うつ病での障害年金は難しい?受給するためのポイントと障害認定基準

考える女性

障害年金を受給している人の障害で最も多いのが精神の障害であり、その精神の障害の中でも圧倒的に多いのがうつ病です。

うつ病は誰でも発症する可能性がある病気であり、服薬治療を続けていても長期間治らなかったり、再発しやすいと言われております。

うつ病で仕事ができなくなったり、仕事ができても制限がある方であれば障害年金を受給できる可能性があります。

しかし、うつ病で障害年金を申請する際は、いくつか注意すべき点があります。

そこで今回は、うつ病での障害年金の申請するポイントと認定基準、注意点などについて解説します。

うつ病での障害年金の受給は難しい?

他の障害で障害年金を受給するよりも、うつ病で障害年金を受給することは難しいと言われることがあります。
では、どんな部分が難しいと言われているのかをご説明していきます。

うつ病で障害年金を難しいとは言っても、しっかりと丁寧に準備をすれば大丈夫です!

社労士 石塚

診断書の内容が実際の症状よりも軽く書かれてしまう

うつ病の症状は、血液検査やレントゲンのような検査で重いかどうかを客観的に判断することができません。
抑うつ状態や不安、不眠、意欲低下などはいずれも自分が感じる主訴になり、他人が目で見てわかるものではありません。

そのため、うつ病であることは確定していても、そのうつ病の程度がどの程度重いのかどうかが主治医に伝わっていない場合があり、診断書の内容が軽いものとなってしまうのです。

障害年金が受給できるかどうかは「日常生活」で決まる

うつ病の症状がどの程度重いのか、障害年金で定める基準に該当するかどうかは、日常生活にどの程度支障があるのかで判断されます。

この考え方は障害年金独特です。

しかし、うつ病の方が通常の診察の際に、

私は、栄養バランスを考えて1日の献立を決め、スーパーに買い物に行き、調理をし、お皿に盛りつけて食べ、お皿を洗い、食器棚にしまうことができていません

とか

入浴は3日に1回しかできず、朝は歯磨きもせず、ひげも伸ばし放題で、一日中寝間着で過ごしています

というようなことを細かく主治医に伝えていることは稀です。
そうすると、障害年金の審査で見る肝心な日常生活の支障が主治医に伝わっていないのです。

この状態で主治医に障害年金の診断書作成を依頼すれば、どうなるでしょう?
当然に実際の日常生活の支障が書かれていない診断書が出来上がってしまいます。

転院した場合の障害認定日での遡及が難しい

障害認定日から1年以上経ってから障害年金の申請をする場合には、遡及請求のために診断書を2枚取得します。

障害認定日も現在も同じ病院に通院していれば問題ありませんが、病院が変わっていることがよくあります。
そうすると、何年かぶりに障害認定日の病院に行き、障害認定日当時の診断書作成を依頼することとなります。

カルテに基づいて過去の日付で診断書を書いてもらうので、カルテに書かれていないことは診断書に反映されません。
カルテに障害認定日当時のうつ病の詳しい症状や日常生活の支障が記載されていない場合には、やはり軽い内容の診断書ができあがってしまうのです。

本当は障害認定日当時は障害年金で定める基準に該当しているにも関わらず、診断書の内容が軽いために遡及が認められないということがよくあります。

うつ病で働けていると難しい

うつ病でも職場でいろいろな配慮を受けながら働いている方もいらっしゃると思います。
しかし、うつ病は見た目では症状の重さがわからない病気ですので、「働けている=うつ病の症状が軽い」と審査されてしまうことがあります。

うつ病を障害年金で受給するためには「初診日が重要」

まず、うつ病の症状が出てから最初に行った病院はどこだったか、その病院に初めて行った日はいつだったのかを突き止めることが重要です。
症状が出て初めて病院に行った日を障害年金では「初診日」と言います。

うつ病の方は、最初の病院ではうつ病という診断はされずに「不安神経症」や「不眠症」という診断をされる場合がありますが、うつ病と診断されていなくとも前駆症状で病院に行ったのであればそこが初診日となります。

間違えやすいのは、「うつ病と診断された病院」の初診日を、障害年金申請で使う初診日としてしまうことです。

うつ病と診断された病院ではなく、「うつ病の症状が出て初めて病院に行った日」になりますので間違えないようにしてください。

うつ病で障害年金をもらうための条件

初診日が確定したら、次に「初診日要件」「保険料納付要件」を満たしているかを確認します。

これはうつ病だけでなく、どの傷病でも共通する要件です。

ここでは、初診日要件と保険料納付要件のそれぞれの要件について解説します。

初診日要件

初診日要件とは、障害の原因となった傷病の初診日において国民年金または厚生年金保険の被保険者期間中であることです。

初診日に国民年金に加入していれば「障害基礎年金」が受給でき、初診日に厚生年金に加入していれば、「障害厚生年金」も受給できます。

保険料納付要件

保険料納付要件は、初診日の前日において次のいずれかを満たしていることが必要です。

  • 初診日のある月の前々月までの被保険者期間ついて保険料納付済期間と免除期間を合算した期間が3分の2以上納められている
  • 初診日のある月の前々月以前の1年間に未納がないこと

