障害基礎年金と障害厚生年金の違いについて

年金手帳と電卓

病気やケガに見舞われ、障害基礎年金、障害厚生年金を申請したいと思っているけど、どちらをどう申請すればよいのか分からない。

そもそも障害基礎年金、障害厚生年金とは何か? どう違うのか? 自分の病気やケガはどちらの障害年金に該当するのか? 受給の条件は? 等級は? いくらもらえるのか? いつからもらえるのか? 請求方法は?

日常生活ではなじみの薄い障害基礎年金、障害厚生年金について、そんな疑問や不安を抱いている方は少なくないのではないでしょうか。ここでは障害基礎年金と障害厚生年金について、具体的な内容を見ていきたいと思います。

障害基礎年金・障害厚生年金とは

障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代も含めて受け取ることができる年金です。

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、その請求は国民年金法や厚生年金保険法で認められている私たちの権利です。

障害基礎年金とは?

「障害基礎年金」とは、初診日(※次項で説明)に「国民年金」に加入していた方(国民年金は20歳~60歳未満全員に加入義務)、または20歳未満だった方、あるいは年金制度に加入していない60歳以上65歳未満の方で、国内に住んでいる間に初診日を迎えた方で、一定の条件を満たした方に支給される年金です。

障害厚生年金とは?

「障害厚生年金」とは、初診日に「厚生年金」に加入していた方(会社員や公務員)で、一定の条件を満たした方に支給される年金です。

対象となる病気やケガは?

障害基礎年金、障害厚生年金の対象となる病気やケガは、大きく分類すると「外部障害」「精神障害」「内部障害」に分かれます。各障害の主な傷病は以下の通りです。

  1. 外部障害(眼の障害、聴覚の障害、手足の障害など)
  2. 精神障害(うつ病、統合失調症、発達障害、てんかんなど)
  3. 内部障害(呼吸器疾患、心疾患、糖尿病、がんなど)

その他の病名については、下記記事をご覧いただけると幸いです。

デスク 障害年金の受給対象となるけケガ・年齢について

受給要件は?

障害基礎年金、障害厚生年金ともに、以下の3つの要件をすべてクリアしなければ年金を受給することはできません。

1.初診日要件~初診日に年金制度の被保険者であること

「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。

この初診日に国民年金か厚生年金の被保険者であることが必要です。
※障害基礎年金は一部年金未加入者にも適用

2.納付要件~保険料の納付要件を満たしていること

「納付要件」は初診日の前日において、下記のどちらか一方でも満たしていれば受給可能です。なお、20歳前に初診日がある方には納付要件はありません。

  • 初診日の属する月の前々月までの公的年金加入期間において、2/3以上の期間で保険料を納付、または免除されていること。
  • 初診日が65歳未満で、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。

3.障害程度要件~障害認定日(または請求時)に各等級の障害認定基準に定める障害の状態にあること

「障害認定日」とは、初診日から1年6カ月を経過した日、またはその期間内に病気やケガが治った日(症状固定日を含む)のことです。

この障害認定日に、法令で詳細に定められている各等級の障害状態にあることが不可欠となります。

また、障害認定日にはまだ障害認定基準に定める障害の状態ではなかったが、その後症状が悪化して障害の状態になった場合、今の時期から請求することになります。

障害基礎年金と障害厚生年金の等級について

障害年金は法令で障害の程度に応じた「等級」が明記され、障害基礎年金は1、2級、障害厚生年金は1~3級に分類されています。

障害年金も老齢年金同様、2階建ての年金制度で、障害厚生年金の受給者(1、2級の該当者)には障害基礎年金を上乗して支給されます。

また障害厚生年金には1~3級のほかに「障害手当金」という一時金があり、初診日から5年以内に病気やケガが治り(症状固定を含む)、障害厚生年金の受給基準より軽い障害が残った場合に支給されます。各等級の主な状態は下記の通りです。

1級
他人の介助がないと日常生活ができない。身の周りのことはできても、それ以上のことはできない。入院や在宅介護を必要とし、活動範囲がベッド周辺に限られる。
2級
必ずしも他人の助けは必要ないが、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができない。活動の範囲が病院内、家屋内に限られる。
3級
労働が著しい制限を受け、または著しい制限を加える必要がある状態。日常生活にはほとんど支障はないが、労働には制限がある。

