「人と話すことが怖く、働きたくても働けない」「不安が強く、通院や買い物にも家族の付き添いが必要」。社会不安障害や不安神経症によって生活が制限され、障害年金を考えている方もいらっしゃると思います。
ところが、調べてみると「神経症は対象外」と書かれている一方で、「例外的に受給できる場合がある」という説明も出てきます。自分の状態で可能性があるのか、かえってわからなくなってしまうかもしれません。
結論からお伝えすると、社会不安障害や不安神経症は、神経症として原則的に障害年金の認定対象となりません。ただし、臨床症状から「精神病の病態」を示していると判断される場合には、例外的に認定の対象となることがあります。
もっとも、例外があるからといって、重い不安や生活上の困難を説明すれば受給できるという意味ではありません。医学的な病態、障害の程度、初診日などを確認する必要があり、神経症という診断での認定は相当に難しいと考えるべきです。
この記事では、原則と例外を分けながら、診断名が変わった場合、うつ病などを併発している場合、主治医に確認したい内容まで解説します。厳しい制度上の扱いを知ることと、ご自身のつらさを否定することは別です。受給への期待だけが先に大きくなってしまわないよう、確認すべき点を順に整理していきましょう。
目次
社会不安障害・不安神経症とは――症状と診断名の違い
社会不安障害は、人から見られ、評価される場面への強い恐怖
社会不安障害は「社交不安障害」「社交不安症」とも呼ばれ、人前で話す、注目を浴びる、人から評価されるといった状況に強い不安や恐怖を感じる病気です。緊張による震えや発汗などが現れ、その場面を避けることで、仕事や日常生活に支障が生じることがあります。
たとえば、会議での発言や接客が難しくなったり、人前で失敗することを恐れて必要な予定を取りやめたりする場合があります。症状の現れ方や、生活への影響は人によって異なります。
親しい人となら話せる方もいらっしゃるため、周囲から「話せるときもあるのだから大丈夫」と受け止められることもあるでしょう。しかし、場面によって不安の現れ方が異なることは、困難そのものがないことを意味しません。
障害年金を考える際も、単に「人付き合いが苦手」という言葉で済ませず、診断されている病気と、具体的に難しくなっている場面を分けて把握することが出発点になります。
不安神経症という診断名は、現在の病態とあわせて読み解く
「不安神経症」は、以前から使われてきた病名です。現在の分類でいう全般性不安障害やパニック障害などに関係する呼称として用いられてきました。名称だけから、すべての方が同じ症状・同じ病態にあると判断することはできません。
厚生労働省のICD-10の資料では、全般性不安障害の項目に不安神経症という名称が含まれています。また、同省の「こころの耳」では、パニック障害を、従来不安神経症と呼ばれていた疾患の一部と説明しています。
長年同じ病名で通院している方も、最近は別の呼び方で説明を受けている方も、年金のために病名を自己流で読み替える必要はありません。現在の診断が何で、どのような状態を指しているのかを主治医に確認するほうが、正確な整理につながります。
診察券や昔の診断書に書かれた名称だけでは、現在の受給可能性まではわかりません。病名の表記と、これまでの治療経過をあわせて見ることが大切です。
参考:国立精神・神経医療研究センター「不安症」、厚生労働省「ICD-10 第5章」、こころの耳「パニック障害」
働けなくても原則対象外?神経症と障害年金の関係
神経症には、症状の重さだけでは超えられない原則がある
社会不安障害や不安神経症は、障害年金では神経症の取り扱いが問題になる病気です。ICD-10では、社会恐怖はF40、不安に関連する障害はF41などに位置づけられ、いずれも神経症性障害などを含むF4の区分に属します。
障害認定基準は、神経症について、症状が長期間持続し、一見重症な場合であっても、原則として認定対象としない旨を定めています。通院期間が長い、仕事を失った、外出が難しいという事情だけで、この原則がなくなるわけではありません。
障害年金を調べると「病名ではなく生活への支障が大切」という説明も目にします。生活の実態は重要ですが、神経症の場合には、そもそも認定対象として検討できる病態かという確認を省略できないのです。
