あなたは今、こんな悩みを抱えていませんか。
「また仕事でケアレスミスをしてしまった」
「どの職場でも、人づきあいがうまくいかない」
そんな生きづらさの原因は、「大人の発達障害」かもしれません。
大人の発達障害は近年認知されるようになったため、よく知らない方も多くいらっしゃいます。
そこで、この記事では大人の発達障害についてわかりやすくご紹介します。
- 大人の発達障害とは?
- 発達障害の相談先
- 発達障害の方が生きやすくなるための工夫
自分は発達障害ではないかとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
大人の発達障害とは?
発達障害は、先天的な脳発達の偏りからくる行動や言動の特性のことで、日常生活に困難を伴うケースも多く見られます。
生まれつきの脳発達の偏りが原因なので、大人になってから発達障害になるわけではありません。
発達障害の特性は幼少期から見られますが、親や周囲のフォローもあり個性的な子どもだと思われることから、発達障害とは気づかない場合もあります。
進学や就職などで社会に出ると、人間関係が複雑になり臨機応変な対応が求められます。
また計画的に物事を進めたり、様々な人と関わりコミュニケーションを取りながら、その場の空気を読むなど高度な社会性が必要です。
このような環境にうまく対応できず、仕事や人間関係でつまづいて初めて「発達障害」に気づきます。これが「大人の発達障害」です。
大人になって発達障害と診断される方は、長期間環境になじめず、失敗を繰り返してきました。そのため、自己肯定感が低くなり、抑うつや不安障害などの二次障害を抱えていることがあります。
うつ病や不安障害などで心療内科等での治療を進める過程で、初めて発達障害であるとわかる方もいます。
大人の発達障害の特徴
発達障害は、大きく分けて下記の3種類に分けられます。それぞれの主な特性を表にまとめました。
種類 | 特性など |
---|---|
ASD(自閉症スペクトラム障害) | ・コミュニケーションがうまく取れない ・こだわりが強い |
ADHD(注意欠如・多動症) | ・集中できず、じっとしていられない ・衝動的に動く |
LD(学習障害) | ・読み・書き・計算ができない |
大人になって気づく発達障害の大部分はASDとADHDで、LDはあまりありません。
この記事ではASDとADHDを中心に、わかりやすく解説します。
ASD(自閉症スペクトラム障害)
ASD(自閉症スペクトラム障害)は、人とコミュニケーションを取ることが苦手で、特定のものや行動へのこだわりが強いなどの特性のある障害です。
ASDの方が抱える職場での困りごとは、次のようなことがあげられます。
- 暗黙のルールやその場の空気を理解できず、周囲の人の気持ちを汲み取れない
- 気持ちをストレートに言葉にして、同僚や取引先との関係を損ねることがある
- あいまいな指示の理解が難しい
- 仕事の手順が変わるなど、急な予定変更に対応できない
社会に出ると、取引先や上司、同僚など人間関係は多様化し複雑になります。
ASDの方は相手の立場に立って考えることが苦手なため、状況に合わせた対応ができず「マナーが身についていない失礼な人だ」などと誤解されることがあります。
また、ひとつの物事や手順にこだわりを持つため、急な変更に対応できず「融通がきかない」と言われ悩むケースも多く見られます。
参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について(e-ヘルスネット)
ADHD(注意欠如・多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)は「集中を持続させることが難しい」「落ち着きがなく待つことが苦手」「不注意によるミスが多い」などが主な特性である発達障害です。
特性の表れ方は人それぞれで個人差があり、注意欠如と多動のどちらか一方を強く持つ方や両方の特性を合わせ持つ方もいます。
ADHDの方は、職場で次のようなことで悩むことが多くあります。
- スケジュール管理が難しい
- 整理整頓が苦手、大切なものをなくしてしまうことがある
- 時間や締め切りに合わせて行動するのが困難
- カッとなりやすく、人間関係が険悪になる場合がある
- 思い付きで行動したり、人の話に割り込んで和を乱してしまう
学齢期には保護者や周りのサポートを受け過ごしましたが、社会に出て自分でスケジュール管理をすることができず、同僚や上司に「責任感がない」などと言われることがあります。
ADHDについてくわしく知りたい方は、下記の関連記事をご覧ください。
ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?原因・症状・治療法を解説
参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療(e-ヘルスネット)
発達障害の相談ができるところ
発達障害でも自分の特性と生活スタイルがマッチしている場合、生きづらさや困難を感じないという方もいらっしゃいます。
しかし、特性と生活環境が合わず、長期間生活や仕事上で困難を感じストレスを抱える場合、二次障害として抑うつや不安障害などを発症することがあります。
