うつ病や発達障害などの精神疾患を抱えながらアルバイトなどで働いている方の中には、「働きながら障害年金はもらえるの?」といった疑問を持っている方も多いと思います。
結論としては、精神疾患を患いながら就労している方でも障害年金を受給できる可能性はあります。
ただし、「就労状況」によっては障害年金が不支給となる可能性もあるため、精神疾患で働きながら障害年金を申請する際は注意が必要です。
そこで今回は、精神疾患で就労しながら障害年金を申請する際に注意すべきポイントや用意すべき書類を解説していきます。
精神疾患で働きながら障害年金の申請ができるのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
アルバイトしながらの障害年金受給は難しい?
原則として、障害年金は以下の3つの要件を満たしていることが必要です。
- 初診日に関する要件:初診日における加入制度
- 保険料納付に関する要件:初診日の前日における保険料の納付状況
- 障害の程度に関する要件:認定日もしくは現在における障害状態
このように、支給要件に「就労の有無」に関する要件はないため、精神疾患を抱えながらアルバイトで働いていても障害年金を受給できる可能性はあります。
障害年金の支給要件について詳しくは、以下の記事をご参考ください。
しかし、就労状況によっては、3つの要件のうち「障害の程度に関する要件」の審査基準を満たしていないと判断されて、不支給になる恐れがあります。
これは、就労状態によって「仕事ができる程度の状態であれば、障害の程度はそれほど重くないだろう」とみなされてしまうためです。
特に、精神系の障害場合は、審査基準が障害の程度が数値ではなく文言で表現されるものが多くあります。
そのため、精神疾患で障害年金を受給する場合、「就労していても障害の程度に関する要件に該当している」ことを示すことが重要となります。
精神疾患で障害年金を受給できた事例
ここでは、精神疾患で障害年金を受給できた例を1つご紹介します。
2022年の4月に、東京地裁は働いていることを理由に国が障害年金が支給されないのは不当とし、国の決定を取り消し、障害基礎年金2級の支給を命じる判決を出しました。
東京地裁の判決により、発達障害と軽度の知的障害がある25歳の男性は、働きながら障害年金をもらえるという結果になったのです。
このように、精神疾患を抱えながら働いていても障害年金を受給できる可能性はあります。
参照:一般社団法人共同通信社
実際に3人に1人は働きながら障害年金を受給している
実際には、障害年金を受給している3人に1人は働きながら障害年金を受給しています。
また、審査に厳しいといわれる精神疾患の方でも4人に1人が働きながら障害年金を受給しています。
さらに、アルバイトのみならず正社員でも障害年金を受給している方も少なくありません。
上記の数値は厚生労働省が2019年に出したデータであり、年々、働きながらでも障害年金を受給できる事例は増えてきているのです。
一般の方のようにフルタイムで働いてお給料をもらっていても、障害年金が支給される可能性はありますので、まずは申請を検討してみましょう。
障害年金の申請の際に確認したい3つのポイント
ここでは、障害年金の申請の際に確認したい3つのポイントを紹介していきます
- 就労状況
- 仕事内容
- 職場での援助や意思疎通の内容
後ほど紹介する、障害年金の申請に必要な書類を記載する際に必要になってくるので、確認し、メモしておきましょう。
ポイントを確認し、申請書類に細かく記載すれば審査に通りやすくなるので、参考にしてみてください。
就労状況
勤務中はもちろん出勤中や退勤中において、障害によりどんな苦労があるのかまとめておきましょう。
具体的には以下のような内容です。
- 精神疾患のため公共交通機関を使って1人で出勤するのが困難
- 障害があるため出勤や退勤時の移動に時間がかかる
- 疲れやすいため他の人と比べて休憩時間が多い
上記のように、障害により苦労している状況を細かくメモしておくことが大切です。
仕事内容
次に仕事内容で苦労している内容もまとめておきましょう。
具体的には以下のような内容です。
- 忙しくなるとパニックになって業務に対応できなくなる
- 臨機応変な対応ができないため単純な業務のみ行っている
- 病気を発症後、部署や職種の変更があった
仕事内容においては、より細かく苦労した場面や困っていることをまとめておきましょう。
職場での援助や意思疎通の内容
就労状況や仕事内容のみでも大丈夫ですが、職場での援助や意思疎通の内容までまとめておくと、より説得力が増して審査に通りやすくなります。
具体的には以下の内容です。
