障害年金は病気やケガにより、生活に支障が出るような障害状態になった場合に受け取れる年金です。
ただし、障害年金は障害状態であれば誰でも受給できるわけでなく、3つの受給要件を満たす必要があります。
そこで今回は、障害年金の概要やもらうための条件、対象者、申請方法についてわかりやすく解説します。
障害年金の請求を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
障害年金とは?
障害年金とは病気やケガなどによって障害の状態になり、生活や仕事に支障が出る場合に支給される年金です。
障害年金は、大きく分けて「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。
どちらの障害年金を受け取れるかは、初診日(障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日)に加入していた公的年金によって決まります。
まずは、この2つの障害年金の違いについて解説します。
障害基礎年金
障害基礎年金は初診日において国民年金に加入していた方が受け取れる年金です。
また、初診日が20歳前または、日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の年金未加入期間にある方も対象です。
なお、障害基礎年金は障害等級1級、2級のいずれかの状態に該当する場合に支給されます。
障害厚生年金
障害厚生年金は初診日において厚生年金に加入していた方が受け取れる年金です。
障害厚生年金は1級〜3級に該当する方が対象で、1級もしくは2級該当する場合、障害基礎年金にプラスして障害厚生年金を受給することが可能です。
また障害厚生年金は3級に該当しない程度の軽い障害状態がある場合、一時金として「障害手当金」を受け取れます。
このように、障害厚生年金は障害基礎年金よりも支給対象となる範囲が広いことが大きな違いです。
障害年金をもらうための条件
障害年金は申請をすれば誰でも受け取れるわけではなく、以下の3つの条件を満たしていることが必要です。
- 初診日が特定できること(初診日要件)
- 保険料が納付されていること(保険料納付要件)
- 一定の障害状態にあること(障害状態該当要件)
ここからは、それぞれの条件について詳しく解説します。
【障害年金条件】初診日に年金制度の被保険者であること(初診日要件)
初診日とは、障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日のことです。
障害年金の請求をするには初診日において、以下のいずれかに該当していることが必要です。
- 国民年金または厚生年金の被保険者
- 60歳以上65歳未満の方(年金制度に加入していない期間で日本国内に居住している間)
- 20歳未満(国民年金に加入前)
初診日要件の証明には、初診日が特定できる書類が必要です。
基本的にはカルテで証明しますが、カルテの保存期間が過ぎていたり、病院が廃院したりした際は、障害者手帳や医師の診断書などの書類で証明します。
【障害年金条件】保険料が一定期間納付されていること(保険料納付要件)
障害年金を申請する際、下記の2つの要件のうち、どちらかを満たしている必要があります。
- 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの、公的年金の加入期間の3分の2以上の保険料が納付、または免除されていること
- 初診日において、65歳未満であり初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
なお、20歳未満の方で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は求められません。
また、初診日より前に、保険料の免除手続きを行っている期間がある場合、納付済み期間として扱われます。
ただし、納付要件は初診日の前日時点で判断されるため、初診日以降に免除申請をしたり、追納したりしても納付要件を満たすことにはならないため注意しましょう。
詳しくは、「障害年金の保険料納付要件とは?」をご参考ください。
【障害年金条件】基準に定める程度の障害状態にあること(障害状態該当要件)
障害年金の受給には、「障害認定日」に国が定めた障害認定基準に該当している必要があります。
障害認定日とは、障害の原因となった傷病の初診日から1年6ヶ月を経過した日、またはそれ以前に病気やケガが治った(症状が固定化した)日のことです。
ここでいう「治った日」とは、症状が安定してそれ以上治療効果が期待できなくなった日のことです。
また、1年6ヶ月を過ぎた日に障害年金の障害等級に該当しなくても、その後症状が悪化して障害等級に該当した場合も障害年金を受給できます。
障害年金はどんな人がもらえる?
