発達障害とうつ病が併存している場合の障害年金|初診日・診断書・審査のポイントを解説

発達障害のある方が、うつ病を併発することがあります。

たとえば、

「子どもの頃から人間関係がうまくいかなかった」
「仕事で同じミスを繰り返してしまう」
「職場の環境に適応できない」
「周囲とのコミュニケーションに強いストレスを感じる」

といった状態が続き、社会人になってからうつ状態となって精神科や心療内科を受診し、その後に発達障害があることが分かったというケースです。

反対に、すでに発達障害と診断されている方が、仕事や人間関係などで強いストレスを受け、後からうつ病を発症することもあります。

このように発達障害とうつ病の両方がある場合、

「障害年金は発達障害とうつ病のどちらで申請するの?」
「病気が2つあれば障害年金の等級は上がる?」
「うつ病で最初に病院へ行って、後から発達障害と診断された場合の初診日は?」
「診断書には発達障害とうつ病の両方を書いてもらうの?」

と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

発達障害もうつ病も、障害年金の認定対象となり得る精神の障害です。日本年金機構も、障害年金の対象となる精神障害として発達障害や双極性障害などを例示しており、精神の障害については障害認定基準に基づいて障害の程度が判断されます。

ただし、

「発達障害+うつ病だから2級」

というように、病名の数だけで障害等級が決まるわけではありません。

大切なのは、発達障害とうつ病によって実際の日常生活や仕事がどの程度制限されているのかということです。

この記事では、発達障害とうつ病が併存している場合の障害年金について、初診日の考え方、診断書、日常生活能力、就労状況など、申請時に特に注意したいポイントを障害年金専門の社会保険労務士が解説します。

目次

発達障害とうつ病の両方があっても障害年金を申請できる

発達障害とうつ病が併存している場合でも、一定以上の障害状態であれば障害年金を申請することができます。

障害年金では、

「病名が一つでなければならない」

ということはありません。

実際の精神科医療では、複数の精神疾患や障害が併存していることも珍しくありません。

たとえば、

・ASD(自閉スペクトラム症)とうつ病
・ADHD(注意欠如・多動症)とうつ病
・ASDとADHDとうつ病

など、複数の診断がついていることがあります。

このような場合でも、障害年金の対象になり得ます。

「どちらの病気が重いか」だけで考えない

発達障害とうつ病が併存している場合、

「発達障害とうつ病のどちらをメインに申請すればいいですか?」

と考える方がいます。

しかし、精神の障害では、現在の精神症状や日常生活上の制限などを確認しながら障害状態が判断されます。

発達障害の特性による困難とうつ病による症状を完全に切り分けることが難しいケースもあります。

たとえば、

・発達障害による対人関係の苦手さ
・うつ病による意欲低下
・発達障害による予定管理の難しさ
・うつ病による集中力低下
・発達障害による社会適応の難しさ
・うつ病による強い倦怠感

などが重なることで、日常生活がさらに難しくなることがあります。

そのため、「どちらの病気の症状なのか」だけにこだわるのではなく、現在の生活全体がどの程度制限されているのかを確認することが大切です。

発達障害とうつ病が併存していると障害等級は上がる?

「病気が2つあるのだから、障害年金の等級も重くなりますか?」

という質問もあります。

しかし、発達障害とうつ病の両方が診断されているというだけで、自動的に障害等級が上がるわけではありません。

障害年金は、病名の数によって等級を決める制度ではないからです。

障害等級は、障害認定基準に基づいて、その人の日常生活能力や労働能力などを含めた障害状態から判断されます。日本年金機構も、障害年金について、障害により日常生活に継続的な制限が生じ支援が必要な状態を捉え、その程度に応じて障害等級を決定すると説明しています。

併存することで生活上の困難が大きくなることはある

病名が2つあるから等級が上がるわけではありませんが、発達障害とうつ病が併存することによって、結果として日常生活への制限が大きくなることはあります。

たとえば、発達障害だけのときには何とか仕事を続けられていた方が、うつ病を併発したことで、

・朝起きることができない
・出勤できなくなった
・仕事中に集中できない
・ミスがさらに増えた
・人と話すことができなくなった
・帰宅後は何もできず寝ている
・食事や入浴もできなくなった

