精神障害者保健福祉手帳は、一定の精神障害があることが認定されると取得できる障害者手帳のひとつです。
精神障害者保健福祉手帳を持っていると就労の支援や税制の優遇など様々なサービスがありますので、対象となる方や仕組みなどについてご説明いたします。
精神障害者保健福祉手帳とは何なのか
精神障害者保健福祉手帳を持つメリット
精神障害者保健福祉手帳の申請方法
初心者の方でもわかる内容となっていますので安心して読み進めてください。
目次
精神障害者保健福祉手帳とは
障害者手帳のひとつであり、精神の障害があって、その障害の程度が一定以上であれば取得することができるものになります。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)の第45条に規定された制度で、精神障害者の自立と社会参加の促進を図るために様々な支援策が講じられています。
また、障害者手帳は「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つが存在します。
各々の障害者手帳の特徴については、下記記事で解説しておりますので興味のある方はご覧ください。
参照:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)
精神障害者保健福祉手帳の対象は?
対象となる方は何らかの精神疾患によって、長期にわたり日常生活や労働に制約がある方となっております。
対象となるのは全ての精神疾患で、次のようなものが含まれます。
統合失調症
うつ病、そううつ病などの気分障害
てんかん
薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
高次脳機能障害
発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
その他の精神疾患(ストレス関連障害等)
引用:みんなのメンタルヘルス
なお、すべての精神障害が対象となりますが、手帳を申請するにはその障害での初診日から6ヶ月以上経過していることが必要です。
ちなみに知的障害の方で、上記のような精神疾患を併発していない方は療育手帳を取得できるため精神障害者保健福祉手帳の対象外となります。
また、「知的障害と発達障害」や「知的障害とうつ病」のように知的障害と精神疾患を併発している場合には、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方を受けることができます。
精神障害者保健福祉手帳の等級について
精神障害者保健福祉手帳の等級は1級から3級まであり、それぞれの基準が定められております。
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
精神障害者保健福祉手帳を取得する4つのメリット
精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットは以下の4つです。
- さまざまな公共料金の割引
- 所得税や住民税などの控除
- 自動車税・軽自動車及び自動車取得税の減免(1級のみ)
- 障害者福祉サービスを受けられる
1つずつみていきましょう。
さまざまな公共料金の割引
障害者手帳を取得すると、以下のようにさまざまな公共料金の割引が適用されます。
- JRやバス・航空運賃などの公共機関の割引
- 携帯電話基本料金の割引
- 医療費の助成
- 博物館をはじめとした公共施設の割引
- NHKの放送受信料の割引
等級によって適用される割引額が異なりますが、最大で全額割引もあります。
例えば、NHKの放送受信料の割引などは等級により全額免除になるので、気になる方はNHKに問い合わせて確認してみてください。
所得税や住民税などの控除
障害者手帳を取得すると、等級によって所得税や住民税が控除されます。
- 障害者:所得税27万/住民税26万
- 特別障害者:所得税40万/住民税30万
障害者控除を受けるには、会社員と個人事業主によって異なるので注意してください。
- 会社員:年末調整で扶養控除等の申告書を提出
- 個人事業主:確定申告の際に申告
雇用状況によって提出方法が異なるので、きちんと確認してから申請しましょう。
障害者控除についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください。
自動車税、軽自動車税及び自動車所得税の減免(1級のみ)
精神障害者保健福祉手帳の等級が1級の方のみですが、本人もしくは本人と生計をともにする方が所有する車に、自動車税の免除が適用されます。
具体的には以下のような状況です。
- 障害のある本人が運転する
- 本人と生計をともにする家族などが、障害のある方の通院や通学・通勤のために運転する
細かな内容は各都道府県によって異なるので、気になる方はお住まいの自治体に相談してみてください。
障害者福祉サービスを受けられる
精神障害者保健福祉手帳を持てば、以下のような障害者福祉サービスを受けられます。
- 入浴や食事など生活に必要な活動を介助してもらえるサービス
- 外出時に介助のために付き添ってもらえるサービス
- 家事等の生活に必要な活動を訓練できるサービス
- 障害者雇用枠での就労移行支援、就労継続支援の利用が可能に
障害者福祉サービスは、精神障害者保健福祉手帳が無くても適用されますが、手帳があると受けられるサービスの数が変わってきます。
精神障害者保健福祉手帳を取得するデメリット
基本的に精神障害者保健福祉手帳を持っていてデメリットというものはないと言ってもいいでしょう。
手帳を持っていることは、ご本人が他人に言わない限り第三者に知られることはありませんし、会社等が勝手に調べることはできません。
しかし、中には精神障害者保健福祉手帳を取得したことで、「自分は精神障害者なのだ」と烙印を押されたような気持ちになり落ち込まれる方もいらっしゃるようです。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法は?