この点を知らず、日常生活の困難を詳しく書くことだけに力を注ぐと、請求の見通しを誤ってしまうおそれがあります。まず原則的な扱いを押さえ、そのうえで例外を検討できる医学的な事情があるかを確認します。
「原則対象外」は、病気が軽い、努力が足りないという意味ではない
「これほど生活に困っているのに対象外なのか」と、納得しにくいお気持ちになるのは自然なことだと思います。年金の説明が、ご自身の苦しさまで否定する言葉のように感じられることもあるでしょう。
しかし、年金制度の認定範囲と、医療上の治療の必要性は同じではありません。原則対象外という取り扱いから、「本当は働けるはず」「本人の気の持ちようで治る」と結論づけることはできません。
当事務所が受給は難しいとお伝えする場合も、困っていないと判断したという意味ではありません。必要な根拠がないまま受給への期待を持っていただくことを避け、制度と資料に沿った見通しをお伝えしたいと考えています。
治療や生活上の支援を必要としている事実は、年金の見込みとは切り分けて大切にしていただきたいところです。
例外となる「精神病の病態」とは――強い不安との違いを整理
統合失調症や気分の障害に準じて扱う場合がある
神経症には、原則対象外という取り扱いとともに、例外も設けられています。臨床症状から精神病の病態を示すと判断されるものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱うという内容です。
さらに、認定にあたっては、その病態がICD-10による病態区分のどこに属するかも考慮します。つまり、ご本人が「精神的にとても重い状態だ」と感じることと、この例外に該当することは同じではありません。
ここで必要なのは、実際の症状を医師がどのような病態として捉えているかという医学的な評価です。神経症の診断がある方でも、すべてを一律に可能性ゼロとすることは正確ではありませんが、生活の困難だけから例外に該当すると決めることもできません。
なお、「精神病の病態」は認定基準に使われている表現であり、患者さんの人格や人としての価値を表す言葉ではありません。言葉の響きに不安を感じた場合も、制度上の用語として理解していただければと思います。
「悪く思われるのが怖い」だけで、妄想と判断することはできない
社会不安障害では、人から悪く評価されることや、恥ずかしい思いをすることに強い恐怖を抱く場合があります。しかし、このような対人不安を、そのまま統合失調症などの妄想と同じものとして扱うことはできません。
ご本人の訴えを医師がどう評価するかは、症状の内容や経過などを踏まえた診察によります。「視線が怖いと書けば精神病の病態になる」といった、言葉の置き換えによる判断は適切ではないのです。
また、例外には気分の障害に準じる取り扱いも含まれます。そのため、幻覚や妄想がなければ例外の検討が一切できない、という単純な説明も正しくありません。
必要なのは、特定の症状を探して年金の条件に当てはめることではなく、現在の症状について医療上どのような判断がされているかを確かめることです。
診断書に例外の言葉を書いてもらえば受給できる、という仕組みではない
認定基準を知ると、「主治医に精神病の病態があると書いてもらえばよいのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、診断書に結論となる言葉が記載されれば、それだけで支給が決まるわけではありません。
診断書では、病状、治療の経過、日常生活や就労の状況などが確認されます。記載された病態と、ほかの記載内容が対応していることも重要です。
主治医の医学的判断としてそのような病態が認められていないのに、年金のために表現を変えるよう頼むことは避けなければなりません。医師に確認する際は「受給できる文言を書いてほしい」ではなく、「今の状態は医学的にどのような病態なのか」という聞き方が適切でしょう。
参考:日本年金機構「精神の障害の認定基準」、「診断書(精神の障害用)記載要領」
うつ病を併発している場合と、神経症の例外は分けて考える
別の認定対象となる病気が、医学的に診断されている場合
社会不安障害や不安神経症に加えて、うつ病や双極性障害など、障害年金の認定対象となる別の病気が診断されている場合があります。その際は、併存する病気による障害状態も踏まえて検討します。