そのため、職場や家庭で困難や生きづらさを感じる場合は、自分の特性を知った上で環境を整備することが重要です。
一人で悩まず、早めに専門機関や医療機関へ相談しましょう。
発達障害の診断や治療の相談がしたいとき
大人の発達障害の診断や検査、治療は「精神科」か「心療内科」で受けられます。
大人の発達障害を診察できる病院は少ないので、受診前に診察できるか確認しましょう。
精神科等で発達障害と診断されると、障害者手帳の交付や障害年金の請求ができることがあります。
障害者手帳が交付されると、障害者雇用枠で就職できたり、税金の優遇などの福祉サービスが受けられます。
一方で障害年金は、障害認定日に一定の障害状態にあると年金としてお金が支給されます。
障害者手帳と障害年金についてくわしく知りたい方は、下記の関連記事をご覧ください。
発達障害についての相談や支援を受けたいとき
発達障害の方の生活や就労の困りごとを相談できるところは、次の5つです。
※青字をクリックするとページがジャンプします
発達障害者支援センター
発達障害の方の生活全般や仕事などの相談を受けています。
発達障害の診断がついていない方も相談可能です。
障害者就業・生活支援センター
障害のある方の生活から仕事まで一体的な相談・支援を行います。
健康管理やお金の管理、住居や生活設計の相談にも応じ、自立・安定した職業生活の実現に向けてのサポートが受けられます。
ハローワーク
障害の専門知識をもつ職員・相談員が仕事に関する情報を提供し、就職に関する相談に応じています。
求人応募の際に配慮を必要とする内容などをハローワークから求人企業に説明するなど、就職についてきめ細やかな支援を行うことが特徴です。
地域障害者職業センター
障害のある方に、職業リハビリテーションを提供し、企業へのジョブコーチの派遣や、本人の就労相談などを行う機関です。
事業主に対しては障害者の雇用管理についての相談や援助を実施しています。
参考 地域障害者職業センター独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構
地域若者サポートステーション(サポステ)
地域若者サポートステーションは働けなくなった理由を問わず、15歳〜49歳までの方を対象に支援を行い、通称サポステと呼ばれています。
コミュニケーション講座や就業体験、就活セミナー等を実施し、就労をサポートする機関です。
その他の相談先
【学生相談室】
学生の方は、所属する学校の学生相談室で学生生活や就職に関する相談ができます。
(保健管理センターやカウンセリングセンターなどと称される学校もあります)
【会社員の方】
職場での健康面やストレス等の相談は、勤務先の産業医にも相談できます。
(産業医を設置していない会社もあります)
【当事者団体】
当事者団体は、同じ特性や障害を持つ人やその家族が情報交換をしたり、支えあう団体です。
同じ悩みを持つ人と交流できるため、悩みを共有できることが大きな特徴です。
発達障害の方が生きやすくなるためにできること
発達障害は生まれつきの脳の特性なので治すというよりも、それぞれの特性にうまく対処していくことが生きやすさにつながります。
発達障害の方が生きづらさを軽くするためにできることを3つご紹介します。
・自分を知ること
・苦手なことを補う方法を探すこと
・誰かに相談すること
順番に見てきましょう。
自分を知ること
生まれ持った特性を変えることは難しいため、「今の自分」をありのまま受け入れ、自分をよく知ることが大切です。
自分はどんなことが得意で、どうしてもできないことはなにかを知ることで、得意なことを生かせる環境を選べるようになります。
特技が生かせる環境であれば、今よりも困難や不便を感じることなく生活できるでしょう。
苦手なことを補う方法を探すこと
自分ができないことがわかったら、苦手なことを補う方法を探しましょう。
例えば、次のような方法があげられます。
- 口頭が苦手ならメールなど文字で業務の指示をお願いする
- やることをToDoリストにして、順番をつけてから作業を開始する
- 保管場所を決めて一覧表を作り、使ったものは表の通りに元に戻す
生活を工夫したり、意識を変えることで困りごとを減らせる可能性が高まります。
誰かに相談すること
自分なりに工夫や努力をしてもカバーできないことは、周囲に相談してサポートをお願いしましょう。
自分の特性や苦手なことを上司や同僚に話し、特性に合わせて環境や業務を調整してもらうと、今よりも働きやすい職場になります。
コミュニケーションに苦手意識がある方は、週に一度報告するなどタイミングを決めて相談や報告をするとスムーズに対応できます。
周りの人たちの理解とサポートで働きやすい環境作りを進めましょう。
まとめ
発達障害は脳発達の偏りからくる行動や言動の特性で、社会生活に影響が出るケースも多く見られます。
生まれつきの脳の機能が原因なので、大人になって発達障害になるわけではありません。
大人になって診断される発達障害はASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠如・多動症)が大部分を占めています。
時間管理ができないなどの困りごとを抱えやすいですが、自分の特性を知り、周囲の理解やサポートを受けることで今よりも生きやすくなります。
気になる特性のある方は、一人で悩まず医療機関や支援センター等に相談しましょう。