障害年金制度は、病気やケガによって仕事や収入に制限が生じている方の生活を支える大切な制度です。
そのため、本当に障害年金を必要としているならば、堂々と申請および受給をするべきだといえます。
しかし、障害年金に関する考え方や理解度は人によって異なり、場合によっては周囲の理解を得られないケースもあります。
この記事を見ている方の中にも、
「障害年金の受給を会社に知られたくない」
と考えている方がたくさんいるでしょう。
そこで今回は、障害年金の受給を会社に知られてしまうケースと、その対策について詳しく解説していきます。
目次
障害年金の受給を会社に知られることは基本的にない
結論からお伝えすると、障害年金の受給を会社に知られることは基本的にありません。
なぜなら、障害年金は税金がかからない「非課税所得」であり、給与計算や年末調整といった社内の手続きに一切関与しない仕組みになっているからです。
そのため、会社の経理部や税務手続きの中で、障害年金の受給が判明することは考えにくいといえます。
中には、マイナンバー制度によって年金情報が会社に伝わってしまうのではないかと不安に感じる方もいると思いますが、年金事務所が個人情報を勝手に会社に伝えることはありません。
就職や転職時も障害年金の受給事実を伝える必要はない
就職や転職活動をしている方の中には、障害年金の受給事実を伝えるべきかどうかで悩んでいる方もいるでしょう。
結論からお伝えすると、仮に障害年金を受給していたとしても、その事実を伝える必要はありません。
当然、履歴書や職務経歴書に記載する必要もありませんし、面接で聞かれることも基本的にはないため、安心してください。
また、入社時に提出する書類は「雇用保険」や「社会保険」の加入手続きに関するものがほとんどであり、障害年金の情報が含まれることはありません。
障害年金の受給が会社に知られてしまうケース
障害年金の受給事実を会社に知られることは基本的にありませんが、例外となるケースがいくつか存在しています。
・傷病手当金を受給する場合
・共済組合に加入している場合
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
傷病手当金を受給する場合
障害年金の受給中に、傷病手当金という別の制度を利用する場合、障害年金を受給していることが会社に知られる可能性が高いです。
というのも、傷病手当金は、健康保険に加入している会社員がケガや病気で働けなくなったときに支給されるものですが、その申請書類には障害年金の受給状況を記載する欄があります。
中には、
「自分で手続きをすればバレないのでは?」
と考える方がいるかもしれませんが、在職中に傷病手当金の受給を申請する場合、必ず会社を通す必要があり、自分でこっそり申請することはできません。
そのため、どうしても障害年金の受給事実を会社に知られたくない場合は、傷病手当金の申請を控えるのがおすすめです。
共済組合に加入している場合
公務員として働いている場合など、共済組合に加入している方は、障害年金の申請を共済組合経由で行うことになります。
この過程で、申請者の職場や関係部署に確認の連絡が入ることがあるため、担当職員が障害年金の受給事実を知る可能性があります。
一部の書類を共済に直接送付するという方法もありますが、絶対にバレない保証はありません。
障害年金の受給が家族の勤務先に知られてしまうケース
障害年金の受給を検討している、あるいは既に受給している方の中には、家族の勤務先にも知られたくないと考えている方もいるでしょう。
特に、家族の扶養に入っている方が障害年金を受給する場合、家族が年末調整や社会保険の手続きで、本人の情報を勤務先に提出することになるため、どうしても不安に感じてしまいますよね。
しかし、この場合でも障害年金の受給事実を知られることはないため、安心してください。
ただし、以下2つのケースに該当する場合、障害年金の受給事実が家族の勤務先に知られてしまうことがあるため注意が必要です。
・障害年金に伴って家族の扶養から外れる場合
・障害年金を受給しているときに家族の扶養に入る場合
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
障害年金の受給に伴って扶養から外れる場合
障害年金も含め、本人の年収が180万円を超えた場合、家族の扶養から外れる必要が出てきます。
この場合、障害年金の受給額を確認できる年金通知書の写しなどを家族の勤務先に提出する必要があるため、受給事実を知られる可能性が非常に高いです。
障害年金のみで年収180万円を超えることは基本的にありませんが、その他に収入がある場合、扶養から外れる必要が出てくるケースもあるため注意してください。
障害年金を受給しているときに家族の扶養に入る場合
障害年金を受給している状態で新たに家族の扶養に入る場合も、家族の勤務先に情報が伝わることになります。
なぜなら、扶養認定を受けるためには、本人の収入を申告する必要があり、障害年金の受給額を含めた資料を提出しなければならないからです。
健康保険組合から年金証書や年金額決定通知書の提出を求められるケースも多く、隠して手続きをするのは不可能です。
障害年金を受給した状態で扶養に入ること自体は問題ありませんが、どうしても家族の勤務先に知られたくない場合は、別の方法を考えた方が良いかもしれません。
障害年金の受給を家族にも知られたくないときはどうすればいい?
