障害者手帳には、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があり、それぞれ交付対象や等級基準などが異なります。
また、障害者手帳とよく似た名称の障害年金がありますが、これらは別の制度なので等級分けも異なります。
そこで今回は、障害者手帳と障害年金の等級の違い、受けられるサービス申請方法などについて解説します。
障害者手帳の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
障害年金と障害者手帳の等級は違う?
冒頭で述べたとおり、「障害者手帳」と「障害年金」はよく似た名称のため混同されがちですが、それぞれ異なる制度のため、認定基準や等級分けも違います。
したがって、1級の障害者手帳に該当するからといって、1級の障害年金を受給できるわけではありません。
反対に、身体障害者手帳で4級に該当する障害で障害年金を請求したところ、3級の障害厚生年金が受給できたというケースもあります。
このように、障害者手帳と障害年金の等級分けは異なるため、障害者手帳の等級が障害年金の等級に該当しなくても、障害年金を受給できる可能性もあります。
障害者手帳を取得したものの、障害年金は受給できるか不安に思っている方は、社労士といった専門家に一度ご相談してみることをおすすめします。
障害者手帳の種類と等級について
障害者手帳には、以下の3種類の手帳があります。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
ここからは、それぞれの手帳の対象と等級について解説します。
身体障害者手帳の対象と等級
身体障害者福祉法に基づいて、身体に障害がある方を対象に交付されるのが「身体障害者手帳」です。
日常生活における支障の程度や症状の種類により、7つの障害等級に区分され、6級以上の障害に対して交付されます。
7級にあたる障害は単独では身体障害者手帳の交付対象とはならず、7級の障害が2つ以上ある場合や、7級のほかに6級以上の障害がある場合に交付対象となります。
また、いずれも一定以上で永続すること(その障害が将来にわたり回復する可能性が極めて低い状態)が要件となっています。
身体障害者手帳の対象となる障害は、次のとおりです。
【交付対象者】
- 視覚障害
- 聴覚または平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓または呼吸器の機能の障害
- ぼうこう又は直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
- 肝臓の機能の障害
【身体障害者手帳の等級】
以下に、いくつかの障害の等級をまとめました。
視覚障害の等級 | |
等級 | 障害状態 |
1級 | 視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの |
2級 | 視力の良い方の眼の視力が0.02以上0.03以下のものなど |
3級 | 視力の良い方の眼の視力が0.04以上0.07以下のものなど |
4級 | 視力の良い方の眼の視力が0.08以上0.1以下のものなど |
5級 | 視力の良い方の眼の視力が0.2かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの |
6級 | 視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ
他方の眼の視力が0.02以下のもの |
聴覚障害の等級 | |
等級 | 障害状態 |
1級 | – |
2級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デザイべる以上のもの |
3級 | 両耳の聴力レベルが90デジベル以上のもの |
4級 | 両耳の聴力レベルが80デジベル以上のものなど |
5級 | – |
6級 | 両耳の聴力レベルが70デジベル以上のものなど |
詳しい障害程度やその他の障害等級については、厚生労働省の身体障害者障害程度等級表をご参考ください。
精神障害者保健福祉手帳の対象と等級
精神保健福祉法に基づき、何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活または社会制約がある方を対象に交付されるのが「精神障害者保健福祉手帳」です。
障害等級は日常生活への影響や症状の種類によって、1級から3級の等級に分けられます。
また、手帳を受けるためには、その精神疾患による初診から6ヶ月以上経過していることが必要です。
【交付対象者】
精神障害者保健福祉手帳の対象となるのはすべての精神障害で、次のようなものが挙げられます。
- 統合失調症
- うつ病、躁うつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害など)
【精神障害者保健福祉手帳の等級】
精神障害者保健福祉手帳の等級は、日常生活や社会生活における支障の程度により、1級から3級の「障害等級」に分けられます。
障害等級 | 生活における支障の程度 |
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活に著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活や社会生活が制限を受けるか、又は日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
療育手帳の対象と等級
「療育手帳」とは、児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。
