生活保護を受給している方でも、障害を抱えていれば「障害年金」を申請できる可能性があります。
しかし、生活保護で生活費が足りているのに「障害年金を申請する必要はある?」「そもそも障害年金ってなに?」と疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はそんな疑問を持つ方に向けて、障害年金と生活保護の違いや、障害年金を申請するメリット、障害年金と生活保護を同時受給するときの注意点などについて解説します。
こちらの記事を読んで、生活保護や障害年金の制度を理解してうまく活用しましょう。
目次
障害年金と生活保護の違いとは?
まずは、障害年金と生活保護のそれぞれの特徴と違いについて解説します。
障害年金について
障害年金とは、ケガや病気などによって障害を負い、日常生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金です。
障害年金は大きく分けて、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。
受け取れる年金は、初診日(障害の原因となった傷病で初めて病院に行った日)に加入していた、公的年金によって決まります。
具体的には、初診日に国民年金に加入している方は、障害基礎年金が受給でき、厚生年金に加入している方は、障害厚生年金を受給することが可能です。
管轄は厚生労働省で、実務を日本年金機構に委嘱し、財源は厚生年金保険料及び国民年金保険料などの年金保険料と税金で賄われています。
障害年金を受給するためには、下記の支給条件を満たすことが必要です。
<障害年金を受給するための条件>
- 初診日において国民年金もしくは厚生年金の被保険者であること
(20歳前に初診日がある場合を除く) - 初診日において保険料納付要件を満たしていること
- 障害等級の基準を満たしていること
上記の条件を満たしていれば、障害年金を受給することが可能です。
また、障害年金は、働きながらでも受け取ることができます。
ただし、例外的に20歳未満で障害年金の受給対象となった場合、障害年金に所得制限がかかり、減額もしくは支給停止される場合もあります。
生活保護について
一方、生活保護とは生活保護法に基づいて、さまざまな理由で働くことができない人や極端に収入が少ない人のために、最低限の生活を国が保障する制度です。
生活保護の管轄は市区町村で、財源は税金から賄われます。
生活保護の支給条件は、以下の通りです。
<生活保護の支給条件>
- 援助してくれる身内や親族がいないこと
- すぐに生活費に充てられる財産(現金・預金・株など)を持っていないこと
- 病気、ケガなどでやむなく働けないこと
- 国からの公的融資や公的制度を利用していないこと
上記の4つの条件に当てはまった上で、世帯収入の合計が、「最低生活費」以下である場合、生活保護を受けられる可能性があります。
最低生活費とは、厚生労働大臣によって定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な生活費」のことです。
生活保護はこの最低生活費と世帯収入を比べて、最低生活費に足りない分が支給されます。
つまり、アルバイトやパートなどをしている場合、それらの収入から差し引かれて生活保護費が支給されます。
また、収入は単なる給与収入だけでなく、扶養義務者からの援助や児童手当なども収入とみなされるため注意が必要です。
このように、生活保護は申請が通ったとしても、何らかの「収入」がある場合、最低生活費に相当する金額を全額受け取れるわけではありません。
生活保護についてさらに詳しく知りたいかは、厚生労働省の生活保護制度をご参考ください。
生活保護受給中でも障害年金は申請可能
生活保護の受給中でも障害年金は申請することが可能です。
しかし、上述したように、障害年金は収入に該当するため、生活保護費から受け取った障害年金の額が差し引かれて支給されます。
一方、障害等級や障害年金の種類によっては、生活保護費よりも障害年金の方が高くなるケースがあります。
この場合、障害年金を申請することによって、生活保護は打ち切りとなりますが、単純に支給額が増えるため毎月の収入を増やすことが可能です。
ここまで見ると、障害年金が生活保護よりも少ない場合は、生活保護を受給していた方が良いように見えますが、障害年金を申請することで受けられるメリットもあります。
生活保護が障害年金よりも高い場合、障害年金を申請するメリットはある?
ここからは、生活保護が障害年金より高い場合の障害年金を申請するメリットについて解説します。
障害年金は収入が一定額を超えても打ち切られない
生活保護は受給者が働けるようになって、働いて得た収入が生活保護費よりも多くなった場合、打ち切りとなります。
また、遺産相続などによって臨時の財産が入った場合も生活保護は終了となります。
一方、障害年金は生活保護とは異なり、働けるようになって収入が増えたり、臨時収入が入ったりしても受給し続けることが可能です。
さらに、生活保護は使用したお金の使い道について説明する必要がありますが、障害年金は使い道の制限がありません。
そのため、車も持つことができますし、貯金することも可能です。
このように、障害年金は生活保護よりも自由に使うことができ、働きながらでも受給できることがメリットです。
障害者加算が付く場合がある
生活保護を受給している方で、障害者手帳の交付を受けている、または障害年金を受給しており、一定以上の障害等級の場合は、障害者加算が付きます。
障害者加算の支給条件は以下の通りです。
<障害者加算の支給条件>
- 障害等級表の1級もしくは2級または国民年金法施行令別表に定める1級のいずれかに該当する障害のある者
- 障害等級表の3級もしくは国民年金施行令別表に定める2級のいずれかに該当する障害のある者
ただし、上記の支給条件を満たすだけでは支給開始にはなりません。
支給条件を満たすことを福祉事務所に申請した日の翌月から支給開始となるため注意が必要です。
原則として、申請手続きは本人が居住地域の役所にある福祉事務所で行います。
しかし、本人が入院などで申請できない場合は、家族や親戚の人に申請手続きをしてもらうこともできます。
障害年金を生活保護と併給する際の注意点
上述したように、障害年金と生活保護の同時受給にはメリットがありますが、注意点もあります。
障害年金の申請方法には何種類かあり、「遡求請求」という方法で申請すると、過去に受給できたはず障害年金もさかのぼって受給することが可能です。
遡求請求は、最大5年分まで過去の障害年金を請求でき、請求が認められると、過去の分も含めた障害年金が初回に支給されます。
この場合、今まで受給していた生活保護の支給分の返還が求められる可能性があります。
ただし、さかのぼって受給した障害年金のうち、経費として認められる部分については返還の対象とはなりません。
経費となる部分については、ケースによってさまざまなので、障害年金を申請する際は、ソーシャルワーカーや社労士と相談しながら手続きを進めるのも1つの手です。
さいごに
今回は障害年金と生活保護の関係について詳しく解説しました。
障害年金は、生活保護を受けていても申請することが可能です。
生活保護は収入が増えると、減額されたり、支給が停止されたりしますが、障害年金は働きながらでも継続して受給することが可能です。
また、毎月の報告もないため、自由に使えることも大きなメリットでしょう。
ただし、遡及請求が認められると、受給していた生活保護費の返還が求められる可能性があるため注意が必要です。
生活保護もしくは障害年金のどちらを申請しようか迷っている方は、ぜひ今回の記事を参考にして自分に最適な方を選びましょう。
もし、どちらにすればいいのか迷った際は、専門家に相談してみることをおすすめします。