障害年金は、病気やけがによる障害で仕事や日常生活に支障がある方を経済的にサポートする制度です。障害年金の申請手続きは複雑で、専門的な知識が必要となることがあります。
もし自分で障害年金の申請が難しいときは、社会保険労務士(社労士)手続きを代行することができます。
この記事では次の4つを中心にご紹介します。
- 障害年金の申請代行を依頼する社労士選びのポイント
- 精神疾患に特化した社労士とは
- 着手金の有無でみる社労士の選び方
- 受給決定率でみる社労士の違い
最後まで読むと、あなたにぴったりの社労士の選び方がわかるので、ぜひ参考にしてください。
目次
障害年金申請を依頼する社労士を選ぶための4つのポイント
障害年金の申請代行は、どの社労士にお願いしてもいいということではありません。
依頼した社労士の経験や実績、知識、センスによって障害年金の審査結果が変わるケースが多くみられます。
そこで、社労士とコンタクトを取る際に、ぜひ確認しておきたいポイントを4つご紹介します。
順番にみていきましょう。
なお、障害年金は「請求する」が正しい表現ですが、この記事では一般的に馴染みのある「申請する」と表記します。
(1)ホームページでのチェックポイント
社労士のホームページで確認しておきたいポイントは次のようなことです。
- 実際に支払う費用や報酬についてわかりやすく書かれているか
- 社労士の名前、顔写真、プロフィール、資格取得年等が書かれているか
- 実際に扱った事例がリアルに具体的に書かれているか
- 法改正や新しい年金額等の情報がきちんと更新されているか
- 直感で依頼してみたい、会ってみたいと思えるか
経験豊富な社労士であれば、初診日の証明が難しいケースや、ほかの社労士に断られたようなケースでも積み上げた実績や知識を元に対応できることが多くあります。
社労士の経験値をみるには、受給事例を確認してみましょう。実際に自分と似たような障害での受給事例がある社労士であれば、心強いサポートを受けられる可能性が高まります。
ピオニー社会保険労務士事務所で扱った多くの事例は、受給事例で確認できますのでぜひご覧ください。
なお、社労士に支払う報酬や費用について、障害年金受給の決定後、初回の年金が振り込まれた際に受け取る方式を採用しているところが多いですが、契約時に「着手金」を請求する社労士事務所もあります。
着手金の概要や支払う意味については、のちほど詳しくご説明していきます。
(2)問い合わせや相談をしたときのチェックポイント
次に電話の場合とメールの場合の確認ポイントを、それぞれご紹介します。
【電話での問い合わせや相談】
- 事務担当者ではなく、業務をする社労士本人が相談を受けているか
- 聞いたことだけに答えるのではなく、わかりやすい説明をしてくれたか
- 話し声は明るく、好感が持てたか
- ヒアリングもせずに「受給はできない」と無責任な返答をしなかったか
- 電話越しでも「信頼できそう」と感じたか
【メールでの問い合わせや相談】
- 事務担当者ではなく、業務をする社労士本人がメールの返信をしているか
- 問い合わせメールの返信は24時間以内であったか
- 聞いたことにだけ答えるのではなく、プラスαの説明があったか
大きな社労士事務所では、社労士本人が対応せず事務担当職員が電話やメールでの問い合わせの対応や相談業務にあたることがあります。
社労士が丁寧にヒアリングし、回答してくれるところであれば、社労士の人柄や考え方を垣間見ることもできるので、障害年金申請への不安を減らせるでしょう。
また、早急に対応してくれる事務所であればスピーディーに業務を進めてもらえる可能性が高いといえます。「連絡が遅くて、進捗がわからないことが不安だ」という方は、返信や回答のスピードを重視するといいでしょう。
