「人工透析をしていれば障害年金の対象になると聞いたけれど、腹膜透析でも同じなのでしょうか」
透析と聞くと、病院に通ってベッドで治療を受ける血液透析を思い浮かべる方が多いかもしれません。そのため、自宅で腹膜透析を続けている方やご家族の中には、「通院回数が少ない自分は対象にならないのでは」と、請求をためらってしまう方もいらっしゃるでしょう。
結論からお伝えすると、血液透析も腹膜透析も、障害年金の認定対象となる人工透析療法です。継続して人工透析療法を受けている場合は原則として2級に認定され、腹膜透析だから等級が低くなる、年金額が減るという扱いではありません。
ただし、透析を受けていることと、障害年金を受け取るための要件がすべて整っていることは別です。初診日、年金の加入状況、保険料の納付状況、請求の時期なども確認しなければなりません。
この記事では、血液透析と腹膜透析の違いを整理したうえで、障害年金の等級や受給額、治療方法を変更した場合の考え方まで解説します。「自宅で治療できるから」「まだ仕事を続けているから」という理由だけで、ご自身を対象外と考えてしまう前に、制度の正しい位置づけを知っていただければと思います。
目次
血液透析も腹膜透析も対象に――障害年金は原則2級
認定基準が定めているのは「人工透析療法施行中」という状態
障害年金には、病気や障害の種類ごとに障害の程度を判断するための「障害認定基準」があります。腎疾患については、人工透析療法を受けている場合を2級とする取り扱いが示されています。
ここで押さえたいのは、血液透析だけを対象とする規定ではないという点です。腹膜透析も人工透析療法に含まれるため、治療を自宅で行っているという理由で対象から外れるものではありません。
日本年金機構の腎疾患用の診断書にも、人工透析の種類として血液透析・腹膜透析などを記載する欄があります。腹膜透析は、障害年金の制度が想定していない特殊な治療というわけではないのです。
「腹膜透析についての情報が少なく、自分はどうなのかわからなかった」という方にとって、この点は安心材料になるでしょう。治療方法の名前の違いだけで受給の可能性を諦める必要はありません。
参考:日本年金機構「障害認定基準 第12節 腎疾患による障害」、腎疾患用の診断書・記載要領
「どちらの透析か」より、実際の治療経過を正確に伝えること
血液透析は2級、腹膜透析は3級という区分はありません。また、血液透析に変更すれば、必ず今より有利な等級になるということでもありません。
一方で、症状や合併症、具体的な生活状況などによっては、2級より上位の等級が検討される場合もあります。これは治療方法の名称だけで決めるものではなく、実際の障害状態を踏まえた判断です。
そのため、請求の準備では「腹膜透析でも受給できるように特別な説明を作る」という発想は必要ありません。いつから、どのような透析療法を受け、どのような経過をたどっているか。診療記録に沿って、その事実を整理することが基本になります。
なお、ここで説明しているのは、慢性腎不全などにより継続的に透析療法を必要としている場合です。急性の病気などで一時的に透析を受けた経験があるだけで、当然に障害年金2級になるという意味ではありません。
血液透析と腹膜透析の違いを、治療と暮らしの両面から整理
血液透析は、体の外に取り出した血液を透析器で浄化する治療
血液透析は、血液を体の外に取り出し、ダイアライザーという透析器を通して老廃物や余分な水分を取り除き、体内に戻す治療です。英語の略称から「HD」と表記されることもあります。
医療機関に通って治療を受ける方法が一般的で、週3回程度、1回数時間の治療が代表的な形です。ただし、回数や時間は患者さんの状態や治療方針によって異なり、すべての方が同じスケジュールというわけではありません。在宅で行う血液透析もあります。
通院による血液透析の場合、治療時間に加えて、移動や準備にも時間がかかります。仕事や家事を続けるうえでは、通院日の予定を調整し、体調に合わせて休む時間も確保するなど、生活全体を組み直す必要が出てくるでしょう。
周囲からは「透析に通っている時間」だけが見えがちですが、その前後も含めて暮らしに影響していることを、ご本人やご家族は実感されているのではないかと思います。
腹膜透析は、お腹の中の腹膜を利用する在宅中心の治療
腹膜透析は、お腹に入れたカテーテルを通して透析液を出し入れし、ご自身の腹膜を利用して老廃物や余分な水分を取り除く治療です。「PD」という略称でも呼ばれています。
