脳梗塞で障害年金を申請するときの診断書|後遺症別の種類と重要なポイントを社労士が解説

脳梗塞の後遺症が残り、障害年金の申請を考えたときに重要となる書類のひとつが「診断書」です。

「脳梗塞ではどの診断書を使えばいいの?」
「半身麻痺がある場合、診断書のどこが重要?」
「高次脳機能障害もあるけれど、同じ診断書でいい?」
「主治医に診断書を書いてもらえば、それだけで障害年金を受給できる?」

このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

脳梗塞の障害年金で特に注意したいのは、同じ「脳梗塞」という病気であっても、残っている後遺症によって使用する診断書が異なることです。

たとえば、脳梗塞によって手足に麻痺が残った場合には「肢体の障害用」の診断書を使用します。

一方、失語症や構音障害が中心であれば「音声又は言語機能の障害用」、高次脳機能障害が残っている場合には「精神の障害用」の診断書を使用します。

さらに、脳梗塞では半身麻痺と失語症、高次脳機能障害など、複数の後遺症が同時に残ることも珍しくありません。

そのため、障害年金の申請では「脳梗塞だからこの診断書」と決めるのではなく、どのような後遺症が残っているのかを確認したうえで、適切な診断書を選ぶことが重要です。

この記事では、脳梗塞で障害年金を申請するときに使用する診断書について、障害年金専門の社会保険労務士が詳しく解説します。

目次

脳梗塞の障害年金では後遺症によって診断書が違う

障害年金の診断書には複数の種類があります。

脳梗塞の場合には、病名ではなく「どのような障害が残っているか」によって使用する診断書を選びます。

代表的なものは次の3つです。

・半身麻痺などの運動障害……肢体の障害用診断書
・失語症、構音障害など……音声又は言語機能の障害用診断書
・高次脳機能障害……精神の障害用診断書

このほかにも、脳梗塞によって視野障害や嚥下障害などが残る場合があります。

つまり、「脳梗塞」というひとつの病気であっても、後遺症の内容によって障害年金で評価される基準も診断書も変わります。

複数の後遺症がある場合もある

脳梗塞では、ひとつだけではなく複数の後遺症が残ることがあります。

たとえば、

・右半身に麻痺があり、さらに失語症がある
・左半身麻痺と高次脳機能障害がある
・歩行障害に加えて構音障害がある
・手足の麻痺、高次脳機能障害、言語障害が併存している

といったケースです。

このような場合、ひとつの診断書だけでは障害状態を十分に評価できないことがあります。

障害の状態によっては複数の診断書を使用して、それぞれの障害について審査を受けることになります。

「一番目立つ後遺症だけを書いてもらえばよい」と考えず、脳梗塞によって残った障害を全体として確認することが大切です。

半身麻痺などがある場合の「肢体の障害用診断書」

脳梗塞の後遺症として多いもののひとつが、片側の手足に麻痺が残る「片麻痺」です。

右半身または左半身の麻痺によって、

・歩きにくい
・階段を上り下りできない
・片手をうまく使えない
・箸やスプーンを使いにくい
・着替えに時間がかかる
・ボタンを留められない
・入浴や排泄に介助が必要

など、日常生活のさまざまな場面に支障が生じることがあります。

このような肢体の障害で障害年金を申請する場合には、「肢体の障害用診断書」を使用します。

関節可動域や筋力だけで決まるわけではない

肢体の障害用診断書には、関節可動域や筋力、麻痺の状態などを記載する欄があります。

しかし、脳梗塞による障害年金の審査は、単純に「筋力がいくつだから何級」「関節が何度動くから何級」と決まるわけではありません。

肢体の障害については、

・関節可動域
・筋力
・巧緻性
・動作の速さ
・耐久性
・日常生活における動作

などを踏まえ、身体機能を総合的に判断します。

特に脳梗塞による片麻痺では、検査上はある程度手足を動かすことができても、実際の日常生活ではうまく使えないことがあります。

「動くかどうか」だけではなく、「実際にその手足を使って日常生活の動作ができるか」という視点も重要になります。

診断書の「日常生活における動作」が重要

肢体の障害用診断書には、日常生活におけるさまざまな動作を評価する欄があります。

たとえば手指や上肢については、

・つまむ
・握る
・タオルを絞る
・ひもを結ぶ
・さじで食事をする
・顔を洗う
・用便の処置をする
・上衣を着脱する

などです。

下肢では、

・片足で立つ
・屋内を歩く
・屋外を歩く
・立ち上がる
・階段を上る
・階段を下りる

などが確認されます。

脳梗塞による半身麻痺では、こうした日常生活動作について、どの程度一人で行えるかが重要になります。

たとえば「歩ける」という場合でも、

・壁や家具につかまらなければ歩けない
・長い距離は歩けない
・屋内は歩けても屋外では一人で歩けない
・転倒の危険があるため家族の見守りが必要
・階段では手すりが必要