続いて、障害年金の対象者となる主な病気やケガ、障害等級の目安について解説します。
障害年金の対象となる病気やケガ
障害年金の対象となる病気やケガは、眼や耳、手足などの障害だけでなく、精神障害(うつ病・統合失調症など)や、がん、心筋梗塞、糖尿病などの内部障害も対象となります。
以下に、対象となる主な病気やケガをまとめました。
- 身体障害:視覚障害、聴覚障害、肢体(手足)障害など
- 精神障害:統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、発達障害など
- 内部障害:呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど
上記で紹介しているのは、ほんの一部で、障害年金はほとんどの傷病が対象となります。
ただし、障害年金は基本的に傷病名ではなく、病気や障害によって日常生活や仕事にどの程度支障があるのかで判断されます。
障害年金の対象となる等級目安
障害年金の対象となる等級は、1級、2級、3級まであり、数字が小さい方が障害の程度が重くなります。
障害基礎年金の対象等級は、1級もしくは2級が支給対象ですが、障害厚生年金の場合、1級〜3級だけでなく、3級よりも軽い障害が残った場合にも障害手当金が支給されます。
以下に、1級〜3級と障害手当金の具体的な障害の程度の例をまとめました。
障害等級1級:日常生活において、他人の介助が不可欠な状態
【障害の程度例】
眼 | ・両眼の視力がそれぞれの視力(矯正視力)が0.03以下の人
・一眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下の人 |
耳 | 両耳の聴力レベルが100デジベル(※)以上の人 |
腕 | 両腕の機能に著しい障害がある、両手のすべての指を失ったなど |
脚 | 両足の機能に著しい障害がある、両足首からすべてを失ったなど |
障害等級2級:日常生活が困難で、場合によっては介護を必要とする状態
【障害の程度例】
眼 | ・両眼の視力(矯正視力)がそれぞれ0.07以下の人
・一眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下の人 |
耳 | 両耳の聴力レベルが90デジベル(※)以上の人 |
腕 | 両手の親指および人差し指または中指を欠く、片腕の機能に著しい障害があるなど |
脚 | 両足のすべての指を欠く、片足の機能に著しく障害があるなど |
※健常者が聞こえる最小の音の大きさは「0デジベル」となっており、90デジベル以上とはクラクションのような大きな音なら感じるという状態です。
障害等級3級:労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限がかかる状態
【障害の程度例】
眼 | 両眼の視力がそれぞれ0.01以下の人 |
耳 | 両耳の聴力が、40cm以上では通常の話し声を聞くことができない程度の人 |
腕 | 片腕の3大関節(肩・肘・手の関節)のうち、2関節が動かない、片手の親指と人差し指を失った人など |
脚 | 片足の3大関節(股関節・ひざ関節・足関節)のうち、2関節が動かない、両足の10本の指に著しい障害があるなど |
障害手当金:障害等級1級〜3級に該当しない程度でも、一定の障害状態にある場合かつ症状が治っている場合
【障害の程度例】
眼 | ・両眼の視力がそれぞれ0.6以下の人
・一眼の視力が0.1以下の人 |
耳 | 1耳の聴力が、耳に接しなければ話を理解することができない程度の人 |
腕 | 片腕の3大関節(肩・肘・手の関節)のうち、1関節に著しい機能障害がある人 |
脚 | 片足の3大関節(股関節・ひざ関節・足関節)のうち、1関節に著しい機能障害がある人 |
以上のように、部位ごとに障害の程度が定められています。
なお、令和4年1月1日より、眼の障害認定基準が改正されました。
より詳しく知りたい方は、【令和4年1月1日改正版】障害認定基準(全体版)をご参考ください。
障害年金の申請方法
障害年金の申請方法は大きく分けて「障害認定日請求」と「事後重症請求」の2種類があります。
ここからは、それぞれの請求方法について詳しく解説します。
障害認定日請求
障害認定日請求とは、障害認定日において障害状態が障害等級に該当していた場合に請求できる請求方法です。
そもそも障害認定日とは、初診日から1年6ヶ月を経過した日または、その期間内に傷病が治った場合は治った日のことをいいます。
障害認定日請求は原則として、障害認定日から3ヶ月以内の診断書が必要で、障害認定日が属する月の翌月分から障害年金を受給可能です。
障害認定日請求は何らかの理由で請求が遅れてしまっても、最大5年間までさかのぼって年金を受け取れます。
ただし、この場合、障害認定日当時の診断書と、請求日以前3ヶ月以内の診断書の2枚が必要となります。
事後重症請求
事後重症請求とは、障害認定日時点では障害等級に該当しなかったが、その後病気やケガが悪化して障害等級に該当するようになった場合に請求することをいいます。
事後重症請求では請求日前3ヶ月以内の診断書が必要で、請求日の翌月分から受給することが可能です。
ただし、事後重症請求は65歳に達する日(65歳の誕生日の前々日)を過ぎると請求できません。
また、事後重症請求はさかのぼって支給できないため、請求が1ヶ月遅れてしまうと、その分受給できる年金も1ヶ月分減ってしまいます。
したがって、障害認定日以降、傷病が悪化して障害等級に該当する状態になった場合は早めに請求するようにしましょう。
障害年金の申請の流れは?