これは、神経症という診断のもとで「精神病の病態」の例外を検討する場合と、同じ話ではありません。どの病気が診断され、どのような症状が生活を制限しているのかを整理する必要があります。
もちろん、うつ病という病名が加われば必ず受給できるわけではありません。認定対象となる疾患であっても、障害の程度やほかの要件を満たす必要があるためです。診断名の数が増えるほど等級が上がる、というものでもありません。
「うつ状態」と書かれていても、うつ病と同じとは限らない
不安が長く続く中で、気分が落ち込む、意欲が出ない、眠れないなどの症状が現れることもあるでしょう。ただし、そのような抑うつ症状があることと、うつ病と診断されていることは区別しなければなりません。
「うつ状態」という表現が使われている場合も、その意味を本人だけで判断しないことが大切です。不安障害に伴う症状なのか、別の疾患があるのか、治療経過を含めて主治医に確認します。
抗うつ薬を服用していることだけで、年金ではうつ病として扱われると考えるのも適切ではありません。薬の名前から受給可否を推測するより、診断と病態の説明を確かめるほうが、誤解を避けられます。
| 状況 | 確認するポイント | 年金の考え方 |
| 神経症の診断のみ | 現在の診断・臨床症状・治療経過 | 原則として認定対象外 |
| 神経症で精神病の病態が示される | 医学的な評価と、その根拠となる症状 | 例外の取り扱いを検討 |
| うつ病などを併発している | 別の疾患の診断と、それによる障害状態 | 認定対象疾患の状態を含めて検討 |
この表は、ご本人が症状から診断を決めるためのものではありません。相談時に、異なる話をひとまとめにしないための整理です。どの欄に該当するかは、実際の診断内容を踏まえて確認します。
例外があっても、認定が相当に難しいと考える3つの理由
医学的な病態を、本人の申立書だけで補うことはできない
病歴・就労状況等申立書は、受診歴や生活の困難を伝える大切な書類です。しかし、主治医の診断や病態の評価を、ご本人の文章で置き換えることはできません。
たとえば、家族が「非常に重い状態だ」と感じていても、それだけでは精神病の病態があるという医学的な根拠にはなりません。長い申立書や多数の補足資料を用意すれば、原則対象外の問題が解決するというわけでもないのです。
医師にまだ伝えていない生活上の事実があれば、診察で共有する意味はあります。ただし、事実を補うことと、希望する診断へ誘導することは区別する必要があります。
認定対象として検討できても、支給される等級に達するとは限らない
例外を検討できる病態であっても、それだけで受給が確定するわけではありません。支給対象となる障害の程度に該当しているかという、次の判断が必要です。
精神の障害では、病状の経過や、日常生活にどの程度の制限が続いているかなどを総合的に確認します。ご本人がどれほどつらく感じているかと、年金の等級がどこに当てはまるかは、同じ尺度で決まるものではありません。
また、障害基礎年金には3級がありません。初診日の加入制度によって支給対象の範囲も異なるため、「働けないので少なくとも3級」という考え方が、どの方にも当てはまるわけではない点にも注意が必要です。
ネット上の受給事例から、自分の見込みまではわからない
同じ病名の受給事例を見つけると、少し希望が持てるかもしれません。ただ、紹介文には、併存疾患や実際の病態、提出資料のすべてが書かれているとは限りません。
「社会不安障害で受給」と紹介されていても、別の精神疾患を併発していたのか、神経症の例外が検討されたのかによって、判断の前提は異なります。事例の見出しだけで、ご自身も同じ結果になると考えるのは早計でしょう。
このように、原則対象外の取り扱いに加え、医学的な根拠、障害の程度、制度上の要件を確認する必要があることが、受給の難しさにつながります。受給事例の紹介や成功率を見る際も、自分と同じ病態の事例なのか、数字がどのような相談・請求を対象としているのかまで確かめたいところです。
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」、「障害基礎年金の受給要件」
外出できない、仕事が続かない――生活の実態はどう伝える?