など、実際の状態は人によって大きく違います。

単に「できる」「できない」だけでは、実際の障害状態を十分に表せないことがあります。

杖や装具を使っている場合は注意

脳梗塞の後遺症で、杖や短下肢装具などを使用している方も多くいらっしゃいます。

ここで注意したいのが、障害年金の肢体の障害における日常生活動作の評価です。

補助用具を使用しているために動作ができている場合でも、それだけを見て「問題なくできる」と評価するわけではありません。

補助用具を使用しない状態でどの程度の動作が可能なのかという点も重要になります。

「杖を使えば歩けています」
「装具をつければ外出できます」

というだけでなく、

「杖がなければ数歩しか歩けない」
「装具がなければ足を引きずって転倒する危険がある」

など、補助具を必要とする理由や実際の状態を主治医に把握してもらうことが大切です。

麻痺側の手を実際に使えているかも重要

脳梗塞による上肢の麻痺では、手をある程度上げることができても、実際には日常生活でほとんど使えていないことがあります。

たとえば、

・物をつまめない
・物を握っても落としてしまう
・箸を使えない
・ボタンを留められない
・字を書くことができない
・包丁を使えない
・両手を使う作業ができない

などです。

検査上の筋力だけでは、このような使いづらさが十分に伝わらないことがあります。

脳梗塞による肢体の障害では、麻痺があるという事実だけではなく、その麻痺によって日常生活のどの動作がどの程度制限されているのかが重要になります。

失語症・構音障害がある場合の診断書

脳梗塞によって、言葉に関する後遺症が残ることもあります。

代表的なものが「失語症」と「構音障害」です。

失語症は、脳の言語をつかさどる部分が損傷することによって、それまでできていた「話す」「聞いて理解する」「読む」「書く」などの言語機能に障害が生じる状態です。

一方、構音障害では、発音に必要な舌や口などをうまく動かせないため、言葉を明瞭に発音することが難しくなります。

このような音声や言語機能の障害について障害年金を申請する場合には、「聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用」の診断書を使用します。

「話せるか」だけでは判断されない

失語症の場合、

「少し会話ができるから障害年金は難しいのでは?」

と思われる方がいます。

しかし、言語機能の障害は、単純に声を出せるかどうかだけで判断されるものではありません。

たとえば、

・自分の考えを言葉にできない
・相手が話している内容を理解できない
・言葉を間違えてしまう
・言いたい単語が出てこない
・何度も聞き返さなければ理解できない
・家族とは会話できても知らない人とは意思疎通が難しい

など、コミュニケーションが実際にどの程度成立するのかが重要です。

家族は長年一緒に生活しているため、本人が十分に言葉を話せなくても、表情やわずかな言葉から意図を推測できることがあります。

しかし、「家族とはある程度コミュニケーションが取れる」ということと、「一般的な日常会話が問題なく成立する」ということは同じではありません。

家族以外の人とのコミュニケーションも含めて、実際の状態を確認する必要があります。

言語聴覚士の訓練を受けている場合

脳梗塞の後遺症で失語症や構音障害がある方は、言語聴覚士(ST)によるリハビリを受けていることがあります。

医師の診察時間だけでは、言語機能の状態を詳細に把握することが難しいケースもあります。

病院によっては、言語聴覚士による検査結果やリハビリの状況が診断書作成の参考になることがあります。

普段の会話でどのような問題があるのか、家族以外との意思疎通はどうなのかなども含め、実際の状態が適切に診断書へ反映されることが大切です。

高次脳機能障害がある場合の「精神の障害用診断書」

脳梗塞では、身体の麻痺が比較的軽くても、高次脳機能障害によって日常生活に大きな支障が生じる場合があります。

高次脳機能障害では、

・記憶障害
・注意障害
・遂行機能障害
・失認
・失行
・社会的行動障害

など、さまざまな症状がみられます。

たとえば、

「数分前に話したことを忘れてしまう」
「予定を立てて行動できない」
「一度に複数のことをすると混乱する」
「以前にはなかったような怒り方をする」
「相手の気持ちを考えた行動ができなくなる」
「外出すると道がわからなくなる」

