障害者手帳の種類とは?申請条件や申請方法、取得するメリットを解説

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障害者手帳は、一定以上の障害のある人に交付され、税金の優遇を受けたり、支援サービスを受けやすくしたりするなど障害のある人の生活を支える大切な制度です。

しかし「障害者手帳って、どんな人がもらえるの?」「申請するのが難しそう」と思う人も少なくありません。

そこで今回は、障害者手帳の種類の詳細や各手帳の等級、手帳の申請方法などについて解説していきます。

この記事を読めば、障害者手帳について理解を深め、申請の準備までできるようになるので、ぜひお役立てください。

障害者手帳の種類とは?

障害者手帳とは、病気やけがを負い、障害によって自立が困難な人や日常生活の支援を必要とする人に対し、自治体から交付される手帳です。

障害者手帳の種類は「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があります。

3つの手帳の大まかな違いを下表にまとめました。

身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳療育手帳
対象となる人身体の機能に障害がある人
内部疾患がある人
うつ病や発達障害などの精神疾患がある人知的障害がある人
等級1級~6級
7級単独では手帳は交付されない
1級~3級
重度(A)
それ以外(B)
自治体により更に区分されることもある
所持者数4,842,344人
令和4年度福祉行政報告例
1,345,468人
令和4年度衛生行政報告例
1,249,939人
令和4年度福祉行政報告例
参考:障害者手帳|厚生労働省

それぞれの障害者手帳の詳細をみていきましょう。

なお、障害者手帳については下記の関連記事でも詳しく解説しています

サポート 障害者手帳とは【完全初心者向け】

身体障害者手帳とは?

身体障害者手帳とは、身体障害福祉法に基づき、身体障害のある人の自立や社会活動の参加を促し、支援することを目的とした制度です。

自治体により手帳のデザインや色が異なりますが、2019年よりカード化が認められ、手帳かカードを選択できるところもあります。

以下は、身体障害者手帳のカード化のイメージです。

身体障害者手帳のカード化
出典:障害者手帳のカード化について|厚生労働省

身体障害者手帳の詳細やカード化については、下記の関連記事でわかりやすくご紹介しています。

障害者手帳 身体障害者手帳とは?等級・メリットについても解説 障害者手帳のカード化によるメリット・デメリットや交付要件を解説

参考:身体障害者手帳について|東京都心身障害者福祉センター

身体障害者手帳をもらえる人とは?

身体障害者手帳を交付されるのは、以下の対象となる身体障害がある人です。

身体障害者手帳の対象となる障害
  • 視覚障害
  • 聴覚または平衡機能の障害
  • 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
  • 肢体不自由
  • 心臓、じん臓または呼吸器の機能障害
  • ぼうこう又は直腸の機能の障害
  • 小腸の機能障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害
  • 肝臓の機能障害

いずれの障害も一定以上で永続すること(その障害が将来にわたり回復する可能性が極めて低い状態)が身体障害者手帳交付の要件となっています。

参考:身体障害者手帳制度の概要|厚生労働省

身体障害者手帳の等級とは?

身体障害者手帳には1級から7級の等級があり、手帳を申請する際に障害の症状や生活の影響をみる審査が行われ、等級が認定されます。

等級は1級に近づくほど障害の程度が重く7級に近づくほど障害の程度が軽くなっていきます。

ただし、7級の障害は単独では身体障害者手帳の交付対象とはならず、7級の障害が2つ以上ある場合や、7級の障害と6級以上の障害がある場合に交付対象となります。

身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は、認定基準が違います。そのため、障害者手帳が2級だとしても、障害年金の等級も2級になるとは限りません。

身体障害者手帳の申請方法

身体障害者手帳の申請には、以下の4つの書類が必要です。

身体障害者手帳の申請に必要な書類
  • 申請書
  • 診断書
  • 本人確認ができるもの(マイナンバーカードや免許証)
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm)

身体障害者手帳の申請の流れは、次のようになります。

  • お住まいの市区町村役所の「障害福祉窓口」で申請書をもらいましょう。
  • 指定医に診断書を依頼します。
  • 必要書類がすべて用意できたら、お住まいの市区町村の「障害福祉窓口」で手帳を申請しましょう。

指定医とは、「身体障害者福祉法第15条の指定」を受けている医師のこと

身体障害者手帳は、市区町村の障害福祉担当窓口に申請書類を提出してから約1か月程度で交付されます。指定医に照会等が必要となる場合は、日数がかかることがあります。

障害年金を申請する予定のある人は診断書のコピーをとっておくことをおすすめします。


参考:身体障害者手帳について|東京都福祉局

精神障害者福祉保健福祉手帳とは?

