「境界性パーソナリティー障害と診断され、仕事も生活も安定しません。障害年金は受けられますか」。治療を続けながら経済的な不安も抱えている方にとって、利用できる制度があるかどうかは、切実な問題ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、境界性パーソナリティー障害などの人格障害は、障害年金では原則として認定の対象になりません。生活に困難があることや、長く通院していることだけで、人格障害による受給が認められるわけではないのです。
特に気を付けたいのは、「精神病の病態があれば対象になる」という説明です。障害認定基準のこのただし書きは、神経症について設けられたもの。人格障害と神経症は別の項目で規定されており、その例外を人格障害へそのまま当てはめることはできません。
本記事では、人格障害が対象外とされる認定基準の読み方を中心に、神経症との違い、診断書や入院歴だけでは取り扱いが変わらない理由を解説します。「何かを書き加えれば受給できるのでは」と準備を進める前に、制度上の位置付けを整理していただければと思います。
目次
境界性パーソナリティー障害は対象外?まず押さえたい制度の結論
人格障害は、障害認定基準で原則として対象外
日本年金機構が公開している障害認定基準には、人格障害について「原則として認定の対象とならない」と定められています。境界性パーソナリティー障害も、人格障害の取り扱いを確認する必要がある疾患です。
そのため、「病名に障害と付いているから年金が出る」「精神科に通院しているから対象になる」といった理解では、実際の認定の仕組みを捉えられません。医療上の診断や治療の必要性と、障害年金の給付対象になるかどうかは、分けて考える必要があります。
これは、境界性パーソナリティー障害であれば少し低い等級を受けられる、という意味でもありません。対象となる障害について等級を判断することと、人格障害そのものが原則として認定対象にならないことは、異なる問題です。まず対象かどうかを確かめる順序が大切になります。
「原則として」を、受給できるという期待に置き換えない
基準に「原則として」と書かれているのを見ると、「例外を説明してもらえば自分も受給できるのではないか」と考えるかもしれません。しかし、その言葉だけから、人格障害にも神経症と同じ例外が用意されていると読むことはできません。
「原則として」という言葉は、認定基準の表現として正確に受け止める必要があります。そこから「人格障害にも、精神病の病態があれば認定するというただし書きがある」と読み替えることはできません。書かれている規定と、読み手が期待する内容を分けて考えることが大切です。
この記事でお伝えしたいのは、境界性パーソナリティー障害そのものについて、通常の請求で受給を見込めると考えるべきではない、ということです。「何か方法があるはず」と期待を広げる前に、認定基準に何が書かれているかを正確に理解しておきましょう。
神経症とはここが違う!ただし書きがあるのは別の項目
人格障害の規定と、神経症の規定は並んでいても別のもの
障害認定基準の第8節「精神の障害」では、認定要領のAにある(4)が人格障害、(5)が神経症についての規定です。2つが続けて記載されているため、一緒に説明されることがありますが、規定の内容は同じではありません。
人格障害の項目には、原則として認定対象にならないという定めがあります。その次に置かれた神経症の項目では、原則対象外としたうえで、臨床症状から精神病の病態を示すと判断される場合について、統合失調症または気分(感情)障害に準じる扱いを示しています。
つまり、神経症の説明に続く「ただし」以下を、前の人格障害の項目にも共通するものとして読むことはできないのです。この区切りを見落とすと、「人格障害でも精神病の病態を書いてもらえばよい」という、誤った期待につながってしまいます。
比べるとわかる、対象外の原則とただし書きの違い
| 確認する点 | 人格障害 | 神経症 |
| 認定要領の該当箇所 | A(4) | A(5) |
| 基本的な取り扱い | 原則として認定対象外 | 原則として認定対象外 |
| 精神病の病態に関するただし書き | この項目には設けられていない | この項目に設けられている |
| 読み違えたくない点 | 神経症のただし書きをそのまま適用しない | 症状が重いという申告だけで例外にはならない |