「外出が苦手」から、実際に難しい行動へと具体化する
認定対象となる病態を確認できる場合には、日常生活の制限を正確に伝えることが重要になります。その際、「人が怖い」「外に出られない」という言葉だけでは、生活全体の状況を十分に表せないことがあります。
たとえば、近所の店には行けるが店員とのやり取りが難しいのか、家族の付き添いがあれば通院できるのか、必要な連絡を避けて手続きが滞っているのか。場面と援助の内容を分けると、ご本人がどこで困っているのかが伝わりやすくなります。
ただし、これらを多く書けば神経症の例外に該当する、という話ではありません。生活の具体化は、病態を確認する作業の代わりにはならないことを押さえておきましょう。
家で過ごせていても、家族の援助を見落とさない
ご家族と同居していると、食事の用意や買い物、予定の管理などを周囲が自然に担い、ご本人は「家では問題なく過ごしている」と感じている場合もあります。
生活を説明する際は、何を自分で行い、どの部分を手伝ってもらっているかを整理します。自分でできることはできると伝え、援助が必要なことは、その内容を過不足なく伝えるのが基本です。
診察の日に短時間話せたことと、日々の生活を安定して続けられることも同じではありません。診察室では見えにくい部分を具体的に共有することで、医師にも普段の状況を理解していただきやすくなるでしょう。
休職・退職の有無だけで、障害の程度は決まらない
休職している、退職した、長く無職であるといった事情は、就労の経過として重要です。しかし、いずれも、それだけで障害年金を受給できる条件になるわけではありません。
働いている場合も、勤務時間や担当業務、欠勤の状況、職場から受けている援助などを含めて把握します。仕事に就いているという事実だけで一律に対象外となるものではありませんが、実際の就労状況が障害状態の判断に関わることはあります。
受給のために退職したり、できる活動を控えたりすることはおすすめできません。生活や治療に必要な判断と、年金の見通しを混同せず、現在の事実を正しく伝えることを大切にしたいところです。
不安神経症からうつ病へ――病名が変わっても初診日は選べない
最初の病名と現在の病名が違うことはある
精神疾患では、受診を重ねる中で病状が明らかになり、当初と現在の診断名が異なることがあります。最初は不安神経症と言われ、その後にうつ病などと診断される場合もあるでしょう。
そのような場合、「最初の病名が神経症だったから、今後も障害年金は絶対にもらえない」と決めつけることはできません。現在認定対象となる病気があるか、どのような経過で今の状態に至ったかを確認します。
一方で、診断名が変わった日が自動的に新しい初診日になるわけでもありません。同じ病気の経過として扱われるか、別の傷病との関係をどう考えるかは、実際の受診歴や医学的な関係を踏まえて判断されます。
転院前や内科での受診も、必要に応じて確認する
現在の精神科に通い始めた日だけを見ればよいとは限りません。それ以前に別の心療内科へ通っていた場合や、同じ症状に関係する不眠、動悸などで内科を受診していた場合は、その受診がどう位置づけられるかも確認します。
もちろん、過去の内科受診がすべて精神疾患の初診日になるという意味ではありません。障害の原因となった傷病との関係を見ず、最も古い日を機械的に選ぶものでもないのです。
都合のよい加入制度や納付状況に合わせて初診日を選び直すことはできません。診断名が変わる前の受診歴も含め、わかっている経過を正確に伝えることが、請求の土台になります。
初診日が定まってから、加入制度と保険料の要件を確認
障害年金では、初診日に加入していた制度が、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを検討するかに関わります。現在会社員かどうかだけで決まるものではありません。
保険料の納付要件も、原則として初診日の前日時点で、初診日の属する月の前々月までの納付済期間や免除期間などから確認します。一定の条件で直近1年間による特例があり、20歳前の年金未加入期間に初診日がある場合は納付要件が不要になるなど、取り扱いが異なる場合もあります。