(3)社労士との面談でのチェックポイント
社労士と事前に面談する際に確認するポイントは、以下のとおりです。
- 面談の開始前に、面談の進め方と所要時間等の説明がされたか
- 第一印象は明るく、好感を持つことができたか
- 社労士との会話は、緊張せずに進めることができたか
- 会話をしている時に、重苦しい雰囲気にならなかったか
- 自分の病歴や障害について話しにくいと感じなかったか
- 人間として長く付き合えそうだと感じたか
- 着手金や報酬について、明確に説明があったか
障害年金の申請から受給決定までは平均で6か月ほどかかり、社労士とは長いお付き合いになります。
また、申請準備を進める間に新しいことがわかったり、自分では「些細なことだ」と思っていたことが流れを大きく変えるきっかけになったりすることもあるのです。
障害年金申請で気になることが出てきたときに「こんなことを聞いたら迷惑かな」などとご相談者が迷うようであれば、社労士に気軽に相談できなくなります。その結果、社労士としっかりとした信頼関係を築けないこともあるかもしれません。
社労士は話しやすい人柄か、自分との相性はいいかを見極めることも重要です。明るく好感が持てて、気軽に相談できそうな社労士を選びましょう。
(4)今後のサポートでのチェックポイント
障害年金社労士選びのポイントの4つ目は「今後のサポート内容」です。サポートについて確認しておきたいことは次の2つがあります。
- 障害年金受給後の更新もサポートをしてくれるか
- 万が一、障害年金が受給できなかった場合はどうするかを説明してくれたか
多くの場合、障害年金は1年〜5年の有期認定となり「更新」が必要となります。
ところが、障害年金専門の社労士のなかには、申請代行は引き受けても「更新」の依頼は受けないという事務所があるのです。更新時もサポートをしてくれる社労士であれば、障害年金で困ったときにはかかりつけ医のように相談できるので、「更新」への不安や手間を大きく減らせるでしょう。
また、障害年金が不支給になった場合に、どんな方法を取るかもぜひ確認しておきたいポイントです。
例えば、不服申立てをしたり、再度申請したりするなど、先のことまで把握し対策を考えている社労士を選ぶのが理想的といえます。
なお、障害年金の有期認定と不服申立てについては、下記の記事でわかりやすく解説していますので、興味のある方はぜひご一読ください。
障害年金の永久認定と有期認定の違いとは?更新・支給再開の手続きも解説 障害年金の不服申立て(審査請求)について徹底解説どちらの社労士を選ぶか迷うときは?
ホームページで情報収集をしたり、実際にメールや電話等で社労士とコンタクトを取っても「この人にお願いしたい」という決め手に欠け、「どっちの社労士にお願いすればいいんだろうか?」と迷うこともあるでしょう。
そこで、以下の側面でどちらの社労士を選ぶ方がいいのかを解説していきます。
それぞれ順番にみていきましょう。
「精神疾患に特化した社労士」と「すべての障害に対応する社労士」|どちらを選ぶ?
結論からいうと、「すべての障害に対応する社労士」に依頼すると難しいケースでも対応できるため、障害年金受給の可能性が高まります。
下図は、社労士が対応する障害の範囲をイメージしたものです。
精神疾患に特化した社労士よりも、すべての障害に対応する社労士の方が格段に守備範囲が広いことがわかります。
【精神疾患に特化した社労士とは?】
精神疾患に特化した社労士は、うつ病や発達障害などの精神疾患のみを取り扱い、高次脳機能障害やてんかんは扱わないことが多いです。
それでは、どうして精神障害専門の社労士が存在するのでしょうか?
