療育手帳は障害者手帳のうち知的障害を持つ方のための手帳になります。
知的障害の方が就労の支援を受けたり、公的機関の割引を受けたりできる手帳になりますので、持っていると安心です。
しかし、療育手帳の制度は国の法律で定められておらず、自治体によって名前も等級も異なり、とてもわかりにくい制度となっております。
ここでは療育手帳の仕組みや申請方法についてわかりやすくご説明いたします。
目次
療育手帳とは
療育手帳とは3つ種類の障害者手帳のうちのひとつで、知的障害の方に交付される手帳になります。
また、発達障害の方のうち知的障害も併発している方も療育手帳を取得することができます。
療育手帳を取得することによって様々なサービスや支援を受けられるようになりますので、その内容や取得方法等についてご説明いたします。
療育手帳制度の目的
療育手帳の制度の目的は、大きく以下の2つになります。
- 知的障害児や知的障害者に対して一貫した指導・相談を行う
- 知的障害児や知的障害者が各種の援助措置を受けやすくする
この制度は、知的障害児(者)に対して一貫した指導・相談を行うととも
に、これらの者に対する各種の援助措置を受け易くするため、知的障害児
(者)に手帳を交付し、もって知的障害児(者)の福祉の増進に資すること
を目的とする。
後でご説明いたしますが、療育手帳には知的障害の重さで区分された等級が記載されますので、学校や職場など第三者がその方の知的障害の度合いを把握することができます。
療育手帳は自治体により制度や基準が異なる
療育手帳は他の2つの障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳)と異なり、法律で定められた制度ではありません。
療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)によって自治体に運用の通知がされております。
そのため、自治体によって手帳の名前や支援の内容、取得の基準などがそれぞれ異なっております。
例えば、療育手帳とは呼ばず、「愛の手帳」「愛護手帳」「みどりの手帳」と名前が異なるのもそのためです。
療育手帳の対象について
療育手帳の対象となる方については自治体によって基準を設けているため、基準はそれぞれ異なります。
おおまかな目安としては以下のとおりです。
- おおむね18歳以前に知的障害が認められ、現在もそれが持続している
- 知能測定値は知能指数(IQ)が75以下(または70以下)
- 日常生活に支障が生じており、医療・福祉・教育・職業面で特別の援助を必要とする
この目安をもとにして療育手帳が取得できるかの判定を行いますが、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者構成相談所で実施されます。
心理判定員や医師による判定を受けて「知的障害」と判定された場合には療育手帳が交付されます。
取得できるのは子供だけ?
知的障害は、おおむね18歳までに生じる障害とされておりますが、子供の時に何らかの理由で療育手帳を取得せず、大人になってから必要とする方もいらっしゃいます。
そのような場合には大人になってからでも療育手帳を取得することは可能です。
東京都の場合には、18歳以上の知的障害の具体的な基準を設けておりますので、大人になってから療育手帳を取得する方はご参考になさってください。
最重度とは、知能指数(IQ)がおおむね19以下で、生活全般にわたり常時個別的な援助が必要となります。
例えば、言葉でのやり取りやごく身近なことについての理解も難しく、意思表示はごく簡単なものに限られます。上は判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には総合判定により障害の程度が決められます。
重度とは、知能指数(IQ)がおおむね20から34で、社会生活をするには、個別的な援助が必要となります。
例えば、読み書きや計算は不得手ですが、単純な会話はできます。生活習慣になっていることであれば、言葉での指示を理解し、ごく身近なことについては、身振りや2語文程度の短い言葉で自ら表現することができます。日常生活では、個別的援助を必要とすることが多くなります。上は判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には総合判定により障害の程度が決められます。
中度とは、知能指数(IQ)がおおむね35から49で、何らかの援助のもとに社会生活が可能です。
例えば、ごく簡単な読み書き計算ができますが、それを生活場面で実際に使うのは困難です。具体的な事柄についての理解や簡単な日常会話はできますが、日常生活では声かけなどの配慮が必要です。上は判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には総合判定により障害の程度が決められます。
軽度とは、知能指数(IQ)がおおむね50から75で、簡単な社会生活の決まりに従って行動することが可能です。
例えば、日常生活に差し支えない程度に身辺の事柄を理解できますが、新しい事態や時や場所に応じた対応は不十分です。
また、日常会話はできますが、抽象的な思考が不得手で、こみいった話は難しいです。上は判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には総合判定により障害の程度が決められます。
療育手帳の等級について
療育手帳の通知では、最重度とそれ以外の中軽度の大きく2つに等級を区分することとしています。
自治体によってさらに「最重度」「重度」「中度」「軽度」というように細かく等級を区分しているところもあります。
参照:療育手帳の区分について
療育手帳を取得するメリット
療育手帳を持っていることによっていろいろな支援やサービスを受けることができたり、税制等の優遇を受けられたりとメリットがあります。
子供の場合には保育園へ優先的に入園できる等のメリットがありますが、ここでは主に大人になってからのメリットについて説明いたします。
就労支援
療育手帳を持っていると、障害者雇用枠で就職することができます。
障害者雇用枠で就職をすることによって、知的障害への仕事上の配慮を受けられるメリットがあります。
実際に知的障害で配慮を受けながら障害者雇用枠で何年も働いている方は多く、自立への第一歩にもなります。
また、療育手帳を持っていると、就職をする前の段階で就労移行支援や就労継続支援のサービスを受けることができ、働く前の準備にも役立ちます。
減税・各種控除
療育手帳を持つことによって、税制の優遇等を受けることができます。
具体的には、所得税・住民税・相続税・自動車税および軽自動車税の優遇を受けられます。
例えば所得税は障害者控除として27万円(特別障害者の場合は40万円)が所得金額から控除されます。
参照:障害者と税
その他の割引サービス一覧
療育手帳を持っていると、公共交通機関が無料になったり割引になるサービスを受けられます。
公共交通機関の割引
例えばJRでは乗車券が5割引きになり、条件を満たせば介護者も同様の割引を受けることができます。
それ以外の鉄道各社や航空会社、タクシーやバス等もそれぞれに割引を受けられる場合がありますので、ご利用の際は各社にお問い合わせください。
ちなみに東京都では、療育手帳を持つ都民の方は、都営地下鉄全線、都バス(江東01を除く。)、都電、日暮里・舎人ライナーの乗車が無料になる「無料乗車券」を発行してもらえます。
参照:都営交通無料乗車券
映画館や美術館等の割引
映画館の入場料が割引になったり、美術館や動物園等の公共施設が無料になるサービスがあります。
自治体によっても変わりますので、ご利用の際は施設にお問い合わせください。
公共料金や電話料金の割引
NHKの受信料やNTT料金、携帯電話料金の割引を受けることができます。
また、高速道路や有料道路が割引になる場合があります。
療育手帳の申請方法
療育手帳の制度は自治体によって異なるため、申請方法や判定の基準もさまざまです。
おおまかな申請の流れは以下のとおりとなります。
※東京都の場合(当センターとは心身障害者福祉センターになります。)
参照:愛の手帳について
さいごに
療育手帳は知的障害の方にとって、いろいろな支援やサービスを受けられたり、就労支援を受けられたりと心強い手帳になります。
しかし、国の法律で定められておらず自治体によって申請方法や名称が異なる等わかりにくい制度となります。
知的障害があり、療育手帳の取得を考えていらっしゃる場合には、ぜひお住まいの自治体にご相談ください。