神経症の例外を検討できても、こうした要件を欠けば受給につながらないことがあります。病態だけに目を向けず、加入記録もあわせて確認する必要があるのです。
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件」、「障害厚生年金の受給要件」
長く通院すれば受給できる?認定日と現在の状態を混同しない
初診日から1年6か月は、自動的に対象へ変わる期限ではない
障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日になります。ただし、これは障害の状態を判断する時点であり、その日を過ぎればどの精神疾患も認定対象になるという意味ではありません。
不安神経症で何年も通院している場合も、通院の長さだけで原則対象外の扱いが変わるわけではない点は同じです。「長く治療したので、そろそろ対象になるはず」と考え、診断書の取得を先行させないよう注意したいところです。
今の病態に加えて、どの時点の状態で請求を検討するのかを確認すれば、必要な診断書の時期も整理しやすくなります。
現在うつ病でも、過去の認定日まで同じ状態だったとは限らない
現在はうつ病などと診断されている方でも、過去の障害認定日時点では、神経症としての症状のみだった可能性があります。現在の診断を、そのまま何年も前の状態に当てはめることはできません。
過去にさかのぼる認定日請求を検討するには、当時の病態や障害の程度を、当時の記録に基づいて確認する必要があります。現在受給できる可能性があることと、過去にも受給できる状態だったことは、分けて考えなければなりません。
認定日には基準に該当せず、その後に該当する状態となった場合には、事後重症請求を検討することがあります。この場合は原則として請求月の翌月分から支給され、請求書の提出は65歳の誕生日の前々日までとなります。ご自身の経過に合う請求方法を確認することが大切です。
主治医にうまく話せないときは、病名の変更より事実の共有を
聞きたいことと、伝えたい生活の様子を短く整理する
対人場面への不安が強いと、診察でも緊張して、話したかった内容が出てこないことがあると思います。言葉を探すうちに時間が過ぎ、帰宅してから「大事なことを伝えられなかった」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
そのようなときは、現在の診断名について確認したいことと、普段の困りごとを、短いメモに分けておく方法があります。「どの場面で何が難しいか」「どのくらいの頻度か」「誰の援助を受けているか」を中心にすると、経過を伝えやすくなります。
年金のために症状を強く見せようとする必要はありません。できたこと、難しかったこと、調子の変動を、普段の診察から共有しておくことが、治療上の理解にもつながります。
診断書を依頼する前に、見通しと必要な時点を確認
障害年金の診断書は、作成を依頼すれば必ず受給できるという書類ではありません。診断書を作成するかどうかと、支給が決定するかどうかは別の問題です。
先に、認定対象となる病態を検討できるか、初診日などの要件はどうか、どの時点の診断書が必要かを整理しておくと、費用や取り直しの負担を避けやすくなります。
主治医から「現在は不安障害として治療している」と説明を受けている場合に、年金のためにうつ病へ変えてほしいと求めることは適切ではありません。診断を確認することと、希望する診断を指定することを区別しましょう。
日本年金機構も、診断書を作成する前に、受給要件や診断書に記入する症状の日付などを年金事務所等へ確認するよう案内しています。
社労士への相談で確認したい、請求の見通しと難しい点
例外に当てはめることを先に決めず、現在の診断から確認する
社労士は、診断を行う医師でも、等級を決定する審査機関でもありません。認定基準と資料を踏まえ、請求の見通しや、手続き上確認すべき点を整理する役割を担います。
そのため、「社会不安障害でも例外で通してほしい」と結論を先に指定されても、実際の病態や資料を確認せずにお約束することはできません。診断名の表現を工夫すれば通るという説明も、慎重に受け止める必要があります。