障害基礎年金と障害厚生年金の受給金額

障害年金の年金額は、障害基礎年金が「定額」、一方で障害厚生年金は「報酬比例の金額」で算出されます。どちらの障害年金も1級は2級の1.25倍となっています。

2階建て年金額

障害基礎年金の年金額

障害基礎年金は1級が「1,020,000円(816,000円×1.25)」、2級は「816,000円」です。
これに「子の加算」(第1子・第2子は各234,800円、第3子以降は各78,300円)がプラスされます。

子とは18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、20歳未満で障害等級1級または2級の障害者に限ります。

障害厚生年金の年金額

障害厚生年金は1級が「報酬比例の年金額×1.25」、2級が「報酬比例の年金額」で、これに1、2級は配偶者の加給年金額(234,800円)が加算されます。

障害厚生年金3級は「報酬比例の年金額」のみで、最低保証額は612,000円となっています。なお、障害手当金の最低保証額は1,224,000円です。

【障害基礎年金と障害厚生年金】いつからもらえる?

障害認定日請求(本来請求、遡及請求)

障害認定日に法令の定める各等級の障害の状態にあるときは、障害認定日の翌月分から各障害年金を受給することができます。

また障害認定日から1年以上経過後に遡って申請をすることも可能です(一般的に遡及請求と呼ばれています)

ポイント 障害年金で数百万円がもらえる遡及請求とは?

事後重症請求

障害認定日には法令の定める各等級の障害の状態にはなかったが、その後に病状が悪化して、各等級の障害の状態に該当した場合は、請求日の翌月分から障害年金を受け取ることができます。

請求が遅れれば、その分受給できる年金額も減るため、速やかに請求することが重要です。

きれいな病室 事後重症請求とは【請求時の注意点までを解説します】

【障害基礎年金と障害厚生年金】請求の流れは?

障害年金を受給するまでには、多くの必要書類を用意し、また煩雑な手続きを経なければなりません。主な請求、受給の流れは下記の通りです。

必要書類等は?

障害年金の請求には、年金請求書、年金手帳、本人確認書類(戸籍謄本、住民票など)、医師の診断書、受診状況等証明書(初診日確認が必要な場合)、病歴・就労状況等申立書、金融機関の通帳等、印鑑などが必要で、本人の情況によっては追加の書類も必要となります。

年金請求書、診断書の用紙などは市区町村役場、年金事務所等で受け取ることができます。

申請先は?

障害基礎年金は「居住地の市区町村役場」または「年金事務所」、障害厚生年金、障害手当金は「年金事務所」で請求の手続きを行います。

審査は?

障害基礎年金は全国にある「事務センター」で書類点検、審査、決定が行われます。

障害厚生年金は、書類点検が「事務センター」、審査、決定が「日本年金機構の本部(障害年金業務部)」で行われます。

一連の審査期間は約3カ月程度で、年金支給が決定すると、事務センターまたは日本年金機構の本部から自宅に「年金証書」「年金決定通知書」などが送付されます。

また年金が受け取れない場合は「不支給決定通知書」が届きます。

年金支給は?

年金証書が届いてから約1~2カ月後に、指定口座に障害年金が振り込まれます。年金は偶数月の15日(土日、休日の場合はその直前営業日)に2か月分がまとめて入金されます。

【障害基礎年金と障害厚生年金】その他のメリットは?

障害基礎年金、被用者年金(2015年10月に厚生年金に統一)の障害年金(2級以上)の受給者は、認定された日を含む月の前月分から国民年金保険料が免除されます。

これを法定免除といい、免除には国民年金保険料免除事由届の提出が必要です。

参照:国民年金保険料の法定免除制度

おわりに

障害基礎年金、障害厚生年金は、初診日に国民年金か厚生年金に加入していて、障害認定日もしくは請求時に障害認定基準に定める障害の状態にあれば、誰でも請求が可能な権利です。

障害で日常生活や仕事が制限され、生活費も困窮を強いられる悪循環を打破するためにも、胸を張って請求すべき年金制度と言っていいでしょう。

ただ、障害年金は手続きが煩雑で、ご自身ですべての手続きを行うのは簡単ではありません。年金事務所や市区町村役所に相談することもできますが、担当者が必ずしも障害年金制度に精通しているとも限りません。

障害基礎年金、障害厚生年金の請求は「一発勝負」の側面が強く、その意味でも障害年金を専門に扱う、信用できる社会保険労務士に依頼するメリットは非常に大きいと言えます。

障害年金受給の可否は生活の根底にかかわる重大事ですので、ぜひ皆さまが後悔しない方法で請求手続きを進めていただければと思います。