障害年金は自動で支給が開始されるわけではなく、ご自身またはご家族による請求手続きが必要です。
そこでここからは、障害年金の申請の大まかな流れや必要書類などについてご説明します。
必要書類
障害年金の請求で必要となる主な書類は以下の通りです。
- 年金請求書
- 年金手帳
- 戸籍謄本
- 医師の診断書
- 受診状況等説明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 受取先の銀行口座の通帳またはキャッシュカードのコピー
申請をする方の状況によって必要な書類は変わってくるため、詳しくは日本年金機構のサイトをご参考ください。
申請先
障害年金の申請先は「障害基礎年金」か「障害厚生年金」によって変わります。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
・年金事務所
・お住まいの市区町村窓口 |
・年金事務所 |
なお、障害年金の請求者本人が窓口に行くことが難しい場合は、ご家族などの代理人が委託申請することも可能です。
申請の流れ
障害年金の申請の基本的な流れは以下の通りです。
ステップ1:初診日を調べる
障害年金の申請において、最初にしなければならないのが初診日の確認です。
初診日によって、請求制度が変わり障害年金の受給権発生にかかわるため、まずは初診日がいつだったのかを調べます。
ステップ2:保険料の納付要件の確認
初診日の前日における保険料の納付状況を確認し、「保険料の納付要件」を満たしているかをチェックします。
ステップ3:受診状況証明書の作成を依頼する
障害の原因となった病気やケガの初診の病院で、初診日を証明する「受診状況証明書」の作成を依頼します。
ステップ4:診断書の依頼
初診日の証明書類がそろったら、次は診断書の作成を医師に依頼します。
1枚の診断書で済む場合と、複数枚の診断書が必要になる場合があります。
ステップ5:病歴・就労状況等申立書の作成
病歴・就労状況申立書とは、発症から現在までの日常生活状況や就労状況を記載するものです。
診断書のように医師に作成してもらうのではなく、障害年金の申請者が作成します。
病歴・就労状況申立書の書き方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ステップ6:添付書類の準備
前項で紹介した戸籍謄本や年金請求書など、障害年金の申請に必要な添付書類をそろえます。
ステップ7:申請書類を提出する
書類がすべてそろったら申請書類一式を提出します。
以上で障害年金の請求は完了です。
請求書を提出後、約2〜3ヶ月後に結果が届きます。
障害年金の申請の流れについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
障害年金の請求でよくある質問
最後に障害年金の請求でよくある質問についてまとめました。
障害年金に年齢制限はある?
障害年金は原則として20歳以上65歳未満の方までしか請求ができません。
ただし、条件を満たせば65歳以上でも請求できるケースもあります。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
障害年金はいくらもらえる?
障害年金でもらえる金額は「障害基礎年金」か「障害厚生年金」によって変わります。
障害基礎年金は定額で、障害等級によって支給額が決まります。
【障害基礎年金】
1級 | 2級 |
1,020,000円 | 816,000円 |
一方、障害厚生年金は、厚生年金の加入月数や給料の金額に比例して額が変化します。
障害年金でもらえる金額についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
さいごに
障害年金は病気やケガなどにより、万一障害状態になった場合に生活の支えとなる重要な制度です。
しかし、障害年金は障害状態になったからといって、誰でも受給できるわけではありません。
まとめると、障害年金は以下の3つの要件を満たすことが必要です。
- 初診日要件
- 障害認定日要件
- 保険料納付要件
特に、保険料納付要件や障害状態該当要件は、自分で判断することが難しく、手続きをためらってしまう方も多いです。
もし、障害年金の条件に該当するか悩んでいる場合は、社労士といった専門家に一度相談してみることをおすすめします。