障害年金の診断書について徹底解説【完全初心者向け】

問診票

障害年金の申請を行う際には、いくつかの必要書類を提出しなければなりません。

そのなかでも、医師に出してもらう”診断書”は受給を左右する重要な書類です。「診断書の内容次第で受給できるかどうかが決まる」と言っても過言ではありません。

そこで今回は、障害年金と診断書の関係性や、診断書を準備する際の注意点などについて解説していきます。

書類準備で失敗しないポイントをしっかり把握しておきましょう。

障害年金における診断書の重要性

まずは、障害年金における診断書の重要性を確認しておきましょう。

障害年金の支給判定は書類のみで行われており、請求する際には以下の書類が必要です。

  • 年金請求書
  • 本人確認書類(戸籍謄本や住民票など)
  • 医師の診断書
  • 受診状況等証明書
  • 病歴・就労状況等申立書 等

参照:障害基礎年金を受けられるとき 障害厚生年金を受けられるとき

このなかでも受給を大きく左右するのが、主治医に書いてもらう「医師の診断書」です。

この診断書の内容次第で受給の可否や障害等級が決定されるため、診断書は障害年金の請求において非常に重要な位置づけといえるでしょう。

ただし、診断書の項目のなかには「障害によって日常生活にどんな支障が出ているのか」「仕事上の制限」などを記載する項目もあり、これらは普段患者と暮らしていない医師にはわかりません。

そういった項目を医師に正しく評価してもらうには、患者自らが障害の状態を正確に把握してもらうための材料を渡す必要があります。

たとえば、ご自身の日常生活の状況や仕事のことをメモにまとめて、それを医師に渡しておくのもよいでしょう。

このように自分自身の障害に関して積極的に情報提供を行い、正しく評価された診断書を書いてもらうことが年金請求の大切な第一歩です。

障害年金の診断書は8種類

障害年金の診断書様式は、以下の8種類があります。

どの診断書を使用するかについては、傷病名ではなく症状(=実際にどの部位や状態に不自由があるのか)で決まります。

この判断を間違ってしまうと、「障害等級の状態に該当しない」と判断され不支給となってしまう場合もあるので注意しましょう。

診断書の有効期限は?

原則として、障害年金の診断書は障害認定日以降3ヶ月以内の診断書の提出が必要です。

しかし、請求方法(請求のタイミング)によっては有効期限が異なる場合や、診断書が2枚必要な場合もあります。

そこでここからは、請求方法ごとに診断書の有効期限や必要となる診断書の枚数などについて解説します。

障害認定日請求の場合

障害認定日請求の場合は、以下のように請求する期間によって有効期限が変わります。

  1. 障害認定日から1年以内に請求する「本来請求」
  2. 障害認定日から1年を過ぎて請求する遡及(そきゅう)請求」

1つずつ解説していきます。

1.障害認定日から1年以内に請求する「本来請求」

本来請求の場合は、障害認定日以降3ヶ月以内の現症の診断書1枚の提出が義務付けられています。

しかし、何かしらの理由で3ヶ月以内の診断書が用意できない場合は、症状が悪化した場合に請求する「事後重症請求」を行うことになります。

2.障害認定日から1年を過ぎて請求する「遡求請求」

遡及請求とは、障害認定日の時点で何らかの理由で請求ができなかった場合に、障害認定日から1年以上経過した後で障害認定日時点にさかのぼって請求する方法です。

ただし、さかのぼれる期間は、請求の時点から最大5年間です。

診断書は以下の2枚が必要になります。

  • 障害認定日から3か月以内の診断書
  • 請求日以前3か月以内の現症の診断書

事後重症請求の場合

事後重症請求とは、障害認定日より後になって症状が重くなったときに障害年金を請求することです。

何かしらの理由で障害認定日以後3ヵ月以内の診断書を書いてもらえなかったなどの場合、事後重症請求を行えます。

事後重症請求の場合、請求日以前3ヶ月以内の症状を記載された診断書1枚が必要になります。

初めて1級、2級による請求の場合

初めて1級・2級による請求とは、3級以下の障害がある方をはじめ、障害等級2級に該当しない程度の障害があった方に新たに別の障害が生じ、初めて2級以上の等級に該当する場合に請求できる障害年金です。

65歳の誕生日の前々日までの請求が可能です。

必要な診断書は以下の2つです。

  • 前発障害
  • 基準障害(後発障害)

前発障害と基準障害ごとに請求日以前3か月以内の診断書を1枚ずつ、合計2枚が必要です。

20歳前傷病による障害基礎年金の場合

20歳前傷病による障害基礎年金とは、1級または2級の障害の状態にある方や、若いときの事故などで20歳前に初診日がある方に適用される障害年金のことです。

請求の有効期限は以下のようになります。

  • 本来請求→障害認定日の前後3か月以内(6か月間)の診断書1枚
  • 遡及請求→請求日以前3か月以内の請求書1枚+障害認定日の前後3か月以内の診断書1枚

遡求請求の場合のみ、2枚必要となるため注意しましょう。

また、何らかの理由で上記の診断書が用意できない場合は、症状が悪化した場合に請求できる「事後重症請求」が可能です。

診断書を用意する際のポイント

さいごに、診断書を用意する際の具体的なポイントについて説明します。

初診日を正しく記入してもらう

初診日を正しく記入してもらうことは、障害年金の種類を判定するための大切なポイントです。

なぜなら、初診日に加入していた年金が国民年金なのか、厚生年金なのかによってもらえる障害年金の種類が変わるからです。

初診日に加入していたのが国民年金であれば、受け取れるのは「障害基礎年金」のみとなります。

一方、初診日に厚生年金に加入していれば、障害基礎年金に加えて「障害厚生年金」の上乗せがあります。

年金手帳と電卓 障害基礎年金と障害厚生年金の違いについて

このように初診日が正確に特定できなければ、もらえる年金の種類も決まりません。

また、障害年金では、その傷病について「医師または歯科医師に初めて診てもらった日」が初診日になる点に注意しましょう。

例)うつ病で通院していたが、その後別の病院の検査で発達障害と診断された。
→うつ病で通院していた医療機関が初診日となる。

このように初診の医療機関と現在の医療機関が異なる場合は、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらう必要があります。

