5分でわかる!精神の障害にかかる等級判定ガイドライン

考えている人

うつ病や双極性障害等の精神障害で障害年金の請求(申請)をする場合には、精神の障害用診断書(様式第120号の4)を使用します。
そして、精神障害の症状がどの程度かどうかは日常生活能力によって審査され、等級が決められます。

その等級を公平に判定するために平成28年(2016年)9月より「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の運用が始まりました。
この「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、精神の障害用診断書に記載される「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に応じた等級の目安が定められています。

等級判定ガイドラインの対象となる病気について

精神の障害に係る等級判定ガイドラインに基づいて認定される病気は、精神疾患全てになり、てんかんを除きます。

対象となる病気の例は、うつ病・双極性障害・統合失調症・気分変調症・発達障害・知的障害・高次脳機能障害(症状性を含む器質性精神障害)などになります。

※てんかんは等級判定ガイドラインの対象外となっておりますが、例えば発作のない発作間欠期に精神神経症状や認知障害がある場合については、他の精神障害と同様に日常生活能力の制限度合について評価されますので注意してください。

【 日常生活能力の判定 】とは

「日常生活能力の判定」とは、日常生活の7つの場面における制限度合を、それぞれ具体的に評価するものです。

日常生活の7つの場面について、具体的にご説明いたします。

  • 適切な食事
    配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。
  • 身辺の清潔保持
    洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど。
  • 金銭管理と買い物
    金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。
  • 通院と服薬
    規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど。
  • 他人との意思伝達お及び対人関係
    他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
  • 身辺の安全保持及び危機対応
    事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態になった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
  • 社会性
    銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。

日常生活の7つの場面における制限度合を、次の4段階で判定します。

ご家族に援助してもらっている方やグループホームに入所している方は、一人暮らしだと想定して判断します。
また、診察時の一時的な状態ではなく、診断書の現症日以前1年程度での障害状態の変動について、症状が良くなったり悪くなったりした場合にはその両方を考慮して判断します。

  1. できる
  2. 自発的に(おおむね)できるが時には助言や指導を必要とする
  3. (自発的かつ適正におこなうことはできないが)助言や指導があればできる
  4. 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

【 日常生活能力の程度 】とは

「日常生活能力の程度」とは、「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合を包括的に評価するものです。

【精神障害(知的障害以外)】

  1. 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
  2. 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
    (たとえば、日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難を生じることがある。社会行動や自発的な行動が適切に出来ないこともある。金銭管理はおおむねできる場合など。)
  3. 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
    (たとえば、習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする。社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある。金銭管理が困難な場合など。)
  4. 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
    (たとえば、著しく適性を欠く行動が見受けられる。自発的な発言が少ない、あっても発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。金銭管理ができない場合など。)
  5. 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
    (たとえば、家庭内生活においても、食事や身のまわりのことを自発的にすることができない。また、在宅の場合に通院等の外出には、付き添いが必要な場合など。)

【知的障害】

  1. 知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
  2. 知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
    (たとえば、簡単な漢字の読み書きができ、会話も意思の疎通が可能であるが、抽象的なことは難しい。身辺生活も一人でできる程度)
  3. 知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
    (たとえば、ごく簡単な読み書きや計算はでき、助言などがあれば作業は可能である。具体的指示であれば理解ができ、身辺生活についてもおおむね一人でできる程度)
  4. 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
    (たとえば、簡単な文字や数字は理解でき、保護的環境であれば単純作業は可能である。習慣化していることであれば言葉での指示を理解し、身辺生活についても部分的にできる程度)
  5. 知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
    (たとえば、文字や数の理解力がほとんど無く、簡単な手伝いもできない。言葉による意思の疎通がほとんど不可能であり、身辺生活の処理も一人ではできない程度)

認定される等級の目安について

等級判定ガイドラインでは、「日常生活能力の判定」の平均値と「日常生活能力の程度」の評価によって認定される等級の目安が示されています。

障害等級の目安は、下記の表で判断することができます。
例えば、「日常生活能力の判定」の平均値が3.3で「日常生活能力の程度」が4の場合には、2級相当となります。

注意

障害等級の目安
・「判定平均」は、「日常生活能力の判定」の4段階評価について、程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出します。

・障害基礎年金の場合は、3級は2級非該当と置き換えます。

等級判定ガイドラインで注意すべきポイント

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の障害等級の目安はあくまでも参考であり、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に認定されます。
必ずしも目安の等級で認定されるわけではなく総合的に評価されるため、目安と異なる認定結果となることがあります。

①現在の病状又は状態像

共通事項…

  • ひきこもりについては、精神障害の病状の影響により、継続して日常生活に制限が生じている場合は、それを考慮する。

精神障害…

  • 現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)及びそれによる日常生活活動等の状態や予後の見通しを考慮する。
  • 統合失調症については妄想・幻覚などの異常体験や、自閉・感情の平板化・意欲の減退などの陰性症状(残遺状態)の有無と考慮する。

知的障害…

  • 知能指数を考慮する。ただし、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する。

発達障害…

  • 臭気、光、音、気温などの感覚過敏があり、日常生活に制限が認められればそれを考慮する。
  • 知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合はそれを考慮する。
  • 不適応行動を伴う場合、診断書に具体的記載があればそれを考慮する。

②療養状況

共通事項…

  • 通院の状況(頻度、治療内容など)を考慮する。薬物治療を行っている場合は、その目的や内容(種類・量(記載があれば血中濃度)・期間)を考慮する。

精神障害…

  • 入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)を考慮する。
  • 在宅での療養状況を考慮する。

知的障害・発達障害…

  • 著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況を考慮する。

③生活環境

共通事項…

  • 家庭等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する。
  • 入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居など、支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する。
  • 独居の場合、その理由や独居になった時期を考慮する。

知的障害・発達障害…

  • 在宅での援助の状況を考慮する。
  • 施設入所の有無、入所時の状況を考慮する。

④就労状況

共通事項…

  • 仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえでの日常生活能力を判断する。
  • 援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
  • 相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。

知的障害・発達障害…

  • 仕事の内容がもっぱら単純作業かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。
  • 仕事場での意思疎通の状況を考慮する。

⑤その他

共通事項…

  • 「日常生活能力の判定」の平均が低い場合であっても、うつ病の特性に応じて特定の項目に著しく偏りがあり、日常生活に大きな支障が生じていると考えられる場合は、その状況を考慮する。

精神障害…

  • 依存症については、精神病性障害を示さない急性中毒の場合及び明らかな身体依存が見られるか否かを考慮する。

知的障害…

  • 発達障害・養育歴、教育歴などについて、考慮する。
  • 療育手帳の有無や区分を考慮する。
  • 中高年になってから判明し請求する知的障害については、幼少期の状況を考慮する。

発達障害…

  • 発育・養育歴・教育歴・専門機関による発達支援、発達障害自立訓練等の支援などについて、考慮する。
  • 青年期以降に判明した発達障害については、幼少期の状況、特別支援教育またはそれに相当する支援の教育歴を考慮する。