血液透析のように血液を体外へ取り出す仕組みではなく、主に自宅などで治療を続けるのが特徴です。生活に合わせて治療を組み込みやすい面がある一方で、決められた治療を続け、体調や治療環境を管理していく負担があります。
自宅で行えるという説明を聞くと、通院による血液透析より簡単な治療のように感じるかもしれません。しかし、自宅で行うことと、透析を必要とする腎機能の状態が軽いことは同じではありません。治療の場所だけを見て、障害年金の対象になるかどうかを判断しないことが大切です。
CAPDとAPD――腹膜透析の方法が違っても、年金の基本は同じ
腹膜透析には、日中などにバッグを使って透析液を交換するCAPDや、主に夜間の睡眠中に機械を使って行うAPDがあります。実際の治療内容や組み合わせは、残っている腎機能、体の状態、生活環境などを踏まえて決められます。
障害年金では、CAPDなら対象、APDなら対象外という区分があるわけではありません。夜間に治療を行い、日中は仕事に出ているからといって、それだけで人工透析療法に該当しなくなるものではないのです。
ただし、名称だけを申立書に書けば十分ということでもありません。現在の治療内容が診断書に適切に反映されるよう、治療方法や開始時期を医療機関と確認しておくと、請求の準備が進めやすくなります。
| 比較する点 | 血液透析 | 腹膜透析 |
| 主な仕組み | 体外の透析器を使って血液を浄化 | お腹の中の腹膜を利用 |
| 治療場所の代表例 | 医療機関。在宅で行う方法もある | 自宅などを中心に継続 |
| 暮らしとの関わり | 通院と治療時間の確保が必要 | 日々の治療と環境の管理が必要 |
| 障害年金の基本的な等級 | 人工透析療法施行中は原則2級 | 人工透析療法施行中は原則2級 |
参考:日本腎臓学会「腎代替療法」、関係学会作成「腎不全 治療選択とその実際 2026年版」
自宅で治療し、仕事を続けていても――腹膜透析と障害年金
通院回数の少なさは、治療の必要性の低さを意味しない
血液透析と腹膜透析を比べると、医療機関に通う頻度に大きな違いが出る場合があります。そのため、ご本人が「毎週何度も病院に通う人とは違うので、自分は障害年金の対象にならない」と考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、腹膜透析では、通院のない日にも治療が生活の中に組み込まれています。病院に行く回数だけでは、治療を受けている実態は表せません。
障害年金の判断で、毎月の通院回数を血液透析の方と同じにする必要はありません。ご自身の透析療法が、診断書などの資料から正しく確認できることが重要です。通院が少ない点を不利に感じ、症状を必要以上に強く表現しようとするのも適切ではありません。
就労中でも、透析療法を受けている事実は変わらない
透析を受けながら働いている方は少なくありません。「障害年金は仕事ができない人だけが受け取るもの」と思っていると、働き続けている自分には関係がない制度に見えてしまうかもしれません。
腎疾患の認定基準には、人工透析療法施行中の方を2級とする取り扱いがあります。そのため、働いているという理由だけで、透析による障害年金の対象外になるわけではありません。受給のために退職しなければならないということもありません。
もちろん、就労状況を隠してよいわけではなく、勤務時間、仕事内容、職場の配慮などは、尋ねられた内容に沿って正確に伝えます。「働いている」と「治療の負担がない」は別の話ですので、どちらかを消して説明しようとしないことが大切でしょう。
家族の手助けで生活が成り立っている場合も、実態をそのまま
透析を続ける暮らしでは、ご家族が予定の調整や家事、通院の付き添いなどを担っていることもあります。ご本人が「普通に生活できている」と思っていても、周囲の支えを含めて成り立っている場合があるのです。
だからといって、支援を大げさに書く必要はありません。何を自分で行い、何を手伝ってもらっているかを、普段の生活に即して整理すれば十分です。
透析の種類による違いを説明することと、実際の生活を正しく伝えること。その両方を意識すれば、血液透析の方の体験談に無理にご自身を当てはめずに済みます。
同じ2級でも受給額が違うのは、透析方法のせいではない
年金の種類を分ける重要な日付は「初診日」
血液透析と腹膜透析で、障害年金の金額に専用の差額が設けられているわけではありません。それでも、人によって受け取る額が違うのはなぜでしょうか。