いくつかの理由があると思いますが、一番大きな理由としては「精神障害専門だと効率が良い」ということが挙げられます。効率が良いということは、1つ1つの案件にかける時間と労力が少ないため、同時に多くの依頼を受けることができるということです。
「精神の障害」は障害年金専門の社労士にとっては基本なので、できない者はいないと言っても過言ではありませんし、精神の障害の「障害認定基準」※は頭に入っています。
※障害認定基準とは、国が定める障害の程度をまとめたもので、「眼の障害」や「聴覚の障害」、「精神の障害」など18種類の障害の程度の基準を示したもの
すなわち「精神障害専門の社労士だからうつ病に強い」ということなく、精神障害専門ではない社労士でもうつ病には強いと言えるのです。
【すべての障害に対応する社労士とは?】
すべての障害に対応する社労士は、うつ病や双極性障害はもちろん、てんかん、高次脳機能障害、眼の障害、肢体の障害、聴覚障害、心疾患、腎疾患、がん等に精通しています。
すべての障害に対応するということは、「専門性に欠けるのでは…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、障害年金を受給する方の中で一番多い障害が精神障害なので、すべての障害を扱う社労士であっても申請代行を受任するのは7~8割が精神の障害の事例となります。
この事実からしても、すべての障害に対応する社労士が精神障害専門の社労士よりも知識や経験が劣ることはないといえるでしょう。
また、すべての障害を扱う社労士は、いろいろな障害を扱う経験を重ね、柔軟な考え方を身につけています。
障害年金の申請をする際は、傷病別に18種類の障害認定基準を理解し、8種類の診断書を使い分けているため、うつ病の方が同時に手足にも障害を抱えたような場合にもスムーズに対応することができるのです。
障害年金には併合認定といい、複数の障害を足して請求する方法があり、「うつ病」と「糖尿病」と「眼の障害」を足して1級にするというような難しいケースがあります。
このような場合にもすべての障害を扱う社労士であれば対応できますが、精神障害専門の社労士だと「うつ病」だけの請求で終わってしまう可能性があるのです。
もし、精神疾患だけではなく身体にも不調がある場合は、すべての障害に対応できる社労士に依頼する方が障害年金受給の可能性が広がるといえるでしょう。
「着手金ありの社労士」と「着手金なしの社労士」|どちらを選ぶ?
社労士が障害年金申請サポートの依頼を受けると、書類を作成して審査を経て受給決定するまでに平均して半年、なかには1年以上かかる場合があります。
社労士は、障害年金の受給決定が下りて初めて年金が振り込まれた後に報酬をいただくことになりますので、それまでの間は報酬ゼロで仕事をするのです。そのため、ご契約時に着手金をいただく社労士が少なくありません。
社労士が着手金をいただく理由としては、以下の2つがあります。
- お客様が社労士に代理人として依頼するという意思の確認
- 障害年金サポート業務にかかる通信費などの経費
ここ数年で障害年金の社労士が急増し、競争が激しくなったため、着手金が無料の社労士事務所が多い傾向があります。
【着手金なしの社労士とは?】
着手金なしの社労士は、文字通り障害年金サポートの契約時に着手金を支払う必要がない社労士で、ホームページの一番目立つ場所に「着手金無料」「着手金0円」と掲げているところも多く見られます。
ご相談者の立場からみると、まだ障害年金が受給できていないときに、着手金を支払わずにサポートを依頼できるということは大きなメリットです。
しかし、着手金無料の社労士が全員ということはありませんが「着手金無料の社労士にサポートを依頼したが、数か月以上業務を放置されている」という悩みをお聞きすることがあります。
社労士の立場からいうと最初に着手金という名目でお金をいただかないため、契約への心理的ハードルが下がるということは否めません。
また、社労士が「これは障害年金が簡単に受給できるケースだ」と判断していても、実際は時間も労力もかかる難しい案件だったような場合には放置してしまうことがあるようです。
もちろん着手金無料であっても、しっかりと迅速に業務を進める社労士も多くいます。「着手金無料」が悪いのではありませんので、スピーディーにサポートしてくれる社労士を見極めることが大切です。
事務手数料や通信費という名目で請求されることも…
着手金という名前の支払いが不要だったとしても、別の名前でいろいろな請求をされる場合があります。
例えば、事務手数料・経費・交通費・通信費等です。
特に「事務手数料」という名前で請求される場合には、性質は着手金と同様と考えて差支えないでしょう。
いったん契約をした後に、いろいろな費用を請求され、結果的には通常の着手金よりも高くついてしまうケースがあるようです。
着手金無料と提示されている社労士でも、別の名目での請求があるのか事前に確認しましょう
ピオニー社会保険労務士事務所では、「事務手数料・経費・交通費・通信費等」を請求することはありませんので、お気軽にお問い合わせください。
「受給決定率が高い社労士」と「低い社労士」|どちらを選ぶ?