精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患のある人に交付される手帳で精神保健福祉法に基づいた制度です。

精神障害者保健福祉手帳も身体障害者手帳と同様に自治体によりデザインや色等が違い、手帳かカードを選べる自治体もあります。

以下は、精神障害者保健福祉手帳のカード化のイメージです。

精神障害者保険福祉手帳カード型
出典:障害者手帳のカード化について|厚生労働省

精神障害者保健福祉手帳をもっと知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。

四葉のクローバー 精神障害者保健福祉手帳とは?申請方法まで徹底解説

精神障害者福祉保健福祉手帳をもらえる人とは?

精神障害者保健福祉手帳の取得条件としては、以下の2つの条件を満たしていることが必要です。

  • 何らかの精神障害が理由で、長期にわたって日常生活や社会生活に制約が生じている
  • その精神疾患での初診から6ヶ月以上経っている

精神障害者保健福祉手帳の対象となるのは、すべての精神疾患です。

以下に、代表的な精神疾患をまとめました。

精神障害者保健福祉手帳の対象となる代表的な精神疾患
  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコールの急性中毒またはその依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠如、多動性障害など)
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害など)

参考:障害者手帳・障害年金|こころの情報サイト

精神障害者保健福祉手帳の等級とは

精神障害者保健福祉手帳の等級は、障害の程度により1級から3級に区分されています。

大まかな認定基準を以下にまとめました。

障害等級生活における支障の程度
1級障害者本人だけでは日常生活を送ることが難しく、常時援助を必要とする状態
2級日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、または日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

精神障害者保健福祉手帳の1〜2級は、障害年金の認定基準とほぼ同じ基準となっており、3級は障害年金より対象が広くなっています。

障害年金を審査するときに精神障害者保健福祉手帳の等級はある程度参考になりますが、必ず同じ等級になるわけではありません。

参考:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について|厚生労働省

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳の申請には、以下の3つの書類が必要です。

精神障害者保健福祉手帳の申請に必要な書類
  • 申請書
  • 診断書
  • 本人の写真(縦4cm横3cm)

精神障害者保健福祉手帳を取得するには、初診日(初めて病院に行った日)から6か月経過していなければなりません。初診日から6か月経過したことを確認したのち、精神障害者保健福祉手帳の申請を以下のように進めましょう。

  • お住まいの市区町村役所の「障害福祉窓口」で申請書をもらいましょう。
  • 担当医に診断書を依頼します。
  • 本人の写真などの必要書類がすべて用意できたら、「障害福祉窓口」で手帳を申請しましょう。

なお、精神障害者保健福祉手帳の申請から手帳の取得までは2か月ほどかかります。

参考:精神障害者保健福祉手帳|東京都福祉局

療育手帳とは?

療育手帳とは、知的障害のある人が申請できる手帳で、支援や相談などの各種福祉サービスを受けやすくすることを目的としています。

療育手帳は、都道府県や政令指定都市などの各自治体が運用を決めているので、自治体によって支援内容や取得基準などが異なり、名称も地域によって変わります。

東京都や横浜市では療育手帳のことを「愛の手帳」といい、名古屋市や青森県では「愛護手帳」という名称で呼んでいます。

療育手帳で受けられるサービスや割引の詳しい内容については、お住まいの自治体の障害者福祉相談担当窓口などにお問い合わせください。

療育手帳をもらえる人とは?

療育手帳が交付されるのは「児童相談所」または「知的障害者更生相談所」において知的障害があると判断された人です。

また、発達障害がある人で知的障害も併発している場合も、療育手帳を取得することができます。

療育手帳は子どもの頃に取得することが多いですが、大人になってからも取得できます

例えば、「大人になってから知的障害があることが分かった」「以前から知的障害の症状があったけれど療育手帳を申請していなかった」といった場合は、大人になってからも療育手帳の申請が可能です。

療育手帳の等級とは?

療育手帳の等級は障害の程度によって分かれて、療育手帳の交付後に受けられるサービス内容も変わります。

等級区分は自治体によって異なり、東京では1度(最重度)〜4度(軽度)といったように数字で区分され、横浜市ではA1(最重度)〜B2(軽度)のアルファベットで区分されています。

下表は、厚生労働省の判定基準を大まかにまとめたものです。

等級区分生活における支障の程度
A判定知能指数がおおむね35以下であって、介助を必要とする。
もしくは50以下で盲、ろうあ、肢体不自由等がある。
B判定重度A以外のもの

等級は主にIQの「数値」と「介助のレベル」で区分されます。

なお、自治体によっては、独自に重度(A)とそれ以外(B)を細分化しているところもあります。

参考:療育手帳の概要|厚生労働省

参考:判定について(愛の手帳Q&A)|東京都心身障害者福祉センター

参考:愛の手帳 (療育手帳) の交付|横浜市

療育手帳の申請方法

療育手帳は各自治体で運営しているので、申請方法も自治体ごとに異なります。

この記事では、療育手帳の一般的な申請の流れをご紹介します。

  • 自治体の障害福祉担当窓口などへ相談し、申請書類や必要な手続きを確認します。
  • 児童相談所や知的障害者更生相談所で判定を受ける指定医から診断書を取得しましょう。
  • 申請書類や診断書、顔写真などを窓口へ提出しましょう。

