社会保険や労働関係の専門家である社労士は、社会的ニーズも高い人気の士業です。
独立開業を目指して、または安定した収入の見込める勤務社労士になるため、社労士の試験に挑戦しようという方は少なくないと思います。
ここでは、社労士試験の概要、受験資格、試験科目から、試験内容、合格基準、合格率まで、社労士試験の詳細を説明していきます。
目次
社会保険労務士試験の概要
主な受験概要は下記の通りです。詳細は社会保険労務士試験オフィシャルサイト(https://www.sharosi-siken.or.jp/index.html)で確認できます。
日程
例年、4月中旬頃に受験案内が告知され、受験申し込みの受付期間は4月中旬~5月末となっています。
試験日は8月の第4日曜日で、11月に合格発表が行われます。
試験地
全国19都道府県(令和2年)で試験が行われました。
試験会場の割り当ては原則、申し込みの受付順で、応募者の状況によっては試験地が希望と異なる場合があるので注意が必要です。
受験料
令和2年は9000円(払込手数料は受験者負担)となっています。
受験者層
社会人を中心に学生、主婦、定年後の高齢者まで幅広い方が受験しています。
受験者の約7割は会社員など仕事をしている人と言われます。ちなみに令和2年の受験申し込み数は4万9200人でした。
社会保険労務士試験の受験資格は?
社労士試験は誰でも受験できるわけではありません。
以下の4つのうち、いずれか一つに該当すれば「受験資格」を得ることができます。詳細は 社会保険労務士試験の受験資格 をご参照ください。
1.学歴
大学、短期大学、高等専門学校(5年制)等を卒業した人が対象です。
在学中(短大は除く)または中退者でも、62単位以上の卒業要件単位を修得した者、その他規定の条件を満たした者も該当します。
高卒者、中卒者は学歴要件には該当せず、実務経験または国家試験合格の、いずれかの要件を満たすことが受験資格を得る条件となります。
2.実務経験
労働社会保険諸法令で規定された業務に通算3年以上従事した者が対象者です。
同法令に基づいて設立された法人、国または地方公共団体、全国健康保険協会、日本年金機構、労働組合等で役員、従業員、職員として3年以上、実務に携わった人が対象となります。
3.国家試験合格
社会保険労務士以外の国家試験で、厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した人が対象となります。
令和2年現在、国家公務員採用総合職並びに一般職大卒程度試験、旧司法試験第2次試験、公認会計士試験、司法書士試験、気象予報士試験など、79の国家試験合格者が受験資格を認められています。
その他、司法試験予備試験、行政書士試験の合格者なども受験資格を得ることができます。
4.過去受験
直近3年間に実施された社労士試験の受験票または成績通知書を所持しているか、社労士試験の試験科目の一部免除(※)決定通知書を所持している方にも受験資格が与えられます。
※社労士試験では、実務経験等により試験科目の一部免除を受けることができます。
社会保険労務士試験の試験科目は?
社労士の試験は各法令や一般常識など、幅広い分野が対象となります。
すべての分野で基準点以上の得点を取ることが求められ、苦手分野を作らず、幅広く勉強することが不可欠となります。
1.労働関係法令
- 労働基準法…労働契約関係について定めた最も基本的な法律。正社員以外にパートやアルバイトなど、すべての労働者に適用されます。
- 労働安全衛生法…労働者の安全と衛生の基準を定めた法律。快適な職場環境の構築を目的とし、かつては労働基準法の一部でした。
- 労働者災害補償保険法…いわゆる「労災保険」のことで、業務上または通勤の際、労働者のケガや病気、障害、死亡などに対して補償する法律です。
- 雇用保険法…労働者が失業した場合に、失業給付などで失業者の生活を支え、また再就職を促進する法律です。
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律…労働保険の適用、徴収などについて定めた法律で、労働保険の事務処理の合理化を目的としています。
2.一般常識
- 労務管理その他の労働に関する一般常識…労働関係諸法令、労働経済、人事労務管理などの一般常識で、いわゆる「労一」と呼ばれます。
- 社会保険に関する一般常識…各社会保険を筆頭とする社会保障に関する一般常識で、いわゆる「社一」と呼ばれます。
3.社会保険関係法令
- 健康保険法…健康保険についての基本的な法律です。被用者医療保険制度を定めた法律で、古くからある社会保障法の一つです。
- 厚生年金保険法…企業従業員が加入する厚生年金について定めた法律です。度重なる法改正と経過措置で複雑化しています。
- 国民年金法…日本に住む20歳以上60歳未満の人が加入する国民年金について定めた法律です。厚生年金保険法の基礎となっています。
では、難関と言われる社労士の試験内容、合格基準、合格率はどうなっているのでしょうか?
