障害年金をもらいたいけれど、「障害年金をもらえる条件」がよく分からずに申請を諦めている方は少なくありません。
障害年金の申請手続きはとても複雑なため「申請しても支給されないのでは?」と不安になる方も多いと思います。
この記事では、障害年金の申請を検討している人に向けて、障害年金がもらえないケースを3つご紹介し、よくいただく質問にも回答していきます。
障害年金について相談できる窓口も紹介しているので、この記事を最後まで読めば障害年金の申請に対する不安が解消されます。
これから障害年金の申請をする人や申請を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
障害年金をもらえない人とは?
障害年金をもらえない人とは、障害年金の3つの受給要件を満たせない人です。
障害年金が支給されるには、一定期間保険料を納めていることや障害等級にあてはまることなどの要件をすべて満たさなければなりません。
次章で「障害年金の3つの受給要件」をわかりやすく解説していきます。
障害年金は「請求する」ものですが、この記事では一般的に馴染みのある表現を採用し「申請する」と表記します。
障害年金の3つの受給要件
障害年金をもらうための要件は次の3つです。
上記の要件を1つでも満たしていないと、障害年金はもらえません。
初診日要件
受給要件の一つ目は、病気やけがで初めて病院に行った日が国民年金か厚生年金の被保険者期間中であることです。
これを初診日要件といい、障害の原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日を「初診日」と呼びます。
初診日の具体例は以下のようになります。
7月1日:心臓が痛くなり初めて病院を受診する
7月7日:精密検査で心臓疾患が判明し心臓病の診断を受ける
その後:心臓病が原因で仕事に支障が出たため障害年金を申請
この場合だと7月1が初診日になり、この日に国民年金か厚生年金に加入していた人は障害年金を受給できます。
保険料納付要件
障害年金を受給するためには、以下のいずれか1つの要件を満たしていることが必要です。
- 初診日がある月の2ヶ月前までに、年金加入期間全体の3分の2以上を納付しているか免除されている
- 初診日がある月の2ヶ月前までに、直近1年間に滞納期間がない
国民年金や厚生年金の被保険者期間中であっても、上記のうちいずれか1つの納付条件を満たしていないと、障害年金の申請はできません。
ただし例外として、20歳前に初診日がある場合は保険料を支払えないので納付要件は問われません。
保険料納付要件の詳細は、下記の関連記事でご紹介しています。
障害年金の保険料納付要件とは?特例・未納があっても受け取れるケース障害状態該当要件
障害年金を受給する場合、障害状態該当要件を満たすことが必要です。
障害状態該当要件とは、障害認定日において障害等級に該当する程度の障害状態にあることを指します。
障害認定日とは、初診日から1年6ヶ月経過した日、またはその期間内にその傷病が治った日のこと
具体的には、以下の障害等級にあてはまる人が支給対象となります。
障害年金の種類 | 障害等級 |
---|---|
障害基礎年金 | 1級、2級 |
障害厚生年金 | 1級、2級、3級 |
障害等級3級に満たない場合、障害厚生年金では条件に該当すれば一時金として「障害手当金」がもらえます。
なお、障害等級は日本年金機構の認定医が審査した上で決定します。
障害年金がもらえない3つのケース
障害年金がもらえない3つのケースをみていきましょう。
障害年金をもらえないケース(1)初診日が証明できない
障害年金は初診日が証明できないと申請ができず、たとえ申請したとしても不支給になります。
障害年金の初診日は、障害の原因となった傷病で初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指し、整骨院や鍼灸院などでの施術は医師の診療とはみなされず、初診日には該当しません。
初診の証明には、障害の原因となった傷病で初めて受診した医療機関が作成する「受診状況等証明書(初診日証明書)」が必要です。
療養期間の長い人の場合、初めて病院で診てもらったのが10年以上前ということも少なくありません。
療養を始めたのがかなり前になるので、現在では初診の病院が閉院になったり、転院を繰り返したりすることも多く、「一体どこの病院に初診の証明をお願いしたらいいのかわからない」という事態になるケースが見られます。
こうなると自分や家族の力では初診日の証明ができなくなって障害年金の申請ができず、受給を諦めてしまう人も多いようです。
初診日についてもっと知りたい人は、下記の関連記事でわかりやすく解説しています。
障害年金における「初診日」とは?初診日の重要性や証明方法も併せて解説障害年金をもらえないケース(2)保険料納付要件が満たせない
初診日が証明でき、その日に年金に加入していたとしても、保険料納付要件を満たせないときは障害年金はもらえません。
保険料納付要件保険料納付要件でご紹介したとおり、障害年金をもらうためには「年金加入期間全体の3分の2以上を納付しているか免除されている」または「直近1年間に滞納期間がない」のいずれかを満たすことが求められています。
保険料納付要件を判断するときには「初診日の前日」時点での保険料の納付状況を見ます。
国民年金の保険料は、納付期限から通常2年(免除期間については10年)に限り、後納が認められていますが、障害年金では初診日を過ぎてから年金保険料を後納しても「納付」とは認められないのです。
国民年金の保険料は未納とならないよう忘れずに支払うことが大切です。もし経済的に厳しい状況になったときには免除を受けましょう。
障害年金をもらえないケース(3)障害等級にあてはまる状態ではない
障害年金は、国が定める障害等級にあてはまらないときには支給されません。
日本年金機構で公開している障害認定基準では、障害の程度を以下のように定義しています。
