「慢性疲労症候群で仕事を続けられなくなったけれど、障害年金の対象になるのでしょうか」「検査で大きな異常が見つからない場合でも申請できますか」「少し動ける日があると、症状を軽く見られてしまうのでしょうか」。
慢性疲労症候群の障害年金を調べている方には、このような疑問があるかもしれません。
慢性疲労症候群(ME/CFS)も、障害年金の対象となり得る病気です。
ただし、診断名がついたことだけで年金が支給されるわけではありません。
初診日や保険料納付などの要件を満たし、対象となる時点の障害状態が認定基準に該当する必要があります。
この病気では、「その場でできたこと」と「日常的に続けられること」に大きな違いが生じることがあります。
通院や買い物の後に何日も休まなければならない場合、外出できたという事実だけでは普段の状態が伝わりません。
症状の強さに加えて、活動できる範囲、休息の必要量、周囲の援助を整理することが大切です。
この記事では、障害年金専門の社会保険労務士の視点から、慢性疲労症候群の認定基準、PS評価、初診日の考え方、診断書と申立書で伝えたい事実、働いている場合の確認点を順に解説します。
目次
慢性疲労症候群も障害年金の対象になる
「疲労」という病名から対象外と決めつけない
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に一定以上の制限が生じたときに、現役世代も受け取ることができる年金です。日本年金機構は、慢性疲労症候群について診断書の記載例や認定事例を公開しています。
したがって、慢性疲労症候群は制度の対象にならない病気だと考える必要はありません。
一方で、「慢性疲労症候群なら必ず2級」「働けないと言えば受給できる」という制度でもありません。
同じ診断名であっても、身の回りのことに介助が必要な方、家事や外出が強く制限されている方、配慮を受けながら短時間勤務をしている方では、確認すべき状態が異なります。
大切なのは、病名の印象で判断せず、その人の生活と労働にどのような制限が続いているかを確認することです。
年金の審査では、診断書に記された症状や経過と、実際の日常生活・就労状況を合わせて検討します。
通常の疲れとは異なる生活上の支障がある
ME/CFSでは、休養しても十分に回復しない強い疲労や、活動後の症状悪化、熟睡感の乏しさ、思考や集中の困難、起きている姿勢での不調などがみられることがあります。
症状の組み合わせや程度、変動の仕方には個人差があり、診断にはほかの病気の評価も必要です。
障害年金の書類で「疲れやすい」とだけ表現すると、一般的な疲労と区別しにくくなります。
例えば、食事の準備をするとその後は横にならなければならない、入浴の翌日は活動できない、通院以外の外出をほとんど避けているなど、具体的な行動とその後の状態を伝えることが重要です。
ここで扱うのは障害年金の請求であり、診断や治療方針は主治医が医学的に判断するものです。
症状の一覧を自己診断に使うのではなく、すでに受けている診療と生活実態をつなげて整理しましょう。
慢性疲労症候群で障害年金を受給するための要件
初診日の加入制度で年金の種類が変わる
初診日は、障害の原因となった病気について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
慢性疲労症候群という診断名が確定した日と、障害年金上の初診日は必ずしも一致しません。
初診日が国民年金の加入期間にある場合などは、障害基礎年金を検討します。
初診日が厚生年金の加入期間にある場合は、障害厚生年金を検討します。障害基礎年金には1級と2級、障害厚生年金には1級から3級があります。
厚生年金加入中に初診日がある方が1級・2級に該当する場合は、障害基礎年金も合わせて対象となります。
現在退職しているか、今はどの年金に加入しているかだけで年金の種類を決めることはできません。
また、20歳前の年金制度に加入していない期間や、日本国内に住む60歳以上65歳未満の未加入期間に初診日がある場合なども、障害基礎年金の対象を検討する事情があります。
保険料納付要件は初診日の前日時点で確認する
原則として、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上必要です。
厚生年金の加入期間なども、この確認に関係します。
また、初診日が2036年3月31日までで、初診日に65歳未満である場合には、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がないことによる特例があります。
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は不要です。
