障害年金の申請で準備する書類は数多くあり、そのなかの一つに「受診状況等証明書」の提出があります。
受診状況等証明書は、障害の原因となった病気やけがの初診日を証明する書類ですが、聞いたことがないという人も多いでしょう。
この記事では、受診状況等証明書の重要性や役割をわかりやすくお伝えします。
「受診状況等証明書とはどんな書類?」「どこで発行してもらえるの?」「自分で書いてもいいの?」など疑問に思っていることがあれば、この記事で解決できるのでぜひ最後までお読みください。
目次
受診状況等証明書とは?
受診状況等証明書とは、障害年金の申請に必要な書類の一つで、初診日を客観的に証明する役割を担っています。
受診状況等証明書は、日本年金機構のホームページの受診状況等証明書を提出するときからダウンロードできるほか、年金事務所や街角の年金相談センターで受け取ることもできます。
なぜ受診状況等証明書が必要なの?
受診状況等証明書は、初めて病気やけがで病院を受診した日(初診日)を客観的に示す重要な証拠として、年金請求書に添付することが求められています。
障害年金の申請には、3つの受給要件を満たす必要があり、初診日が証明できれば受給要件を満たすかを判断できます。
つまり「初診日」を証明できなければ、障害年金を受け取れる権利がないということです。
障害年金の3つの受給要件と初診日の関係についてみていきましょう。
①初診日要件:初診日に年金制度の被保険者であること
どの種類の年金を受け取れるかは、初診日に加入している年金制度で判断されますが、障害基礎年金と障害厚生年金では支給される年金額が大きく異なります。
②保険料納付要件:保険料が一定期間納付されていること
保険料の納付状況は初診日の前日時点で見るため、初診日が特定できないと保険料納付要件をクリアしているかを判断できません。
③障害状態要件:障害認定日に、障害の状態が障害等級表に定める状態にあること
障害認定日は、原則として「初診日から1年6か月を経過した日」なので、初診日の特定ができなければ障害認定日もわかりません。
このように「初診日」は、障害年金が出るか出ないかを左右するとても重要な日付であり、「受診状況等証明書」は初診日を客観的に立証するために必要だといえるでしょう。
なお、障害年金の受給要件や初診日については、下記の関連記事でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
障害年金における「初診日」とは?初診日の重要性や証明方法も併せて解説 障害年金の受給条件とは?申請に必要な3つの条件と対象者受診状況等証明書には、どんな内容が記載されているの?
受診状況等証明書には初診年月日のほか、以下のようなことが記載されます。
- 氏名
- 傷病名
- 発病年月日
- 初診年月日
- 終診年月日
- 初診から終診までの治療の内容 など
なお、受診状況等証明書は、初診当時のカルテをもとに医師が作成するもので、年金を請求する人やそのご家族、代理人等は記載できません。
受診状況等証明書と診断書との違いは?
ふたつの書類の違いを下表にまとめます。
診断書 | 受診状況等証明書 |
---|---|
・現在の病気やけがの状態、治療内容などが記載され、障害の状態が障害等級にあてはまるかの判断に用いる | ・初診日を証明する目的で作成され、初診時の治療内容などが記載される |
受診状況等証明書は「障害の原因となった病気やけがの始まりを証明している」といえるでしょう。
なお、診断書に書かれた内容は障害年金の認定や障害等級の決定に大きく関わりますが、受診状況等証明書の記載内容が障害等級の審査に影響することはありません。
受診状況等証明書を作成できる医療機関とは?
受診状況等証明書を記載できるのは、障害の原因となった病気やけがで初めて受診した医療機関です。
何度か転院して複数の医療機関に通院していた場合、一番初めに診療を受けた医療機関に証明書の作成を依頼します。
例えば、頭痛と吐き気でかかりつけ医を受診したところ回復せず、メンタルクリニックへ転院したケースでみてみましょう。
かかりつけ医からメンタルクリニックへの転院をすすめられ、かかりつけ医の作成した紹介状を持参して転院し、メンタルクリニックでの診療の結果「うつ病」から来る体調不良だと診断された場合は、かかりつけ医が証明書を作成できる医療機関です。
うつ病と診断したメンタルクリニックでは作成できないので、注意しましょう。
受診状況等証明書がいらないケースとは?
受診状況等証明書が不要となる2つのケースをご紹介します。
生まれつきの疾患の場合
先天的な知的障害や、完全脱臼したまま生育した先天性股関節脱臼は、「出生日が初診日」とされており、受診状況等証明書の提出は必要ありません。
ただし、出生後の疾患やけが、高熱、栄養失調などが原因で知的障害となった場合は、年金請求の際には初診日の証明が必要となるので、受診状況等証明書を添付しましょう。
初診の医療機関で診断書を作成する場合
初診の医療機関が年金請求書に添付する診断書を作成する場合は、診断書によって初診日を証明することができるため、受診状況等証明書は必要ありません。
下図は精神障害の診断書の一部を抜粋したものです。
このように、診断書に「初めて医師の診療を受けた日」の欄が設けられており、こちらに記載された年月日で初診日を確認できるため、受診状況等証明書は不要です。
この取扱いは初診から転院することなく、ずっと同じ医療機関に通院している場合や、A病院→B病院→A病院のように最初の医療機関に戻る場合等が該当します。
受診状況等証明書を書いてもらえないときは?
