障害年金と児童扶養手当は同時にもらえる?児童手当との違いも解説

ブタの貯金箱と子供

児童扶養手当が令和3年に改正されたことをご存知でしょうか。

令和3年の改正により障害基礎年金等を受給中でも、児童扶養手当が一部受け取れるようになりました。

「児童扶養手当をもらっているけれど、障害基礎年金と一緒にもらえるのかな」

「児童扶養手当はいくらぐらいもらえるんだろう」

こんな疑問をお持ちの方も多くいらっしゃいます。

そこで、この記事では障害基礎年金と児童扶養手当をご紹介します。

この記事でわかること

・障害年金の基礎知識
・児童扶養手当とは
・児童手当との違い
・児童扶養手当の令和3年改正のポイント
・障害基礎年金と児童扶養手当の併給調整


障害基礎年金と児童扶養手当についてわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

障害年金とは

まず障害年金について解説します。

障害年金は国が運営する年金保険で、けがや病気で仕事や生活に制限を受けるようになった際に一定の要件を満たすと年金として支給されます。

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類がありますが、児童扶養手当との調整に関係するのは障害基礎年金です。

この記事では障害基礎年金を解説します。

障害基礎年金の基礎知識

障害基礎年金の受給には、下記の3つの要件を満たすことが必要です。

①初診日要件
・障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金か厚生年金に加入中である
・20歳前または日本在住の60歳以上65歳未満の人で年金制度に加入していない

②保険料納付要件
年金の保険料を一定期間以上納付していること
※ 20歳前に初診日がある場合は納付要件は問われない

③障害状態要件
障害認定日もしくは現在、障害の状態が障害等級表に定める1級または2級に該当していること

ご自身が上記3つの要件を満たしているかの判断が難しい場合には、障害年金専門の社労士や年金事務所、街角の年金相談センターへご相談ください。

参考:全国の相談・手続き窓口(日本年金機構)
参考:街角の年金相談センター一覧(全国社会保険労務士会連合会)

障害基礎年金の年金額(令和5年4月分から)


【1級】

昭和31年4月2日以後生まれ993,750円 + 子の加算額※
昭和31年4月1日以前生まれ990,750円 + 子の加算額※


【2級】

昭和31年4月2日以後生まれ795,000円 + 子の加算額※
昭和31年4月1日以前生まれ792,600円 + 子の加算額※


【子の加算額】

2人まで1人につき228,700円 
3人目以降1人につき76,200円

※「子の加算額」は、障害基礎年金を受けている方に生計同一の子がいるときに加算
※「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子

児童扶養手当との併給調整では、支給される障害基礎年金全額ではなく「子の加算額」と児童扶養手当の支給額を比べます

併給調整については後ほど具体的にご紹介します。

障害年金についてさらに詳しく知りたい方は、下記の関連記事をご覧ください。

年金手帳と電卓障害年金とは【専門家がわかりやすく解説します】

参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)

児童扶養手当はひとり親世帯向けの制度

児童扶養手当とは、離婚や死別等により父または母と暮していない18歳までの子を監護・養育している方(ひとり親、養育者)に支給される手当です。

児童扶養手当を受給すると就学援助(給食費や学用品)が受けられるほか、JRの通勤・通学定期券が3割引で購入できます。

また、児童扶養手当と間違えやすい制度に「児童手当」があげられます。

いずれも国や自治体が費用を負担し子育て世帯へ手当を支給していますが、両制度では支給対象者や支給される子の年齢が違います。

児童扶養手当と児童手当の違いについて、次章でご紹介します。

参考:就学援助(名古屋市)
参考:ひとり親家庭の方などへの手当の詳細(千葉市)
参考:児童扶養手当について(厚生労働省)

児童手当との違い

児童手当は、中学校を卒業するまでの児童を養育している家庭が受け取れる手当です。

児童扶養手当との違いを表にまとめました。

児童手当児童扶養手当
目的家庭生活の安定と児童の健やかな成長に資するひとり親家庭の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童の福祉の増進を図る
支給対象者・中学校卒業までの児童を養育している人
・施設入所や里親に委託されているときは、施設の設置者や里親
・18歳までの子を養育しているひとり親
・父母がおらず代わって養育している場合は、養育している人
支給年齢0歳~15歳18歳まで
※一定の障害状態のある子は20歳まで支給される
支給額5,000円~15,000円3,310円~44,140円