未納があるから必ず受給できないとも、会社員だったから必ず納付要件を満たすともいえません。
初診日を確認してから年金記録を調べます。
初診日後に保険料を納めても、初診日の前日時点で判定する要件を後から満たしたことにはできない点にも注意してください。
障害状態は所定の時点で判断される
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
障害年金では、認定日や請求時など、請求方法に応じた時点の状態を確認します。
慢性疲労症候群と診断されてから1年6か月待つという意味ではありません。
発症から長い期間が経過していても、初診日の特定や当時の診療記録の確認が必要です。
今の状態が重いという理由だけで、過去の認定日当時も同じ状態だったと推定して請求することはできません。
受診歴、障害状態、年金記録をそれぞれ確認して、請求方法を考えます。
慢性疲労症候群の障害認定基準と等級
全身状態と具体的な生活状況を総合的にみる
慢性疲労症候群の障害年金では、通常、「その他の疾患による障害」の認定基準を踏まえて障害状態を検討します。
この基準では、全身状態、病気の性質や経過、具体的な日常生活状況などを考慮して、総合的に認定する考え方が示されています。
大まかには、1級は日常生活の用を弁ずることができない程度、2級は日常生活に著しい制限がある程度、3級は労働に制限がある程度が問題になります。
ただし、短い説明を読んだだけで個別の等級を決めることはできません。医学的な評価と、どのような援助・休息が必要かを具体的に確認します。
無職であることと、障害年金の等級に該当することは別です。
就労していても障害状態を検討できる一方、就労していなくても生活や労働の制限が基準に達していない場合は、支給につながらないことがあります。
一般状態区分表は何を表している?
診断書にある一般状態区分表は、社会活動、歩行や身の回りのこと、介助の必要性、日中の起居・就床、外出の可否などから、全身の状態を整理するためのものです。
軽い症状があっても軽労働や座業ができる状態から、終日就床し常に介助を必要とする状態まで、複数の区分があります。
認定基準では、この区分と等級のおおむねの対応を参考としています。
しかし、一つの区分に丸がつけば、それだけで等級が確定するわけではありません。
例えば同じ「ウ」の区分でも、2級と3級のいずれを検討するかには、ほかの記載を含めた判断が必要です。
医師に伝える際は、「今日は診察室に座っていられた」といった一場面だけでなく、普段どれくらい起きていられるか、横になって過ごす時間、家族に任せていることを具体的に説明します。
起居時間や就床時間を、本人に有利になるよう意図的に調整するものではありません。
公表された認定事例は参考として使う
日本年金機構は、慢性疲労症候群の1級・2級・3級の認定事例を公開しています。
PS評価だけでなく、症状、一般状態区分、日常生活や労働能力の記載を確認できる点で参考になります。
事例を読むときは、結果だけを自分に当てはめないことが大切です。同じ病名や近いPS評価であっても、初診日の加入制度、認定の対象時点、症状の経過、生活上の制限は人によって異なります。
公表事例は「この状態なら必ず同じ級になる」という保証ではなく、どういった情報が評価の材料になっているかを理解するために使いましょう。
PS評価は障害年金でどのように使われる?
慢性疲労症候群のPSは0から9の重症度分類
PSはPerformance Statusの略です。日本年金機構は、慢性疲労症候群の診断書を作成する医師に、旧厚生省研究班の重症度分類によるPSの該当段階を、診断書の治療経過などの欄に記載するよう案内しています。
この分類は0から9まであり、疲労・倦怠による活動制限を表します。
概要をいうと、通常の社会生活ができる段階、休息が必要になる段階、通常の生活や労働が困難になる段階、身の回りのことにも介助を要する段階へと、制限の程度が強くなります。
がんの診療などで使われる別のPS尺度と、数字だけを比較しないよう注意が必要です。
PSを判断するのは医師です。本人は点数を選んで依頼するのではなく、実際の活動、休養の必要性、身の回りのことの状況を説明して、医学的な評価を受けます。
PSの数値だけで年金の等級は決まらない
PSは重要な情報ですが、障害年金の等級との一対一の換算表ではありません。
「PSが高ければ必ず2級」「この点数なら請求をしなくてよい」と、数値だけで結論を出すことは適切ではありません。
例えば、診断書に記載されたPSと、一般状態区分、日常生活能力、労働能力の説明が大きく食い違うように見える場合には、何が理由なのか確認が必要です。
