ASD(自閉症スペクトラム障害)とは?特徴や診断、サポート体制も詳しく解説

ASD

「対人関係がうまくいかず、気づけばいつも一人でいる」
「仕事が長続きしない」

発達障害のある人は、こんな悩みを持つことも少なくありません。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の人は人づきあいがうまくできないケースが多くみられます。

そこで本記事では、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴や症状について解説します。
ASDの診断やサポート体制も紹介するので、ASDに関心のある方はぜひ参考にしてください。

ASD(自閉症スペクトラム障害)とは

ASD(自閉症スペクトラム障害)とは、脳発達の偏りからくる発達障害のひとつです。

他人とコミュニケーションを取るのが苦手だったり、特定の物や行動に強いこだわりを持つといった特徴があります。

下図は、発達障害の種類をまとめたものです。

発達障害の種類

出典:発達障害って、なんだろう?|政府広報オンライン

ASDは、かつて「自閉症」「アスペルガー症候群」などと呼ばれていました。

2013年にアメリカ精神医学会の「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)によって、自閉症やアスペルガー症候群の呼び方は「ASD(自閉症スペクトラム障害)」にまとめられました。

DSM-5とは、アメリカ精神医学会が精神疾患の定義などをまとめたものです。
現在は世界共通の診断基準として広く浸透しており、日本でもASDを含む発達障害の診断基準に利用されています。

参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット(厚生労働省)

ASDの特徴や症状


ASDの特徴や症状は、大きく分けると下記の2つが挙げられます。

  • コミュニケーションを取るのが苦手
  • こだわりが強い

それぞれ順番に見ていきましょう。

コミュニケーションを取るのが苦手

ASDのある人は、他人とコミュニケーションを取ることが難しいケースがあります。
よく見られる特徴は下記のようなことがあります。

  • その場の空気を読めず、状況に合った行動ができない
  • 相手の表情やボディランゲージなど、言葉以外でのコミュニケーションを取るのが苦手
  • 冗談やたとえ話を信じてしまう
  • 曖昧な指示が理解できない

ASDのある人は、まわりの空気が読めないことから、悪気なく相手に失礼なことを言ってしまい人間関係を悪化させることがあります。

また、雑談が苦手で同僚や上司とうまく話せないことから、職場に溶け込むことが難しい傾向があります。そのため、職場で孤立してしまうことも多く、不安や孤独を感じやすくなります。

業務を進める中でも「なるべく早くお願い」「いつも通りにやっておいて」など、期限の設定や仕事の進め方の指示が曖昧だと、相手の意図することを察することができません。

その結果、指示した相手の期待に応えることができず、職場での信用を失って、悩みを抱えることがあります。

参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット(厚生労働省)

こだわりが強い


ASDのある人は、強いこだわりを持つこともあります。
主な特徴は下記のようなことがあります。

  • 手順ややり方などに強いこだわりがある
  • 決められたことを守ろうとする
  • 興味のないことには取り組もうとしない
  • 臨機応変な対応が苦手
  • ルーティーンを繰り返すことを好む

ASDのある人は、急に手順が変更になることが苦手です。いつもの手順と違うと、先の見通しが立たず不安になり、なにもできなくなるケースもあります。


また、業務上必要であっても、興味のない仕事には手をつけない傾向があります。
結果的に、任された仕事の期限に間に合わなくなり、周囲に迷惑をかけてしまいます。

こういった困りごとが度々起こると、職場では「融通が利かない」「期限が守れない」と評価されて、次第に仕事を任せてもらえなくなるでしょう。

ASDの人の持つこだわりが問題にならない環境であれば、好きなことを徹底的に極めることにつながる可能性があります。

ASDに限らず、発達障害の特徴の表れ方や生活環境によっては、支障なく活動できることもあります。

参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット(厚生労働省)