この表は、認定基準における規定の構造を整理したものです。個々の方の受給可否を、表だけで決めることはできません。ただ、人格障害と神経症をまとめて「重ければ例外がある」と説明してしまうことが、なぜ不正確なのかは理解しやすくなるのではないでしょうか。
なお、ここで確認しているのは「障害認定基準」です。「障害認定日」は、原則として初診日から1年6か月後など、障害の状態を確認する時点を指す言葉であり、疾患の取り扱いを定めた基準そのものとは異なります。
参考:日本年金機構「障害認定基準・精神の障害」認定要領A(4)(5)
境界性パーソナリティー障害とは?病名から生じやすい誤解
感情や対人関係の不安定さは、本人にとっても大きな負担
境界性パーソナリティー障害は、感情や対人関係、自分自身の捉え方の不安定さ、衝動的な行動などがみられる疾患です。見捨てられることへの強い不安や、空虚な気持ちなどに苦しむ場合もあります。症状の現れ方や生活への影響には、個人差があります。
「パーソナリティ障害」「パーソナリティー障害」「人格障害」という表記を見かけますが、人格障害という名称は、その方の人間的な価値や善悪を判断する言葉ではありません。「性格が悪いから」「努力が足りないから」といった説明で片付けられるものでもないのです。
障害年金の対象にならないという結論を知っても、治療や支援を必要とする状況まで否定されたと受け止める必要はありません。年金の認定と、医療上の評価は異なるものです。ご本人の苦痛を軽く見ず、制度の取り扱いを正確に説明することの両方が必要だと考えています。
「境界性」だから、神経症の規定が使えるわけではない
病名の「境界性」という言葉から、神経症や統合失調症などとの中間にあるため、年金でも両方の扱いを選べるのではないかと想像する方もいるかもしれません。しかし、病名の印象と、認定基準の適用を結び付けることはできません。
精神科の診断には似た症状がみられるものがあり、診療の経過の中で評価が変わる場合もあります。それでも、ご本人が受給に有利な区分を選べるという意味にはなりません。どのような疾患や病態があるかを判断するのは医師であり、年金の手続きはその医学的な情報を踏まえて検討するものです。
「境界性」という言葉だけで神経症の例外へ進もうとすると、現在の診断や症状の確認が置き去りになります。まず主治医から何と診断され、何に対して治療が行われているのかを理解することが大切です。
参考:国立精神・神経医療研究センター「パーソナリティ障害」、済生会「パーソナリティ障害」
「精神病の病態あり」と書いてもらえば通る?その考え方に注意
書類の決まり文句で、認定対象が変わるわけではない
障害年金について調べていると、「診断書に精神病の病態があると書いてもらうことが重要」という説明を目にすることがあります。けれども、その説明が神経症の取り扱いについて述べているのか、どのような事例を前提としているのかを確認する必要があります。
境界性パーソナリティー障害と診断されている方について、その一文を追加すれば人格障害の扱いが変わる、と考えることはできません。診断書は、受給に必要そうな言葉を集める書類ではなく、実際の診断、症状、治療の経過、生活への影響などを医師が証明するものだからです。
主治医に確認したいのは、「この言葉を書いてくれますか」よりも、ご自身の症状がどのように評価されているかという点です。年金の情報だけを頼りに記載を指定するより、現在の医学的な理解を共有するほうが、必要な確認につながります。
薬の種類や症状の一部だけで、別の疾患とは判断できない
治療で抗うつ薬や抗精神病薬が使われている場合でも、薬の名前だけから、うつ病や統合失調症の診断があると判断することはできません。薬はさまざまな症状に対して使われることがあり、処方と病名が単純に対応するわけではないためです。
同様に、強い不安がある、気分が大きく変わる、現実感が薄れるなど、ご本人が経験している症状を、そのまま特定の疾患の診断に置き換えることもできません。症状がいつ、どのくらい続き、どのような状況で現れるのかという情報を、主治医に伝えることが必要です。
社労士も、診断を行ったり、処方から別の疾患を決めたりする立場にはありません。医学的な評価と制度上の判断を混ぜず、それぞれに必要な資料を確認することが大切になります。
症状が重い・入院した・働けない。それでも自動認定にならない理由
治療の必要性と、年金の給付要件は別に確認する
境界性パーソナリティー障害により、日常生活が混乱したり、入院を必要としたりする場合もあります。しかし、入院したという事実だけで人格障害が障害年金の認定対象へ変わるわけではありません。入院の理由や治療内容を含め、何の疾患による障害を評価するのかが問題になります。