大きな要素となるのが、障害の原因となった病気の初診日に、どの年金制度に加入していたかという点です。初診日に国民年金に加入していた場合は原則として障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の対象となり、2級では障害基礎年金もあわせて支給されます。ほかに加入状況や年齢による取り扱いもあるため、記録の確認が欠かせません。
ここでいう初診日は、透析を初めて受けた日とは限りません。現在会社員だから必ず障害厚生年金になる、現在退職しているから障害基礎年金だけになる、とも言い切れないのです。
報酬や家族構成なども、金額の違いにつながる
障害厚生年金には報酬比例の部分があり、年金額の計算に使われる加入記録や報酬などによって金額が異なります。また、条件に該当する配偶者や子がいる場合の加算も、年金の種類に応じて検討されます。
そのため、「知人は血液透析で自分より多く受け取っている」という話を聞いても、治療方法が金額の差の原因とは限りません。まずは、年金の種類、等級、計算の基礎となる記録、加算の有無を分けて考える必要があります。
インターネット上の受給額は、ご自身の見込額をそのまま示すものではありません。治療方法を選ぶ際に「年金が多くなるのはどちらか」を心配するより、ご自身の加入記録に基づいて受給の可能性を確認するほうが、生活設計に役立つはずです。
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」、「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
「透析開始から3か月待つ」とは限らない――請求時期の違い
初診日から1年6か月以内なら、障害認定日の特例を確認
障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日が、障害の程度を判断する「障害認定日」になります。
人工透析療法には特例があり、初めて透析を受けた日から3か月を経過した日が、初診日から1年6か月を超えない場合は、その日が障害認定日となります。血液透析だけでなく、腹膜透析についてもこの取り扱いを確認します。
たとえば、初診日から比較的短期間で継続的な透析が必要になった場合、通常の1年6か月が過ぎるまで待たずに、認定日を迎えることがあります。あくまでも日付の関係を確認したうえで適用される特例であり、「透析を始めた日がそのまま障害認定日」ということではありません。
すでに1年6か月を経過している場合は、事後重症請求を検討
一方、腎臓の病気で長く治療を続け、初診日から1年6か月を過ぎた後に透析を始める方もいらっしゃいます。過去の障害認定日には基準に該当せず、その後の悪化で基準に該当した場合に検討するのが「事後重症請求」です。
この場合まで、一律に透析開始から3か月待たなければならないわけではありません。日本年金機構の障害年金ガイドにも、障害認定日には該当せず、後に透析を開始した方が、開始後の同じ月に請求する事後重症の例が示されています。
「人工透析は3か月後から」という説明だけを覚えていると、必要のない待機期間を設けてしまうおそれがあります。ご自身が認定日の特例に当てはまるのか、事後重症として進める状況なのかを分けて確認することが大切です。
事後重症の場合は、原則として請求した月の翌月分から支給されます。請求書の提出は65歳の誕生日の前々日までという期限にも注意が必要です。請求が遅れるほど支給開始も後ろにずれるため、透析を開始してから落ち着いて考えようと先延ばしにせず、準備できる事項から確認しておきたいところです。
認定日請求と事後重症請求では、確認する診断書の時点が違う
過去の障害認定日時点で基準に該当していたのか、それとも現在の状態で請求するのかによって、必要になる診断書の時点も変わります。
そのため、「とりあえず今の診断書を取得し、後から請求方法を考える」という順番はおすすめできません。必要な時点と異なる診断書では、そのまま請求に使えない場合があるためです。
透析を始めた病院と現在の病院が異なる場合には、当時の治療内容をどの医療機関で確認できるかも考えます。治療を続けるだけでも大変な中、書類を何度も取り直す負担はできるだけ避けたいものです。初診日と透析開始日を先に整理しておくことが、無理のない準備につながります。
参考:日本年金機構「障害認定日」、「障害年金ガイド」拡大版・事後重症による請求の例
腹膜透析から血液透析へ変更したら、障害年金も変わる?