症状が変動しているのか、別の時期の状態が混在しているのか、普段の生活を医師へ十分に伝えていなかったのかによって対応が変わります。
等級に合わせてPSを変えてもらうことが目的ではありません。
数字の根拠となる生活の実態が伝わっているかを確認することが大切です。
良い日と悪い日の違いを医師に伝える
調子の良い日に受診した場合、普段より活動できているように見えることがあります。
反対に、悪化した日の状態だけを伝えると、長期的な生活の全体像が分かりにくくなることもあります。
「週に何日は横になって過ごしている」「比較的良い日はどの程度の作業ができる」「外出した後は何日間活動できない」と、頻度と経過を分けて説明すると理解されやすくなります。
毎日長い記録をつける必要はありません。本人の負担が小さい範囲で、普段の活動と休息を示す短いメモを準備しましょう。
活動後の症状悪化を具体的に伝える
「できた」だけでは継続できるか分からない
慢性疲労症候群では、身体的・精神的な活動の後に症状が悪化することがあります。
労作後の症状悪化はPEMとも呼ばれ、活動の直後だけでなく、時間がたってから強くなる場合もあります。
そのため、「買い物へ行ける」「パソコンを使える」という説明だけでは、生活上の制限を十分に表せないことがあります。
書類を準備する際は、行動そのものと、その後に必要な休息を一緒に整理します。買い物に行くために前日は家事を控える、帰宅後は横になり翌日も食事の準備ができない、といった経過があるなら、そこまでが一つの生活実態です。
無理をすれば一度だけできる行動と、普段の生活の中で繰り返し行える行動を区別してください。
逆に、できることまで「全くできない」と表現する必要もありません。
活動・悪化・回復をセットで整理する
例えば、説明の形として「近所の店に20分ほど行くと、当日夜から倦怠感が強まり、翌日は食事以外ほぼ横になっている。
そのため買い物は家族に任せ、本人が行くのは月に数回」とまとめられます。
これは説明方法の例であり、実際には本人の状態に合わせて記載します。
活動内容、時間、悪化するまでの時間、回復に必要な日数、行動の頻度、代行している人を確認すると、「疲れる」の中身が見えてきます。
通院、入浴、調理、洗濯、仕事、会話、書類作業など、負担となる行動を分けて考えると整理しやすくなります。
ただし、書類のために活動を増やして症状を試す必要はありません。
すでに経験した経過を、分かる範囲で記録します。医師から活動や休養に関する指示がある場合は、その内容も伝えましょう。
【h3】予定を減らしているため症状が目立たない場合
症状の悪化を避けるため、家事や外出を最小限にしている方もいます。
この場合、「最近は寝込むことが少ない」という説明だけでは、活動を大きく制限して生活している背景が伝わりません。
例えば、外出を通院だけに絞った、食事は宅配に変更した、掃除や洗濯は家族に任せた、来客や長い会話を避けるようになったなど、発症前から減った活動を確認します。
症状が落ち着いて見える理由が治療による改善なのか、負担を減らしているからなのかを区別して説明することが必要です。
慢性疲労症候群の障害年金で使う診断書
通常は「血液・造血器・その他の障害用」を使う
慢性疲労症候群では、通常、様式第120号の7「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用します。
会社に提出した休職用の診断書や、一般的な病名証明の診断書を、そのまま障害年金の所定診断書として使うことはできません。
医師に依頼する前に、初診日と請求方法、必要な現症日を確認してください。認定日請求で過去の状態を証明するのか、現在の状態で事後重症請求を行うのかによって、必要な時期の診断書が異なります。
様式や時期を確認せず先に作成してもらうと、取り直しが必要になることがあります。
線維筋痛症や別の機能障害などを併せている場合は、診断名だけで追加の様式を決めず、どの障害をどの基準で評価するかを確認します。
精神の障害用診断書の日常生活能力の7項目を、そのまま慢性疲労症候群の評価方法として扱うものではありません。
治療経過と現在の症状を確認する
診断書には、発病から現在までの治療内容、経過、現在の症状などを記載する欄があります。
診断に至るまでの受診歴、治療を続けても残っている症状、悪化や改善の経過が分かることが重要です。
本人が準備する情報としては、いつから強い倦怠感が続いているか、活動後の悪化がいつ頃から目立つようになったか、休職や退職の時期、家事を家族に任せるようになった時期などが考えられます。