また、通院期間が長いことや、家族の負担が大きいことだけでも結論は変わりません。だからといって、長年の苦労や支援の負担が小さいという意味ではありません。生活の切実さと、年金の基準がそのまま一致しないことが、制度を理解しにくくしている面があります。
ご家族が「こんなに大変なのだから受給できるはず」と考えるお気持ちは理解できますが、申立書に困難を詳しく書けば対象外という取り扱いを乗り越えられる、と期待することは避けたいところです。請求の見通しは、症状の強さだけでは決まりません。
自傷の有無を、受給の条件のように捉えない
境界性パーソナリティー障害では、自分を傷つける行動などが問題になることがあります。ただし、その経験があるかどうかで、障害年金の支給が決まるわけではありません。危険な状態を受給のための証明と結び付けたり、年金の判断まで医療への相談を待ったりすることは避ける必要があります。
ご本人の安全に関わる症状は、年金とは別に、主治医や医療機関へ伝えて対応を考えるべき内容です。年金が認められるかどうかより先に、今必要な治療や支援があります。困難が増しているときには、その変化を治療者と共有することを大切にしていただければと思います。
病気を重く見せることと、実際に困っていることを伝えることは、まったく違います。できていることも、援助がなければ難しいことも含め、事実に沿って把握してもらうことが基本です。
「受給できた人がいる」という情報は、どこまで参考になる?
体験談では、実際に認定された傷病がわからないこともある
「同じ境界性パーソナリティー障害の人が年金を受けている」という話を聞くと、ご自身も受給できると感じるかもしれません。しかし、投稿で語られている診断と、年金の審査で確認された傷病や病態が、同じ内容であると断定できるとは限りません。
また、初診日の加入制度や認定時点の状態、提出された医療資料が、体験談の中ですべて明らかになっているとは限りません。病名が同じという部分だけで、同じ結果になると考えることはできないのです。
体験談が間違っていると決め付ける必要はありません。それでも、ご自身の手続きを判断する材料にするには、公開されている認定基準と、実際の診療経過の確認が欠かせません。読んだ情報が期待を膨らませるものか、判断の根拠になるものかを分けて考えたいところです。
個別の裁決例と、一般的な認定基準を混同しない
過去の不服申立てについて、個別の認定事例が紹介されていることもあります。しかし、その結論だけを取り出して「人格障害には神経症と同じただし書きが適用される」と説明するのは飛躍があります。個別の資料や争点、判断された時点を確認する必要があるためです。
裁決事例を参考にするときは、誰かが要約した結論だけでなく、対象となった傷病や争点まで確認する必要があります。神経症についての判断を、人格障害の認定にも共通する説明として引用していないかという点にも注意が必要です。
この記事では、過去の個別事案を理由に一般的な受給可能性を広げるのではなく、現在公開されている認定基準の区分を基本に説明しています。例外らしい情報を見つけたことと、ご自身の請求で受給を見込めることは、同じではありません。
診断書は「重く書く」より、病態と生活の整合性が重要
日常生活の困難を書き込めば、対象になるわけではない
精神の障害用の診断書には、症状や日常生活能力、就労状況などを記載する欄があります。そのため、生活能力の欄を詳しく記載してもらえば、人格障害でも認定対象になるのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、疾患の取り扱いと、障害の程度の評価は別の確認です。
たとえば、食事を取れていても家族が準備と声かけをしているのか、通院には付き添いが必要なのか、仕事ではどのような配慮があるのかという情報があります。「何もできない」とひとまとめにするより、実際に行っていることと援助されていることを分けたほうが、状態を伝えやすくなります。
そのうえで、診断、症状、治療の経過、生活能力の評価が整合していることが重要です。困難を大きく表現すれば対象疾患の確認が不要になるわけでも、人格障害だけで認定されるようになるわけでもありません。
医師に伝えるメモは、記載を誘導するためのものではない