という状態になることがあります。

この場合、重要なのは、

「病気が2つあること」

ではなく、

「病気の影響によって生活がどこまで制限されているか」

です。

発達障害とうつ病が併存している場合の初診日は重要

発達障害とうつ病が併存しているケースで、特に注意したいのが「初診日」です。

障害年金における初診日とは、障害の原因となった傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。

初診日は、

・障害基礎年金になるのか
・障害厚生年金になるのか
・保険料納付要件を満たしているか
・障害認定日がいつになるのか

などに関係する、非常に重要な日です。

最初はうつ病、後から発達障害と診断されたケース

実務上よくあるのが、

「最初はうつ病と診断され、その後の診療で発達障害があることが分かった」

というケースです。

たとえば、30歳の会社員の方が、

「職場に適応できない」
「仕事で失敗を繰り返す」
「気分が落ち込み、会社に行けない」

という理由で精神科を受診し、最初はうつ病と診断されたとします。

その後、治療を続ける中で、

・子どもの頃から対人関係が苦手だった
・強いこだわりがあった
・忘れ物が多かった
・仕事の指示を理解することが難しかった
・環境の変化への適応が苦手だった

といった特徴が分かり、数年後にASDやADHDと診断されたとします。

このような場合、障害年金の初診日について、後から発達障害と診断された日だけを見るとは限りません。

既存の当事務所の記事でも紹介していますが、精神疾患で受診した後に発達障害と診断されたケースでは、先行する精神疾患で初めて診療を受けた日が初診日として重要になることがあります。

「発達障害は生まれつきだから出生日が初診日」とは限らない

発達障害は通常、低年齢から特性が現れるものですが、

「発達障害は生まれつきだから、初診日は出生日ですか?」

と質問されることがあります。

知的障害を伴わない発達障害の場合、単純に出生日を障害年金の初診日とするわけではありません。

実際にどのような症状で、いつ初めて医療機関を受診したのかを確認する必要があります。

一方、生来性の知的障害を伴う場合などは扱いが異なります。

発達障害とうつ病が併存している場合の初診日は、受診歴や診断の経過によって判断が複雑になることがあるため、単に現在の診断名だけから決めないことが大切です。

うつ病の受診歴が発達障害の診断よりかなり前にある場合

たとえば、

25歳 うつ病で精神科を受診
27歳 症状が改善して通院終了
35歳 再びうつ状態となって精神科受診
36歳 発達障害と診断

という経過だった場合、

「25歳の受診と現在の状態がどのような関係にあるのか」

を確認する必要があります。

診断名だけを見て、

「今は発達障害だから36歳が初診日」

とは単純に決められません。

過去の精神科や心療内科の受診歴がある方は、障害年金を申請する前に、その経過をできるだけ正確に整理しましょう。

発達障害とうつ病が併存する場合の診断書

発達障害とうつ病による障害年金の申請では、通常「精神の障害用」の診断書を使用します。日本年金機構は精神の障害用診断書と、その記載要領を公開しています。

この診断書には、

・傷病名
・発病から現在までの経過
・現在の病状
・治療内容
・日常生活能力
・就労状況

などを記載する項目があります。

発達障害とうつ病が併存している場合にも、現在の病状や実際の日常生活の状態が診断書に適切に反映されていることが重要です。

診断名が2つあれば有利になるわけではない

「診断書に発達障害とうつ病の両方を書いてもらえば、障害年金が受給しやすくなりますか?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、病名を多く書けば有利になるというものではありません。

重要なのは病名ではなく、実際の障害状態です。

たとえば、

「ASD・ADHD・うつ病」

という3つの診断名が書かれていても、日常生活をほぼ自立して送り、特別な配慮を受けず安定して働くことができているのであれば、病名の数だけを理由に重く評価されるわけではありません。

反対に、診断名の数が少なくても、日常生活に大きな援助が必要であれば、その実際の状態が重要になります。

発達障害の特性とうつ症状の両方を主治医に伝える

発達障害とうつ病が併存している場合には、現在困っていることについて、普段から主治医に伝えておくことが大切です。

たとえば発達障害によって、

・対人関係をうまく築けない
・相手の意図を理解しにくい
・予定変更に対応できない
・複数の作業を同時にできない
・忘れ物や紛失が多い
・金銭管理が苦手

といった問題があるかもしれません。

さらにうつ病によって、

・意欲が出ない
・朝起きられない
・食事を取れない
・入浴できない
・強い疲労感がある
・何も楽しめない
・外出できない

という問題が加わる場合があります。

どちらの病気の症状かを本人が医学的に判断する必要はありません。

大切なのは、実際に生活の中で何が起きているのかを具体的に主治医に伝えることです。

障害年金では「日常生活能力」が重要

発達障害とうつ病が併存している場合にも、精神の障害用診断書の「日常生活能力」は重要な項目です。

日本年金機構は、精神の障害について、日常生活能力などを含む診断書の内容をもとに障害状態を判断しています。診断書を適切に作成するため、医師向けに記載要領も設けられています。

