障害年金とは、病気やケガなどで働けなくなったり、日常生活が不自由になった場合にもらうことができる年金です。
病気やケガの状態が障害の状態であると認定されると年金が受け取れ、場合によっては働きながらもらうこともできます。
しかし、障害年金をもらうには満たさなければならない条件がいくつかあり、申請に必要な書類も多く手続きが複雑です。
ここでは障害年金の種類や受け取るための条件、金額などの基本的な内容をわかりやすく解説いたします。
目次
障害年金とは
障害年金とは、日本の公的年金のひとつであり、公的年金制度に加入している方の全員が対象です。
- 公的年金には「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」がある
- 障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」がある
公的年金とは「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」の3つ
日本に住む20歳以上60歳未満の人は、公的年金制度に必ず加入します。
年金というと老後の生活のために受け取るものだと思いがちですが、実は3つの目的のために公的年金制度に加入しているのです。
【老齢年金】高齢(原則65歳以降)になり、働けなくなったとき
【遺族年金】一家の働き手が亡くなったとき
【障害年金】病気やケガで障害が残り、働けなくなったとき(または仕事が制限されるとき)
年金制度は、「自分が働けなくなったり家族が亡くなって収入がなくなったりした場合の生活保障」という位置づけになっています。
参考までに、各年金の受給者数の内訳は次のようになっています。
【老齢年金】→ 約4,019万人
【遺族年金】→ 約635万人
【障害年金】→ 約208万人
※ 平成27年度末の人数
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つがある
年金制度は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金ともいいます)」と、会社員や公務員の人が加入する「厚生年金」の2階建て構造になっています。
つまり会社員や公務員の人は、2つの年金制度に加入していることになります。
年金制度は2階建て構造になっています。
※平成28年度末の人数は次のとおり。
自営業・学生・無職(第1号被保険者)⇒ 約1,575万人
会社員・公務員など(第2号被保険者)⇒ 約4,264万人
会社員の配偶者など(第3号被保険者)⇒ 約889万人
障害年金は、初診日に加入していた年金制度が国民年金であれば「障害基礎年金」、厚生年金であれば「障害厚生年金」を請求します。
障害基礎年金は1級・2級があり、年金額は定額です。
障害厚生年金は1級・2級・3級(障害手当金もあり)があり、加入期間や支払った保険料により異なります。
ですから、いつ、どの年金制度に加入していたかを調べることがとても大切になります。
- 障害年金は、20歳以上で病気やケガで働けない状態であればもらうことができる
- 障害の状態が続くかぎり障害年金をもらうことができるが、原則65歳までに請求する(※例外あり)。
- 初診日が国民年金なら障害基礎年金、初診日が厚生年金なら障害厚生年金
- 障害基礎年金と障害厚生年金では、年金額が異なる
障害年金が受給可能な年齢について
障害年金は20歳になってから請求することができ、その障害の程度が障害年金で定める基準に該当している間はずっと受給することができます。
原則としては65歳の誕生日の前日までに請求する必要があり、65歳以降に障害年金の申請ができるケースはとても限定的です。
障害年金を受給するための3要件
障害年金を受給するためには、まずは3つの要件を満たす必要があります。
その3つをそれぞれ見ていきましょう。
- 初診日に国民年金か厚生年金の被保険者であること(例外あり)
- 保険料納付要件は、初診日の前日時点でみること
- 障害年金がもらえる障害の程度かどうかは、基準で定められている
【 加入要件 】
具体的には、初診日が以下の期間内にあることが必要です。
- 国民年金の被保険者期間
- 厚生年金の被保険者期間
「初診日」とは、障害の原因となった傷病(病気やケガ)につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
「診断を受けた病院を初めて受診した日」が初診日になるのではなく、あくまでも障害の原因となった傷病の症状で初めて受診した病院の初診日が、障害年金の初診日となりますので、注意が必要です。
初診日の例
というような場合、3番目の病院の初診日を障害年金の初診日と考える方がいらっしゃいますが、障害年金の請求では1番目の病院の初診日を障害年金の初診日と考えます。
- 20歳前に初診日がある場合(厚生年金の被保険者でないとき)
- 日本に住んでいる60歳以上65歳未満の年金未加入期間
【 保険料納付要件 】
保険料の納付要件は、初診日の前日においてどの程度納付できているかで判断します。
①全体の3分の2以上を納付していること(3分の2要件)
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」を合わせた期間が3分の2以上あること。
