障害年金の永久認定と有期認定の違いとは?更新・支給再開の手続きも解説

障害年金の認定には、一度認定されれば更新手続きが不要となる「永久認定」と、定期的な更新手続きが必要になる「有期認定」があります。

どちらの認定になるかは、傷病の特性や障害状態の変動の可能性などにより認定医が個別に判断します。

そこで今回は、障害年金の永久認定と有期認定の認定基準や更新手続き、支給停止となった場合の再開方法などについて解説します。

障害年金の永久認定と有期認定とは?

冒頭でも述べたように、障害年金の障害程度の認定には、「永久認定」「有期認定」の2種類があります。

ここでは、それぞれの違いについて解説します。

永久認定

手足を失うなどの欠損障害のようにこれ以上軽傷に変わることがない場合、一度、障害等級が決定すると変更されることはありません。

これを「永久認定」といいます。

しかし、精神障害や体の内部障害のように障害の程度が変わることがある場合は、永久認定にはなりません。

なお、永久認定では等級も変わらないため、障害の症状が重くなった場合は「額改定請求」の手続きを行い等級を上げることができます。

有期認定

精神障害や内部疾患のように、障害状態が変わることがある障害の場合は「有期認定」となります。

有期認定となった場合は1〜5年に一度、更新手続きが必要です。

更新期間は傷病ごとに決められているわけではなく、それぞれの障害の状態に応じて認定医が決定しています。

更新の時期が近づくと、年金証書に記載されている診断書の指定月の3ヶ月前に障害状態確認届(診断書)が自宅に届きます。

引き続き障害年金の受給を希望する場合は、障害状態確認届を医師に記載してもらい、提出期限内に提出することが必要です。

障害年金の更新について

有期認定の場合、定期的に更新を行う必要があります。

ここからは、障害年金の更新について詳しく解説します。

更新時期

更新の期間は明確に決まっているわけではなく、障害の種類や状態によって1〜5年の間に更新の時期がきます

ただし、人工透析については合併症がなく、症状が安定している場合は原則として5年ごとの更新に統一されています。

また、70歳以上で人工透析を継続している方については、永久認定とされます。

更新に必要な書類

障害年金の更新の際に必要な書類は原則として、「障害状態確認届」のみです。

障害状態確認届は、更新年の誕生月の3ヶ月前の月末頃にご自宅に届きます。

障害状態確認届の内容は、初回の障害申請時に提出した診断書とだいたい同じ内容となっています。

更新の際は障害状態確認届を医師に作成してもらい、提出期限内に提出が必要です。

なお、障害状態確認届の提出期限は、指定された年月の末日までとなっています。

更新の流れ

障害年金の更新の主な流れは下記のとおりです。

1.障害状態確認届が到着

更新する年の誕生月の3ヶ月前の月末頃に、日本年金機構より障害状態確認届(診断書)が送付されます。

2.診断書を作成

医師と相談しながら、適切な診断書を作成してもらいます。

3.該当する提出先に期日内に提出

診断書は誕生月の末日までに提出が必要です。

また、障害年金の種類によって、提出先が異なります。

  • 障害基礎年金→市区町村村役場の国民年金課
  • 障害厚生年金→日本年金機構

4.提出後約3ヶ月で結果が到着

更新の結果は、提出月の約3ヶ月後に文書またはハガキで通知が届きます。

  • 等級に変更がない場合→「次回診断書提出年月のお知らせ」というハガキが届きます
  • 障害等級が変わる場合→「支給額変更通知書」が届きます
  • 支給停止の場合→「支給停止のお知らせ」が届きます

更新時の注意点

障害年金の更新審査は診断書のみで審査されるため、診断書の記載内容が非常に重要です。

そのため、提出前は医師に作成してもらった診断書を必ずチェックして、伝えた内容と少しでも違う事柄がある場合は、医師に訂正や加筆を依頼するようにしましょう。

特に、前回と診断書を作成したもらった医師が異なる場合は注意が必要です。

これは医師によって診断基準が異なるため、症状の書き方が変わってしまう可能性があるためです。

また、障害状態確認届が期限内に提出ができなかった場合、障害年金の支払いが一時止まる(差し止め)ことがあります。

もし、差し止めとなった場合でも、期限後に診断書を提出すれば年金額が差し止められた月にさかのぼって支給が再開されます。

差し止めにならないためにも、障害状態確認届が届いたら、すみやかに診断書の作成を依頼して余裕を持って更新手続きをすることが大切です。

更新で等級が下がった・支給停止の場合

更新で等級が下がったり、支給停止となったものの、決定された等級や内容に納得がいかない場合、不服申立てを行えます。

そこでここからは、不服申立ての手段について詳しく解説します。

審査請求、再審査請求を行う

更新の際に障害状態確認届を提出し、下位の等級に下がった場合や支給停止となった場合、「審査請求」を行うことができます。

ただし、審査請求は支給停止、もしくは等級が下がったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があります。

さらに、審査請求が棄却または却下されたなど、審査請求の決定に不服がある場合は、「再審査請求」を行うことが可能です。

しかし、再審査請求は決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヶ月以内に請求が必要です。

審査請求と再審査請求の2回の手続きをすると、結果がでるまでに1年近くかかってしまいます。

しかし、請求が通った場合、支給が停止になった時点、または等級が下がった時点までさかのぼって年金を受給することが可能です。

支給停止事由消滅届を提出する(支給停止時のみ)