二次障害が起こることもある

ASDのある人は、二次障害を抱えることも少なくありません。

職場環境や仕事の内容によって「臨機応変な対応を求められる」「その場の空気を読んで行動する」など、苦手なことを求められ努力して対応せざるを得ないことがあります。

ASDのある人が、苦手でもなんとかやり遂げようと頑張った結果、身体的にも精神的にも疲れ果ててしまうのです。

こうした疲労やストレスが積み重なり、うつ病や不眠症などの二次障害を引き起こすケースがあります。
うつ病などで精神科等を受診して、初めてASDだとわかることもあります。

生活する上で困りごとを抱えていたら、早めに家族や身近な人や医療機関などへ相談し、二次障害を防ぐことが大切です。

ASDの診断ができるところ

ASDを含め、発達障害を診断できるのは、医師だけです。

発達障害の診断を受けるためには、精神科や心療内科を受診しましょう。


大人の発達障害の診察ができる精神科や心療内科は現在あまり多くありません。
これから受診予定の精神科等で、大人の発達障害を診てもらえるか、事前に確認することをおすすめします。

発達障害の診断を行う医療機関をリスト化し、公開している自治体もあります。
お住いの自治体のホームページを確認してみましょう。

ASDの診断方法

精神科等では、先ほどご紹介したDSM-5をもとに診断を行っています。

診断方法は、医師による診察と検査です。

診察時には、子どものころから現在まで多岐にわたって質問されます。子ども時代のことをメモしておいたり、両親などに聞いておきましょう。

母子手帳などの記録も医師に見せれば、情報が伝わりやすくなります。

診察時に医師に聞かれることや持ち物を下表にまとめました。

聞かれること・成長過程
・子どものころからの困りごと
・学校での様子や成績
・現在の健康状態や既往歴
・家族や親族の病歴
(発達障害や精神疾患の人はいるか)など
持参するもの・母子手帳や育児日記
・保育園や小学校の連絡帳
・通知表など
※用意できる範囲で持参する

発達障害の診断に必要な検査は、ASDを含む発達障害とよく似た病気の可能性を探る目的で行います。
たとえば、てんかんがあるかを診断するために脳波検査をする、甲状腺の異常を診るために血液検査を行うなどです。

医師は、診察や検査でわかったことをもとに、DSM-5の基準に沿って診断を行います。
一度の診察では判断ができず、数回にわたって診察や検査を行うケースも多いです。

ASDと診断されると、障害年金の請求や障害者手帳の交付が受けられることがあります。
障害年金と障害者手帳を詳しく知りたい方は、下記の関連記事をご覧ください。

年金手帳と電卓 障害年金とは【専門家がわかりやすく解説します】 四葉のクローバー 精神障害者保健福祉手帳とは?申請方法まで徹底解説

ASDの治療

ASDを根本的に治療する方法はまだありません。

しかし、ASDの症状を軽減する対処法や困っている症状を治療することはできます。

ASDの対処法や治療法を3つご紹介します。

※青字をクリックすると、ページがジャンプします。

順番にわかりやすくご説明します。

環境を整える


ASDのある人は、生活環境を整えることで、困りごとを減らせる可能性があります。

その人の特徴や困りごとに合わせて物理的に環境を整えることで、自宅や職場などで困りごとが起きにくくなるでしょう。

環境調整の例を下記にまとめました。

困りごと調整の方法
騒がしいところが苦手・耳栓をつける
・静かな場所へ席を移動する
急な予定変更への対応が苦手・ルーティーン作業など、変更が起きにくい業務に就く
・予定変更の理由を説明してもらう
口頭の指示の理解が難しい・メールなど文字で指示を受ける

上記の例のように環境を整えるには、自分一人では対処できないことがあります。

家族や職場の上司、同僚の協力を得たり、医師などの専門家の助言を取り入れることも視野に入れましょう。

参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット(厚生労働省)
参考:自閉症スペクトラム症(ASD)|国立精神・神経医療研究センター