日常生活能力の判定では、

・適切な食事
・身辺の清潔保持
・金銭管理と買い物
・通院と服薬
・他人との意思伝達及び対人関係
・身辺の安全保持及び危機対応
・社会性

などについて評価されます。

「発達障害の問題」と「うつ病の問題」を無理に分ける必要はない

たとえば、一人で買い物ができないという場合、

発達障害によって、

「必要なものを計画的に選ぶことが苦手」

なのかもしれません。

一方、うつ病によって、

「そもそも外出する気力がない」

のかもしれません。

実際にはその両方が重なっていることもあります。

障害年金を申請する本人が、

「これはASDの症状」
「これはうつ病の症状」

と医学的に分類する必要はありません。

むしろ、

「一人で買い物に行けない」
「母親に必要な物を買ってきてもらっている」
「自分で行く場合も、買う物を家族にメモしてもらっている」

という実際の生活状況を説明することが大切です。

「できるか」ではなく「どのようにできているか」を考える

精神疾患の障害年金では、

「できていますか?」

と質問されたときの答え方にも注意が必要です。

たとえば、

「食事はできます」

という場合でも、

実際には母親が毎日食事を用意しており、自分では調理や栄養管理ができないかもしれません。

「通院できます」

という場合でも、

家族が受診日を管理し、当日に声をかけてもらい、病院まで付き添ってもらっていることがあります。

結果としてできていることと、自立して適切にできていることは同じではありません。

家族や支援者からどのような援助を受けているのかまで整理することが重要です。

発達障害とうつ病が併存していて働いている場合

発達障害とうつ病がありながら仕事を続けている方もいます。

「働いていたら障害年金はもらえませんか?」

と心配される方もいますが、働いているという事実だけで障害年金の対象外になるわけではありません。

ただし、精神疾患の障害年金では就労状況も重要な判断材料となります。

一般雇用か障害者雇用かだけでは判断できない

働いている場合には、

・一般雇用か障害者雇用か
・勤務時間
・勤務日数
・仕事内容
・職場で受けている配慮
・上司や同僚から受けている援助
・欠勤、遅刻、早退
・休職歴
・仕事を継続できている期間

などを確認します。

たとえば一般雇用であっても、

・業務内容を限定してもらっている
・電話応対を免除されている
・上司が毎回仕事を確認している
・在宅勤務を認めてもらっている
・頻繁に欠勤している

という場合があります。

反対に、障害者雇用だからといって、それだけで障害年金の等級に該当するわけではありません。

仕事だけで精一杯になっていないか

発達障害とうつ病が併存している方では、

「仕事は何とか続けているけれど、仕事以外の生活がほとんどできない」

ということもあります。

たとえば、

・帰宅するとそのまま寝てしまう
・夕食は家族が用意している
・休日は一日中寝ている
・掃除や洗濯を家族に任せている
・仕事以外ではほとんど外出しない

といった状態です。

「週5日働いている」という情報だけでは、生活全体の状態は分かりません。

就労を維持するために、家庭生活にどのような影響が出ているのかも含めて確認することが大切です。

大人になって発達障害と診断された場合も申請できる

発達障害というと、

「子どもの頃に診断されていなければ障害年金は受給できない」

と思う方もいます。

しかし、大人になってから初めて発達障害と診断される方もいます。

特に、

・学生時代までは家族の支援によって生活できていた
・学校では決められたスケジュールがあった
・勉強はできたため問題が目立たなかった

という方が、就職後に初めて大きな困難を感じることがあります。

就職後にうつ病となり、発達障害が分かることもある

学校生活では目立った問題がなかったものの、就職すると、

・複数の仕事を優先順位をつけて処理できない
・曖昧な指示を理解できない
・職場の人間関係をうまく築けない
・予定外の出来事に対応できない
・同じミスを繰り返す

などの問題が現れることがあります。

周囲から注意を受け続けたり、自分でも「なぜ普通にできないのだろう」と悩んだ結果、うつ状態となって精神科を受診するケースがあります。

そして治療の過程で、それまでの生育歴や仕事上の問題を詳しく確認した結果、発達障害が判明することもあります。

このような経過では、初診日の確認が特に重要です。

発達障害とうつ病が併存する場合の病歴・就労状況等申立書

障害年金の申請では、診断書とともに「病歴・就労状況等申立書」を提出します。日本年金機構も障害年金請求用の書類としてこの申立書を用意しています。

発達障害とうつ病が併存している場合、この申立書では現在の症状だけではなく、これまでの経過を分かりやすく整理することが重要です。

発達障害では生育歴も整理する

発達障害の場合には、

・幼少期
・小学校
・中学校
・高校
・大学や専門学校
・就職後

といった時期ごとに、どのような困りごとがあったのかを整理します。

たとえば、

・集団行動が苦手だった
・友達ができなかった
・忘れ物が多かった
・強いこだわりがあった
・予定変更で混乱していた
・不登校になった
・仕事が長続きしなかった
・転職を繰り返した

