「社会保険労務士」をご存じですか。
「社会保険労務士」は、社会保険や労働保険の専門家です。
入退社の手続きや年金を申請したり、働きやすい職場づくりをサポートしたりするなど、私たちの生活に密着した業務を行っています。
しかし、弁護士や行政書士と比べて、具体的にどんな仕事をしているのかを知る人は少ないでしょう。
そこで、この記事では次のようなことをお伝えしていきます。
- 社会保険労務士とはなにか
- 社会保険労務士はどんな仕事をしているのか
- 社会保険労務士に任せて安心な理由
社会保険労務士について興味のある人はぜひ参考にしてください。
目次
社会保険労務士とは?
社会保険労務士(社労士)は、企業の人事・労務管理と社会保険手続きの専門家であり、国家資格を有するプロフェッショナルです。
企業が従業員を雇用する上で不可欠な、労働条件や社会保険関連の手続きを代行し、企業のスムーズな運営を支えます。
また、従業員が安心して働ける環境作りに貢献することも、社会保険労務士の重要な役割です。
社会保険労務士は、労働基準法や健康保険法など、50種類以上に及ぶ法律の専門知識を駆使し、企業の人事・労務に関する幅広い相談に応じます。
具体的は、給与計算や就業規則の作成、労働時間管理など、企業のニーズに合わせた的確なアドバイスを提供します。
さらに、社会保険労務士は年金制度の専門家でもあり、複雑な年金の種類や受給資格、申請手続きを分かりやすく説明し、個々の状況に応じたサポートを行います。
社会保険労務士は、企業の成長と従業員の安心を支える、まさに「人と制度の橋渡し」をする存在だといえるでしょう。
国家資格である「社会保険労務士試験」や「社会保険労務士資格の取得」について詳しいことは関連記事でご紹介しています。


社会保険労務士はどんなお仕事をしているの?
社会保険労務士の業務は多岐にわたりますが、主な業務を3つご紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
労働保険・社会保険に関する手続き代行
従業員の雇用保険、健康保険、厚生年金などの書類作成・申請に加え、各種給付金の事務手続き等、従業員が安心して働ける環境作りをサポートします。
具体的な手続きは以下のようなものです。
- 保険証の変更手続き
- 業務上でケガをした場合の労災の届け出
- 扶養家族に増減があった場合の手続き
- 出産一時金や傷病手当金の申請など
従業員と家族の生活にかかわる各種手続きを代行します。
また、就業規則や労使協定の作成・修正、労働者名簿や賃金台帳の管理なども社労士の重要な業務です。
労務管理に関する相談・指導
社会保険労務士は、良好な労使関係の構築・維持のために相談を受け、的確なアドバイスを行います。
具体的な業務内容は以下のようなことが挙げられます。
- 人事、賃金、労働時間についての提案
- 就業規則のチェック
- 法定帳簿の鑑査 など
職場のトラブルやコンプライアンス違反などを未然に防止するために、社労士は提案やアドバイスなどを行います。
また人材の採用、育成などの適切なアドバイスや、退職金制度の導入なども社労士の業務の一つです。
年金に関する相談・申請手続き代行
年金の相談や手続き代行も、社会保険労務士の重要な業務の一つです。
公的年金に関する唯一の国家資格者の立場から、年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)について、加入期間、受給資格等の相談や申請手続きまで、幅広い業務を行います。
また、街角の年金相談センターでの対面相談も、社会保険労務士の仕事です。
※街角の年金相談センターは、年金事務所と同じように年金の相談や申請などの手続きができる場所です。相談業務は、日本年金機構が全国社会保険労務士会連合会に委託しています。
社会保険労務士に依頼するメリット
社会保険労務士に依頼するメリットは主に次の3つが挙げられます。
順番にご説明します。
正確な手続きと安心のアドバイスで、時間と労力を大幅に削減
社会保険労務士に業務を依頼することで、経営者は社会保険や労働保険に関する煩雑な手続きから解放され、本来の業務に集中できます。
社会保険や労働保険に関する申請や届出は、法律の理解や正確な書類作成が求められるため、専門知識がないと多くの時間と労力を要します。