大まかな概要をまとめてみました。
詳しくは 社会保険労務士制度 社労士試験 合格基準についてをご参照ください。
試験内容
試験は下記の8科目に分類され、空欄を補充する「選択式試験」と、五肢から選ぶ「択一式試験」に分けて実施されます。
選択式は1科目5点満点で8科目40点満点。択一式は1科目10点満点で7科目70点満点(合計で110点満点)となっています。
下記のどの試験科目(法律や一般常識)から何問が出題されるかが決まっています。
- 労働基準法および労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法(労働保険の保険料徴収等に関する法律を含む)
- 雇用保険法(労働保険の保険料徴収等に関する法律を含む)
- 労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
- 社会保険に関する一般常識(社一)
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
合格基準
社労士の試験が難関と言われるのは、選択式と択一式の各総得点、および科目ごとに合格基準点が定められていることで、その1つでも合格基準点に満たないと不合格となります。
令和元年の合格基準点は、選択式が総得点(40点満点)で26点以上、各科目点(5点満点)で3点以上、択一式は総得(70点満点)で43点以上、各科目点(10点満点)で4点以上でした。
ちなみに、難関の社労士試験の中でも、労一、社一、厚生年金保険法が特に難しいと評判です。
合格率
社労士の試験が初めて実施された昭和44年以降、合格率は長く10%台(過去最高は昭和40年の14・5%)が続きましたが、平成に入ると10%を割るようになり、最近は6~9%で推移しています。
平成27年に突如、過去最低の2・6%を記録し、翌28年も史上2番目に低い4・4%でしたが、29年は6・8%、30年は6・3%、令和元年は6・6%と、近況は6%台で安定しています。
ちなみに受験者のピークは平成22年の5万5445人で、過去最少だった昭和48年(7486人)に比べて約7・5倍と、人気の資格に定着しています。
近況は受験者が減少傾向にあり、令和元年は3万8428人(合格者は2525人)でした。
よくある質問
A.一般的に合格するために必要な勉強時間は800~1,000時間程度と言われています。
1日平均だと3時30分程度で、早朝や通勤時間などを効率的に利用すれば、働きながらでも十分勉強時間を確保することが可能です。
ちなみに平均受験回数は4~5回です。
A.社労士試験は出題範囲が幅広く、独学で合格するのは簡単ではありませんが、合格者の2割は独学での受験者とも言われています。
出題傾向に即した効率的な勉強さえできれば、独学での合格も決して不可能ではないでしょう。
ただ、初めての受験者や、独学で何度も試験に落ちている方などは、効率的な勉強という点から、信頼できる予備校や通信講座を利用した方がいいかもしれません。
さいごに
社労士の試験は近年の合格率が6%で推移しているように、200前後ある前後ある国家資格試験の中でも難しい部類に入ります。
何より出題範囲が広く、相当な勉強時間と労力が要求されるため、何より効率的な勉強が不可欠です。
一方、合格すれば、職業として安定した収入が見込める魅力的な国家資格であることは間違いありません。
社労士試験の受験を決めた方は、試験内容や出題傾向を的確に把握し、短期間で合格できるよう勉強していただければと思います。