当事務所でも、ご本人の困難を伺ったうえで、制度上の見通しが立たない場合には、ご依頼をお受けできないことがあります。無理に請求を進め、費用や労力をかけた後で大きな落胆につながることは、できるだけ避けたいと考えているためです。
難しい見通しを知ることにも、準備の負担を減らす意味がある
相談の結果が、必ずしも「請求を進めましょう」となるとは限りません。それでも、何が問題となるのかがわかれば、根拠のない情報を探し続けたり、診断書を何度も取り直したりする負担を減らせる場合があります。
相談時には、現在の診断名、最初に受診した時期、通院先の変遷、生活や仕事の状況を、わかる範囲で伝えていただくと判断の参考になります。不明な日付は無理に決めず、不明であることをそのまま共有するほうが適切です。
なお、当事務所の既存記事「障害年金の対象外になるのはどんな人?」では、神経症以外も含めた対象外の理由を解説しています。また、適応障害の記事では、同じ神経症の取り扱いが問題となる別の疾患について説明しています。
障害年金が難しいときに確認したい、通院費と休業中の支援
自立支援医療の利用と、障害年金の認定は別の判断
自立支援医療の精神通院医療は、継続的な精神科の通院医療にかかる自己負担を軽減する制度です。厚生労働省の案内では、神経症性障害などのF4の区分も対象疾患に含まれています。
そのため、障害年金の認定が難しい場合でも、通院医療費の負担については別途確認する意味があります。利用には申請などが必要で、具体的な取り扱いは医療機関や自治体の窓口で確認します。
反対に、自立支援医療を利用しているから、障害年金も認定対象になるという関係ではありません。精神障害者保健福祉手帳についても、障害年金と同じ基準で決まる制度ではないため、手帳の等級から年金の受給可否を判断しないことが大切です。
傷病手当金が終了しても、年金へ自動的に切り替わることはない
会社員などで健康保険に加入し、療養のために仕事ができず、給与が支払われないなどの条件を満たす場合は、傷病手当金の対象となることがあります。協会けんぽでは、同一の傷病について支給開始日から通算1年6か月を支給期間としています。
ただし、傷病手当金の支給終了と、障害年金の認定は別の話です。長く休業し、傷病手当金を受け終えたからといって、神経症が障害年金の認定対象に変わるわけではありません。
収入が途絶える時期が近い場合には、年金の結論を待つだけでなく、加入している健康保険、自治体の生活相談窓口、医療機関の相談員などに、利用できる支援を確認しておくことが役立ちます。年金の認定が難しいことと、ほかの支援の可能性までなくなることは同じではないのです。
参考:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」、「精神障害者保健福祉手帳の実施要領についての疑義照会」、全国健康保険協会「傷病手当金」
さいごに
社会不安障害や不安神経症は、神経症として原則的に障害年金の認定対象となりません。例外として、臨床症状から精神病の病態を示す場合には認定が検討されますが、強い不安や長期の通院、就労できない事情だけで受給につながるものではなく、例外による受給を安易に見込むことはできません。
その一方で、現在うつ病などを併発している場合や、治療の経過で診断が変わっている場合まで、昔の病名だけで可能性を否定することも適切ではありません。現在の診断と病態を確かめ、障害の程度、初診日、加入記録などを順に確認する必要があります。
受給が難しいと知ることは、つらいことだと思います。しかし、その説明は、ご本人の苦しさが小さいという意味ではありません。根拠の乏しい期待のために治療や暮らしを振り回されることなく、今の状態を正しく理解し、利用できる支援を考えることが大切ではないでしょうか。
当事務所への障害年金請求のご依頼をお考えの方は、受給判定・相談フォームの受付条件をご確認のうえ、現在の診断名や受診の経過、生活の様子を、わかる範囲でお知らせいただければと思います。例外への期待だけを膨らませず、ご自身の病態と資料に基づいて見通しを確かめることが、無理のない判断につながります。