治療方法の変更だけで、初診日や認定日を取り直すわけではない
腹膜透析を続けた後に血液透析へ移行することもあれば、血液透析を経て腹膜透析へ移行することもあります。治療方法の変更は、病状や生活に合わせて医師と検討する医療上の判断です。
同じ腎疾患の経過の中で透析方法が変わっただけなら、その変更日を新しい初診日として選び直すことにはなりません。また、以前から透析を受けていたにもかかわらず、血液透析に変わった日から初めて透析を開始したものとして整理するのも適切ではありません。
まだ障害年金を請求していない方は、現在の治療方法だけでなく、以前の腹膜透析や血液透析の経過も含めて確認しましょう。途中の経過を省いてしまうと、いつから人工透析療法を受けていたのかが伝わりにくくなります。
腹膜透析と血液透析の併用でも、年金が2つになるわけではない
腹膜透析と血液透析を組み合わせる「併用療法」が行われることもあります。ご本人の治療を支えるために複数の方法を使うもので、治療方法ごとに別々の障害年金が支給される仕組みではありません。
併用しているから自動的に1級になるという扱いでもなく、等級については認定基準と実際の状態に基づいて判断されます。
請求の準備では、「腹膜透析をいつから行い、血液透析をいつから併用しているか」を整理しておくとよいでしょう。病院が分かれている場合は、その点も含めて伝えます。治療の全体像がわかることが、書類の整合性を保つうえでも役立ちます。
すでに受給中なら、治療変更と年金の確認を切り分ける
すでに障害年金を受給している場合も、透析方法の変更だけで年金の増減や停止が自動的に決まると考えないようにしましょう。治療内容が変わったときは、必要な手続きや今後の診断書への記載について、年金事務所などで確認すると安心です。
なお、新たに請求する際の準備と、受給開始後の確認は別の手続きになります。医療機関での治療方針の説明と、年金についての案内が同時に行われるとは限りませんので、それぞれの窓口で必要事項を確かめておくことをおすすめします。
初診日は透析開始日とは限らない――確認したい受給要件
腎臓の病気につながる受診歴をたどることが出発点
透析を始めた日がわかれば、障害年金の準備もすべて進められると思われるかもしれません。しかし、透析開始日と初診日は、役割の違う日付です。
初診日は、障害の原因となった病気について、初めて医師などの診療を受けた日を指します。腎臓の病気で以前から受診していれば、初診日は透析導入より何年も前になることがあります。原因となる病気との関係によっては、さらに過去の受診歴を確認する必要もあるでしょう。
たとえば、糖尿病性腎症による腎不全では、糖尿病の受診歴が初診日の判断に関わることがあります。ただし、糖尿病がある方の腎疾患はすべて同じ扱い、と機械的に決められるものではなく、医学的な因果関係を含めて確認します。
腹膜透析用のカテーテルを入れた日、血液透析の準備としてシャントを造設した日、現在の透析施設を初めて受診した日。これらを、ご自身に都合のよい初診日として選ぶことはできません。
保険料の納付要件も、初診日を基準に確認する
人工透析療法による障害状態が確認できても、保険料の納付要件などを満たさなければ、受給につながらない場合があります。
納付要件は、原則として初診日の前日時点で、初診日の属する月の前々月までの加入期間や納付・免除の状況などから確認します。一定の条件のもとで直近1年間の納付状況による特例もありますが、初診日の時期や年齢によって確認事項が変わります。
また、20歳前の年金未加入期間に初診日がある場合など、通常と異なる取り扱いもあります。現在の納付状況だけで受給できる・できないを判断せず、初診日と加入記録を組み合わせて確認することが必要です。
当事務所の既存記事「人工透析(腎不全)で障害年金を受給するポイント」では、初診日の証明や人工透析全般の請求について詳しく解説しています。本記事とあわせて読むことで、治療方法の違いと、請求に共通する準備を分けて整理しやすくなるでしょう。
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件」、厚生労働省「障害基礎年金 お手続きガイド解説」初診日の取り扱い