療養期間が長期にわたる場合、初診の医療機関が閉院していたり、初診の医療機関でカルテが保存されていなかったりして、受診状況等証明書の作成ができないことがあります。
そこで、初診の医療機関で受診状況等証明書を発行してもらえないときの対処方法を3つご紹介します。
順番に見ていきましょう。
転院先の医療機関に作成を依頼する
初診の医療機関から転院している場合は、初診以降に受診した医療機関で受診状況等証明書を作成してもらうという方法があります。
具体的な手順としては、2番目の医療機関に診療記録がなければ3番目にといったように順番に問い合わせしていき、診療記録が残っている一番古い医療機関で受診状況等証明書に記載してもらいます。
実際に問い合わせをする前の準備として、ご自身の通院歴を書き出しておきましょう。
昔の医療機関や調剤薬局の領収書、診察券などを探してみたり、昔の家計簿や日記を見直してみたりして記憶を整理し、時系列にメモしておくとスムーズに問い合わせができます。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成する
順番に転院した医療機関に問い合わせても証明書を記載してもらえないときは、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成します。
また、初診の医療機関で受診状況等証明書作成できず、転院先の医療機関で証明書を作成した場合も「受診状況等証明書が添付できない申立書」の添付が必要です。
「この書類で初診の証明に代えられる」と思っている人も多いようですが、「受診状況等証明書が添付できない申立書のみ」で初診日が認定されることはありません。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出する際には、本人の申し立てる初診日を裏付けるために、次のような資料を添付します。
引用:受診状況等証明書が添付できない申立書|日本年金機構
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子健康手帳
- 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
- お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券(可能な限り診察日や診療科がわかるもの)
- 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
- 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
- 第三者証明
このほかにも、紹介状やカルテのコピー、診療や治療経過を要約した医療情報サマリー、電子カルテの記録などを添付することもできます。
上記のような資料の整合性を考慮に入れながら、日本年金機構が総合的に初診日を認定します。
受診状況等証明書がない障害年金申請はハードルが高く、ご自身やご家族だけでは書類を準備するのが難しいケースが多いです。
書類作成に行き詰ったら、障害年金専門の社労士へ相談することをおすすめします。
第三者に初診日の証明を依頼する
受診状況等証明書を用意できない場合の対策の3つ目は「第三者証明を依頼する」ことです。
第三者証明の正式名称は「初診日に関する第三者からの申立書」といい、その名のとおり第三者に医療機関で初めて診察を受けたことを証言してもらう役割があります。
第三者証明を作成できるのは三親等以内の親族以外の人で、友人や職場の同僚などが該当するほか、四親等となる「いとこ」も記載できます。
第三者証明は、原則として2名(2枚)以上作成することが必要です。
ただし、初診日頃に受診していた医療機関の医師や、看護師などの医療従事者による第三者証明であれば、1枚(1名)の提出でも認められます。
なお、第三者証明を提出すれば必ず初診日として認められるわけではなく、日本年金機構が資料の整合性を見ながら総合的に判断します。
第三者証明の詳細や具体的な書き方は、関連記事で解説していますのでご覧ください。
障害年金の第三者証明とは?家族や医師が書くもの?書き方もわかりやすくご紹介!参考:初診日に関する第三者からの申立書を提出するとき|日本年金機構
受診状況等証明書と障害年金|よくある質問
受診状況等証明書について寄せられる質問に回答していきます。
受診状況等証明書に有効期限はありますか?
受診状況等証明書に有効期限はありません。
受診状況等証明書は初診日を確認する資料で、過去の事実を証明するものです。
過去の事実は変わらないため、有効期限は設定されていません。
受診状況等証明書の発行費用はいくらですか?
受診状況等証明書の作成費用(文書料)は、全国一律で決まっているものではなく、医療機関ごとに価格を設定しています。
目安としては、3,000円~5,000円ほどを設定しているところが多いようです。
正確な費用は、受診状況等証明書の作成を依頼する医療機関へご確認ください。
まとめ
障害年金を受給するためには、「受診状況等証明書」という書類で「初診日」を証明することが必要です。
受診状況等証明書は、障害の原因となった病気やけがで、初めて医療機関にかかった日を客観的に示し、障害年金の支給要件を満たしているかを判断する際に重要な役割を果たします。
受診状況等証明書のみならず、障害年金の申請に必要な書類の作成は決して簡単なものではありません。
障害年金の申請準備で悩むときは、障害年金専門の社労士のサポートを受け、スムーズに手続きを進めることも視野に入れてみてはいかがでしょうか。