「これから医療費もかかるし、仕事も今までどおりにはできないかも…障害年金がもらえたらいいな」
「慢性的な症状や痛みがあるから障害年金の申請まで手が回らない」
難病と診断され、こんな悩みを持つ人は多いのではないでしょうか?
障害年金は、障害のために生活に支障がある人を経済的に支える制度です。この記事では、難病での障害年金受給について、わかりやすくご説明します。
- 難病で障害年金は申請できるのか
- 障害年金でどのくらいの金額が受け取れるのか
- 難病で申請するときのポイント
- ピオニー社会保険労務士事務所での受給事例
最後まで読んで、あなたの障害年金申請にお役立てください。
目次
難病で障害年金はもらえるの?
結論からいうと、難病で障害年金を受けることができます。
障害年金は、初診日に年金制度に加入していることや一定期間保険料を納付していることなどの条件を満たすと申請できますが、条件のなかに「難病は例外とする」という規定はありません。
つまり、難病であっても、障害年金を受給するための条件をすべて満たせば年金が受け取れるということです。
障害年金の受給条件は後ほどご紹介します。
障害年金は「請求する」ものですが、この記事では一般的に浸透している表現を採用し「申請する」と表記します。
障害年金とは
障害年金は、病気やけがで障害があり、生活や仕事に制限を受けるようになった場合に申請できる制度です。
障害年金は2種類あり、初診日に国民年金に加入していた人は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた人は「障害厚生年金」と「障害基礎年金」を受給できます。
下図は、障害基礎年金と障害厚生年金の受給イメージを簡単に表したものです。
障害基礎年金よりも、障害厚生年金の方が手厚い支給が受けられることがわかるでしょう。
障害年金については、下記の関連記事でさらに詳しくご紹介しています。
障害年金とは【専門家がわかりやすく解説します】障害年金がもらえる条件とは
・障害年金の申請ができるのは、3つの受給要件をすべて満たす人です。
- 初診日に国民年金か厚生年金の被保険者であること(初診日要件)
- 初診日※1の前日時点で保険料を一定期間納付していること(保険料納付要件)
- 障害認定日※2もしくは現在、国が定める認定基準に該当すること(障害程度要件)
※1 初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医療機関で診療を受けた日のこと
※2 障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日のこと
保険料納付要件については、原則として初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上の保険料を納付、または免除されていることが必要です。
なお、初診日が2026年4月1日前で、初診日の年齢が65歳未満の方については特例があり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がなければ保険料納付要件をクリアできます。
国が定める障害の程度については、日本年金機構が公開している国民年金・厚生年金保険 障害認定基準で確認できます。
障害年金の受給条件の詳細や保険料納付要件の特例を知りたい人は、下記の関連記事をご一読ください。
障害年金の受給条件とは?申請に必要な3つの条件と対象者 障害年金の保険料納付要件とは?特例・未納があっても受け取れるケース 障害年金の等級とは?等級ごとの具体的な認定基準や等級変更について徹底解説難病で障害年金はいくらもらえるの?
障害年金の年金額は、等級により定められており「難病だから」という理由で増額されることはありません。
令和6年度の年金額は以下のとおりです。
障害の程度 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 1,020,000円+子の加算額 | 報酬比例の年金額×1.25 ※配偶者の加算あり |
2級 | 816,000円 +子の加算額 | 報酬比例の年金額 ※配偶者の加算あり |
3級 | なし | 報酬比例の年金額 ※最低保証額612,000 円 |
障害手当金 | なし | 報酬比例の年金額×2 ※支給は一度のみ |
報酬比例の年金額とは、厚生年金に加入した期間や納めた保険料により算定されるもので、加入期間が長く、保険料を多く納めた人は年金額が高くなります。
誕生月に届く「ねんきん定期便」でも報酬比例の年金額のおおよその金額がわかるので、参考にしてみるのもいいでしょう。
障害年金の年金額の詳細は、関連記事でわかりやすくご紹介しています。
【令和6年度版】障害年金でもらえる金額について参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
難病で障害年金を申請するときのポイント
難病で障害年金を申請するときに押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
(1)難病の初診日はいつになるの?