診察でうまく説明できない場合、日常生活の困りごとを短いメモにしておく方法があります。調子の変化や、誰からどのような援助を受けているかをまとめると、伝え忘れを減らしやすくなります。
ただし、「この項目はできないにしてほしい」「この病名なら受給できるので変更してほしい」といった依頼は、事実を伝えることとは異なります。診断書の医学的な記載は医師が判断するものであり、社労士やご本人が希望する等級に合わせて作るものではありません。
できている面も含めて説明し、事実誤認があれば確認する。それが、ご自身の状態を正しく把握してもらうための準備です。対象外という問題を、書き方の工夫だけで解決しようとしないことが大切になります。
日常生活能力の点数が重ければ2級?等級の目安との関係
等級判定ガイドラインは、対象外の原則を変える仕組みではない
精神の障害による障害年金について調べると、診断書の日常生活能力の評価から等級の目安を確認する表を見かけることがあります。日本年金機構は、障害認定基準に基づく適切な等級判定のため、精神の障害に係る等級判定ガイドラインを公開しています。
ここで注意したいのは、生活能力の評価を数値に置き換えた結果だけで、どのような疾患も受給できるわけではないことです。人格障害が原則として認定対象にならないという取り扱いを、点数が重いという理由だけで変更するものではありません。
「この評価なら2級に見える」と感じたとしても、それは人格障害の認定対象の問題への答えにはなりません。対象としての取り扱いを確認せず、等級の目安だけを先に見ると、受給への期待と実際の判断の間に大きな隔たりが生じてしまいます。
できない項目を増やすより、制度の位置付けを理解する
食事、清潔保持、金銭管理、対人関係などの項目を見て、ご自身に当てはまる困難が多いと感じる方もいるでしょう。その困難は、医療や生活の支援を考えるうえで大切な情報です。しかし、当てはまる項目を増やすことで、人格障害そのものが年金の対象になるわけではありません。
まして、目安の表に合わせるために症状を大きく伝えたり、家族の援助を実際以上に説明したりすることは適切ではありません。ご本人に必要な支援の把握まで歪めてしまいます。診断書の評価は、受給のために調整する数字ではなく、実際の状態を医師が評価するものです。
障害年金の情報は、病名の取り扱い、診断書の内容、等級の目安が別々に解説されていることがあります。どれか1つの説明だけを読んで結論を出さず、何を前提とした話なのかを確認することが重要です。
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」
対象外なのは「本人の努力で治るから」?理由を取り違えないために
制度上の説明を、本人への非難に結び付けない
人格障害が認定対象外とされることについて、「本人が頑張れば治せるから」「単なる性格だから」といった言葉で説明するのは適切ではありません。現在公開されている認定基準の取り扱いを伝えることと、個人の努力や責任を論じることは異なります。
治療によって改善が期待されることと、ご本人の意思だけで症状を直ちに解消できることも、同じ意味ではありません。国立精神・神経医療研究センターの説明でも、治療者と協力して問題を把握し、継続的に対応していくことの重要性が示されています。受給の対象外であることを、本人が悪いという話へ置き換えないようにしたいところです。
本記事で説明している対象外の根拠は、障害認定基準が人格障害について別項目で原則を定め、神経症のただし書きを人格障害の項目には設けていないという点です。読者の方を納得させるために、基準に書かれていない性格論や治療の見通しを付け加える必要はありません。
年金の結果と、治療を続ける意味を切り離す
年金が出ないなら治療を続けても意味がない、と感じてしまうことがあるかもしれません。それでも、年金の給付と、症状を和らげて暮らしを安定させるための医療は、目的が異なります。制度上の取り扱いによって、診療を受ける意味が失われるわけではありません。
治療で困っていること、医療費の負担、家族や職場との関係など、相談したい内容はそれぞれあるはずです。年金の対象外という結論ですべてを閉じてしまわず、今どの負担を減らす必要があるかを、主治医や支援者と考えていただければと思います。
手帳があるのに年金は対象外?制度ごとに違う支援の条件
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度
