発達障害に向いている仕事とは?ASD・ADHD・LDの特性や就労支援もご紹介

ハートと手

発達障害で仕事がうまくいかないとお悩みではありませんか?

発達障害の方は、周囲の人とうまくコミュニケーションが取れず、生きづらさを感じることが多くあります。

発達障害の特性はさまざまで個人差が大きく、特性に向いていない仕事についていることから、職場でのトラブルを抱えるケースが多く見られます。

近年認知されつつある発達障害ですが、本人も含めて家族や周囲の人も発達障害についてはよくわからないのが現状です。

そこで本記事では、下記についてわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 発達障害の特性
  • 発達障害の方に向いている仕事
  • 発達障害の方が受けられる就労支援

発達障害と仕事についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。

発達障害とは?

発達障害とは、先天的な脳機能の偏りが関連する疾患の総称です。
発達障害は大きく分けて次の3つに区分されます。

  • ASD
  • ADHD
  • LD

それぞれ順番にご紹介します。

参考:発達障害ってなんだろう?(政府広報オンライン)

ASD(自閉症スペクトラム障害)

ASDとは、自閉症スペクトラム障害の略称です。

生まれつきの脳機能障害で、ASDの方は人口の1%に及んでいるとも言われています。

ASDはかつては自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などいろいろな名称で呼ばれました。

2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準DSM-5の発表以降、ASD(自閉スペクトラム症)とまとめて表現されています。

ASDの特性

ASDの主な特性は次のようなことがあげられます。

  • 他人とコミュニケーションを取るのが苦手
  • こだわりが強い
  • 決められらたことを真面目に取り組む
  • 興味のあることを深く知ろうとする

ASDの方は他人とうまくコミュニケーションを取ることができず、相手の立場に立って考えることが苦手です。

結果的に相手と距離感がつかめず、不用意な発言をすることから信頼を失うことがあります。

ASDの方の仕事での困りごと

ASDの方が仕事で困ることをまとめました。

困りごと特性や内容
指示理解が難しい・言葉や表情、視線、身振りなどから相手の考えていることを読み取るのが苦手
・曖昧な指示やその場の空気を察して行動できない
・口頭指示の理解が苦手
・自分の考えを伝えることができず、報告、連絡、相談がうまくできない
いつもと違う工程ができない・特定のものや手順に強いこだわりを持っている
・いつもと違う状況に対応できない
・職場で「融通が利かない」と思われる
同じミスを繰り返す・自分の興味のないことに対して全く関心を持てない
・集中できないので、同じミスを何度も繰り返す

このほかにも感覚過敏の特性のある方は、話し声や蛍光灯の光などが気になって仕事に集中できないことがあります。

ASDの方に向いている仕事は?

ASDの方が仕事をする上での強みは下記の4つがあります。

  • 関心のある分野に高い集中力を発揮する
  • 規則に忠実で、規範意識が高い
  • 数学やロジカルシンキングが得意
  • 特定の事柄に徹底的にこだわる

上記の強みが生かせる仕事をまとめました。

職業・職種理 由
経理・財務・得意分野である数学やロジカルシンキングが生かせる
・ルールに沿って進められる定型業務が中心
・臨機応変な対人関係やコミュニケーションが少ない
プログラマー・興味があることに高い集中力が発揮できる特性が生かせる
・得意な数学やロジカルシンキングが業務に生かせる
・臨機応変な対人関係やコミュニケーションが少ない
法務・情報管理・規則に忠実で規範意識が強い特性が生かせる
・ルールに沿って業務を進めることが多い
研究者・学者・興味があることに高い集中力が発揮できる特性が生かせる
・緻密さを要する作業も高い集中力で最後まで取り組める
・特定の事柄に徹底的にこだわる特性が生かせる

このほか、ルーティンワークが可能な仕事(ライン作業、軽作業、清掃員など)にも向いています。

いずれの業務でも自分の関心や興味と重なった場合、高い集中力を発揮して大きな成果を残せるかもしれません。

参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について(e-ヘルスネット)

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害です。

学齢期の小児の3~7%程度、成人では2.5%の方がADHDと診断されています。

ADHDの特性

ADHDの特性を「不注意」と「多動・衝動性」に分けてご紹介します。

【不注意に見られる特性】

・忘れ物が多く、大切なものをなくしてしまう
・気が散りやすく、すぐに注意が散漫になる
・集中力が続かない

【多動・衝動性】

・じっくり待つことが苦手で、衝動的に行動する
・思いついたことをすぐ言う
・他の人の話に割って入る

ADHDの特性については個人差が大きく、2つの特徴を併せ持つ方もいれば、どちらかの特徴のみを強く持つ方もいます。

ADHDの方の仕事での困りごと

仕事上の困りごとを「不注意」と「多動・衝動性」に分けてそれぞれご紹介します。

不注意からくる困りごと

不注意が原因の困りごとをまとめました。

困りごと内 容
時間管理が苦手
作業を順番に行うことができない
・予定を立てて進めることが苦手
・担当した仕事を期日までに完成できない
集中力や注意力が持続しにくい・物事に集中できず、ケアレスミスが多い
・注意力散漫のため、落とし物や忘れ物が多い

