勤務先などで、社労士が従業員の社会保険の手続きや労務問題などの業務を代行しているのを見て、社労士という資格に興味を持った人もいるかもしれません。
大変そうだけど、実生活にも密接に関係した、とても意義のある資格だと感じた─ 自分も挑戦してみたいと思うが、社労士の資格とはいったい、どんなものなのか?
働きながらでも、その資格を取得することはできるのか?
ここでは、社労士の資格に関心をお持ちの方に、資格の概要について詳しく解説していこうと思います。
目次
社会保険労務士とは
社会保険労務士(社労士)とは、社会保険労務士法で規定された国家資格です。
企業の人事労務管理や社会保険の手続き、年金相談など幅広い業務を行います。
私生活にも直結する幅広い分野を担うことから、受験者数が毎年3万人を超す人気の国家資格となっています。
社労士の資格が人気の理由
独占業務がある
何より社労士にしか認められていない独占業務がある点が魅力です。
一つは労働・社会保険に関する手続き、申請業務、もう一つは就業規則など企業における帳簿書類の作成業務です。この2つは社労士以外が行うことが禁止されています。
多様な働き方 独立開業も
働き方にいくつかの選択肢がある点も人気の秘訣です。
大きく分けると、独立開業して、自身の力で顧客を開拓していく「独立型」と、企業や社労士事務所に所属して専門性を発揮する「勤務型」の2パターンがあります。
また社労士の実務ではなく、資格を生かした講演、執筆活動で収入を得ることも、一つの道と言えるかもしれません。
努力次第で高収入も
経験を積んで独立開業すれば、勤務型社労士のような安定感こそありませんが、適性と努力次第で高収入を得ることも不可能ではありません。
実際に多くの顧客を持ち、数千万単位の年収を稼いでいる社労士もいるようです。
実生活でも役立つ
社会保険など日常生活で必須の業務を担っている点も魅力です。
仮に社労士としての業務を行わなくても、その知識を身に着ければ、日常生活に大いに役立つことは間違いありません。
社労士資格を取得するには
社労士の資格を取得するには、社会保険労務士試験という国家試験に合格しなければなりません。
社労士試験の概要は以下の通りです。
社労士試験の詳細は下記のリンク記事を参照ください。
試験内容
試験範囲は下記の8科目で、空欄を補充する「選択式試験」と、五肢から選ぶ「択一式試験」に分けて出題されます。
選択式は1科目5点で8科目40点満点。択一式は1科目10点で7科目70点満点(計110点満点)です。
- 労働基準法および労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法(労働保険の保険料徴収等に関する法律を含む)
- 雇用保険法(労働保険の保険料徴収等に関する法律を含む)
- 労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
- 社会保険に関する一般常識(社一)
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
合格基準
選択式の「総得点」「各科目点」、および択一式の「総得点」「各科目点」のすべてで、合格基準点を満たしていないと不合格となります。
令和元年は、選択式の総得点は26点以上、各科目点は3点以上、択一式の総得点は43点以上、各科目点は4点以上が、合格基準点でした。
社労士試験の難易度・合格率
令和元年は3万8428人が受験し、合格者は2525人で、合格率は6・6%でした。平成30年が6・3%、平成29年が6・8%と、ここ3年は6%が続いています。
平成27年に2・6%という過去最低の合格率を記録しましたが、近年の平均合格率は6~9%で推移しています。ちなみに過去最高は昭和40年の14・5%でした。
社労士試験の受験資格は
社労士試験を受験するには、以下の4つのうち、いずれか一つの「受験資格」が必要です。
学歴
大学、短期大学、高等専門学校(5年制)等を卒業した人、または在学中(短大は除く)や中退者でも、規定の条件を満たせば学歴要件に該当します。高卒者、中卒者は該当しません。
実務経験
労働社会保険諸法令で規定された業務に通算3年以上従事した者が該当します。