結論からいうと、難病で障害年金を申請する際には初診日の確定がとても難しいです。
障害年金の初診日は、障害の症状で初めて受診した日を初診日とするのが原則ですが、難病の場合は「確定診断を受けた日」が初診日として認めるケースが多くみられました。障害年金は、初診日から1年6か月経過しなければ申請することができないので、確定診断が遅れると障害年金の申請も遅れてしまいます。
このような事態を解消するために、厚生労働省では「条件が揃ったら確定診断日ではなくそれ以前の初診日を認める」という通達を出し、診断書や受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書などの提出書類を総合的に判断して、申立初診日を「初診日」として認めるようになりました。
難病の初診日がいつになるかを判断するのはとても難しいケースが多いです。初診日を申し立てるには、障害年金の専門知識や経験が必要なので、障害年金専門の社労士へ相談することをおすすめします。
参考:線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて〔厚生年金保険法〕|厚生労働省
参考:脳脊髄液漏出症に係る障害年金の初診日の取扱いについて〔厚生年金保険法〕|厚生労働省
(2)診断書は症状に合わせて選択する
難病での障害年金の申請には、症状によって診断書を選ぶことが大切です。
通常、障害年金の診断書は疾患により診断書が決まっています。一方で難病の場合は、病気により体に表れる症状は多岐にわたることが多いため、診断名だけで必要な診断書を選択することができません。
8種類ある障害年金の診断書のなかから、どの診断書を使うか選択するときは「全身の状態が悪いのか」「体のどこが悪いのか」「体だけではなく、精神的な疾患があるのか」など状態を見極めることが必要です。
例として、症状に着目して診断書を選択するケースを下表に示します。
症状など | 診断書 |
---|---|
視力が低下した 視野に障害がある | 眼の障害用(様式第120号の1) |
うつ病がある | 精神の障害用(様式第120号の4) |
腎機能が低下している | 腎疾患の障害用(様式第120号の6(2)) |
全身の状態が悪い 衰弱している | その他の障害用(様式第120号の7) |
なお、日本年金機構では診断名が同じでも症状の違いにより使用する診断書が異なり、それぞれの症状に合わせたものを使用し認定された事例を公開しています。
脳脊髄液漏出(減少)症の例でみると、下表のように診断書が選択されています。
症状 | 診断書 |
---|---|
歩行困難がある 手足が不自由 | 肢体の障害用(様式第120号の3) |
全身の状態が悪い | その他の障害用(様式第120号の7) |
診断書の選択は難しいことが多いので、どの診断書を使うか迷うときには年金事務所や障害年金専門の社労士へ相談しましょう。
(3)主治医と情報を共有する
難病で申請するときのポイントの3つ目は、主治医と日常生活や仕事での配慮などの情報を共有することです。
障害年金の審査では、「診断書」の記載内容がとても重要視されており、「日常生活にどんな支障があるのか」「仕事や生活をするうえでどのようなサポートを受けているか」など自分の状態を正しく記載してもらうことがとても大切です。
主治医とはふだんの診察時からコミュニケーションを取り、生活や仕事での困りごとやまわりのサポート内容などをお知らせしておきましょう。
ピオニー社会保険労務士事務所では、ご相談者からヒアリングした内容をまとめ、主治医に診断書を依頼する際に手渡す資料を作成しています。
「主治医とコミュニケーションが取れない」「診断書をうまく依頼できるか不安」などでお困りのときはぜひご相談ください。
ピオニー社会保険労務士事務所での受給事例
弊所にご依頼いただいた難病での受給事例を2つご紹介します。
網膜色素変性症で障害基礎年金2級を受給
- ご相談者 40代 女性
- 認定結果 障害基礎年金2級
- 支給額 年間約78万円
【ご相談時の状況】
ご自分で障害年金の請求準備をされ、診断書は出来上がっていましたが、このまま提出するのは不安だということで弊所にサポートをご依頼をいただきました。身体障害者手帳は2級を取得済みです。
【弊所でのサポート内容】
視野の障害は、視力の障害よりも診断書の不備が多い傾向があり、検査のときの体調や測り方の微妙な差で検査数値が変動してしまうこともあります。
上記の点を踏まえて診断書を拝見したところ、明らかな間違いや不備があったため、主治医へ修正依頼をお願いしました。
更に次回診断書提出年月(更新)がなるべく長く認定されるように、病歴・就労状況等申立書に具体的な日常生活の支障を書くよう工夫しました。
【審査結果】
障害基礎年金2級と認定され、更新は3年後に決定しました。
慢性疲労症候群で障害厚生年金2級を受給
- ご相談者 40代 女性
- 認定結果 障害厚生年金2級
- 支給額 年間約180万円 + 遡及分約310万円
【ご相談時の状況】
慢性疲労症候群の症状が出始めてからも仕事を続けていましたが、何度も倒れるようになりました。現在は仕事が続けられなくなったため、弊所へ障害年金の受給のご相談をいただきました。
【弊所でのサポート内容】
もともと「慢性疲労症候群で障害年金を受給するのは大変だ」ということをご存じで、大きな不安を抱えていましたが、十分に障害年金が受給できる状態であり、初診日の確定や証明も問題ないことをご説明し、すぐに準備を始めることをおすすめしました。
慢性疲労症候群の方にしては転院の数も多くないケースで、現在の主治医・初診日に受診した病院の主治医ともにとても協力的な先生でしたので、スムーズに準備がすすみました。
【審査結果】
障害認定日から遡って障害厚生年金3級が認められました。
その後、額改定があり請求日では障害厚生年金2級になりました。
ピオニー社会保険労務士事務所では、このほかにも全身性エリテマトーデスや特発性拡張型心筋症、広範脊柱管狭窄症などの申請代行を承っております。詳しくは受給事例でご確認いただけますので、ぜひご覧ください。
まとめ
難病でも、一定期間保険料を納めるなどの受給条件を満たせば障害年金を受けることができます。
しかし、難病での障害年金の申請の場合は転院をくり返しようやく確定診断を受けることがあり、初診日の認定が難しいケースが多く見られます。また、同じ診断名でも症状により診断書が違うこともあり、難病での障害年金の申請準備はとまどうことが少なくありません。
「難病での障害年金の申請に行き詰った…」「自分で準備してみたけれど、難しくて無理そう」などのお困りごとはピオニー社会保険労務士事務所へご相談ください。