医師がすでに把握している診療内容と、診察では伝えきれていない生活の変化を分けて整理すると、説明が簡潔になります。
薬の種類や通院回数が多いほど等級が高くなるわけではありません。
治療内容と、その後も続いている生活・労働の制限の関係が分かるようにします。
日常生活活動能力と労働能力の欄も重要
一般状態区分だけでなく、現症時の日常生活活動能力と労働能力を記載する欄も重要です。
ここでは、身の回りのこと、家事、外出、仕事などが、どのような条件で可能かを伝えます。
「家事は困難」という一言より、調理は温める程度、洗濯物を干すと休憩が必要、入浴は週に数回で介助がある、といった説明のほうが、生活の制限を理解しやすくなります。
何ができるかに加えて、頻度、所要時間、休息、援助を説明してください。
本人や社労士が医学的な所見を作ることはできません。
事実を医師に伝え、その事実と診察・治療経過を踏まえて医師が診断書を作成します。
受け取った診断書は事実関係と記載漏れを確認する
診断書を受け取ったら、氏名、生年月日、傷病名、現症日などの基本事項を確認します。
そのうえで、受診や就労の状況に明らかな誤記がないか、家族の援助など重要な情報が抜けていないかを確認します。
例えば休職中なのに通常勤務と記載されている場合は、勤務状況を示して相談します。
一方、本人が想定したPSや一般状態区分と異なるだけで、必ず誤りと判断することはできません。
評価の根拠を確かめ、伝えていなかった生活情報があれば補足します。
追記や訂正の要否は医師が判断するものであり、本人が診断書を書き換えてはいけません。
初診日の確認で注意したいこと
診断が確定する前の受診が初診日になる場合がある
強い倦怠感で内科を受診し、検査や別の診療科での治療を経て、後に専門医から慢性疲労症候群と診断されることがあります。
その場合、専門医の初回受診日より前に、障害年金上の初診日がある可能性があります。
整理するときは、医療機関名、受診時期、当時の症状、診断名、検査や治療、転院した理由を並べます。日付を覚えていない場合は、診察券、お薬手帳、紹介状、医療費の記録などが手掛かりになることがあります。
ただし、手掛かりがあることと、初診日の証明として認められることは同じではありません。
診断までに時間がかかった場合ほど、早い時期の診療録が残っているかを確認する意味があります。
初診日が変わると、年金の種類や保険料納付要件、障害認定日も変わるためです。
以前のうつ病などの受診との関係を確認する
慢性疲労症候群と診断される前に、うつ病など別の診断を受けていた方もいます。
診断名が違うから必ず別の初診日になるとも、倦怠感が共通するから必ず同じ傷病になるとも限りません。
当時の症状、診療内容、その後の経過、現在の病気との医学的な関係を確認します。
障害年金のために厚生年金加入中の受診日を選ぶ、過去の心療内科受診を省略する、といった進め方は適切ではありません。本人が病気との関係を判断できない受診も、まずは相談時に共有しましょう。
カルテが残っていない場合は資料を探す
最初の医療機関で受診状況等証明書を作成できない場合、後の医療機関の診療録にある前医の情報や紹介状など、別の資料で初診日を確認できるか検討します。証明できない事情を説明する書類が必要になる場合もあります。
単に「もう古いから無理」と決めるのではなく、いつ、どの医療機関へ照会したか、作成できない理由は何か、ほかにどの記録があるかを整理します。
本人の記憶だけで必ず認められるわけではありませんが、利用できる資料を確認せず諦める必要もありません。
働いている慢性疲労症候群の方が確認したいこと
勤務時間だけでなく継続の条件を説明する
就労していることだけで障害年金が一律に対象外になるわけではありません。
ただし、働けている実態は重要な判断材料です。
勤務日数・時間、仕事内容、欠勤や早退、職場の配慮、作業の中断、勤務後の生活への影響を具体的に確認します。
例えば、毎日の通勤が必要な仕事と、体調に応じて作業時間を変更できる在宅勤務では、活動の負担が異なります。「就労中」と書く場合は、どういった条件があるため続けられているのかも伝えてください。
特別な配慮なく安定した勤務を続け、生活にも大きな制限がない場合は、その事実も正確に示します。
仕事の状況を隠して診断書や申立書を作ることはできません。
在宅勤務・自営業では稼働の実態を整理する
在宅勤務でも、画面を見ることや文章を考えることが負担になる方はいます。
予定どおり仕事を始められるか、連続して作業できる時間、途中で横になる頻度、翌日の活動への影響などを確認します。
通勤がないことだけで、労働能力が十分あると判断するものではありません。