といった状態です。

高次脳機能障害で障害年金を申請する場合には、原則として「精神の障害用診断書」を使用します。

身体が動くから障害が軽いとは限らない

高次脳機能障害は、外見から障害の程度がわかりにくいことがあります。

手足が自由に動き、一人で歩くことができるため、周囲からは「もう元気になった」と思われることもあります。

しかし実際には、

・一人では薬を管理できない
・金銭管理ができない
・家族が予定をすべて管理している
・公共交通機関を一人で利用できない
・買い物に行っても必要なものを選べない
・役所や銀行などの手続きを一人でできない
・仕事の手順を覚えられない

など、多くの支援が必要になっていることがあります。

高次脳機能障害では、こうした実際の日常生活上の制限を診断書に反映してもらうことが重要です。

高次脳機能障害では「日常生活能力」が大切

精神の障害用診断書には、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」という項目があります。

高次脳機能障害の場合にも、これらは重要な項目です。

食事や身辺の清潔保持、金銭管理、通院、他人との意思伝達、危機対応、社会性などについて、どの程度自立して生活できているのかが確認されます。

特に注意したいのが、家族が手助けしていることで一見問題なく生活できているケースです。

たとえば、

「薬は毎日飲めています」

という場合でも、家族が薬を1回分ずつ準備し、毎回声をかけているのであれば、一人で服薬管理ができている状態とは異なります。

「買い物に行けています」

という場合でも、家族が購入するものを書いたメモを用意し、決まった店だけを利用しているのであれば、完全に自立して買い物ができているとは限りません。

障害年金では、結果としてできていることだけでなく、「誰から、どのような援助を受けることでできているのか」を確認することが大切です。

脳梗塞の診断書を医師に依頼するときのポイント

障害年金の診断書を作成するのは医師です。

そのため、

「主治医なら自分の状態を全部わかっているはず」

と思われるかもしれません。

しかし、医師が診察室で確認できる状態と、自宅で実際に生活している状態には違いがあることがあります。

特に脳梗塞では、診察室では数メートル歩くことができても、自宅では転倒を繰り返していることがあります。

診察では受け答えができていても、家に帰れば数分前のことを忘れてしまい、家族がすべての予定を管理しているという高次脳機能障害の方もいます。

障害年金の診断書を依頼するときには、日常生活の実態を医師に伝えておくことが重要です。

「できること」より「どのようにできているか」を伝える

診察で、

「一人で歩けますか?」
「着替えはできますか?」
「食事はできますか?」

と聞かれると、多くの方は「できます」と答えます。

しかし実際には、

「杖があれば歩ける」
「時間をかければ何とか着替えられる」
「家族が食事を用意してくれれば一人で食べられる」

という状態かもしれません。

この違いは、障害年金の診断書ではとても重要です。

たとえば着替えについても、

「30分以上かかる」
「ボタンは家族に留めてもらう」
「麻痺側の腕を服に通すときだけ手伝ってもらう」

という状態と、何の支障もなく一人で着替えられる状態では、障害の程度が違います。

何ができないのかだけではなく、「どのような条件ならできるのか」「どこに援助が必要なのか」を具体的に伝えるとよいでしょう。

家族からの援助についても伝える

脳梗塞の後遺症がある方の生活を、配偶者や子どもなどの家族が支えているケースは非常に多くあります。

たとえば、

・入浴を介助している
・着替えを手伝っている
・転倒しないよう外出に付き添っている
・薬を管理している
・通院に付き添っている
・金銭を管理している
・各種手続きを代わりに行っている
・高次脳機能障害による行動を見守っている

などです。

家族の援助が日常化していると、本人も家族も、それを「援助」と意識しなくなることがあります。

しかし、障害年金の審査では、その援助がなければどのような生活になるのかという視点が重要です。

診断書を依頼するときには、本人だけでなく、必要に応じて家族から見た日常生活の状態も整理しておくとよいでしょう。

完成した脳梗塞の診断書で確認したいポイント

医師から障害年金の診断書を受け取ったら、そのまま提出するのではなく、一度内容を確認しましょう。

これは、希望する等級になるよう医師に内容を書き換えてもらうという意味ではありません。

診断書の評価はあくまでも医師が行うものです。

一方で、事実関係に誤りがないか、医師に伝えた障害状態が適切に記載されているかを確認することは大切です。

発病日・初診日などの日付

まず確認したいのが、発病日や初診日などの日付です。

脳梗塞では突然発症して救急搬送されるケースが多いため、発病日と初診日が同日となることも少なくありません。

一方で、発症前に別の医療機関を受診していた場合や、脳梗塞との関連が問題になる別の病気がある場合などは、初診日の判断に注意が必要なことがあります。

障害年金では初診日は非常に重要です。

診断書だけでなく、受診状況等証明書や病歴・就労状況等申立書など、他の提出書類との整合性も確認しておきましょう。

麻痺の状態と日常生活動作が一致しているか

肢体の障害用診断書の場合には、

・麻痺の部位
・筋力
・関節可動域
・日常生活動作
・補助用具の使用状況
・歩行の状態

などを確認します。

たとえば実際には屋外を一人で歩くことができず、常に家族の付き添いが必要なのに、診断書では歩行についてほとんど問題がないような評価になっている場合には、実際の状態が医師に十分伝わっているか確認する必要があります。