精神障害者保健福祉手帳の申請方法は以下のとおりになります。
精神障害者保健福祉手帳についての説明を受け、申請書類を受け取ります。
- 申請書
- 診断書
原則的には精神科医に依頼をしますが、てんかん・発達障害・高次脳機能障害の方が精神科以外の科で診察を受けている場合には精神科以外でも大丈夫です。
審査によって認定されると手帳が交付されます。
2年ごとに診断書を提出し、その都度認定を受ける必要があります。
申請方法は下記の記事で詳しくご説明しておりますので、これから精神障害者保健福祉手帳を申請される方はご覧ください。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限と更新について
ここでは精神障害者保健福祉手帳の有効期限と更新について解説していきます。
更新を忘れてしまうと手続きが大変なので、手帳を保持した際はしっかり管理していきましょう。
有効期限
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間です。
等級に限らず、2年ごとに更新が必要になるので忘れず管理しておきましょう。
更新は有効期限の3ヶ月前から可能で、以下の書類が必要になります。
- 申請書
- 顔写真
- 印鑑(市町村によっては不要)
- 身分証明書(市町村によってはマイナンバーカードも別途必要)
- 手帳用診断書
補足として、手帳用診断書に関しては障害年金証書(特別給付金受給資格者証)、年金振込通知書の写しでも大丈夫ですので、用意しやすい書類を準備して提出しましょう。
更新方法
精神障害者保健福祉手帳の申請方法は以下のようになります。
- 有効期限の3ヶ月前になったら先ほど紹介した必要書類を準備する
- 書類を持って最寄りの自治体に申請
- 1〜2ヶ月ほどで交付されるので福祉課で受け取る
更新方法は難しくないので、更新の通知がきたら早めに準備を進めていきましょう。
精神障害者保健福祉手帳でよくある質問
最後に、精神障害者保健福祉手帳でよくある質問を紹介していきます。
精神障害者保健福祉手帳を持つことに不安がある方は、参考にしてみてください。
等級を変更したいときは?
精神障害の状態が悪化したために、等級を変更したい場合は、有効期限の前でも障害等級の変更申請が可能です。
等級を変更したいときは以下の書類が必要になります。
- 新規申請と同じ書類
- 現在所持している手帳のコピーの提示・提出
等級の変更の申請は有効期限内ならいつでも可能で、審査には2ヶ月ほどかかります。
特に診断書の作成には1ヶ月ほどかかる場合もあるので、なるべく早めに準備しておきましょう。
更新を忘れてしまった場合は?
精神障害者保健福祉手帳の更新を忘れてしまった場合は、手帳に記載されている自治体の担当部署や担当者に連絡しましょう。
各都道府県の自治体によって、対応は変わってきますがまずは更新を忘れてしまったことを伝え、担当者の指示に従ってください。
更新を忘れてしまう人は少なくないので、大半の場合は、再発行手続きをすることによって有効な手帳を再発行してもらえますよ。
さいごに
今回は精神障害者保健福祉手帳について解説していきました。
精神障害者保健福祉手帳を取得することによって、公共料金の割引を受けることができたり、税金が控除されたりと様々なメリットがあります。
手帳を取得することによって、ご自身の精神疾患と付き合いながら今後の人生を考える一つのきっかけとなるかもしれません。
ただ、申請や交付を難しく感じる方も多いので、不安がある方はぜひ社労士にご相談されることをおすすめいたします。