このほかにも、マルチタスクが苦手な方が多く見られます。

多動・衝動性からくる困りごと

多動・衝動性が原因の困りごとをまとめました。

困りごと内容
自分の担当場所を離れてしまう・一つの物事にじっくり取り組むことが苦手
・待つことも苦手で、落ち着きがない
衝動的な発言や行動をする・気持ちのコントロールが効きにくい
・よく考えずに発言して、相手を怒らせてしまう

このほかにも、思ったことをそのまま口にするため話題が飛びやすい傾向があります。

ADHDの方に向いている仕事は?

ADHDの方が仕事をする上での強みは4つあります。

  • 創造的なアイデアが豊富
  • 好奇心が強く、行動力がある
  • 興味があることには高い集中力を発揮する
  • 視覚や色彩感覚などの感性に優れている

上記の強みが生かせる仕事をまとめました。

職業・職種理  由
プログラマー・興味があることには高い集中力を発揮できる特性が生かせる
・場の空気を読んだり、細かいコミュニケーションがいらない
デザイナー・創造的なアイデアが豊富である特性を生かせる
・持ち前の色彩感覚や空間認識能力を発揮できる
研究者・興味や関心のあることには高い集中力を発揮する特性が生かせる
起業家・興味があることには高い集中力を発揮できる特性が生かせる
・好奇心が強く行動力があるので、リスクを恐れず進める

ADHDの特性の強弱は個人差があります。自分はどの特性があるのかをよく見極めて職業を選ぶのが大切です。

参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療(e-ヘルスネット)
参考:ADHD(注意欠如・多動症)(国立精神・神経医療研究センター)

ADHDについてくわしく知りたい方はこちらの関連記事をご覧ください。

ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?原因・症状・治療法を解説

LD(学習障害)

学習障害は、知的発達には遅れはありませんが、読み、書き、計算の特定分野だけがうまくできない障害です。

学習障害は特性により、下記のように分けられます。

学習障害の3つの特性
  • 読字障害(ディスレクシア)
  • 書字表出障害(ディスグラフィア)
  • 算数障害(ディスカリキュリア)

学習障害の方がすべてにあてはまるのではなく、特性の出方や強さには個人差があります。

読字障害(ディスレクシア)

読字障害は、読むことが困難なため書くことも難しい障害です。

読むことが極端に遅いため本を読むのに時間がかかり、すぐに疲れてしまいます。

読み方にも特徴があり、単語や文節の途中で区切ったり、文字を一つ一つ拾って読む方が多いです。

また、「ろ」と「る」や「雷」と「雪」など形の似ている文字を読み間違うこともあります。

参考:ディスレクシア(国立成育医療研究センター)

書字表出障害(ディスグラフィア)

書字表出障害とは、文字や文章を書くことを苦手とする障害です。

字を読むことができるけれど書き写すことができなかったり、文字の大きさを揃えて書くことが苦手です。

文字を書くと左右が反転した鏡文字になったり、漢字が苦手でなかなか覚えられないといった特徴もあります。

算数障害(ディスカリキュア)

算数障害は、数に関することで困難を感じることが多く、算数や計算が苦手となる障害です。

数字の概念や規則性、推測して答えを出す数学的な考え方をすることが難しく、図形やグラフの理解が困難です。

このほかにも、時計が読めなかったり、図形の模写ができないケースもあります。

LDの方の仕事での困りごと

LDの方の仕事上の困りごとや対処法についてまとめました。

困りごと対 処 法
資料などの文章が読みづらい・読んだ部分にマーカーで印をつける
・読みやすいフォントに変更する
・読み上げアプリなどを利用する
メモを取るのが難しい・録音や録画機能を使い、記録する
・ホワイトボードなどを写真に撮り、記録しておく
※事前に撮影等の許可を取りましょう
時計が読めず、スケジュール管理が難しい・アラームやリマインダー機能を使う
・周囲の同僚に声をかけてもらう
・グループでの業務に配置転換をする
計算に時間がかかる・計算アプリを利用する
・Excelなどは計算式を組んでおく
・計算のない業務に配置転換をする

デジタル化の進展により、苦手なことはアプリなどを利用することで補いやすくなりました。

LDの方に向いている仕事は?