⇒未納期間が被保険者期間の3分の1未満であれば大丈夫です。
納付猶予+納付済+免除の月数が全期間の3分の2以上
② 直近1年間に未納がないこと(直近1年要件)
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
※初診日において65歳未満であり、初診日が2026年4月1日以前にあること。
実際に保険料納付要件を確認する場合は、まず直近1年要件を満たしているかを確認し、もし満たしていなければ次に3分の2要件を満たしているかを確認します。
【 障害程度要件 】
障害認定日に障害の状態であること
「障害認定日」とは、障害の程度の認定をする日のことです。
初診日から1年6か月を経過した日、またはそれよりも早く傷病治った場合(症状が固定し、治療の効果が期待できない状態を含む)はその日になります。
現在は障害の状態であること
障害認定日にはまだ障害年金の基準に定める程度の障害状態ではなかったが、その後症状が悪化して障害の状態になった場合、今の時期から請求することになります。
障害認定基準とは
障害年金の基準とは「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」のことで、障害の部位や病気ごとに、障害等級の1~3級および障害手当金に該当する具体的な程度が書かれており、この基準をもとに判断します。
おおまかに、1級と2級は日常生活の支障や制限、3級は労働の支障や制限をもとに区分されています。
- 障害年金をもらうには、3つの要件すべてを満たさなければならない
- 保険料納付要件は、「直近1年要件」か「3分の2要件」のどちらかを満たせばよい
- 未納が多く保険料納付要件を満たせない場合、初診日後に保険料を納付することはできない
- 障害年金の等級と障害者手帳の等級とは関連がない
障害年金で受給できる金額(令和6年度)
障害年金で受給できる年金額は、障害基礎年金か障害厚生年金かによって異なり、また等級によっても変わります。
障害基礎年金は定額になり、2級は816,000円(令和6年度)、1級は2級の障害基礎年金の額の1.25倍になり、1,020,000円です。
障害厚生年金は、お給料の額や働いていた年数によって人それぞれ異なります。
障害の程度 | 年金・手当金の額 | |
障害厚生年金 | 障害基礎年金 | |
1級 | 報酬比例の年金額×1.25+(配偶者加給年金額234,800円) | 1,020,000円 |
2級 | 報酬比例の年金額+(配偶者加給年金額234,800円) | 816,000円 |
3級 | 報酬比例の年金額 612,000円に満たないときは612,000円 |
障害手当金 (一時金) |
報酬比例の年金額×2 1,224,000円に満たないときは1,224,000円 |
詳しい計算方法や加算額については以下の記事で解説しておりますので、ぜひご覧ください。
障害年金がもらえる病気やケガとは
障害年金は病名を問わず、障害年金で言う障害の状態であると認められれば受給することができます。
また、よく障害者手帳を持っていないと障害年金がもらえないと誤解をされますが、障害者手帳の有無も関係がありません。
そのため、障害者手帳を持っていなくとも障害年金を受給することができます。
具体的にどんな病気やケガで障害年金をもらうことができるのかを下記の記事で解説しておりますので、ご興味がございましたらご覧ください。
障害年金を請求できる時期や種類
障害年金は請求できる時期が法律で決まっており、以下の2つの時期になります。
- 初診日から1年6か月経過した日
- 現在(申請をした日)
①を障害認定日請求、②を事後重症請求と言います。
①の障害認定日請求のうち、障害認定日から1年以上経って申請をすることを一般的に「遡及(そきゅう)する」と言い、「遡及請求」と言われることが多いです。
障害年金の請求方法よって受給できる金額や必要な書類も変わり、請求方法を理解することはとても重要です。
以下の記事で事後重症請求と遡及請求について詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
障害者手帳について
障害者手帳とは、障害を持つ方が取得するとさまざまな福祉サービスを受けられたり、税金や公共料金の割引を優遇を受けられたりする手帳になります。
障害の種類によって「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」のように3種類の手帳があります。
障害年金を受給しながら障害者手帳を持つ方はとても多いです。
以下の記事で3種類の障害者手帳とそれぞれの申請方法についてわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
さいごに
障害年金は、受給するための要件を満たさなければ受給できず、申請手続も煩雑だと思われがちです。
しかし、病気やケガで障害を持つ方にとっては、2ヶ月に1度の年金が振り込まれることは経済的な安心感につながることでしょう。
障害年金についてわからないことやお悩みがございましたら、ご遠慮なく社労士にご相談くださいませ。
きっと障害年金受給への第一歩を踏み出すことができると思います。