児童手当は、中学卒業までの児童を養育しているすべての親を対象としています。
一方で、児童扶養手当は「ひとり親」が支給対象です。

支給の要件を満たせば児童扶養手当と児童手当を同時に受給できるため、中学生以下の子がいるひとり親世帯では両方の手当を受給できるケースもあります。

いずれの手当も申請手続きをしないと受給できません。自分が受給できるかはお住いの役所へお問い合わせください。

参考:児童手当のご案内(内閣府)

児童扶養手当をもらえる人

児童扶養手当の支給対象者は、日本に在住の18歳以後の最初の3月31日までの児童を監護しているひとり親です。

例外として、子の心身に一定の障害がある場合は20歳未満まで支給されます。
また、父母がおらず代わって養育している人がいれば、その人が支給対象者となります。

ひとり親は離婚や死別だけではなく、下記の場合でも「ひとり親」と認められます。

  • 父または母に重度の障害がある
  • 父または母の生死が明らかでない
  • 父または母から1年以上遺棄されている
  • 父または母がDV保護命令を受けている
  • 父または母が一定期間以上拘禁されている
  • 父また母が未婚のまま出産した
  • 父と母が2人とも不明(孤児など)

参考:児童扶養手当(神奈川県)

上記の「重度の障害」とは、児童を監護する父母のどちらかが障害基礎年金1級程度の障害の状態であることを指します。この場合、両親がいる家庭でも「ひとり親」とみなされます。

児童扶養手当が支給されない場合

次のケースにあてはまる場合は児童扶養手当が支給されません。

  • 申請する方や児童が日本国内に住所がない
  • 児童が里親に委託されている
  • 児童福祉施設(母子生活支援施設・保育所・通園施設を除く)等に入所している
  • 児童が父または母の配偶者(事実上の配偶者を含み、政令で定める障害の状態にある者を除く)に養育されている、もしくは生計を同じくしている

正式に婚姻しておらず事実婚であっても、児童が父または母の配偶者に養育されたり、生計を同じくするときには児童扶養手当は支給されません。

また、児童が里親に委託されたり児童福祉施設に入所すると児童扶養手当が支給対象外となることにも注意が必要です。

参考:児童扶養手当(さっぽろ子育て情報サイト)

所得制限とは

児童扶養手当の受給に関しては、所得制限が課されます。

児童扶養手当を受給される方や受給される方の配偶者・扶養親族の前年の所得が下記の所得限度額以上の場合は、手当は支給されません。

扶養人数父・母・孤児等以外の養育者
全部支給
父・母・孤児等以外の養育者
一部支給
孤児等の養育者、
配偶者、扶養義務者
1人49万円192万円236万円
2人87万円230万円274万円
3人125万円268万円312万円
4人163万円306万円350万円
5人201万円344万円388万円
5人以上一人増加ごとに
38万円加算
一人増加ごとに
38万円加算
一人増加ごとに
38万円加算

参考:所得制限(千葉市)

児童扶養手当を請求する方や、受給資格者が父または母で養育費を受け取っている場合は、養育費の8割相当額が所得に含まれます。

障害基礎年金等の受給者は、児童扶養手当額を算定する所得金額に「非課税公的年金※」が含まれます。
※障害年金、遺族年金、労災年金、遺族補償など

また児童扶養手当を受ける方が親と同居している場合、受給者だけではなく親の年収も考慮されることにも注意が必要です。

参考:「児童扶養手当」が変わります(厚生労働省)

児童扶養手当の額

児童扶養手当の額は下記の通りです。

【令和5年4月からの支給額(月額)】

項目第一子第二子加算第三子加算
全部支給44,140円10,420円6,250円
一部支給43,130円~10,410円10,410円~5,210円6,240円~3,130円
※児童扶養手当は税金の対象にはならず非課税

児童扶養手当は、支給対象者や扶養義務者の所得により全部支給と一部支給があり、支給額は児童の数によって変わります。

例えば、児童2人を養育するひとり親が全部支給の認定を受けた場合は次のようになります。
44,140円(第一子) + 10,420円(第二子) = 54,560円

児童扶養手当の支給月は5月、7月、9月、11月、1月、3月で前月までの2カ月分が支給されます。

なお、児童扶養手当は認定請求のあった翌月分から支給されるので、お早めにお住いの役所で手続きをしましょう。

参考:児童扶養手当法施行令等の一部を改正する政令の施行について(厚生労働省)
参考:令和5年4月から児童扶養手当の手当額が改定されます(大洗町)