- 複雑な業務や会議の参加など一部の業務が免除されている
- 他の人と違い業務の内容はすべて簡単にマニュアル化されている
- あいまいな指示や複数の指示が理解できず困っている
仕事内容と一緒にしても大丈夫ですが、より細かくまとめておきたい方は参考にしてみてください。
障害年金の審査に用意すべき5つの添付書類
本来、障害年金の申請には、主に診断書、病歴・就労状況等申立書、受診状況等証明書、障害年金裁定請求書の4つが必要です。
しかし、これらの書類だけでは正確に症状・状況を理解してもらえず、不支給になる可能性もあります。
そこで上記の書類に加えて、障害年金の審査に用意すべき以下の5つの添付書類について紹介します。
- 医師の意見書
- 職場での支援状況等申立書
- 職場関係者からの評価(意見書)
- 支援者などからの申立書
- 症状が確認できる書類
1つずつ解説していくので参考にしてみてください。
1.医師の意見書
診断書だけもらい、障害年金を申請する人も多いですが、診断書だけでは日常の生活状況や職場での勤務状況など、細かい内容を書ききれません。
そのため、障害年金を受給するための根拠を示すために、診断書とは別に医師の意見書も用意しましょう。
意見書は主治医に相談すれば作成してもらえます。
2.職場での支援状況等申立書
支援状況等申立書とは、就労において一般の社員とは違い、免除を受けている内容を記載する申立書です。
職場での業務内容や休憩時間、出社、退社などにおいて、障害があることによって免状されている項目があれば、支援状況等申立書に記載しておきましょう。
職場での支援状況等申立書に関しては、障害年金を申請する市町村の市役所で受け取れます。
3.職場関係者からの評価(意見書)
職場関係者からの意見書は、勤務時の様子を細かく記載する書類です。
先ほど紹介した、支援状況等申立書よりもより細かく勤務状況を説明できるので、障害があることによって、業務にどんな支障をきたしているのかを記載できます。
自分で記入してもいいですが、上司や同僚など第3者に記入してもらうことで客観性が増します。
4.支援者などからの申立書
障害年金の審査では、私生活の状況も審査対象になります。
日々の生活でどんなことに苦労しているかなど、自分の障害について説明するためにも用意しておきましょう。
こちらも家族や友人など、第3者に記入してもらいましょう。
5.症状が確認できる書類
障害を患っていることによって、どんな症状があるかを写真に収めて提出するのも、審査を通すコツです。
障害により歩行が困難であることや、精神的な障害によって部屋が荒れてしまっているなど、写真で撮影しておきましょう。
文章だけではなく、写真で説明することでより説得力が増します。
障害年金が支給停止になったときの2つの対処法
お伝えしてきたとおり、就労状況によっては障害年金はバイトをしながらでも受給が可能です。
しかし、障害年金を受給後にバイトを始めたことにより、翌年の更新時に障害の程度が軽くなったと判断されて、障害年金が支給停止になってしまう可能性もあります。
そこで最後に、障害年金が支給停止になったときの2つの対処法について解説します。
審査請求・再審査請求で不服申し立て
支給が停止された場合、まずは審査請求で不服申し立てを行いましょう。
審査請求は支給停止の通知がきた日の翌日から3ヶ月以内に申請を行わなければいけません。
審査請求をしても訴えが認められなかった場合は、社会保険審査会に対して「再審査請求」を行うことが可能です。
なお、再審査請求の期限は、決定書が送付された日の翌日から2ヶ月以内となっています。
審査が2回までいってしまうと、結果がでるのに約1年ほどかかってしまいますが、審査に通った場合は審査で待たされた期間の年金も支給されます。
支給停止事由消滅届に診断書等を添えて提出する
障害年金の支給が停止された後に、再び症状が重くなった場合は、支給停止事由消滅届に診断書等を添えて再申請できます。
支給停止事由消滅届には、障害年金が停止されてから提出までの期間の制限はありません。
しかし、このときに注意したいのは前回と同じ内容の診断書では、審査に通る確率が低くなります。
前回と比べて、どのように症状が重くなったのかを主治医と相談し、診断書に反映してもらいましょう。
さいごに
この記事でもお伝えしたように障害年金をもらっている3人に1人は、働きながら障害年金を受給しています。
しかし、精神疾患の方の場合、働きながら障害年金を申請する際は注意が必要です。
精神疾患ので働きながら障害年金を申請する際は、就労の状況に関する書類をしっかりと準備して申請することが重要です。
障害年金の申請に不安がある方は、社労士といった専門家にご相談されることをおすすめいたします。