などです。

ただし、「発達障害らしいエピソードをたくさん書けばよい」ということではありません。

現在の障害状態に至るまでの経過として必要な内容を整理します。

うつ病を発症した前後の変化も重要

うつ病を併存している場合には、

「発達障害の特性は以前からあったが、うつ病の発症によって何が変わったのか」

という点も分かりやすく整理するとよいでしょう。

たとえば、

発達障害の特性はあったものの、以前は何とか仕事ができていた。

しかし職場での失敗や対人関係の問題が続き、次第に気分が落ち込み、出勤できなくなった。

うつ病発症後は、それまで一人で行っていた食事、掃除、買い物などもできなくなり、家族の援助が必要になった。

このように、現在までの経過を時系列で整理することで、病状の変化が伝わりやすくなります。

診断書と病歴・就労状況等申立書の整合性も確認する

発達障害とうつ病が併存しているケースでは、これまでの病歴が複雑になりやすいという特徴があります。

最初はうつ病。

その後、不安障害。

さらに数年後にASD。

その後ADHDも診断された。

というように、診断名が変わったり増えたりすることがあります。

そのため、診断書と病歴・就労状況等申立書の内容に大きな食い違いが生じないよう注意が必要です。

診断名が変わった経過を隠す必要はない

障害年金を申請するために、

「以前はうつ病だったことを書かないほうがいいでしょうか?」

と考える必要はありません。

過去の受診歴は、初診日の確認にも関係します。

障害年金では、都合のよい診断名だけを取り出すのではなく、実際の受診歴や病歴に沿って申請することが大切です。

むしろ、以前の精神科受診を申告せず、後から過去の受診歴が分かることで初診日の確認が必要になることがあります。

発達障害とうつ病が併存している場合には、精神科・心療内科などの過去の受診歴を一度整理してから手続きを進めることをおすすめします。

「うつ病が治ったら発達障害だけになる?」更新時にも注意

障害年金が認められた後も、精神疾患の場合には一定期間ごとに障害状態確認届(診断書)を提出し、現在の障害状態について確認を受けることがあります。日本年金機構は、障害状態に応じて必要な年に障害状態確認届を提出し、引き続き受給権があるか確認するとしています。

発達障害とうつ病が併存している場合、

「うつ病の症状は以前より改善したけれど、発達障害による生活上の困難は残っている」

ということがあります。

診断名ではなく更新時点の障害状態が重要

更新時にも、

「以前と同じ病名が書かれているか」

だけで判断されるものではありません。

現在の日常生活能力や就労状況、必要としている援助などが重要です。

うつ症状が軽くなった結果、日常生活上の制限が大幅に減ったのであれば、障害等級が変更されたり支給停止となったりする可能性があります。

一方で、うつ症状が改善しても発達障害による社会適応や日常生活上の困難が強く残っている場合もあります。

更新時には、その時点の実際の状態が診断書に反映されることが大切です。

発達障害とうつ病の併存でよくある質問

発達障害とうつ病の両方があれば障害年金2級になりますか?

病名が2つあるという理由だけで2級になることはありません。

障害年金では、日常生活能力や就労状況、病状などから障害状態を判断します。

発達障害とうつ病が併存することで生活上の制限が大きくなっている場合、その実際の状態が審査の対象になります。

発達障害とうつ病で障害年金を2つ受給できますか?

発達障害とうつ病という診断名が2つあるから、それぞれについて単純に別々の障害年金が2本支給されるという考え方にはなりません。

精神の障害として現在どのような状態にあるのかを確認し、障害年金制度の認定基準に基づいて判断されます。

「病名が2つだから年金も2つ」という制度ではありません。

うつ病で障害年金を受給していて、後から発達障害と診断されたらどうなりますか?

後から発達障害と診断されたという事実だけで、直ちに障害年金の等級が変わるわけではありません。

重要なのは、現在の障害状態です。

発達障害の特性を含めて日常生活上の制限が大きくなっているのであれば、更新などの際にはその実際の状態を主治医に伝えておくことが大切です。

発達障害だけでは軽いけれど、うつ病もある場合は申請できますか?