診断書では何を確認する?透析の種類と開始日の伝え方
カテーテル留置日と、実際の透析開始日を混同しない
腹膜透析では、治療に備えてカテーテルを留置する手術を受け、その後に透析を開始するなど、準備と治療開始の日付が分かれることがあります。血液透析でも、シャントの造設日と初めて透析を受けた日は必ずしも同じではありません。
障害認定日の特例に関わるのは、人工透析療法を初めて受けた日です。手術をした日だけで決めたり、自宅での治療を始めた日だけを見て、それ以前の入院中の透析を除外したりしないよう注意します。
導入時に複数の治療を受けていた場合や、訓練・入院の期間があった場合は、ご自身の記憶だけで開始日を断定せず、医療機関の記録を確認するのが確実です。「どの日付が大切なのか」を先に知っていれば、病院への確認も進めやすくなるはずです。
診断書と申立書で、治療の経過が食い違わないように
腎疾患用の診断書には、人工透析の実施状況、開始日、導入後の経過、合併症などを記載する欄があります。腹膜透析を受けている場合も、治療の内容に即して医師に作成していただくことになります。
一方、ご本人が準備する病歴・就労状況等申立書では、受診歴や治療、生活、就労の状況を時系列で整理します。診断書と申立書が、それぞれ別の治療経過を示してしまうことは避けたいところです。
たとえば、腹膜透析を続けながら一時的に入院して血液透析を受けた場合、その後どの治療に戻ったのかまで整理しておくと経過が明確になります。書類を見栄えよく整えることより、実際に起こった出来事が無理なくつながることを大切にしたいものです。
「受給できるように重く」ではなく、診療記録に沿った正確さを
腹膜透析の方が「自宅で治療していることを軽く見られたら困る」と感じるお気持ちは理解できます。しかし、その不安から、できることをできないと書いたり、就労の事実を隠したりする必要はありません。
継続的な人工透析療法を受けていること自体に、認定基準上の取り扱いがあります。まずはその事実を正しく示し、症状や合併症、生活上の制限があれば、それも記録に沿って伝えることが基本です。
医師には病状に即した診断書を作成していただき、ご本人は日付や受診先、普段の生活を正確に整理する。役割を分けて考えると、何を準備すればよいかが見えやすくなるでしょう。
参考:日本年金機構「腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用の診断書を提出するとき」
腹膜透析の請求でよくある疑問――尿が出ていても対象になる?
尿が出ることだけで、腹膜透析の対象から外れるわけではない
腹膜透析を受けている方の中には、ご自身の腎機能がある程度残り、尿が出ている方もいらっしゃいます。そのため、「透析の対象になるのは尿がまったく出なくなった人だけでは」と心配されることがあるかもしれません。
しかし、尿が出ていることだけで、人工透析療法を受けている事実が否定されるわけではありません。残っている腎機能と透析療法を合わせて、体の状態を維持している場合もあります。
障害年金の請求では、尿の有無をご自身で受給可否の基準に置き換えず、現在どのような透析療法を必要としているのかを確認します。治療がうまく続けられていることを、制度の対象にならない理由と取り違えないようにしたいところです。
透析前の腎疾患は、別の認定基準で検討する場合もある
反対に、まだ透析を開始していなければ、障害年金の可能性がまったくないというわけでもありません。腎疾患には、検査成績や一般状態などに基づいて障害の程度を判断する基準も設けられています。
ただし、透析を始める予定があるだけで、すでに人工透析療法施行中として2級に認定されるわけではありません。現在の状態で判断する部分と、実際に透析を開始した後に判断する部分を区別する必要があります。
「カテーテルを入れたので年金も自動的に対象になるはず」「透析前だから相談しても意味がない」と、どちらかに決めつけないことが大切です。治療の段階と必要な資料を整理して、ご自身に当てはまる基準を確認していきます。
