受給者の死亡後でも障害年金は請求できる?死亡後の障害年金と遺族年金も併せて解説

障害年金を受け取れる方が未請求のうちに亡くなった場合、「もう障害年金は請求できない…」と諦めてしまう遺族の方も多いのではないでしょうか?

しかし、一定の要件を満たせば、障害年金の受給者が亡くなったあとからでも、障害年金を受給できる可能性があります。

そこで今回は、

  • 受給者が亡くなった場合の障害年金について
  • 未支給年金の請求方法
  • 遺族年金

など、受給者の死亡後の気になる障害年金について解説します。

障害年金は本人が死亡したあとでも受け取れる?

障害年金は、請求者本人が亡くなられたあとでも、受給できる可能性があります。

ただし、死亡後に障害年金を申請する場合は、通常の障害年金と同様に、以下の3つの要件を満たさなければなりません。

【障害年金の申請条件】

  • 初診日要件
    →初診日に国民年金または厚生年金に加入していること
  • 保険料納付要件
    初診日の前日において、前々月までの保険料を全被保険者期間の3分の2以上納付していること。または、65歳未満であれば、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
  • 障害状態該当要件
    →障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月を経過した日)において、障害等級に該当していること。

障害年金の受給条件とは?申請に必要な3つの条件と対象者

上記の要件を満たして請求が認められれば、障害認定日の翌月から請求者本人が死亡した月までの障害年金が遺族に「未支給年金」として支払われます。

また、障害年金の請求は、大きく分けて障害認定日請求事後重症請求の2種類があります。

障害認定日請求とは、障害認定日おいて障害等級に該当する程度の障害状態であるときに請求する方法です。

障害認定日以降3ヶ月以内の状態について記載された診断書が必須で、障害認定日の翌月分から年金を受給することが可能です。

一方、事後重症請求とは、障害認定日には障害の状態には該当しなかった方が、その後悪化したときに行う請求方法です。

請求できるのは、65歳に達する日の前日までであり、支給開始は請求日の翌月から年金を受給できます。

生前であれば事後重症請求はできますが、死亡後は事後重症請求はできません。したがって、死亡後に障害年金を請求する場合は、障害認定日請求のみとなります。

なお、未支給年金の請求はいつでもできますが、時効があるため最大5年間分までの期間しか受給できません。

そのため、亡くなられた請求者が障害年金に該当していた場合は、早めに未支給年金の手続きを進めましょう。

障害年金の「未支給年金」の請求方法

ここからは、障害年金の未支給年金の請求方法について解説します。

請求先

障害年金の未支給年金の請求先は、お住いの市区町村窓口または年金事務所になります。

請求できる人

未支給年金を請求できる人は、亡くなった方と当時(死亡時)に生計を同じくしていた次の方です。

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹
  5. その他①〜⑥以外の3親等以内の親族

1〜7は、未支給年金を受給できる順位で、先順位者がいる場合は、後順位者は受け取ることはできません。

なお、「生計を同じく」とは、必ずしも同居が条件ではなく、別居中でも亡くなった方から経済的な援助を受けていたり、定期的な連絡や訪問する関係にあったりすれば支給対象となります。

手続きに必要な書類

未支給年金の手続きに必要な書類は、以下の通りです。

  • 未支給年金、未支給年金請求書
  • 亡くなった方の年金証書
  • 預金通帳(請求者)
  • 亡くなった方との続柄が確認できる書類(住民票)
  • 戸籍謄本(請求者と死亡者の関係が確認できるもの)
  • 本人確認書類(運転免許証など)

詳しくは、日本年金機構のこちらのページをご参考ください。

遺族年金の受給につながる可能性がある

障害年金の受給者が亡くなられたあと、障害年金を請求することで「遺族年金」の受給につながる可能性があります。

遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれ受給条件が異なります。

最後に、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給条件について解説します。

遺族基礎年金の受給条件

遺族基礎年金を受け取るためには、次の要件のうちいずれかの要件を満たす必要があります。

【遺族基礎年金の受給要件】

  1. 国民年金の加入者であること
  2. 国民年金の加入していた方で日本国内に住所があり、年齢が60歳以上65未満であること
  3. 老齢基礎年金を受給中
  4. 受給資格期間(年金を受け取るために必要な被保険者期間)が25年以上あること

また、1と2の要件を満たす人は、以下の保険料納付要件も満たす必要があります。

【保険料納付要件】

  • 死亡日の前日において、亡くなった日の2ヶ月前までの被保険者期間のうち、保険料納付期間と保険料免除期間をあわせて3分の2以上であること
  • 亡くなった日の2ヶ月前までの1年間に保険料支払いを滞納していないこと

遺族基礎年金を受給できる遺族の対象者は、亡くなった人によって生計を維持されていた「子がいる配偶者」と「子」です。

ここでいう、「子」とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子どものことを言います。

なお、障害等級が1級、2級の状態にある場合は、20歳未満まで支給対象となります。

このように、遺族基礎年金は、対象となる子どもがいない場合は、受け取ることができません。

遺族厚生年金の受給条件

遺族厚生年金の受給条件は、次の要件のうちいずれかの要件を満たさなければなりません。

【遺族厚生年金の受給要件】

  1. 厚生年金の加入者が死亡したとき
  2. 厚生年金加入中に初診日がある傷病で、初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 障害等級1級または2級の障害厚生年金をもらっている人が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金をもらっている人や老齢厚生年金の受給資格期間(25年以上)を満たしている人が死亡したとき

また、上記の1もしくは、2の要件に該当する場合、遺族基礎年金と同様に上述した保険料納付要件を満たすことが必要です。

なお、障害厚生年金の3級に該当する場合、亡くなった原因が、障害の原因と同じである場合に限り、遺族厚生年金が支給される可能性があります。

遺族厚生年金の受給対象者は、亡くなった人によって生計を維持されていた家族で、受給できる順位は次のように定められています。

【遺族厚生年金の受給対象者】

  1. 子のある妻、子のある55歳以上の夫(妻は年齢制限なし)、または子
  2. 子のいない妻、または子のない55歳以上の夫(妻は年齢制限なし、ただし30歳未満の妻は5年間の有期給付)
  3. 55歳以上の父母
  4. 55歳以上の祖父母

上記の通り、遺族基礎年金と比べて、遺族厚生年金は孫から祖父母までと受給対象が広いことが特徴です。

なお、55歳以上の夫、父母、祖父母の場合、受給開始は60歳からとなります。

このように、死亡後に障害年金を請求することで、遺族厚生年金にもつながる可能性もあるため、悩んでいる方は専門家の方に相談してみましょう。

遺族年金についてより詳しく知りたい方は、日本年金機構の遺族年金をご参考ください。

さいごに

今回は、死亡後の障害年金の請求方法や遺族年金の受給条件などについて解説しました。

障害年金は受給者が死亡した後でも、要件を満たせば遺族が受給することが可能です。

また、障害年金を請求することで、遺族年金の受給につながる可能性もあります。

ただし、障害年金の請求は最大で過去5年分までしか請求できないため、受給できる場合は早めに手続きを進めましょう。