受診状況等証明書とは

受診状況等証明書とは、受診した医療機関で初診日などを証明してもらうものです(作成費用は3,000~5,000円程度)。

参照:受診状況等証明書

先ほどの例のように転院などで病院が変わっている場合は、最初に受診した医療機関で初診日を証明してもらいましょう。

なお、初診の医療機関から変わらず同じ医療機関に通院している場合や、先天性の知的障害の方は受診状況等証明書を用意する必要はありません。

一人暮らしの場合

精神疾患にかかる障害年金の場合、診断書には「生活環境」や「同居の有無」などについて記載する項目があります。

その際に「一人暮らしをしていると障害年金はもらえないのでは…」と考える方も少なくないでしょう。

たしかに障害年金の審査では「生活での支障」が重点的に見られるため、「一人暮らしをしている=自立した生活ができる」と評価され、年金不支給になってしまう可能性もあります。

しかし、単身生活であっても「生活や就労に支障がある」と認められれば障害年金を受給することは可能です。

「一人暮らしをしていると受給はできない」といった決まりはありません。あくまで「障害によって生活や就労にどの程度支障があるのか」が審査の基準になっています。

就労状況の書き方

障害年金の請求には、就労状況や日常生活の状況などを記述する「病歴・就労状況等申立書」も必要です。

参照:病歴・就労状況等申立書

病歴・就労状況等申立書は、請求する本人または代理人が作成します。

こちらの書類を作成する際は「診断書の内容と食い違いはないか」に気をつけてください。

傷病名や発病日・初診日などは当然ですが、そのほか障害の状態や日常生活における支障の度合いなども、診断書と食い違いがないように記入しましょう。

もしも診断書に記載された内容と矛盾があった場合は、年金不支給の原因にもなってしまいます。

以上の点に気をつけながら、社会生活や日常生活においてどんな支障があるのか、困っている点やトラブル事例などを具体的に書くとよいでしょう。

病歴・就労状況等申立書の書き方についてこちらの記事で詳しく解説しています。

病歴・就労状況等申立書の書き方は?基本の記入例から注意するべきポイントまで解説

医師が診断書を書いてくれない場合

ここまでのご説明のように、障害年金の請求時には医師に診断書を書いてもらうことが必須ですが、なかには医師が診断書を書いてくれないケースも考えられます。

医師が診断書を書かない理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 障害年金を受給できる状態ではないと判断している
  • 医師にとってリスクがある(受給できなかった時のクレームなど)
  • 単に面倒である

このような理由から診断書作成を断られ、受給資格があるにも関わらず障害年金申請を諦めてしまう方もいらっしゃいます。

医師に診断書作成を拒否されたときの対処法として、たとえば「医師宛てに手紙を書く」のも有効な手段です。

限られた受診時間のなかで自分の考えを口頭で伝えるのは難しいと感じる方は、手紙にして渡すことで自分の状況や想いがより伝わりやすくなるでしょう。

どうしても医師が診断書を書いてくれない場合は、一人で悩まずピオニー社会保険労務士事務所にご相談ください。

ご相談者様の状況に応じて、適切な解決方法をご提案させていただきます。

更新にも診断書(障害状態確認届)が必要

障害年金の支給が決定されると「年金証書」が送られてきますが、障害の状態によって「永久認定」もしくは「有期認定」となります。

永久認定の場合はそれ以降の診断書の提出は不要ですが、有期認定の場合は更新時にも診断書(障害状態確認届)が必要です。

更新は症状により1~5年ごとに行われます。

誕生月の3ヶ月前の月末に日本年金機構から障害状態確認届が送られてきますので、受け取ったら医師に診断書を書いてもらうように依頼してください。

下記の記事で更新について詳しく解説しておりますので、よろしければご覧ください。

ノートとペン 【最新】障害年金受給後の更新(障害状態確認届)

障害年金の診断書でよくある質問

ここでは、障害年金の診断書でよくある質問についていくつかまとめたので、最後にチェックしてみてください。

診断書の作成費用は?

障害年金の診断書の作成費用は、医療機関によって異なりますが、1枚あたり5,000円〜10,000円程度です。

診断書の作成にかかる期間は?

障害年金の診断書の作成期間は、医療機関によって異なりますが1ヶ月程度かかります。

ただし、中にはそれ以上に時間がかかるケースもあるため、診断書の作成を依頼する際は、余裕を持って依頼するようにしましょう。

さいごに

今回は障害年金の請求時に必要になる、医師の診断書やそのほかの書類について解説しました。

本記事でも述べたとおり、障害年金の支給判定は書類のみで行われており、とくに医師に書いてもらう診断書は受給のカギを握っているといえます。

ご自身の障害に関する情報を積極的に伝える姿勢を持ちつつ、担当医師と相談しながら慎重に診断書の準備を進めていきましょう。