そこで頼れるのが社会保険労務士です。
社会保険労務士は制度に精通しており、ミスなく迅速に手続きを進めてくれます。
法改正にも常に精通しており、最新の情報を基に、企業ごとの状況に合わせた適切なアドバイスを提供します。
企業は法的なリスクを回避し、安心して事業運営に専念できることは大きなメリットだといえるでしょう。
従業員が安心して働ける環境づくりをサポート
社会保険労務士は、職場のトラブルを防ぎ、従業員が安心して働ける環境づくりを支援します。
近年は、働き方の多様化や権利意識の高まりにより、未払い残業代や不当解雇、ハラスメントなどの労務トラブルが増加しています。
こうしたリスクを未然に防ぐには、正しい知識と制度に基づいた労務管理が不可欠です。
社会保険労務士は、労働基準法や労働契約法に精通しており、企業が法令を遵守した運営ができるようサポートします。
また、万が一トラブルが起こっても、社会保険労務士があっせんや調停の手続きを行い、円満な解決を目指します。
これにより、企業は訴訟リスクを回避し、従業員との信頼関係を維持できます。
社会保険労務士のサポートにより、企業は従業員が安心して働ける環境を実現し、生産性向上や企業イメージ向上につなげることができるでしょう。
障害年金の専門家として複雑な手続きを代行
社会保険労務士は、障害年金の申請代行を行い、複雑な手続きを強力にサポートします。
もちろん、老齢年金や遺族年金の申請も業務に含まれますが、障害年金の申請においては、専門家である社会保険労務士のサポートが強く求められます。
障害年金は、現役世代の方が病気やケガによって日常生活や仕事に支障をきたした場合に支給される公的な年金です。
しかし、その申請手続きは非常に複雑であり、専門的な知識が不可欠です。
必要書類は個々の状況によって異なり、書類作成に苦労される方も少なくありません。
年金の専門家である社会保険労務士は、これらの複雑な手続きを代行し、受給の可能性を高めます。
的確なアドバイスとサポートを提供し、申請者の負担を大幅に軽減できます。
なお、障害年金の申請代行や障害年金社労士の選び方については、関連記事で詳しくご紹介しています。


社会保険労務士任せて安心な理由
社会保険労務士は、高い倫理観と責任感を持って業務を行う国家資格者です。
東京都社会保険労務士会では、次のように定めています。
社会保険労務士は、倫理綱領において、「品位を保持し、常に人格の陶冶にはげみ、旺盛なる責任感をもって誠実に職務を行い、もって名誉と信用の高揚につとめなければならない。」とされています。
引用:東京都社会保険労務士会
具体的には、以下の義務を守り、責任を持つことが求められます。
- 品位の保持…中立公正を貫き、良心をもって誠実に職務を行う
- 知識の涵養…常に専門知識を磨き、理論と実務に精通する
- 信頼の高揚…契約を誠実に履行し、依頼の信頼に応える
- 相互の信義…互いに立場を尊重し、信義にもとる行為は厳禁
- 守秘の義務…職務上、知りえた秘密は廃業後でも守り抜く
つまり、社会保険労務士には、常に中立公正な立場で、高い専門性と倫理観をもって業務にあたり、専門知識を常に磨き続けることなどが義務付けられています。
特に、守秘義務は社会保険労務士にとって最も重要な責務の一つです。
職務上知り得た秘密は、業務終了後も厳格に守り抜くことが求められます。
これにより、依頼者は安心して個人情報や企業の機密情報を社会保険労務士に託すことができます。
さらに、依頼者との信頼関係を大切にし、契約を誠実に履行する姿勢も徹底しています。
こうした高い職業倫理に支えられた社会保険労務士だからこそ、安心して重要な手続きを任せることができるのです。
信頼と実績を兼ね備えた社会保険労務士の存在は、企業や個人にとって大きな支えとなるといえるでしょう。
まとめ
社会保険労務士は、社会保険や労働保険の専門家として、企業の人事・労務管理や社会保険に関する業務を行います。
社会保険労務士の資格は厚生労働省が認定する国家資格です。
労働条件、服務規律、社会保険加入など、企業の人事・労務に関する幅広い分野をカバーし、企業の発展と従業員の福祉向上に貢献します。
また、年金保険や障害に関する年金相談も社労士の重要な業務の一つです。
この記事をきっかけに「社会保険労務士」とその仕事について、さらに知っていただけるとうれしいです。