実は、障害年金が支給停止されてしまうことがあります。突然障害年金が支給停止されてしまうと、生活に大きな支障をきたしてしまうことでしょう。
そこで今回は、障害年金が支給停止されてしまうケースとその対処法について解説します。
場合によっては支給の再開が見込めますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
目次
障害年金が支給停止になるケースがある
障害年金が支給停止になってしまうケースは、大まかに次の2つに分けられます。
- 障害の程度が障害等級に該当しない程度と判断されたとき
- 20歳前の傷病で障害基礎年金を受給している方について
以降では、上記2つについて詳しく解説していきます。
障害の程度が障害等級に該当しない程度と判断されたとき
障害年金は、日常生活や労働への影響度合いに応じ「障害等級」が決定され、支給されるものです。
そのため、障害の程度が障害等級に該当しない程度と判断されれば、障害年金の支給は停止されてしまいます。
ではその判断は「いつ」されるのでしょうか。
そもそも障害年金には「永久認定」と「有期認定」の2種類があり、多くの方が「有期認定」です。有期認定の場合は1~5年ごとに障害状態確認届(更新用診断書)を提出しなければなりません。
このことは一般的に「障害年金の更新」と呼ばれています。障害年金の更新については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
次に「障害の程度が障害等級に該当しない程度」について考えていきましょう。
「障害の程度」の基準である障害等級は1級から3級まであり、例えば2級は「障害認定基準」で次のように定義されています。
- 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度
- 必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度
障害年金が支給されない場合は、労働により収入を得ているなどで、障害の程度が「2級または3級(障害厚生年金の場合)に満たない」と判断されたことを示します。
働いていると障害の程度が軽いと判断されることもある
働いていると、障害の程度が軽い(軽くなった)と判断されることもあります。
これは先述の障害等級2級の定義にもあるように、「労働により収入を得ることができない程度」という判断基準があり、就労しているなら障害の程度は軽いと判断されてしまうことがあるのです。
また、更新用診断書に就労状況を記載していなくても、日本年金機構は「厚生年金保険」の記録から就労しているかどうかを確認できます。
20歳前の傷病で障害基礎年金を受給している方について
20歳前の傷病で障害基礎年金を受給している方は、支給停止になってしまうケースが多くなってしまいます。
具体的には次の場合に支給停止されます。
- 所得制限による支給停止
- 刑務所などの矯正施設に入所したとき
- 海外に居住しているとき
それぞれ順に確認していきましょう。
所得制限による支給停止
20歳前の傷病の場合は、所得制限により全額または2分の1が支給停止されてしまうことがあります。
具体的には、前年の所得額が462.1万円を超える場合は全額支給停止。360.4万円を超える場合は2分の1支給停止となります。
なお、扶養親族がいる場合は以下のように基準所得額が加算されます。
- 老人控除対象配偶者または老人扶養親族なら1人につき48万円加算
- 特定扶養親族なら1人につき63万円加算
- 上記に該当しない扶養親族は1人につき38万円加算
以上の内容を含め、簡単な基準所得額を以下にまとめました。
ケース | 全額支給停止 | 2分の1支給停止 |
扶養親族なし | 462.1万円 | 360.4万円 |
扶養親族が1人 | 500.1万円 | 398.4万円 |
扶養親族1人が老人控除対象配偶者 | 510.1万円 | 398.4万円 |
扶養親族1人が老人扶養親族 | 510.1万円 | 408.4万円 |
扶養親族1人が特定扶養親族 | 525.1万円 | 423.4万円 |
ここで注意したいポイントは、収入ではなく「所得」が基準となっていることです。
所得は「収入から必要経費を除いたもの」であり、給与所得者の場合は源泉徴収票、個人事業主などの場合は確定申告書で確認します。
なお、所得制限は20歳以降の傷病においては設定されていません。
以下の記事で所得制限について詳しく解説しておりますので、よろしければご覧ください。
刑務所などの矯正施設に入所したとき
20歳前の傷病で障害年金を受給している方は、刑務所などの矯正施設に入所したときに障害年金が全額支給停止されます。
しかし、支給停止は有罪が確定した場合に限定されています。
海外に居住しているとき
20歳前の傷病で、海外に居住しているときも全額支給停止となります。
障害年金が支給停止になった場合の対処法
障害年金が突然支給停止になってしまうと、大変困ってしまいます。しかし、次に示すケースでは、支給再開を諦めるしかありません。
- 刑務所などの矯正施設に入所したとき(有罪確定)
- 海外に居住しているとき
- 20歳前の傷病で一定以上の所得額があるとき
- 障害の程度が実際に障害等級に該当しないとき
一方で、次のケースでは支給再開の可能性があります。
- 実態は障害等級に該当する程度であるのに、該当しないと判断されたとき
これは日本年金機構に提出した更新用診断書に問題があったと考えられます。具体的には、障害の程度や状況の記載が不十分であったなどです。
更新時に支給停止にならないようにするためには、主治医に日常生活の程度や障害の状況などを正しく伝え、診断書に明確にそれらの状況を記載してもらいましょう。
以降では、支給停止されてしまってから取るべき対処法を紹介します。
支給停止事由消滅届を提出する
「支給停止事由消滅届」は、障害年金の支給停止を解除するための手続きです。
支給停止されたからといって、障害年金を受給する権利がなくなったわけではありません。そのため、再度、障害等級に該当するのであれば支給を再開してもらえます。
実際には診断書と併せて提出しますので、提出する診断書の内容は障害等級に該当することを示すものでなければなりません。
なお支給停止事由消滅届は、支給停止を受けてからいつでも提出することができます。
支給停止事由消滅届を年金事務所に提出する場合には、診断書を添えて提出します。
参照:障害年金の支給を停止されている方が、再び障害年金を受けられる程度になったとき
審査請求を行う
支給停止された事実に不服がある場合、不服申立て(審査請求)が可能です。
審査請求の後、支給停止が取り消されれば支給は再開されます。しかし、一度決定した処分を覆すことは簡単ではありません。
審査請求には、処分が妥当ではないことをきちんと根拠立てて申し立てを行わなければなりません。
なお、審査請求は「支給停止があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内」に申し立てます。そのため、3ヶ月内に審査請求にかかわる書類を作成することとなります。
審査請求について下記の記事でわかりやすく解説しておりますので、よろしければご覧ください。
さいごに
今回は障害年金が支給停止されるケースと、その対処法について解説しました。
支給停止されるケースはおもに、障害の程度が障害等級に満たないと判断された場合、20歳前の傷病で所得制限を超えた場合の2つです。
その内、「実態は障害等級に該当する程度であるのに該当しないと判断された場合」には支給再開の見込みがあります。支給停止事由消滅届の提出もしくは審査請求を行いましょう。
障害年金は生活と密接に関わります。支給停止を未然に防ぐためには、更新用診断書の内容が鍵となるため、主治医とのコミュニケーションも重要だといえるでしょう。