特に、診察室の中で数歩歩くことができたことと、日常生活で安全に歩けることは同じではありません。

現症時の日常生活や就労状況が反映されているか

脳梗塞を発症してから長期間経過している場合、発症直後の重症な状態と現在の状態は異なります。

障害年金の診断書では、診断書に記載する現症日時点の障害状態が重要です。

また、仕事に復帰している場合には、

・どのような仕事をしているのか
・勤務時間を短縮しているか
・配置転換を受けているか
・職場でどのような配慮を受けているか
・以前と同じ仕事ができているか

なども重要になることがあります。

特に高次脳機能障害では、就労できているという事実だけでなく、どの程度の援助や配慮を受けながら就労しているのかまで確認することが大切です。

脳梗塞では診断書を依頼する時期にも注意

障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

しかし、脳梗塞などの脳血管障害には例外があります。

脳血管障害によって機能障害が残っている場合、初診日から6か月を経過した日以後に、医学的な観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められれば、その時点を障害認定日として取り扱うことがあります。

6か月経過すれば必ず請求できるわけではない

ここで注意しなければならないのは、

「脳梗塞なら発症から6か月で必ず障害年金を申請できる」

という制度ではないことです。

初診日から6か月経過しただけでは足りません。

医学的にそれ以上の機能回復がほとんど望めない状態と認められることが必要です。

脳梗塞の後はリハビリを続けることが多く、医師がまだ機能の回復が期待できると判断している場合には、症状固定とは認められないことがあります。

したがって、障害年金のために早く診断書を書いてもらえばよいというものではなく、診断書を依頼する時期についても確認が必要です。

脳梗塞の診断書だけで障害年金が決まるわけではない

脳梗塞で障害年金を申請するとき、診断書は非常に重要な書類です。

ただし、診断書だけを提出すれば障害年金が決まるわけではありません。

障害年金の申請では、

・初診日の確認
・保険料納付要件の確認
・障害認定日の確認
・診断書
・病歴・就労状況等申立書

などを確認しながら手続きを進めていきます。

特に診断書と病歴・就労状況等申立書の内容が大きく食い違わないようにすることが大切です。

病歴・就労状況等申立書で日常生活の状況を補足する

医師が作成する診断書には記載できるスペースに限りがあります。

そのため、脳梗塞を発症してから現在までの経過や、実際の日常生活で困っていることなどを診断書だけですべて説明することは難しい場合があります。

そのような部分を補うのが「病歴・就労状況等申立書」です。

たとえば、

・救急搬送されてからどのような治療を受けたか
・いつからどのようなリハビリを行ったか
・どのような後遺症が残ったか
・退院後の生活で何ができなくなったか
・家族からどのような介助を受けているか
・復職できたか
・仕事の内容がどのように変わったか

などについて、実際の経過を整理して記載します。

診断書と病歴・就労状況等申立書は別々の書類ですが、どちらも同じ本人の障害状態を説明するものです。

それぞれが矛盾するのではなく、診断書では十分に伝えきれない部分を申立書によって補うという考え方が大切です。

脳梗塞の診断書に関するよくある質問

ここからは、脳梗塞で障害年金を申請する方からよくある診断書についての疑問をご説明します。

脳梗塞の主治医なら誰でも障害年金の診断書を書けますか?

障害年金の診断書は、障害の状態を診療している医師に作成してもらいます。

脳梗塞では、急性期病院から回復期リハビリテーション病院へ転院し、その後は地域の病院やクリニックへ通院するなど、複数の医療機関を受診していることも珍しくありません。

現在の主治医が本人の障害状態をどの程度把握しているかという点も大切です。

特に肢体の障害、高次脳機能障害、言語障害など複数の後遺症がある場合には、どの障害についてどの診断書を誰に依頼するのかを整理してから進める必要があります。

リハビリ中でも障害年金の診断書を書いてもらえますか?