精神障害者保健福祉手帳を持っていても、その事実だけで障害年金の受給が決まるわけではありません。手帳の判定基準では「その他の精神疾患」についても定められており、年金の人格障害の取り扱いとは分けて確認する必要があります。
同じ2級という数字が使われていても、手帳の等級と年金の等級は同一ではありません。「手帳が2級だから年金も2級になる」「手帳を取れたので人格障害でも年金の対象になる」とは考えられないのです。
また、手帳の診断書や会社に提出する休職用の診断書は、障害年金用の診断書と目的が異なります。どの制度について説明を受け、どの書類を用意しているのかを確かめることが、準備の混乱を防ぎます。
年金だけに絞らず、医療費や生活の相談先も確認する
年金の対象外とわかっても、医療や暮らしの支援まで不要になるわけではありません。精神科への継続的な通院が必要な場合には、医療費の自己負担を軽減する自立支援医療の精神通院医療について、主治医や自治体の担当窓口で確認する方法があります。
利用にはそれぞれの条件があり、人格障害と診断されていれば一律に利用できる、と判断するものではありません。それでも、年金の認定対象とは別の制度として検討できることを知っておくと、相談先を探しやすくなります。
生活費や住まいの問題が差し迫っている場合には、自治体の福祉窓口や、医療機関に相談員がいればそちらへ相談することも考えられます。年金の例外を探し続けることだけに力を使わず、今の負担を減らす支援にも目を向けていただければと思います。
参考:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準」、「自立支援医療制度の概要」
社労士に依頼すれば対象になる?専門家にもできないこと
専門家は、認定基準を変えることはできない
社労士へ障害年金の請求を依頼しても、人格障害に神経症のただし書きを適用できるようになるわけではありません。対象外の疾患を、書類の表現や交渉によって認定対象へ変えることを約束することもできません。
境界性パーソナリティー障害という診断について、社労士へ依頼すれば受給できると期待することは避けていただきたいと思います。認定基準に定められた疾患の取り扱いは、依頼先の工夫や文章力によって変えられるものではないためです。
当事務所も、受給につながる根拠が確認できない状況で、期待だけを持たせて請求代理をお受けすることはできません。厳しく感じられるかもしれませんが、費用や準備の負担があるからこそ、見通しを丁寧に確認することが必要だと考えています。
対象外と説明することも、不要な負担を防ぐための専門的な回答
相談者の方が望んでいる回答と、制度上お伝えできる回答が一致しないことはあります。生活が苦しい中で対象外と聞けば、残念に感じられるのも無理はありません。それでも、根拠のない受給の期待を持たせてしまえば、診断書代や書類集めの負担、結果を待つ不安まで増やすことになりかねません。
当事務所では、人格障害の取り扱いを説明する際にも、神経症のただし書きを使って受給できるかのようにご案内することはありません。受給の条件を満たす根拠がないまま請求へ進むより、対象外であることを早い段階で理解していただくことが大切だと考えています。
相談の回答は、ご本人の苦痛への賛否でも、治療の必要性を否定するものでもありません。障害年金という特定の制度で何が認められるかについての説明です。この違いを理解していただくことで、不要な準備に力を使い続けることを避けやすくなります。
さいごに
境界性パーソナリティー障害などの人格障害は、障害年金では原則として認定の対象になりません。特に、神経症について定められている精神病の病態に関するただし書きは、人格障害の項目にも共通する規定ではない、という違いを押さえておくことが大切です。
「生活が大変だから」「入院したから」「診断書に精神病の病態と書いてもらえるから」という理由だけで、人格障害の取り扱いが変わるわけではありません。人格障害については、対象外という原則を出発点に理解する必要があります。
対象外という結論は、ご本人のつらさや、治療を続けてきたことを否定するものではありません。受給の可能性を正確に知ることと、必要な治療や支援につながることは、どちらも大切なことです。
当事務所の障害年金のご相談については、受給判定・相談フォームに受付条件を掲載しています。ただし、社労士への相談や依頼によって、人格障害が認定対象になるわけではありません。制度の結論を踏まえ、医療費や生活の支援は別の窓口でも確認しながら、ご自身に必要な支えにつながっていただければと思います。