申請できる可能性はあります。

発達障害だけ、うつ病だけと分けて考えるのではなく、現在の精神状態によって日常生活や仕事にどの程度制限が生じているのかを確認します。

ただし、併存しているというだけで障害等級に該当するわけではありません。

現在はうつ病としか診断されていませんが、自分では発達障害だと思います。発達障害として申請できますか?

障害年金の申請者自身が診断名を決めることはできません。

発達障害かどうかは医師が診断します。

「自分は発達障害だと思うから、発達障害として障害年金を申請したい」ということではなく、現在主治医からどのような診断を受けているのかを確認したうえで手続きを考える必要があります。

発達障害の可能性について気になることがあるのであれば、まずは主治医に相談しましょう。

最初の病院では適応障害、次の病院でうつ病、後から発達障害と診断されました。初診日はどこですか?

このようなケースでは、診断名だけで初診日を決めることはできません。

最初の適応障害による受診から、現在のうつ病や発達障害までの経過を確認する必要があります。

「発達障害と診断された病院が初診」
「うつ病と診断された日が初診」

と自己判断せず、これまでの受診歴を整理することが大切です。

発達障害とうつ病が併存しているときに申請前に確認したいこと

発達障害とうつ病の両方がある方が障害年金を検討するときには、少なくとも次の点を整理しておくことをおすすめします。

・精神科や心療内科に初めて受診したのはいつか
・最初はどのような症状で受診したのか
・これまで診断名がどのように変わったのか
・発達障害と診断されたのはいつか
・うつ症状はいつ頃から現れたのか
・現在の日常生活で何に困っているのか
・家族や支援者からどのような援助を受けているのか
・現在働いているか
・働いている場合、どのような配慮を受けているか

発達障害とうつ病が併存するケースでは、現在の診断書だけを見るのではなく、それまでの病歴を整理することが特に重要です。

「どちらの病気で申請するか」から考えすぎない

障害年金を申請する方は、

「発達障害と書いたほうが有利?」
「うつ病をメインにしたほうが2級になりやすい?」

と考えてしまうことがあります。

しかし、受給しやすい病名を選ぶという考え方は適切ではありません。

障害年金では、実際の診断、病歴、現在の障害状態に基づいて申請します。

まず、

「自分の現在の生活がどのような状態なのか」
「これまでどのような経過をたどってきたのか」

を正確に整理することが大切です。

さいごに

発達障害とうつ病が併存している場合でも、一定以上の障害状態であれば障害年金の対象となる可能性があります。

ただし、

「発達障害+うつ病だから障害年金2級」
「病名が2つだから一つの病気より有利」

という制度ではありません。

障害年金で重要なのは病名の数ではなく、発達障害やうつ病の影響によって、実際の日常生活や仕事がどの程度制限されているのかということです。

発達障害による対人関係や社会適応の難しさがあり、そこにうつ病による意欲低下や強い倦怠感が加わることで、それまで何とかできていた生活が維持できなくなることもあります。

その場合には、

「これは発達障害の症状」
「これはうつ病の症状」

と本人が細かく分類する必要はありません。

何ができなくなっているのか。

誰からどのような援助を受けているのか。

働いている場合、どのような配慮がなければ仕事を続けられないのか。

こうした実際の生活状況を整理することが大切です。

また、発達障害とうつ病が併存しているケースでは、初診日の確認にも注意が必要です。

最初はうつ病と診断され、その後に発達障害と診断された場合でも、発達障害と診断された日だけを見て初診日を判断するとは限りません。

過去に適応障害、不安障害、うつ状態などで精神科や心療内科を受診したことがある場合には、その受診歴も含めて確認する必要があります。

診断書についても、病名を多く記載してもらうことが目的ではありません。

現在の病状や日常生活、就労状況について、主治医に実際の状態を把握してもらい、医学的な判断に基づいて診断書を作成してもらうことが重要です。

「発達障害とうつ病のどちらで障害年金を申請すればいいかわからない」
「うつ病で通院した後に発達障害と診断され、初診日がわからない」
「働いているが、発達障害とうつ病のため生活が成り立たない」
「診断名が何度も変わっていて、どこから病歴を書けばよいかわからない」

という場合には、障害年金を専門とする社会保険労務士に相談することも一つの方法です。

発達障害とうつ病が併存しているケースでは、「どちらの病気か」だけを見るのではなく、これまでの受診歴と現在の生活状況を全体として整理したうえで、障害年金の申請を検討することが大切です。