ただし、初診時の時点で20歳未満の方は保険料納付要件は問われません。

初診日要件と保険料納付要件を両方満たした上で、うつ病の障害状態が障害年金を受給できる程度かを判断します。

ですので、どんなにうつ病の症状が重く寝たきりの状態なったとしても、初診日要件と保険料納付要件を満たさなければ、うつ病で障害年金を受給することはできません。

うつ病で障害年金がもらえる程度とは~「障害認定基準」

うつ病がどの程度の症状であれば障害年金が受給できるかどうかを定めた基準があり、それを「障害認定基準」と言います。

うつ病の認定基準は以下の通りです。

1級の認定基準

高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級の認定基準

気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級の認定基準

気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

1級から3級までありますが、初診日に国民年金に加入していた方は1級か2級で、3級はありません。
3級を受給できるのは、初診日に厚生年金に加入していた方が対象となります。

また、うつ病で障害年金を受給できるかどうかは以下の点も考慮されます。

  • うつ病は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。
  • うつ病と統合失調症等のその他の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取り扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
  • 人格障害は、原則として認定の対象とならない。
  • 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。
注意

上記に記載のとおり、神経症(不安神経症、パニック障害、適応障害、強迫性障害など)や人格障害(境界性人格障害、パーソナリティー障害など)は、原則的には障害年金が受給できない病名となります。

→しかし神経症や人格障害の病名であっても障害年金を受給できるケースはあります。

上記に記載のとおり、神経症(不安神経症、パニック障害、適応障害、強迫性障害など)や人格障害(境界性人格障害、パーソナリティー障害など)は、原則的には障害年金が受給できない病名となります。

→しかし神経症や人格障害の病名であっても障害年金を受給できるケースはあります。

うつ病の診断書と日常生活能力について

うつ病で障害年金の請求(申請)をする場合には、精神の障害用診断書(様式第120号の4)を使用します。
そして、うつ病の症状がどの程度かどうかは日常生活能力によって審査され、等級が決められます。

その等級を公平に判定するために平成28年(2016年)9月より「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の運用が始まりました。
この「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、うつ病の診断書に記載される「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に応じた等級の目安が定められています。

日常生活は、食事や身辺の清潔保持など7つの場面として捉え、それがどの程度できるかを数値化し、障害年金の等級を公平に判断できるようになっているガイドラインです。

考えている人5分でわかる!精神の障害にかかる等級判定ガイドライン

うつ病の障害年金を受給する手続き(申請)方法について

うつ病で障害年金を請求(申請)する場合の流れは、以下のとおりです。

障害年金を申請する際には、多くの書類を取得したり作成しなければなりません。
一つずつ確実に進めていけば障害年金を受給することができますが、申請準備に数か月かかることもあります。

障害年金申請の流れ

詳しい申請方法は下記記事で解説していますのでご覧ください。

年金手帳障害年金申請の流れとは?7つのステップで徹底解説

うつ病で障害年金を申請する際の注意点

うつ病で障害年金を申請する際は、いくつか注意点があります。

最後に、うつ病で障害年金を申請する際の注意点について解説します。

診断書は提出前に必ず確認を

主治医は主に診察室での本人の状況を診て診断書を記載するため、障害状態をどうしても実際の症状よりも軽く書かれてしまうことも少なくありません。

仮に、実際の症状よりも軽い内容で書かれた診断書をそのまま提出すると、本来の症状よりも低い等級に決定したり、最悪の場合、不支給になってしまう可能性があります。

そのため、提出する前に必ず診断書の内容を必ずチェックしましょう。

特に、うつ病の障害年金の認定では病状だけでなく、「日常生活でどの程度支障が出ているか」がとても重要です。

したがって、診断書の作成依頼時に自分の日常生活状況を詳細に伝えたり、ご家族など普段の様子を知っている方から説明してもらったりして、少しでも正確な診断書を作成してもらうようにしましょう。

病歴・就労状況等申立書の作成は慎重に

病歴・就労状況等申立書とは、発病から現在までの経過や日常生活、就労状況などを申告する書類です。

医師に記載してもらう診断書とは異なり、病歴・就労状況等申立書は請求者自身で作成する必要があります。

ただし、診断書の内容とはかけ離れた内容を記載すると認定が不利になってしまう可能性があります。

特に、うつ病など精神障害の場合は、発病から初診、現在に至るまでの病歴が長くなるケースがあるため慎重に作成しましょう。

なお、請求者が病歴・就労状況等申立書の作成が難しい場合は、ご家族などに代行してもらうことも可能です。

病歴・就労状況等申立書の書き方については以下の記事をご参考ください。

病歴・就労状況等申立書の書き方は?基本の記入例から注意するべきポイントまで解説

さいごに

障害年金を受給している方の中で、一番多いのがうつ病の方と言っても過言ではないほど、圧倒的に多いのがうつ病の方です。

ご家族に手伝ってもらいながら障害年金の申請をして、実際に障害年金を受給できた方もいらっしゃるでしょう。

しかし、時間も労力もかけても、残念ながら不支給という結果に泣いている方も多いのです。

もしご自分では難しいと思われたり、準備をする気力が起こらない場合には、ぜひ社労士を頼ってください。

社労士と二人三脚で障害年金申請の準備を進めていきますので、精神的にも安心できるかと思います。