障害年金の受給事実を、家族にも知られたくないと考えている方は意外と多くいます。
ただ、残念ながら障害年金を受給していることを家族に知られないための方法や、裏技は存在しません。
なぜなら、障害年金の申請や受給に関する通知は、住民票に登録されている住所宛てに郵送されるからです。
万が一同居している家族が受け取ってしまえば、中身を見られてしまう可能性があります。
また、障害年金関連の書類は全て普通郵便で送られるため、本人以外でも受け取りが可能です。
このように、手続きや仕組み上の問題で「家族バレ」を完全に回避することはできないため、知られてしまう可能性を前提に動く必要があります。
障害年金受給でよくある勘違い
障害年金はさまざまな制度や手続きが関係してくるため、誤解が生まれやすいです。
ここでは、障害年金受給に伴うよくある勘違いと、それぞれに関する正しい解釈について詳しく解説していきます。
社会保険の手続きでバレる
社会保険料は、基本的に給与に基づいて決定されます。
つまり、障害年金の受給有無とは無関係ということです。
社会保険の加入手続きや保険料計算の過程において、障害年金の情報を会社に報告する必要はないため、自ら申告しない限り知られることはありません。
年末調整でバレる
年末調整は、毎年年末に行われる税金の計算手続きのことです。
この手続きによって、障害年金の受給事実が知られてしまうのではないかと感じる方もいると思いますが、障害年金は非課税所得であり、年末調整においては申告対象外となります。
このようなことから、年末調整で障害年金の受給事実が漏れることはありません。
マイナンバーでバレる
マイナンバー制度の開始以降、
「行政が一元管理しているなら、会社も障害年金の受給状況を確認できるのでは?」
という疑問や不安を抱える方が増えています。
しかし、マイナンバーはあくまでも行政機関の情報連携のために利用されるものであり、会社が従業員の障害年金受給情報にアクセスすることはできません。
したがって、マイナンバーで障害年金の受給事実が知られることはないといえます。
健康診断でバレる
企業は、労働安全衛生法に基づき、従業員に対して定期的な健康診断を実施しています。
従業員の健康診断結果は会社が管理していますが、その結果に障害年金の受給に関する情報が含まれることはありません。
医師や状況によっては、特定の病名や所見を記載するケースもありますが、だからといって障害年金の受給と結びつくわけではないため、この点についても心配は不要です。
まとめ
障害年金の受給事実が自分の勤務先、もしくは家族の勤務先に知られることは基本的にありません。
障害年金は非課税であることから、年末調整や確定申告を通じて会社に知られることもありませんし、社会保険の手続きや健康診断、マイナンバーから状況が漏れることもないため、基本的には安心して受給できます。
しかし、傷病手当金の申請や共済組合への加入など、一部のケースでは本人の勤務先もしくは家族の勤務先に知られてしまうことがあるため注意が必要です。
とはいえ、周囲に知られることを危惧して障害年金の申請をためらうのは本末転倒です。
障害年金に関する不安や疑問があり、なかなか手続きに進めないという方は、障害年金に精通している「ピオニー社会保険労務士事務所」までお気軽にご相談ください。