リハビリを受けているという理由だけで、障害年金を申請できないわけではありません。

重要なのは、現在行っているリハビリの内容や障害状態です。

一方、初診日から1年6か月より前に脳血管障害の特例を利用して障害認定日を早めようとする場合には、それ以上の機能回復がほとんど望めない状態であることが必要です。

リハビリによって今後も機能回復が期待されている時期であれば、まだ症状固定とは認められない場合があります。

仕事に復帰していると診断書を書いてもらっても受給できませんか?

仕事をしているという理由だけで、脳梗塞による障害年金を受給できなくなるわけではありません。

特に肢体の障害では、身体の障害状態を認定基準に基づいて判断します。

たとえば片麻痺が残っていても、デスクワークへの配置転換や職場の配慮によって仕事に復帰している方もいます。

一方、高次脳機能障害については、就労状況も障害状態を判断するうえで重要な要素となります。

仕事をしている場合には、単に「就労中」とするだけでなく、どのような配慮や援助を受けながら働いているのかという実態を確認することが大切です。

診断書が実際の状態より軽い場合はどうしたらいいですか?

まず確認したいのは、医師に日常生活の状態が十分伝わっているかという点です。

医師が診察室で確認した状態と、実際の生活状況が違うことは珍しくありません。

たとえば、

「歩けます」

と伝えていても、実際には自宅の壁につかまりながら数メートル歩けるだけかもしれません。

「食事は一人でできます」

と伝えていても、家族が調理し、食べやすい大きさに切って用意したものをスプーンで食べているだけかもしれません。

まずは、このような実際の状態が主治医に伝わっているか確認しましょう。

ただし、障害年金を受給するために「もっと重く書いてください」と依頼することは適切ではありません。

実際の障害状態を正確に伝えたうえで、診断書をどのように評価して記載するかは医師の判断になります。

半身麻痺と高次脳機能障害の両方がある場合はどうなりますか?

脳梗塞では、片麻痺と高次脳機能障害が同時に残るケースがあります。

この場合、肢体の障害については「肢体の障害用診断書」、高次脳機能障害については「精神の障害用診断書」と、それぞれ別の診断書によって障害状態を確認することがあります。

複数の障害があるからといって、必ずそのまま等級が上がるわけではありません。

それぞれの障害の程度を確認し、障害年金の認定基準に基づいて判断されます。

そのため、まずは脳梗塞によってどのような後遺症が残っているのかを整理することが重要です。

脳梗塞の障害年金では「実際の生活」が診断書に反映されていることが大切

脳梗塞の後遺症は人によって大きく異なります。

同じ「右半身麻痺」という診断でも、一人で歩いて生活できる方もいれば、車いすが必要で移乗にも介助を要する方もいます。

高次脳機能障害でも、軽い物忘れ程度の方もいれば、一人では日常生活を送ることが難しい方もいます。

そのため障害年金では、脳梗塞という病名だけで等級が決まるわけではありません。

後遺症によって実際の日常生活や労働にどの程度の制限が生じているのかが重要です。

そして、その障害状態を審査側に伝える重要な資料となるのが診断書です。

診断書を依頼するときには、

「麻痺があります」
「記憶障害があります」

と症状だけを伝えるのではなく、

「その症状によって実際に何ができないのか」
「どの動作に時間がかかるのか」
「どのような場面で介助が必要なのか」
「家族からどのような援助を受けているのか」

まで整理しておくとよいでしょう。

さいごに

脳梗塞で障害年金を申請するときには、診断書が非常に重要です。

そして脳梗塞の場合、特に注意したいのが、後遺症によって使用する診断書が異なるという点です。

半身麻痺などの運動障害であれば「肢体の障害用診断書」、失語症や構音障害であれば「音声又は言語機能の障害用診断書」、高次脳機能障害であれば「精神の障害用診断書」を使用します。

また、脳梗塞では複数の後遺症が同時に残ることもあるため、ひとつの診断書だけでは障害状態を十分に評価できない場合もあります。

診断書で大切なのは、単に病名や症状が書かれていることではありません。

脳梗塞の後遺症によって、日常生活や仕事が実際にどの程度制限されているのか、家族などからどのような援助を受けているのかが、実態に沿って記載されていることが重要です。

「脳梗塞でどの診断書を使えばいいかわからない」
「半身麻痺と高次脳機能障害の両方がある」
「診断書を依頼する時期がわからない」
「自分の後遺症が障害年金の対象になるのかわからない」

という場合には、診断書を依頼する前に、障害年金を専門とする社会保険労務士へ相談することもひとつの方法です。

診断書を作成してもらってから問題に気付くよりも、あらかじめ後遺症の内容や使用する診断書、障害認定日などを確認してから手続きを進めることで、より正確な障害年金の申請につながります。