学習障害の方は苦手な領域がはっきりとわかりやすいため、「苦手を避ける」もしくは「サポートを受けながら働く」のどちらかで適職を見つけることができます。

例えば、

・「書く」ことが苦手な方はタブレット端末やPCなどを使用する業務に就く

・「読む」ことが大変なのであれば、仕事の手順が動画で説明されている業務を選択する

などの方法があります。

職場環境が整っていても、突発的にイレギュラーな対応をすることも考えられます。

困ったときに職場でフォローしてもらえるよう、事前に上司や同僚に相談しておくことも大切です。

参考:学習障害(限局性学習症)(e-ヘルスネット)

就労の相談ができるところ

発達障害の特性や適職がわかっても、自分ひとりの力では就職や転職が難しいこともあります。そんなときは、就労相談や支援を活用しましょう。

発達障害の方が利用できる支援を4つご紹介します。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスを提供し、47都道府県に設置されています。

地域障害者職業センターは、障害者手帳がなくても利用できますが、援護制度の多くは障害者手帳所持が必要です。
地域障害者職業センターで受けられる主な支援についてまとめました。

支  援内  容
職業評価・就職の希望を踏まえて職業能力等を評価する
・職場に対応するためのリハビリテーション計画を作る
職業準備支援・就職に向けて、作業体験や職業準備講習、社会生活技能訓練を行う
・労働習慣の体得、作業遂行力や職業能力の向上、コミュニケーション能力・対人対応力の向上を支援する
職場適応援助者
(ジョブコーチ)支援事業
・職場適応を図るため、事業所にジョブコーチを派遣する
・障害者及び事業主に対して、障害特性を踏まえた直接的、専門的な援助を実施する
精神障害者総合雇用支援・障害者及び事業主に対して、主治医等と連携し精神障害者の新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のための専門的・総合的な支援を実施する

このほかにも、事業主に対して障害者の雇用管理に関する相談・援助などを行っています。

参考:地域障害者職業センター(独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構)
参考:地域障害者職業センターの概要(厚生労働省)

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活での自立のため就業面や生活面の支援を行い、障害者の雇用の促進や安定を図ることを目的として、全国に設置されています。

障害者就業・生活支援センターで受けられる支援についてまとめました。

支  援内  容
就業に関する相談支援・職業準備訓練や職場実習のあっせん
・個人の特性や能力に合った職務の選定
・就職活動や職場定着の支援
事業所に対する助言・障害特性を踏まえた雇用管理を助言
日常生活・地域生活に関する助言・日常生活の自己管理について助言(生活習慣、健康管理、金銭管理等)
・地域生活、生活設計に関する助言(住居、年金、余暇活動など)

このほかにも、関係機関との連絡や調整も行います。

参考:障害者就業・生活支援センターについて(厚生労働省)
参考:障害者就業・生活支援センターの概要(厚生労働省)

ハローワーク

ハローワークでは、障害について専門的な知識をもつ担当者が仕事に関する情報を提供したり、就職に関する相談に応じています。

履歴書の書き方や仕事の探し方の相談に対応するほか、応募の際に配慮が必要な内容を企業に説明します。

また、希望により採用試験に同行するなど求職活動を全面的にサポートしています。

くわしく知りたい方は下記をご覧ください。

参考:障害のある皆様へ(ハローワークインターネットサービス)
参考:障害のある求職者のみなさまへ(厚生労働省)

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、障害のある方が学校のように通いながら就職活動のサポートを受けるところです。

働く上で不可欠な健康管理や集中力、持続力の習得やスキルアップ研修などを受けることができます。

就職した後も一定期間職場定着のための相談などのフォローを受けられます。

参考:就労移行支援事業(厚生労働省)

発達障害の方が長く働き続けるためにできること

発達障害の方が、職場で長く働くためにできることを3つご紹介します。

自分の特性を理解する

発達障害の方が仕事を選択するときには、自分の得意や苦手を理解することがとても重要です。

あらかじめ苦手なことを避けて仕事選びができるため、適職を早く見つける可能性が高まります

自分の特性に合う業務や興味のある仕事ならば、取り組みやすく長く働き続けられるでしょう。

周囲の理解とサポートを受ける

自分の特性やできないことは、周囲に伝えてサポートを受けることで働きやすくなります。

このときに重要なのは、サポートしてほしい内容を明確に伝えることです。

例えば、

・口頭での指示がわかりづらいのであれば、メモやメールなどの文字で伝えてもらう

・優先順位がつけられないときは、上司などに決めてもらう

など、具体的に示すことで周囲の人たちも行動しやすくなります。

障害者雇用枠で就職する

精神障害者保健福祉手帳を取得している方は、障害者雇用枠で就職する方法があります。

障害者雇用枠とは、国が企業に対して労働者の2.3%にあたる人数を採用するよう義務付けたものです。

障害者枠で採用されると、発達障害の特性や程度に応じて職場から配慮を得ながら働くことができます。

精神障害者保健福祉手帳をくわしく知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。

四葉のクローバー精神障害者保健福祉手帳とは?申請方法まで徹底解説

まとめ

発達障害には、大きく分けてASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)の3種類があります。

発達障害の特性により向いている仕事や職種が違うため、自分の特性をよく理解することが適職を見つける近道です。

一人で就職活動をするのが難しい場合は、就労支援が受けられます。

苦手なことは周囲の理解とサポートを受けながら働きましょう。