療育手帳は、法律で定められた制度ではなく、都道府県・政令指定都市がそれぞれ判定基準や運用方法を定めて実施しています。
そのため、自治体によって制度名や支援内容、取得基準などが異なる場合があります。
例えば、東京や横浜では「愛の手帳」、青森や名古屋では「愛護手帳」、さいたま市では「みどりの手帳」といった名称で呼ばれています。
【交付対象者】
療育手帳の対象者は、児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された方が交付対象となります。
なお、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で判定を受けることになります。
【療育手帳の等級】
療育手帳の等級は他の手帳と異なり、重度「A」と重度以外の中程度「B」の2つの区分に分けられます。
ただし、各自治体によってさらに詳細に分かれることがあるため、詳しい判定基準や等級区分については、お住いの市区町村の障害福祉課などへお問い合わせください。
障害者手帳で受けられるサービス
障害者手帳を取得すると、さまざまなサービスを受けられるようになります。
ここからは、どのようなサービスが受けられるかをいくつかご紹介します。
障害者控除
障害者手帳を取得すると、所得税や住民税、相続税などの軽減を受けられます。
これを「障害者控除」といいます。
また、障害者手帳を持っている方だけでなく、扶養している方が対象になる特例もあります。
障害者控除については以下の記事で詳しく解説しています。
さまざまな公共サービスの割引
障害者手帳を提示することで鉄道やバスなどの多くの公共交通機関において、運賃の割引を受けられます。
例えば、JRでは身体障害者手帳を持っていると、本人と介護者の運賃が半額になります。
また、航空会社によっては、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手性などを持つ方に対して、障害者割引を適用しています。
さらに、障害者手帳の種類と等級に応じて、ほかにも以下のような割引サービスを受けられます。
- 上下水道
- NHK放送受信料
- 携帯電話料金
- 公共施設の入館料など
ただし、障害の種類や等級によって割引内容が異なるため、具体的な割引サービスの内容については、ご利用になるサービスの運営会社のホームページで確認しましょう。
医療費の助成
「医療費の助成」とは、医療費が中長期的に高額になる方を対象に医療費負担が軽減される制度です。
一例として、自立支援医療の「更生医療」という制度があります。
更生医療とは、身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の方で、その障害を除去・軽減するための治療を行う場合に、世帯の所得に応じて医療費を助成する制度です。
その他にも、重度障害者の医療費を助成する「心身障害者医療費助成制度」といった制度もあります。
ただし、具体的な内容や名称などは、お住いの市区町村によって異なるため、制度の利用を検討している方は、お住いの市区町村役場や病院で事前にご確認ください。
障害者手帳の申請方法
各自治体によって必要な書類や手順が異なる場合がありますが、最後に各手帳の一般的な申請方法について解説します。
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳
身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳は、各自治体の障害者福祉窓口で申請したい旨を伝え、それぞれ所定の申請書類をもらいます。
次に、病院を受診し、指定医に診断書を作成してもらいます。
指定医とは、都道府県知事が指定した医師のことです。すでに病院に通っている場合は、かかりつけ医が指定医かどうかは、書類を受け取る際に窓口で聞くと調べてくれます。
また、申請書と診断書のほかに、本人確認ができる書類と申請する本人の顔写真(縦4cm×横3cm)も必要です。
申請に必要な書類をまとめたら、市区町村の担当窓口に提出しましょう。
なお、精神障害者保健福祉手帳の場合は、さらにマイナンバーが分かるものも必要です。
申請は本人や保護者の他、代理人による申請も可能ですが、その場合は、代理人の本人確認書類と委任状が必要になります。
ただし、精神障害者保健福祉手帳の場合は、委任状は不要です。
申請から手帳の発行までは約1〜2ヶ月程度かかります。
療育手帳
療育手帳も他の手帳と同様に、各自治体の障害者福祉窓口などで相談し、申請書類や必要な手続きを確認します。
療育手帳の申請は「療育手帳交付申請書」と本人の確認書類、顔写真、印鑑などが必要ですが、市区町村によって違いがあるため、あらかじめ窓口でご確認ください。
申請書類を記載し終わったら、申請書類を受け取った同じ窓口で、申請書とその他の必要書類を合わせて提出し、判定を受けるための予約を取ります。
なお、申請者が18歳未満か18歳以上かで、以下のように判定を行う機関が異なります。
- 18歳未満の場合:児童相談所
- 18歳以上:知的障害者更生相談所(地域によって名称は異なります)
一般的に、申請から交付されるまでは2〜4ヶ月程度かかります。
さいごに
障害者手帳には、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があり、それぞれ等級や認定基準が異なります。
また、手帳の種類によって申請方法や受けられる支援やサービスもさまざまです。
障害者手帳の申請を検討している方は、まずはお住いの市区町村の障害者福祉窓口に相談してみてください。