自営業では、肩書や売上だけでは本人の作業量が分からないことがあります。
受注件数を減らした、納期を長くした、顧客対応を家族が代行する、過去の仕事による入金があるなど、収入と現在の稼働が必ずしも一致しない場合があります。
実際の作業日数・時間と、他者の代行を分けて説明しましょう。
退職や休職の前後で状態が変わった場合
退職前に無理をして勤務していた時期と、退職後に負担を減らした時期では、症状の出方が変わることがあります。
「退職したので今は少し楽」という言葉だけでは、活動範囲が狭くなったことが伝わらない場合があります。
勤務中の欠勤や早退、休職の開始、復職を試みた経過、現在できる活動を分けて整理します。
認定日からさかのぼる請求を考える場合は、当時の勤務と障害状態がどのようなものだったかが特に重要です。
退職したという事実だけで、認定日当時の等級を判断しないようにしましょう。
病歴・就労状況等申立書で生活実態を補う
発症から現在までの節目を時系列にする
病歴・就労状況等申立書は、受診や治療、日常生活と就労の経過を本人の側から説明する書類です。
慢性疲労症候群では、症状が始まった頃、受診を始めた頃、診断がついた頃、休職・退職した頃、現在など、変化の節目を押さえます。
各時期について、通院先と治療、活動できた範囲、援助の内容、仕事の状況をまとめます。
「つらい」「何もできない」を繰り返すより、家事をどれくらい家族に任せていたか、週に何日休養が必要だったかなど、具体的な事実を示すほうが経過を理解しやすくなります。
すべての時期を同じ文章で埋めると、悪化や改善が分からなくなります。
認定日時点と現在の状態を混ぜず、時期ごとの違いを説明しましょう。
一人暮らしでも生活が十分に成り立っているとは限らない
一人暮らしの方は、援助者がいないために、食事、清潔、掃除などを十分に行えないまま暮らしていることがあります。
「一人で住んでいる」という事実だけで、日常生活に制限がないとはいえません。
食事は温めるだけのものが中心、洗濯は体調の良い日にまとめる、入浴の頻度が落ちている、通院のためにほかの外出をやめているなど、生活のどこを削っているかを確認します。
家族と暮らしている場合は、食事の準備、家事、送迎、付き添いなどを誰が担っているかを具体的に書きます。
家族がしていることを本人ができていることとして記載しない一方、家族の援助があるというだけで、直ちに特定の等級になるわけでもありません。
援助が必要となる理由と本人の能力を、事実に即して説明します。
診断書との違いは理由を確認して整える
診断書と申立書は役割が違いますが、受診日、就労、援助の状況などが大きく食い違うと、実態を把握しにくくなります。
診断書では外出可能、申立書では外出不可と記載する場合でも、付き添いや休息の条件を含めると、実際には同じ状態を説明していることがあります。
逆に、本人が医師に勤務状況を伝えていなかったため、就労の記載が抜けている場合もあります。
違いを見つけたら、時期や条件の違いなのか、伝達不足なのか、事実の誤記なのかを確認します。申立書だけで診断書の医学的評価を打ち消したり、診断書にない症状を新しく作ったりするものではありません。
認定日請求と事後重症請求の違い
過去の状態を証明できるかが重要
認定日請求では、障害認定日に等級に該当していたことを、当時の状態を記載した診断書などで示します。
障害認定日から請求まで1年以上ある場合は、原則として現在の状態を示す診断書も必要です。
必要な現症日の範囲は、請求前に年金事務所等で確認します。
慢性疲労症候群の診断が後から確定した場合でも、診断名が遅かったことだけで認定日請求を一律に否定することはできません。
ただし、当時の病気や症状、生活・労働の制限を、残っている医療記録から証明できるかが問題です。
現在の主治医が本人の記憶だけを基に、受診していなかった時期の状態を当然に証明できるわけではありません。
事後重症では請求時期が支給開始に関わる
認定日には等級に該当しなかった方が、その後に基準に該当する状態となった場合などは、事後重症による請求を検討します。
原則として請求日の翌月分から受給の対象となり、請求は65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。
認定日請求でさかのぼって受けられる年金にも、原則5年の時効による制限があります。どちらの方法を使えるかは、受給額の希望から決めるのではなく、要件と証明できる状態を確認して判断します。
資料を整える時間と請求時期の影響を踏まえて、準備を進めましょう。
慢性疲労症候群の障害年金でよくある質問
検査値に異常がないと障害年金は無理ですか?
