障害年金は、障害基礎年金、障害厚生年金、障害手当金などの種類がありますが、すべて非課税所得になります。
ただし、場合によっては確定申告が必要なケースがあるため、障害年金を受給した際の税金の扱いについてある程度知っておくことが大切です。
そこで今回は、
- 障害年金と税金
- 社会保険の扶養
- 障害年金を受けたときの特例
など、障害年金の税金で気になる点をまとめて解説します。
障害年金を受給したときの税金について気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
障害年金に税金はかかる?
冒頭でも申し上げたとおり障害年金は法律上、非課税所得とされているため、障害年金だけが収入の場合、確定申告は不要です。
ただし、住民税は前年の所得を基準に税額が決まるため、前年に所得がある場合は、現在、障害年金以外に収入がなくても住民税が課税されるので注意しましょう。
また、障害年金受給者に、家賃収入、給与収入、事業収入など、障害年金以外にも収入がある場合は確定申告が必要です。
なお、確定申告が必要な場合は、障害年金については非課税となるため確定申告書には記載する必要はなく、障害年金以外の収入のみ計上します。
障害年金を受けたときの社会保険の扶養について
障害年金は法律上では非課税となりますが、社会保険上では収入とみなされるため、扶養に入っている場合、扶養から外れてしまうケースがあります。
そこでここからは、社会保険の扶養から外れてしまうケースと外れないケースについて解説します。
扶養から外れるケース
社会保険上は障害年金も収入とみなされるため、障害年金とその他の収入の合計が180万円以上(通常は130万円以上)になる場合、社会保険の扶養から外れてしまいます。
社会保険の扶養から外れた場合、勤務先の社会保険に加入することができなければ、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
また、扶養から外れた場合、国民年金保険料の支払い義務も発生するため注意しましょう。
ただし、障害等級が1級もしくは2級の障害年金を受給している場合、国民年金の保険料については「法廷免除」を受けらるため、保険料を支払う必要がありません。
通常、年金保険料を支払わないと未納扱いとなり、65歳以上になると受け取れる「老齢年金」の金額は未納期間分減ってしまいます。
しかし、法定免除を申請して受理されれば、国民年金保険料を支払わなくても「保険料の1/2の金額を支払った」という扱いになります。
したがって、65歳になって受け取れる老齢年金額は、未納よりも多く受け取ることが可能です。
国民年金保険料の法定免除は、年金証書を持参して市町村役場の国民年金課で手続きを行うことで受けることが可能です。
さらに、障害等級3級の障害年金を受給している場合であっても、収入額によっては免除を受けられます。
そのため、健康保険の切り替え手続きを行うタイミングで、市区町村役場の国民年金科で相談してみましょう。
扶養から外れないケース
収入が障害年金のみ、もしくは、それ以外の収入を合計しても180万円未満だった場合、社会保険の扶養から外れることはありません。
したがって、国民年金保険料については、世帯主が企業に勤めている方であれば、その勤務先で加入している被用者年金制度によってまかなわれます。
そのため、障害年金を受給していても保険料を納付する必要はありません。
障害年金を受けたときの税金の特例
障害年金を受けた場合、障害者本人と障害者を扶養している方が受けられる税金の特例(控除)があります。
最後に、それぞれの場合の税金の特例について解説します。
障害者本人が受けられる特例
障害者本人が受けられる特例には、主に3つあります。
障害者控除
障害者控除とは、課税対象となる所得(収入から必要経費などを引いた額)を計算するときに、一定額が控除される制度のことです。
障害者控除の制度は、所得税や住民税に加えて、相続税も控除対象となります。
2021年2月現在、所得税・住民税における障害者控除額は、障害の程度によって以下のように区分されています。
所得税 | 住民税 | |
障害者 | 27万円 | 26万円 |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
障害の度合いが重い「特別障害者」の場合は、控除額が多く設定されていることが特徴です。
同居特別障害者控除については、後述する障害者を扶養している方が受けられる特例で詳しく解説します。
ちなみに、相続税については、相続人が障害者かつ法定相続人であるとき、その人かが85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者のときは20万円)を相続税額から控除されます。
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税
地方公共団体が給付する心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金は、所得税はかかりません。
さらに、相続や贈与によってこの給付金を受ける権利を得た場合も、相続税や贈与税の対象とはならないことが定められています。
少額貯蓄の利子等の非課税制度
通称「マル優」と呼ばれる制度で、身体障害者手帳の交付を受けている方、障害年金、遺族基礎年金などを受給している方などが利用できる制度です。
具体的には、一定の手続きを行うことで、預貯金の元本350万円までの利子が非課税になります。
さらに、マル優以外にも、「特別マル優」と呼ばれる「障害者の少額公債の利子の非課税」も受けられます。
特別マル優とは、国債と地方債の額面350万円までの利子が非課税になる制度です。
また、マル優とは別枠で利用できるため、マル優と特別マル優を合わせて利用すれば、合計額が700万円までの利子を非課税で受けられるようになります。
ただし、マル優、特別マル優を利用する場合は、最初に預け入れなどをする日までに、金融機関の窓口などに掲げる書類を提示して確認を受ける必要があります。
障害者を扶養している方が受けられる特例
配偶者や配偶者以外の扶養親族に障害がある場合、以下のような特例を受けられます。
所得税の障害者控除
同じ家計で生活している配偶者または扶養親族に障害がある場合は、障害者控除として1人当たり27万円、特別障害者の場合は40万円が所得金額から控除されます。
なお、障害者控除は扶養親族には年齢制限がありません。
そのため、16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外となりますが、障害者控除を受けることができます。
特別障害者と同居している場合
同じ家計で生活をしている配偶者または扶養親族が特別障害者で、納税者またはその配偶者もしくは、納税者と生計を一にする親族のいずれかと常に同居している場合は、障害者控除として1人当たり75万円が所得金額から控除されます。
参照:国税庁「障害者と税」
さいごに
今回は、障害年金を受けた場合の税金や、社会保険の扶養、税金の特例などについて解説しました。
障害年金は非課税所得の扱いになるため、障害年金だけが収入の場合、課税されることはありません。
しかし、障害年金受給者に家賃収入、給与収入、事業収入など、障害年金以外にも収入がある場合は、確定申告が必要になるケースがあります。
また、障害年金とその他の収入を合計して180万円以上ある場合、社会保険の扶養から外れてしまうため注意が必要です。
障害年金を受給したときの税金や扶養について少しでも悩みや疑問がある場合は、お近くの年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。