障害年金専門の社労士のホームページには、「受給決定率〇%」と書かれていることがあります。
受給決定率とは、社労士が受任した依頼の数のうち、実際に障害年金が受給できた人の割合で、障害年金申請の成功率ともいえる値です。
一見、受給決定率が高ければ高いほど「能力が高い社労士」と思われがちですが、社労士の能力は受給決定率では判断できないヒミツがあります。
受給決定率が高ければ、社労士の能力も高い?
結論からお伝えすると、受給決定率の高い社労士がすべて優秀だとはいえません。
障害年金の受給率を上げるための近道とはなんでしょう?
それは「確実に受給できるような簡単な依頼ばかりを受けること」です。
例えば、初診日の証明が簡単にでき、病気も比較的よく受給できる簡単なもので、障害の程度も誰が見ても重度というようなケースは、確実に受給できると言えます。
時間と労力がかかるような受給の可能性が低い案件を断り、確実に受給できる簡単な案件ばかりを受けていれば自然と障害年金の受給率は高くなるでしょう。
また、単に「受給決定率」と書いているので、本当は2級で認定されるべき人が3級で認定されたという不本意な決定であっても、障害年金を受給できることには変わらないため「受給決定率」にカウントされるのです。
反対に、一般の方が申請できないような難しい案件を受けることが続くと、受給決定率が下がることがあります。
受給率が高ければ能力が高い社労士ということはありません。困難な案件を断らずに受任してもなお受給率が高い社労士が、真に能力が高い社労士と言えます。
能力の高い優秀な社労士に依頼したい場合は、受給決定率だけをみるのではなく「難しいケースも対応しているか」「簡単な案件ばかりを引き受けているか」を踏まえて判断しましょう。
あなたに合う社労士を探す方法
障害年金専門の社労士を探すときには、インターネットでホームページを検索するほか、次のような方法があります。
知人から紹介を受ける
障害年金を受けている知人や職場の同僚などがいる場合は、障害年金申請を相談した社労士を紹介してもらえるかを聞いてみましょう。
実際に社労士に申請代行を依頼している人がいたら、社労士の人柄や雰囲気、依頼後の流れなどを聞いておくことをおすすめします。
また、移行就労支援事業所などに通所している人は、社労士を紹介してもらえないか職員に聞いてみてもいいでしょう。
X(旧:Twitter)で検索する
障害年金専門の社労士が発信しているXを検索して、社労士を探す方法もあります。
日々の発信から、社労士がどんな人柄かを見極めることができるほか、無料相談会などの情報も得られます。
実際に電話をしたり、メールで連絡したりすることをとまどう人は、まずXで情報収集することから始めてみてはいかがでしょうか?
無料相談やセミナーを受ける
そもそも障害年金がよくわからない人や、社労士に会って相談したい人は、無料相談やセミナーに参加するといいでしょう。
多くの社労士事務所では、「初回の相談無料」や「無料相談会」を開催しているところがあります。
無料相談を利用して社労士と直接話すことができれば、障害年金申請の不安解消の道筋を具体的に聞けるだけでなく、社労士の人柄や業務に対する誠実さ、申請の流れなども確認できます。
また、セミナーでは障害年金がよくわからない人に向けて年金制度の概要を説明することが多いので、障害年金を勉強できるほか、質問タイムを利用して受給事例を詳しく聞くこともできるのです。
無料相談やセミナーをうまく活用して、自分の求めるサポートを提供している社労士かを確認しましょう。
まとめ
社労士の選び方についてご説明いたしましたが、やはり一番重要なのは、「人として信頼できる社労士か」ということに尽きます。
障害年金の申請では、社労士と半年から1年程度関わることになりますので、社労士選びを間違えると「こんなはずじゃなかった」と後悔されると思います。
社労士の能力を見極めるのはもちろんですが、友達を選ぶような視点を持つと良いかもしれません。
この記事を参考にして、あなたに寄り添った信頼できる社労士に出会えたら嬉しく思います。