2019年10月の消費税の引き上げ分を活用して、新たに「年金生活者支援給付金制度」が始まりました。
この制度は各種年金を受給している人のうち、所得が一定額以下の人に対して、生活を支援するための給付金です。
しかし、数年前に始まったばかりの制度のため、「どのような制度なのかよく分からない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、年金生活者支援給付金の支給要件や給付額、手続き方法などについてわかりやすく解説します。
目次
年金生活者支援給付金とは?
年金生活者支援給付金とは、受給している公的年金を含めても所得が一定額以下の方を対象に、年金にプラスして支給される給付金です。
年金生活者支援給付金には、老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金、障害年金生活者支援給付金、遺族年金生活者支援給付金の3種類があります。
3つの年金生活者支援給付金の支給要件と給付額
ここからは、老齢、障害、遺族年金生活者支援給付金のそれぞれの支給要件について解説します。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
老齢年金生活者支援給付金を受け取るためには、次のすべての要件を満たしていることが必要です。
- 65歳以上の老齢基礎年金受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村税非課税であること
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が881,200円以下であること
なお、老齢基礎年金は請求をすれば、65歳前であっても年金を受け取れる繰り上げ請求がありますが、老齢年金生活者支援給付金は65歳になってからしか受け取れません。
「前年の公的年金等の収入金額」には、障害年金や遺族年金をはじめとした非課税収入は含まれません。
続いて、老齢年金生活者支援給付金の給付額についてみていきましょう。
老齢年金生活者支援給付金の給付額は、保険料納付済期間と保険料免除期間によって変わります。
具体的には、月額5,020円を基準に以下の①と②の合計額が支給されます。
【老齢老齢年金生活者支援給付金の給付額】
①保険料納付済期間に基づく額(月額)
=5,020円(※1)×保険料納付済期間(月数)÷480月
②保険料免除期間に基づく額(月額)
=10,802円(※2)×保険料免除期間(月数)÷480月
(※1)5,020円は毎年物価に応じて改定されます。
(※2)10,802円は、保険料全額免除、4分の3免除、半額免除の対象で、保険料4分の1免除期間の場合は、約5,401円になります。
なお、老齢年金生活者支援給付金が支給されると、支給されなかった人の年金額よりも年金+給付金の合計が大きくなるという逆転現象が生じてしまいます。
これを防ぐために、前年の収入が78万1200円を超え、88万1200円以下である方には、補足的に給付を行う「補足的老齢年金生活者支援給付金」の対象となります。
補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は、次の通りです。
【補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額】
(5,020円×保険料納付済期間の月数÷480)×調整支給率
支給率は対象となる方の所得によって変動しますが、所得が増えるほど給付額が減額するようになっています。
障害年金生活者支援給付金
障害年金生活者支援給付金は、次の2つの要件を満たしている方が対象です。
- 障害基礎年金の受給者であること
- 前年の所得が「472万1,000円+扶養親族の数×38万円以下(変動あり)」であること
なお、前年の所得には、障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません、
また、「38万円」の部分は、誰が扶養親族かによって金額が変わります。
- 同一生計の配偶者が70歳以上または老人扶養親族の場合は48万円
- 特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族がいる場合は63万円
障害年金生活者支援給付金の給付額は、障害等級によって以下のように金額が異なります。
障害等級2級 | 月額5,020円 |
障害等級1級 | 月額6,275円 |
障害年金生活者支援給付金についてはこちらの記事も併せてご参考ください。
遺族年金生活者支援給付金
遺族年金生活者支援給付金は、次の2つの要件を満たす方が対象です。
- 遺族基礎年金の受給者であること
- 前年の所得額が「472万1,000円+扶養親族の数×38万円以下(変動あり)」であること
2つ目の要件は、障害年金生活者支援給付金の要件と同様に、計算式にある「38万円」の部分は、扶養親族によって変動します。
遺族年金生活者支援給付金の給付額については、月額5,020円です。
ただし、2人以上の子どもがいて、それぞれが遺族基礎年金を受給している場合は、それぞれの子どもに5,020円を子の数で割った金額が支払われます。
年金生活者支援給付金はいつまでもらえる?
年金生活者支援給付金は、恒久的な制度なので、支給要件を満たす限り、年金と併せて毎年継続して受け取ることが可能です。
ただし、支給要件が外れた場合は、給付金は自動的に支給されなくなります。
その場合、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が送られてくるためすぐに確認することが可能です。
年金生活者支援給付金の手続き方法について
年金生活者支援給付金は、年金と同様に自分で請求手続きを行わなければ受け取れません。
ただし、年金生活者支援給付金の手続きについては、すでに年金を受給している方とこれから年金を受給する方で異なります。
最後に、それぞれの手続き方法について解説します。
すでに年金を受給している方
所得額が前年より低下したことなどにより、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となる方には、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」が送られてきます。
年金生活者支援給付金請求書に、氏名・生年月日・マイナンバーなど、必要事項を記入してポストに投函すれば手続きは完了です。
これから年金を受給する方
これから年金を受給する方の場合、年金の裁定請求手続のタイミングで給付金の手続きも行います。
裁定請求とは、年金の受給権を持つ人が年金の支払いを請求する手続きのことです。
老齢基礎年金の場合、支給開始年齢が近づくと裁定の手続き案内と給付金の書類が送られてくるため、受け取ったら手続きを行います。
障害基礎年金や遺族基礎年金を新規で請求する場合は、年金の裁定手続きを行う際に年金生活者支援給付金の請求書を提出する必要があります。
詳しい手続き方法については、日本年金機構の年金生活者支援給付金のお知らせをご参考ください。
次年度以降は更新は不要
支給要件を満たす限り、2年目以降の手続きは不要です。
自動的に更新されて、引き続き給付金を受け取ることができます。
さいごに
年金生活者支援給付金は、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類の公的年金の受給者のうち、所得が一定額以下の方々を対象とする給付金です。
給付金の支給要件や給付額は、受給している年金の種類によって変わるため、いずれかの年金を受給している方は、こちらの記事で解説した要件を確認してみてください。
年金生活者支援給付金は、年金と同様に自分で請求する必要があるため、もし、条件に該当する場合は、忘れずに請求しましょう。