障害等級 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の障害または病状により日常生活を自分ですることができず、常時介護を必要とする状態 |
2級 | 他人の介助が必ずしも必要ではないが、体の障害または病状により労働ができない状態 |
3級 | 労働に著しい制限を受ける状態 |
傷病ごとの詳しい基準は、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準でご確認ください。
初診日が証明でき、保険料納付要件をクリアしても、障害の状態が基準よりも軽いと認定されると障害年金はもらえないのです。
ただし、徐々に障害が重くなり、障害認定基準を満たす状態になると申請により障害年金をもらえることがあります。
この申請方法を事後重症請求といい、認定されると申請の翌月から障害年金が支給されます。
障害等級や事後重症請求については、関連記事をご覧ください。
障害年金の等級とは?等級ごとの具体的な認定基準や等級変更について徹底解説 事後重症請求とは【請求時の注意点までを解説します】参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害年金の申請について相談ができる窓口
障害年金の申請を相談できるところを2つご紹介します。
年金事務所や街角の年金相談センター
【年金事務所】
年金事務所では、年金の加入記録を受け取れるほか障害年金の申請についても相談できます。
個別に準備する書類や申請の具体的な手順も教えてもらえますが、混雑していて基本的には予約が必要です。
通常1回の来所では終わらずに何度か通いながら申請の手続きを進めていくため、障害の症状が重いときには通所するのが難しいことがあるようです。
【街角の年金相談センター】
街角の年金相談センターは、年金事務所とほぼ同じ相談ができるところで、駅の近くやショッピングセンターの中など交通の便の良いところに設置されています。
予約がなくても相談できますが、設置されていない県もあるので事前に確認しましょう。
参考:街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会
障害年金専門の社労士
障害年金の申請方法がわからないときや障害年金が受給できるか不安なときは、障害年金専門の社労士にも相談できます。
社労士に申請の代行を頼めば、手間が省けるのはもちろん以下のようなメリットがあります。
- 複雑な申請手続きをすべて任せられる
- 不支給の可能性を最小限に抑えられる
- 受給開始が早くなる可能性がある
- 更新の時にも相談ができる
障害年金を相談する社労士選びに困ったときには、次の関連記事をご参考にしてみてください。
後悔しない!障害年金社労士の選び方4つのポイント 障害年金の申請代行を社労士に依頼する4つのメリット障害年金がもらえない|よくある質問
障害年金がもらえないことに関連してよくいただく質問に回答していきます。
障害年金は働いていてももらえますか?
障害年金はアルバイトはもちろん、一般の方のようにフルタイム勤務で働いても支給されます。
ただし障害によっては、フルタイム勤務やアルバイトをしていると認定されないケースもあります。
例えば、精神疾患の場合は、働けていることで障害の状態が軽いとみなされてしまうことがあるのです。
ただし、その人の状況によってケースバイケースになりますので、働いている方が障害年金の受給を検討している場合には、障害年金専門の社労士に相談することをおすすめします。
働きながらの障害年金受給については、関連記事で詳しくご紹介しています。
働きながら障害年金はもらえるの?受給者の約28%が就労者です障害者手帳がなくても障害年金の申請はできますか?
結論からお伝えすると、障害者手帳がなくても障害年金の申請はできます。
障害年金と障害手帳はまったく別の制度になりますので、「障害手帳をもっていない」からといって、障害年金が受け取れないということはありません。
障害年金は日本年金機構が審査を行い、障害者手帳は各地方自治体が審査をするといった決まりがあり、審査の体制は全くの別体制です。
しかし、障害者手帳の等級は障害年金を受給する上で参考になることがありますし、取得しているとさまざまなサービスを受けることができますので、持っていることはよいと思います。
うつ病で休職中ですが、精神疾患で障害年金がもらえるのか不安です。
うつ病などの精神疾患でも、障害年金の3つの受給要件をすべて満たせば障害年金をもらえます。
しかし、視力や聴力のように検査で障害の程度を測ることができないので、「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」に日常生活での困りごとや周りのサポート体制などを審査する人に伝わるように記載することが大切です。
「診断書」は主治医が作成するため、普段の診察のときから日常生活についてお知らせしておき、診断書に反映していただくのが理想的です。
短い診察時間にうまく話せるか不安な人は、事前にメモにまとめておき、主治医に渡す方法をおすすめします。
うつ病での障害年金受給については関連記事で詳しくご紹介しています。
うつ病での障害年金は難しい?受給するためのポイントと障害認定基準 【事例つき】うつ病の方が受給できる障害年金の金額まとめ
障害年金は3つの要件を満たせば申請できますが、初診日の証明など自分や家族だけで申請するのは難しいことが多くあります。
障害年金の申請に不安がある方は、最寄りの年金事務所や自治体の窓口や障害年金を専門とする社労士へ相談してみましょう。
ピオニー社会保険労務士事務所では、障害年金の申請代行を承ります。
うつ病や発達障害などの精神疾患や、慢性疲労症候群などの難病の申請代行など経験豊富な社労士があなたの申請をサポートします。
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