検査値に目立つ異常がないという理由だけで、一律に対象外になるわけではありません。
慢性疲労症候群の診断に至った経過や医学的評価、症状と生活の制限を、診断書などで具体的に示す必要があります。
異常値がないことを理由に自分で病気の重さを否定せず、主治医に現在の支障を伝えてください。
障害者手帳がなくても申請できますか?
障害者手帳の所持は、障害年金の必須条件ではありません。
手帳と障害年金は別の制度で、等級の意味も異なります。手帳がない方も、初診日、保険料納付、障害状態の要件を確認します。
手帳がある場合も、その等級がそのまま障害年金の等級になるわけではありません。
PSの評価があれば診断書のほかの説明は不要ですか?
不要ではありません。
PSは活動制限を示す重要な情報ですが、治療経過、一般状態区分、症状、日常生活活動能力と労働能力などの記載も必要です。
数値だけを強調するより、その評価の根拠となる生活が分かることが大切です。
症状に波があると認定されにくくなりますか?
変動があること自体が、直ちに不支給の理由になるわけではありません。
ただし、良い日と悪い日の頻度、活動後の悪化、回復までの期間が書類から分からなければ、普段の状態を把握しにくくなります。
できることと休息の必要量を、一定期間の生活として説明しましょう。
線維筋痛症やうつ病もある場合はどうしますか?
併存する病気がある場合は、それぞれの受診経過、症状、生活への影響を確認します。
病名が二つあるから年金額が自動的に増えたり、等級が必ず上がったりするわけではありません。
初診日の関係や必要な診断書、障害の評価方法は、具体的な経過を踏まえて検討します。
受給できれば、ずっと同じ等級で続きますか?
必ずではありません。
障害の状態に応じて、更新のための障害状態確認届の提出が必要となる場合があります。
更新では、その時点の状態が引き続き等級に該当するか確認されます。
初回だけでなく、通院の中で生活や勤務の変化を医師に伝えることが大切です。
慢性疲労症候群の請求を社労士に相談する意味
必要な情報を順番に整理して負担を減らす
強い倦怠感や集中の困難がある中で、受診歴を調べ、年金記録を確認し、医療機関へ証明を依頼する作業は負担になり得ます。
障害年金専門の社労士に相談する場合は、まず初診日の候補や証明の状況、請求方法を確認し、何から準備すべきかを整理します。
ご本人が分かる事実を伝え、医師が医学的に評価し、社労士が要件と書類を確認するという役割分担が必要です。
社労士に依頼すれば本人の説明や資料の確認がすべて不要になる、ということではありません。
体調に応じて情報を少しずつ共有し、事実を確かめながら進めることが大切です。
等級を指定するのではなく生活の実態を伝える
障害年金の請求で目指すのは、本人の実際の障害状態が資料から伝わることです。
PSや診断書の評価を希望する等級に合わせる、初診日を有利に動かす、といった進め方はできません。
当事務所のホームページでは、慢性疲労症候群に関する受給事例も紹介しています。
ただし、事例の結果や年金額は、その方の加入歴や障害状態などに基づくものです。
ご自身の結果を予測するための保証としてではなく、確認すべき経過や情報を考える参考としてご覧ください。
制度や様式の確認には、日本年金機構の次の公的資料も参考になります。
さいごに
慢性疲労症候群も障害年金の対象となり得ます。
外から症状が分かりにくいことや、検査値に目立つ異常がないことだけで、最初から対象外と考える必要はありません。
一方、診断名やPSの数値だけで支給や等級が決まるわけでもありません。
請求を考えるときは、初診日、年金加入・納付記録、認定日と現在の障害状態を確認します。
そのうえで、活動後の症状悪化、回復に必要な時間、家事や外出の制限、周囲の援助、働くために必要な条件を具体的に整理しましょう。
「何ができるか」だけでなく、「どのような条件でできるか」「その後にどれほど休まなければならないか」まで伝えることが、慢性疲労症候群の生活実態を理解する助けになります。
主治医の医学的な判断を尊重しながら、ご本人の普段の生活が正確に伝わる請求を、一つずつ準備していくことが大切です。