障害年金の支給停止となった場合のみ、審査請求・再審査請求以外に「支給停止事由消滅届」を提出して、再度支給再開を求めることができます。

支給停止事由消滅届には、障害年金が停止されてから提出までの制限がありません。

そのため、審査請求の期限内に請求ができなかった場合は、支給停止事由消滅届を提出することで支給を再開させられる可能性があります。

ただし、支給停止事由消滅届の提出には、主治医が作成した診断書の添付が必要です。

そのため、支給停止となった旨を主治医に話した上で、自身の現在の症状や状況をわかりやすく説明し、相談することが求められます。

なお、審査請求と再審査請求と異なり、支給停止事由消滅届の場合は、認定されれば支給停止事由消滅届を提出した翌月分からの受給となります。

障害年金の「額改定請求」とは?

障害年金の受給中に障害が重くなった場合、「額改定請求」をすれば等級変更を請求することが可能です。

そこで最後に、障害年金の額改定請求について解説します。

額改定請求とは

障害年金を受給中に症状が重くなった場合は、障害等級の増額改定請求を行えます。

これを「額改定請求」といいます。

額改定請求には、請求日の3ヶ月以内の症状による診断書が必要です。

請求の結果、現在受給している等級より上の等級に認められると、請求した月の翌月分から年金額が改定されます。

ただし、額改定請求はさかのぼって請求ができないため、障害状態が重くなった場合は、早めに請求するようにしましょう。

永久認定の額改定請求は可能?

永久認定であっても額改定請求は行うことができます。

しかし、額改定請求により永久認定が有期認定になってしまう可能性もあるため慎重に検討することが大切です。

例えば、2級の永久認定を受けておられる方が1級の額改定を行い、1級になったとしても1級の有期認定になる可能性もあります。

反対に、1級にはならずに2級の有期認定になってしまうリスクもあるため、永久認定の方で額改定請求を行う場合は、慎重に検討しましょう。

額改定請求の注意点

額改定請求は原則として、障害年金の受給権が発生した日、または額改定審査を受けた日から1年を経過した後でなければ請求ができません。

また、これまで一度も2級以上に該当したことがない3級の障害厚生年金の受給権者については、65歳以降に額改定請求を行うことはできません。

ただし、平成26年以降、省令で定められた障害の状態が悪化したと認められるときは、1年を待たずに額改定請求が可能です。

1年を待たずに額改定請求ができるケース

1年を待たずに額改定請求ができるケースとしては以下のとおりです。

眼・聴覚・言語機能の障害

1 両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの
2 一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
3 両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの
4 一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
5 ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心の視野角度が28度以下のもの
6 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
7 ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心の視野角度が56度以下のもの
8 ゴールド型視野計による測定の結果、求心性視野狭窄または輪状暗点があるものについて、I/2視標による両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの
9 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
10 両耳の聴力レベルが100デジベル以上のもの
11 両耳の聴力レベルが90デジベル以上のもの
12 喉頭をすべて摘出したもの

 

肢体の障害

13 両上肢のすべての指を欠くもの
14 両下肢を足関節以上で欠くもの
15 両上肢の親指および人差し指または中指を欠くもの
16 一上肢のすべての指を欠くもの
17 両下肢のすべての指を欠くもの
18 一下肢を足関節以上で欠くもの
19 四肢または手指もしくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害または脊髄の器質的な障害によるものについては、当該状態かが6ヶ月以上継続して行っている場合に限る)

 

内部障害

20 心臓を移植、または人工心臓(補助人工心臓を含む)を装着したもの
21 心臓再同期医療機器(心不全を治療するための医療機器)を装着したもの
22 人工透析を行っているもの(3ヶ月以上継続して行っている場合に限る)

 

その他の障害

23 6ヶ月以上継続して人工肛門を使用し、かつ人工膀胱(ストーマの処置を行わないものに限る)を使用しているもの
24 人工肛門を使用し、かつ尿路の変更処置を行ったもの(人工肛門を使用した状態および尿路の変更を行った状態が6ヶ月以上継続している場合に限る)
25 人工肛門を使用し、かつ排尿の機能に障害を残す状態(留置カーテルの使用または自己導尿(カテーテルを用いて自ら排尿することをいう)を常に必要とする状態をいう)にあるもの(人工肛門を使用した状態および排尿の機能に障害を残す状態が6ヶ月以上継続している場合に限る)
26 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能不可逆的に停止するに至った状態をいう)または遷延性植物状態(意識障害により昏睡状態にあることで、当該状態が3ヶ月以上続している場合に限る)となったもの
27 人工呼吸器を装着したもの(1ヶ月以上常時装着している場合に限る)

参考:日本年金機構 障害年金の額改定請求のご案内

さいごに

障害年金の認定には「有期認定」と「永久認定」があり、永久認定であれば一度認定されれば更新の手続きが不要となります。

一方、有期認定の場合は、障害の種類や状態によって1〜5年の間に一度、障害状態確認届の提出が必要です。

なお、永久認定でも障害状態が悪化すれば額改定請求で等級を上げられる可能性もあります。

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