カウンセリングを受ける

カウンセリングを受けることで、自分について理解が深まり、ASDの特徴からくる困りごとの軽減につながります。

カウンセリングをとおして、これまでの自分の行動や特徴に気づけます。
自分の行動や特徴のくせを見つけて、改善したり、工夫したりすることで対処方法を見つければ、困りごとを減らせるでしょう。

また、ASDのある人の家族がカウンセリングを受けると、ASDへの理解が深まります。
ASDのある人への対応の仕方をカウンセラーと一緒に検討できれば、家庭生活がスムーズに送れる可能性が高まるでしょう。

参考:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット(厚生労働省)
参考:自閉症スペクトラム症(ASD)|国立精神・神経医療研究センター

薬物療法

ASDの特性を根本的に治療できる薬はありませんが、困っている症状に対して治療するために薬物療法を行うことがあります。

具体的には下記のような症状の場合に薬物療法が検討されます。

困っている症状投与が検討される薬
抑うつや不安が強い抗うつ薬
不眠が辛い
夜中に目が覚める
睡眠薬

漢方薬の使用を検討するケースもあり、下記のような漢方薬が選択されることがあります。

困っている症状投与が検討される漢方薬
興奮してしまう抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯など
不安や緊張、気分の落ち込み半夏厚朴湯

いずれの薬物療法も補助的な位置づけで、環境調整などでも困りごとが改善できないときに検討されます。

ASDは、「治療する」というよりも「ASDの特徴とうまく付き合っていく」ことを考え、行動することが重要です。

大人のASDをサポートするところ

ASDを含む発達障害の相談は、精神科等の医療機関だけではなく、行政機関や社労士事務所などでも行っています。

ASDを含む大人の発達障害が相談できるところは下記のようなところがあります。

※青字をクリックすると、ページがジャンプします。

それぞれ順番にご紹介します。

参考:大人になって気づく発達障害ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!|政府広報オンライン

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、都道府県等が設置している発達障害者の相談支援機関です。


保健、医療、福祉、教育、労働など、地域生活に必要な支援を総合的に行っています。


発達障害の診断がなくても利用できるため、まずは発達障害者支援センターで相談してみるのもいいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う支援機関で、通称「なかぽつ」と呼ばれています。

国と都道府県 から事業を委託された法人が運営し、全国で337か所設置されています。(2023年4月現在)

一般企業で働きたい障害のある方だけでなく、障害のある方の雇用に取り組んでいる企業、これから取り組みたい企業への相談・支援に取り組んでいます。

参考:障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)の概要について|神奈川労働局

ハローワーク


ハローワークでは、障害者の職業相談部門を設置し、障害の専門知識を持つ担当者が就職の相談や職業の紹介などの対応をしています。

企業等で働き始めたあとも、ハローワークや就労支援機関が継続的に支援するなど、きめ細やかな支援が受けられます。

参考:障害のある求職者のみなさまへ|ハローワーク

年金事務所やお住いの役所

ASDなど発達障害の診断が出ると、障害者手帳の申請や障害年金の請求ができるケースがあります。

相談できるところを下記にまとめました。

種類相談できるところ
障害者手帳お住いの市区町村の窓口
障害年金年金事務所
街角の年金相談センター
お住いの市区町村の窓口

年金事務所や街角の年金相談センターは混雑することが多いので、予約するのがおすすめです。

障害年金は、障害年金専門の社会保険労務士事務所でも相談できます。


まとめ

ASD(自閉症スペクトラム障害)は、脳発達の偏りからくる発達障害のひとつです。

ASDのある人は、他人とコミュニケーションを取るのが苦手だったり、特定の物や行動に強いこだわりがあり、社会生活をする上で困りごとを抱えることが多くあります。

ASDの診断は、精神科や診療内科で受けられますが、ASDの根本的な治療方法はありません。

しかし、環境を整え、カウンセリングや薬物療法を行うことで困りごとに対処できます。

ASDを含む大人の発達障害は医療機関や支援施設で相談でき、必要なサポートを受けることもできます。

生きづらさを感じたり、日常生活で困りごとを抱えていたら、ひとりで悩まず誰かに相談しましょう。