身体障害者手帳の等級と、障害年金の等級は別のもの
腎臓の障害で身体障害者手帳を取得している場合も、手帳の等級がそのまま障害年金の等級になるわけではありません。認定する制度も、基準も異なります。
手帳を持っていれば年金の手続きが自動的に完了することはなく、障害年金には別途請求が必要です。逆に、手帳がないという理由だけで、年金の相談を諦める必要もありません。
透析に関連する医療費の助成なども、障害年金とは別の制度です。病院や自治体でほかの支援の手続きを済ませていても、年金についてはまだ確認できていないことがあります。手元の書類を制度ごとに整理してみると、未確認の手続きに気づけるかもしれません。
治療方法は年金で選ばない――生活を支えるための制度活用を
血液透析と腹膜透析の選択は、体の状態と暮らしを踏まえて
血液透析と腹膜透析には、それぞれ特徴があり、適している方法は患者さんによって異なります。医学的な条件だけでなく、仕事、住環境、ご家族の状況、通院のしやすさなども関わるため、医療者と相談しながら選択していくことになります。
血液透析だから年金で有利、腹膜透析だから不利という前提で治療を選ぶ必要はありません。むしろ、その誤解が治療選択の負担になってしまうことは避けたいところです。
この先の生活をどう維持していくかは大切な問題ですが、年金の確認と治療方法の選択を切り分けることで、ご自身に必要な医療を落ち着いて考えやすくなるでしょう。
当事務所の腹膜透析の受給事例も、個別の確認を重ねたもの
当事務所のホームページには、腹膜透析を受けていた方が、障害基礎年金2級の受給に至った事例を掲載しています。ご紹介している事例では、古い初診日の確認なども必要となりました。
ここからお伝えしたいのは、「腹膜透析でも制度の対象となり得ること」と、「実際の請求では透析の種類以外にも確認すべき点があること」です。同じ治療を受けていれば、すべての方が同じ資料・同じ経過で受給できるという意味ではありません。
ご自身と事例を比べるときも、結果の等級だけでなく、初診日や加入記録、どの時点の状態で請求したのかに目を向けていただくと、準備の見通しが立てやすくなります。
関連記事:腹膜透析を受けていた方の障害基礎年金2級の受給事例
相談前は、わかる範囲の受診歴と透析の経過を整理
相談する際に役立つのは、現在の治療方法、透析を開始した時期、原因となる病気で初めて受診した時期、これまでの医療機関、当時の年金加入状況などです。資料があれば、記憶と照らし合わせながら整理できます。
正確な日付がわからない部分は、無理に埋めず「未確認」としておいて構いません。曖昧な記憶を確定した情報のように伝えるより、どの点が不明なのかを共有したほうが、必要な確認を進めやすくなります。
一方、相談する前に診断書をすべて集める必要はありません。先に費用をかけて取得するより、請求方法と必要な診断書の時点を確認してから依頼するほうが、取り直しを防げる場合があります。体調を優先しながら、順序を整理して準備していきましょう。
さいごに
血液透析と腹膜透析は、治療の仕組みや日々の暮らしとの関わり方に違いがあります。しかし、障害年金では、どちらも人工透析療法として原則2級の認定対象となり、腹膜透析だから年金の等級や金額が低くなるものではありません。
自宅で治療できていること、通院が比較的少ないこと、仕事を続けていること。それらの事情だけで、ご自身を対象外と考えないでいただきたいと思います。治療を暮らしの中に組み込み、生活を維持している努力と、制度の対象になるかどうかは、分けて考える必要があるからです。
そのうえで、実際の請求には初診日や加入記録、納付要件などの確認が欠かせません。とくに「透析開始から3か月」という説明は、すべての請求に共通する待機期間ではないため、ご自身の経過に合った請求時期を確認することが大切です。
当事務所への障害年金請求のご依頼をお考えの方は、受給判定・相談フォームの受付条件をご確認のうえ、現在の透析方法や受診の経過を、わかる範囲でお知らせいただければと思います。治療を続ける日々の中で、障害年金が生活を支える選択肢になるのか。ご自身の状況を整理するところから、落ち着いて確かめていきましょう。