療育手帳の判定機関は申請者の年齢により次のようになります。

申請者の年齢判定機関
18歳未満児童相談所
18歳以上知的障害者更生相談所

療育手帳を申請してから発行までは2か月ほど要します。

療育手帳については、下記の関連記事でもさらに詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

カオスなデスク 療育手帳とは?対象基準やメリットまで徹底解説

障害者手帳で得られる3つのメリット

障害者手帳を受けるといろいろなサービスが受けられるようになりますが、代表的なメリットを3つ紹介していきます。

一つずつみていきましょう。

障害者雇用で働ける

障害者雇用枠とは、障害を配慮した雇用条件で企業や公的機関に応募できる雇用枠です。

障害があっても一般採用での応募は可能ですが、障害者手帳を持つことで障害者雇用枠にも応募できるため、就職活動の幅が広がります。

また、障害者雇用枠での就職は一般採用よりも入社しやすい傾向があり、入社後も職場において障害への配慮を求めやすくなる点も大きなメリットといえるでしょう。

所得税・住民税の軽減

障害者手帳を交付されると「所得税」と「住民税」が優遇されます。

障害者控除には、以下の3種類があり、障害者手帳の等級によって控除額が変わります。

  • 障害者控除
  • 特別障害者控除
  • 同居特別障害者控除

また、所得税、住民税のほかに、相続税や贈与税も障害者控除が受けられます。

障害者控除については、以下の記事で詳しくご紹介していますのでご一読ください。

障害年金は税金がかかる?障害年金を受給時の税金や扶養について

参考:障害者と税|国税庁

参考:No.1160 障害者控除|国税庁

交通機関の割引を受けられる

障害者手帳を持つことで公共交通機関の割引が適用されます。

いくつかの交通機関の割引額と条件を以下にまとめました。

交通機関割引条件
JR第1種障害者と介護者が一緒に利用する場合、運賃および普通急行が割引(5割引)で購入できる
高速バス会社によって運賃が5割引
タクシー身体障害者手帳・療育手帳があれば乗車料金の10%が割引

障害者手帳の種類や自治体によって、割引条件や内容が異なるため、利用する前にご確認ください。

このほかにも障害者手帳で受けられるサービスについては、関連記事で詳しくご紹介しています。

メリーゴーランド 障害者手帳で受けられるお得な割引サービス7つ

参考:お身体の不自由なお客さまへ|JR東日本

参考:障がいをお持ちのお客様へ|エアポートリムジン

参考:障がい者割引について|日本交通株式会社

障害者手帳の種類|よくある質問

障害者手帳について寄せられる質問にお答えします。

障害者手帳を持つデメリットはありますか?

障害者手帳を持つデメリットとしては、即時発行ができないことが挙げられます。

書類の審査などで発行までに2か月ほど要するので、障害者手帳を利用する予定のある人は早めに手続きをしましょう。

また、障害者手帳を取得すると「自分の障害を他人に知られのではないか」と不安に思う声も聞かれますが、障害手帳を持っていても勤務先で提示する必要はなく、日常生活でも自分から見せない限り、他人に知られる機会はありません。

障害者手帳がカードになると聞きましたが、紙の手帳はなくなるのでしょうか?

これまで交付されてきた紙の障害者手帳が、なくなることはありません。

2019年から障害手帳のカード化が認められましたが、カード化は義務ではないので、手帳を持つ人の希望により紙かカードを選ぶことができます。

なお、障害者手帳のカード化はすべての自治体で行っているわけではなく、東京都や神奈川県、仙台市など一部の地域で採用されています。

障害者手帳を申請するときにマイナンバーカードは必要ですか?

障害者手帳の申請にマイナンバーカードは必須ではありません。

ただし、役所等での手続きの際に本人確認のためマイナンバーカードの提示を求められることがあります。マイナンバーカードをお持ちの方は、障害者手帳申請の手続きをするときには忘れずに持参するほうがいいでしょう。

なお、マイナンバーカードと障害者手帳を紐づけすることもできます。詳しい内容は厚生労働省が公開している障害者手帳に関するマイナンバー制度の情報連携についてでご確認ください。

まとめ

障害者手帳の種類は「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つです。

障害者手帳を持つと障害者雇用枠での応募ができたり、税金や公共交通料金が優遇されたりするなどのメリットが多くあります。

また、障害者手帳を持っていても自分から提示しない限り、自分の障害が他人に知られることはありません。

障害の種類や重さによって、申請できる手帳の種類が変わってくるので申請の際は注意が必要しましょう。