児童扶養手当の令和3年改正のポイント

令和3年改正の最大のポイントは「児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の月額」を上回る場合 、その差額を児童扶養手当として受給できるようになったことです。

出典:「児童扶養手当」が変わります(厚生労働省)

令和3年改正で見る「障害基礎年金等」とは、国民年金法に基づく障害基礎年金、労働者災害補償保険法による障害補償年金などのことで、障害厚生年金は対象外となります。

したがって、障害基礎年金等以外の公的年金等を受給している方※は、調整する公的年金等の範囲に変更はないため、これまで通り公的年金等全額の月額が児童扶養手当よりも多い場合、児童扶養手当は支給されません。

※遺族年金、老齢年金、労災年金、遺族補償などの障害年金以外の公的年金等や障害厚生年金(3級)のみを受給している人

障害基礎年金と児童扶養手当の併給調整

障害基礎年金と児童扶養手当の併給調整について、障害年金2級受給の方が子を1人監護しているケースで見ていきます。

子の加算額:228,700円(月額約19,000円)と児童扶養手当:44,140円の併給調整

下記の計算式に当てはめ、児童扶養手当の支給額を算出する

児童扶養手当 - 障害基礎年金の子の加算額の月額 = 支給される児童扶養手当

44,140円 - 19,000円 = 25,140円

児童扶養手当:25,140円

上記は例示ですので、児童扶養手当の正確な支給額はお住いの役所でご確認下さい。

児童扶養手当の返還が必要となることも

障害年金には遡及請求という請求方法があり、障害年金を過去5年分遡って請求することができます。

遡及請求により障害年金の支給が決定した場合、児童扶養手当は障害年金の受給が決定した時点から返還することになります。

ここで注意が必要となるのは、「児童扶養手当改正前」「改正後」では児童扶養手当の返還金額が変わることです。

次の例で返還額を試算してみましょう。

障害基礎年金2級が遡及請求により決定し、令和2年4月から令和5年8月までの児童扶養手当を返還する場合

【令和2年4月~令和3年2月まで】
障害基礎年金全額の月額(83,882円)が児童扶養手当(43,160円)よりも多いため、児童扶養手当は全額返還
43,160円 × 11カ月 = 474,760円 ・・・①

令和3年3月以降、児童扶養手当は障害基礎年金の子の加算額の月額との差額を支給と改正されたため、障害基礎年金の子の加算額の月額相当額を返還

【令和3年3月~令和4年3月まで】障害基礎年金の子の加算額の月額18,725円
18,725円 × 13カ月 = 234,425円 ・・・②

【令和4年4月~令和5年3月まで】障害基礎年金の子の加算額の月額18,650円
18,650円 × 12カ月 = 223,800円 ・・・③

【令和5年4月~令和5年8月まで】障害基礎年金の子の加算額の月額約19,000円
19,000円 × 5カ月 = 95,000円  ・・・④

よって、①~④までの合算が児童扶養手当の返還額
474,760円 + 234,425円 + 223,800円 + 95,000円 =  1,027,985円

児童扶養手当の返還額は一人ひとり違いますので、正確な返還額はお住いの役所でご確認ください。

また、障害年金の遡及請求をくわしく知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。

ポイント障害年金で数百万円がもらえる遡及請求とは?

参考:令和2年4月分から児童扶養手当の手当額が変更になります。(和歌山市)

まとめ

児童扶養手当は、離婚等により父または母と暮していない18歳までの子を監護・養育している方(ひとり親)に支給される手当のことです。

監護・養育している子が一定の障害の状態にあるときは、20歳未満まで児童扶養手当の支給が延長されます。

児童扶養手当は、世帯の所得等により支給されなかったり、一部支給となることがあり、定額の支給ではありません。

令和3年の改正により障害基礎年金等を受けている人でも、「児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の月額」を上回る場合 、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました。

児童扶養手当は申請しなければ支給されないので、自分が支給されるかもしれないと思ったらお住いの役所へ相談しましょう。