国または地方公共団体、全国健康保険協会、日本年金機構等で役員、職員として3年以上、実務に携わった人が対象となります。
国家試験合格
厚生労働大臣が認めた79の国家試験に合格した人が対象となります。
令和2年現在、旧司法試験第2次試験、公認会計士試験、司法書士試験、気象予報士試験などの合格者が受験資格を認められています。
過去受験
直近3年間に実施された社労士試験の受験票または成績通知書を所持しているか、社労士試験の試験科目の一部免除決定通知書を所持している方にも受験資格が与えられます。
社労士資格を取得するための勉強方法
社労士に限らず、国家資格を取得するための主な勉強方法には、予備校などの講座を受講する、通信講座を利用する、独学で勉強する、の3つがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。
予備校などの講座に通学
社労士は人気の国家資格で、資格予備校の社労士講座を受講する受験生は少なくありません。
そこでは社労士試験に精通したプロの講師が、社労士試験合格に特化した教材で効率的に講義を行います。
無駄を省いた効率的な講義により、トータルの勉強時間も削減されるため、通学時間や受講費用などのデメリットを差し引いても、有効な勉強方法と言えるかもしれません。
通信講座
本格的なリモート時代が到来して、通信講座の需要がますます高まっている印象です。
通信講座は、資格予備校などに通学する場合に比べて時間や場所に制約がないことが最大のメリットです。
リモートでの受講のため、講座の形式によっては直接質問をすることができない、あるいは集中力を欠いてしまうなどのデメリットも考えられますが、有効に活用すれば最も費用対効果が良い勉強方法と言えるでしょう。
独学
独学は何といっても、参考書などの経費以外は費用がかからず、時間や場所の制約も一切ないのが魅力です。
一方で、社労士試験合格へ向け、効率的な勉強ができるかどうかという不安はつきまといます。
独学で勉強する場合は、社労士試験の傾向と対策を徹底的に把握することが重要となります。
社労士資格についてよくある質問
A.基本的に年齢制限はありませんが、受験するには学歴、実務経験、国家試験合格のいずれかの受験資格を満たす必要があるため、下限は一定年齢(20歳頃)となります。
一方、上限に制限はなく、平成30年の試験では84歳の方が受験しました。
A.一切関係ありません。需要の高まる社労士の資格を目指し、毎年、社会人、主婦、学生、年配者など、幅広い方が挑戦しています。
ちなみに受験者の7~8割は社会人で、合格者の約7~8割は35歳以上、男女比は2:1と言われています。
A.社労士の資格に有効期限はなく、更新する必要はありません。
ただ、社労士を名乗るには、社労士の国家試験に合格して、2年以上の実務経験を積み、全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録することが必要となります。
A.社労士有資格者の就職活動の対象は、一般企業または社労士事務所になります。
一般企業の場合は、主に総務部、人事部のスタッフを募集している企業をターゲットに就活を行います。
社労士事務所に就活を行う場合は、ホームページなどで人材育成の下地があるかどうかを確認して判断します。
企業でも社労士事務所でも、社労士としての経験を積む場に変わりありませんので、収入ばかりに目を配るのではなく、社労士としてのキャリアに役立つ、有益な就職先を見つけることが重要となります。
さいごに
資格講座などでも人気資格の上位にランキングされる社会保険労務士。社会保険や年金制度など実生活と密接に関係し、社会的意義の高さから人気資格の一つとして定着しています。
一方、出題範囲の広さ、合格率の低さなど、合格するのは容易ではなく、相当な時間と労力が要求されますが、その資格を手にすれば、公私ともに生活の質が高まることは間違いありません。
社労士という資格は、少子高齢化が進み、終身雇用も揺らぐ今の時代、ますますニーズが高まっています。
資格を取得して社労士業務を行うことはもちろん、仮に資格が取得できなくても実生活に非常に役立つ知識ですから、社労士資格を目指すことは大変有意義な挑戦と言っていいでしょう。