障害年金を受け取るためには、「保険料納付要件」「初診日要件」「障害程度要件」の3つの要件を満たす必要があります。
そのうちの1つである「保険料納付要件」は、初診日がある月の前々月までの一定期間、保険料を納付していることが必要です。
しかし、保険料納付要件には特例措置があり、未納期間があっても一定額の年金を納めていれば受給できる可能性があります。
そこで今回は、保険料納付要件の概要や、「初めて2級」の納付要件、保険料が未納でも障害年金が受け取れるケースなどについて解説します。
障害年金の保険料納付要件で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
障害年金の保険料納付要件とは
障害年金の保険料納付要件は、一定の年金保険料を満たす必要があり、特例があります。
まずは、2つの納付要件について詳しくみていきましょう。
原則として2/3以上の納付が必要
原則として、障害年金を受給するためには、下記の要件を満たしていることが必要です。
<保険料納付要件の原則>
・初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上の保険料を納付、または免除されていること
つまり、20歳に到達した月から初診日の前々月までの期間に、3分の2以上の保険料を納めていれば条件を満たしていることになります。
また、初診日以前に免除申請をした期間は、保険料納付要件を見る時には参入することができます。
反対に、初診日を過ぎてから免除申請をした期間については、保険料納付要件を見る時には参入されませんので注意が必要です。
そのため、年金の免除申請を検討している方は早めに手続きを進めましょう。
保険料納付要件には特例がある
保険料納付要件には、上記の要件を満たせない方に対して、下記の特例措置を設けています。
<保険料納付要件の特例>
・初診日において65歳未満で、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
特例によって、過去の保険料の未納期間が多い方でも障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、直近1年間のうち、1ヶ月でも滞納月があれば認められないため注意しましょう。
また、この特例は、初診日が2026年4月1日前で、かつ初診日の年齢が65歳未満の方に限られます。
詳しくは日本年金機構の「障害年金ガイド」をご確認ください。
初診日後に後納しても納付要件は満たさない
年金は納付期限から通常2年(免除期間については10年)に限り、後納が認められています。
ただし、上述したように、障害年金は初診日を過ぎてから年金保険料を後納しても、保険料納付要件を満たすことはできません。
納付要件は初診日の前日時点で、どのくらい年金を納めているかが審査されるためです。
年金保険料を支払うことは国民の義務になりますので、未納がないよう支払うようにしましょう。
初めて2級の請求で納付要件が問われるのは、後発の障害のみ
障害年金には、「初めて2級の請求」という請求方法があります。
初めて2級の請求とは、傷病により障害等級が3級以下の障害の状態にある方が、新たに後発の障害が生じて、両方の障害を合わせて等級が1級、2級に該当する場合に請求することです。
ちなみに、後から発生した傷病を「基準傷病」と呼び、前に発生した傷病を「前発傷病」と言います。
初めて2級の請求では、前発傷病の納付要件は問われず、基準傷病のみ納付要件が問われます。
そのため、前発傷病の際に、納付要件を満たせずに障害年金を諦めていた方も、基準傷病が発生した際に納付要件を満たしていれば、再度障害年金の申請を行うことが可能です。
また、初めて2級の請求では、65歳以降でも請求ができます。
ただし、この場合、65歳に達する日の前日までに、複数の障害の程度を併せて2級以上の障害状態に該当していることが必要です。
さらに、初めて2級の請求をする場合は、前発傷病が1級または2級に認定された場合は、「初めて2級の請求」はできません。
つまり、通常の障害年金請求は、できるだけ障害状態が重いことを証明しますが、初めて2級の請求では、逆に、前発障害が単独で3級以下であったことを証明することが必要です。
なお、初めて2級の請求では、請求した月の翌月から支給となるため、手続きは早いに越したことありません。
保険料の未納がある場合でも障害年金が受け取れるケース
保険料の未納がある場合でも、障害年金が受け取れるケースもあります。
そこで最後に、どのようなケースで障害年金が受け取れるのかについて解説します。
保険料の免除申請をしている
国民年金加入期間中に、所得が低くて保険料を納めることが難しい場合は、国民年金保険料の免除制度が受けられます。
この免除制度を利用すれば、免除期間も保険料納付期間ど同様に含むことができます。
さらに、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1ヶ月前までの期間)について、さかのぼって免除申請をすることが可能です。
ただし、初診日以降に免除申請をしても保険料納付要件を満たすことにはなりません。
また、生活保護を受けていた期間の年金保険料は、自動的に免除期間(法定免除)になります。
もし、初診日の前に経済的な事情で免除申請をしたことがある方や、生活保護を受けていた期間がある方は、年金事務所で納付要件を満たしているか確認してもらいましょう。
20歳前に初診日がある
20歳未満の方は国民年金の加入前なので、20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません。
その代わりに、20歳前に初診日がある場合、本人の所得によって支給される障害年金額が調整されます。
所得制限によって、調整される障害年金額は以下の通りです。
受給者の年間所得 | 360万4千円未満 | 360万4千円以上 | 462万1千円以上 |
障害年金額 | 全額支給 | 2分の1支給停止 | 全額支給停止 |
※上限額については、扶養親族等の数が1人増えるごとに380千円が加算されます。
ここでいう所得とは、収入額からその収入を得るためにかかった必要経費と障害者控除などの諸控除を除いたものです。
所得は、市町村役場で発行される所得証明書などで確認することが可能です。
任意加入期間中に初診日がある場合、「特別障害給付金」が受け取れる
初診日において国民年金に任意加入していなかったために、障害基礎年金等の支給要件を満たすことができず、障害の状態があるのに障害年金を受給できない方を救済するのが「特別障害給付金」です。
<特別障害給付金の対象となる方>
・平成3年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生
・昭和61年3月以前に国民年金任意加入対象であったサラリーマンや公務員などの配偶者
法律上は年金ではないため給付金という名称になっていますが、一時金ではなく年金と同じく2ヶ月に1回(偶数月に前2ヶ月分)が支給されます。
また、特別障害給付金の対象となる方は、障害年金の受給者と同様に、国民年金の免除申請も可能です。
ちなみに特別障害給付金は福祉的な措置になりますので、20歳前に初診日がある障害基礎年金と同様に所得制限もあります。
さいごに
今回は、障害年金の保険料納付要件について詳しく解説しました。
障害年金を受給するにあたって、保険料納付要件が大きな壁となって申請を諦めてしまう方も多いです。
また、未納期間があっても、初診日が20歳前であったり、初診日前に免除申請をしていたりすれば受け取れる可能性も高いです。
保険料納付要件を満たしているか判断が難しい場合は、年金事務所や社労士に相談することをおすすめします。