメリット
続いて、国民年金保険料の免除を受けた場合のメリット・デメリットについて解説します。
デメリット
冒頭でも述べたとおり、法定免除期間は保険料を2分の1納付しているとみなされて計算されます。
したがって、保険料を全額納付していた場合と比べると、老齢年金の額が減額されてしまいます。
以下に、40年間保険料を全額支払った場合と、40年間全額免除を受けた場合の老齢基礎年金額をまとめたので、目安として参考にしてみてください。
【老齢基礎年金額】
国民年金保険を40年間納付した場合 | 40年間全額免除を受けた場合 |
816,000円 | 408,000円 |
メリット
国民年金保険料の免除を受けた場合のメリットとしては、保険料を半額支払ったことになるので、未納よりも老齢年金額の受給額が増えることです。
基本的に、会社員や公務員は年金保険料が給与から天引きされるため、未納になることはありません。
しかし、自営業者や無職の方は、毎月自分で年金保険料を納める必要があり、支払い忘れや支払いが難しく未納になってしまうことも少なくありません。
万一、未納期間が続くと、差し押さえや国から強制的に保険料を徴収されるだけでなく、将来受け取れる年金額も減額されてしまいます。
したがって、障害年金の受給者で国民年金の保険料を支払うことが困難な場合は、法定免除を受けるようにしましょう。
また、免除期間中に、現在受給している障害年金の対象疾患とは別に新たな障害が発生した場合、保険料納付要件を満たしていることになるため、障害年金を新たに受給することが可能です。
さらに、未納期間は2年間しか追納ができませんが、全額免除期間は10年間さかのぼって追納ができます。
追納をおすすめする人
原則として、障害基礎年金と老齢基礎年金は同時に受け取れません。
したがって、障害年金の受給者が老齢年金の受給権が発生した場合は、どちらか一方の年金を選択する必要があります。
老齢基礎年金の金額は40年全額保険料を納めていた場合は、816,000円です。
一方、障害基礎年金額は、2級が816,000円、1級が1,020,000円です。
ほとんどの方は、障害基礎年金の方が金額が高くなる上に、非課税なので税金面においても障害基礎年金を選ぶことが多いです。
ただし、障害年金が有期認定の場合は、更新のタイミングで障害年金の支給が止まってしまう可能性もあります。
永久認定の方の場合は更新する必要がないため、保険料の全額免除申請を受けた方がいいでしょう。
しかし、有期認定されている方は、障害年金がいつ止まってもいいように備える必要があります。
そのため、65歳になり障害年金ではなく、老齢基礎年金を受給することになった場合に備えて、経済的に余裕があるときに追納しておくことをおすすめします。
さいごに
今回は障害年金受給者の国民年金保険料の免除について解説しました。
障害等級2級以上に認定された場合、手続きを行えば国民年金保険料の法定免除を受けることができます。
障害等級3級の方は、法定免除を受けることができませんが、一定の要件を満たしてれば申請免除を申請することが可能です。
ただし、どちらの免除制度も免除を受けるには必ず申請手続きが必要です。
今回紹介した免除を受けるメリット・デメリットをよく理解した上で、免除申請を行う場合は市区町村への申請手続きを忘れずに行いましょう。